医師ブログ

2021.02.21更新

ようやく待ちに待った新型コロナのワクチン接種が日本でも開始されました。
現在は第一線で奮闘されている医療従事者から接種が開始され、今後その他の医療従事者を経て一般の方への接種が始まる予定です。
それに合わせ、昨日厚生労働省からの医療機関向け説明会がウェブで開催されました。
私たちも断片的な情報しか知り得ませんでしたが、この説明会で少しずつアウトラインが見えてきました。
そこで今回はこのワクチンについて、現在わかる範囲でこちらでも解説してみようと思います。

まず今回接種が開始されるワクチンは、アメリカのファイザー社が製造したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンというタイプのものです(商品名は「コミナティ」というそうです)。

ワクチンの原理ですが、ワクチンとは基本的に体に疑似的に感染した状態を引き起こし、それに対する免疫を人工的に引き起こすことができるようにする手段です。

いままでのワクチンは生ワクチン(症状が出ないように限りなく弱くした病原菌そのものを入れる)や、不活化ワクチン(病原菌にいろいろな処理をして病原性をなくしたものを入れる)などの手段がありました。

人類はこれら生ワクチンや不活化ワクチンを作った多くの経験を持っています。
が、このワクチンをつくるためにはウイルスそのものが必要です。
今回のように全世界で短期間にワクチンを作らなければならない場合、大量にウイルスを培養、複製しなければなりませんが、それには専用施設が必要だったり、培養の時間がかかったりと、すぐにそんなに多くのウイルスを作ることはできないのです。

そこで今回のワクチンではコロナウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)というものを使用することにしました。mRNAはコロナウイルスのいわゆる「設計図」です。

今回のウイルスの目的は、ひとつにはコロナウイルスの表面にある突起物(=スパイクたんぱく質)を攻撃するための抗体を作り出すことです。
そしてコロナウイルスのmRNAの一部分に、このスパイクたんぱく質の設計図が含まれています。
この設計図部分を取り出して、脂質の殻でコーティングしてあげます(RNAはとても壊れやすいので殻で保護するのと同時に、この殻のおかげで人体の細胞にmRNAを送り込むことができるようになります)。
これを注射すると、人体の細胞の中にmRNAが取り込まれて、設計図の情報をもとに細胞の中でスパイクたんぱく質をつくります(取り込まれたmRNA分解されますし、人間のDNAが存在する細胞核の中には原理的に入ってこないので、人の細胞に取り込まれることはまずありません。Twitterなどでそのようなデマも見ることがありますが、皆さん決して惑わされないようにしましょう)。
スパイクたんぱく質が体内で作られると、体の中で免疫が発動し、すみやかに抗体を作ることで、いざコロナウイルスが入ってきたときに速やかに攻撃態勢を作れるようにすることができるようになります(液性免疫)
また攻撃の仕方をキラーT細胞に指示して覚えこませて、免疫細胞が直接ウイルスを撃退できるようにもなります(細胞性免疫)

ワクチン

今回これだけ早くワクチンが完成したのは、遺伝子解析の技術が以前と比較にならないほど早くなったことが理由の一つです。今回の新型コロナでは武漢で流行の始まった昨年1月にはすでに遺伝子解析が終わっていたため、すぐにワクチンの研究に取り掛かれました。昔じゃ考えられなかったことです。
また先ほども述べたように、mRNAワクチンを作るのにはウイルスそのものは必要ない(設計図であるmRNAだけあればよい)ので、培養するのに時間を要する必要がないのも要因の一つです。
その他にも多くの資金がかけられたこと、全世界で急速に広がったため、それがかえって臨床試験の被検者を集めたり、結果を判定することが容易になったことも重要です。

そしてこのワクチンの効果ですが、全世界で行われた、約4万人を対象に行われた臨床試験では、接種後約2~3か月の期間において、全体で95%の発症抑制効果があったとのことでした。
具体的にはこのワクチンを接種してでその後発症した人が18559人中9人プラセボ(本人も接種者も見た目ではわからない偽物)を接種してその後発症した人が18708人中169人だったとのことです。
これは接種しない時に発症する割合を100としたときに、接種をした人の発症割合がおおよそ5程度になったということです(決してワクチンを打つと100人中95人効くという意味ではないのでご注意を)。

ワクチン

インフルエンザワクチンも抑制効果は50~60%程度と決して悪くはないのですが、現在のところ正直「段違い」の効果、ともいえると思います。

そしてこの効果は性別、年齢、人種、肥満やその他のリスク因子のあるなしにかかわらず大きな効果が変わらず認められていることも重要な点です。
現時点では(少なくても短期的には)効果の期待できない人はあまりいないという結果がでています。

副作用ですが、頻度の多いものとしては打った後の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛、38℃程度までの発熱が多いようです。
発現割合としては高齢者よりは比較的若い方に多そうで、また接種後1~2日経って出ることが多いようです。
またアメリカの市販後調査では、約10万人に0.5人の割合でアナフィラキシーが起き、死者はいなかったとのことです(ちなみに抗生物質であるペニシリンのアナフィラキシーは10万人中10-50人と言われ、ケタが違います。比較的ワクチンは安全なようです。と言うより、アナフィラキシーに関してはワクチン投与より不適切な抗生物質投与の方がよっぽど危ないとも言えるでしょう)。

ということで、まだまだ長期データがなくわからないことも多いワクチンですが、現時点ではかなり有望なのは間違いないようです。私も接種することにしました。

次回はこのワクチンの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.02.07更新

結局緊急事態宣言が延長された2月、当院ではここしばらくコロナ陽性例はいらっしゃいません。
が、減ったとはいえまだ茅ヶ崎でも1日10名程度は報告されており、まだまだ気を緩めることはできません。
私もまだまだステイホームということで、今日は息子が学校の図書に載っていた「おひさまパン」を作ろうと朝からパン生地をこねこねして焼きました。人生初の自家製パンでしたが出来上がったら直径25cmと予想外の大きさとなってしまい、4人で食べても腹パンパンです(いやダジャレのつもりじゃなかったのですが、ホントに・・・)

おひさまパン

というわけで、今回は前回の続き、パルスオキシメータについてです。今回はパルスオキシメータを扱う際の注意点について書いてみようかと思います。

今アマ〇ンや楽〇などで検索すると、本当にいろいろな価格帯のパルスオキシメータが発売されているようです。
中には1000~2000円で買えるものもあり、私もびっくりしました(コロナ前は検索しても出てこなかった価格帯です。それだけ需要も増えたのでしょう)。
ただ前回もお書きした通り、酸素飽和度(SpO2)は95%を下回ると、その数字の扱いについては慎重にならないといけなくなります。98%と96%ならその違いはあまり気になりませんが、94%と92%ならかなり意味合いは変わってきます。
またパルスオキシメータはその指先の血流をとらえます。特に寒い冬のこの時期、指先が冷えている方は少なくありません。すると指先の血流は少なくなっている状態になります。また病態が悪化し血圧が下がってしまったときも同様です。
この血流を正しく捉えられるかはそのセンサーの精度にもよります。いざというときのモニタリングですので、もし家庭に常備しておくからにはやはりここが信頼できる機器でないとあまり好ましいとは言えないかもしれません。
やはりベストは医療機器認証を受けたものだとは思いますが、やはりやや高価ではあるので、極端に安価なものに手を出さないようにすればまずはいいのかなと思います。

次にパルスオキシメータで実際に測定する際の注意点です。

まずはマニキュアなどを塗っていると当然正しい血液の色が測定できません。使用するときはマニキュアを落とします(爪が特に濁っていなければ足の指で測ることは可能です)。

そして指を差し込むときにはしっかり奥まで差し込みます。センサー部分が爪にあたっていないと正確な脈波が拾えません。

上述の通り、寒かったり血の巡りが悪く指先が冷たいときは測定が不正確になることがあります。
通常パルスオキシメータには脈波も同時に表示されますが、これの表示が弱い場合は指を温めたり、血流の良い他の指で測定するなどの工夫をしましょう。

また指を動かしていると正しい測定ができません。
その理由は、指を動かすとセンサーの発光部と受光部の間にある指が動くことで、拍動のノイズになってしまうことがあるからです。
測定するときはパルスオキシメータを装着した指を机などに固定していただくといいです(できれば心臓と同じ高さであるとベストであり、日本呼吸器学会はできれば胸の前で固定することを推奨しています)。

測定すると数秒で値が出てきますが、20-30秒間は値が安定しません。しばらく時間が経ってからの値を読み取るといいと思います。

前回の記事で、SpO2の原理を説明しました。全体のヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンの割合を測ることで測定しますが、もともと貧血があると、そのヘモグロビンの量が減ります。
するとそもそも酸素の乗っているヘモグロビンも少なくなるので、SpO2が保たれていても酸素が足りないということがあり得るので注意が必要です。

また一部の薬剤で測定値に影響が出ることがあります。狭心症発作で使われるニトロや、一部の不整脈の薬を内服するとSpO2が低くでることがあります。

またSpO2が正常範囲でも絶対に大丈夫とは言えません。
人間は通常、体内の酸素が少なくなると、呼吸の回数や量を増やすことで対応しようとします。この時酸素の取り入れと引き換えに二酸化炭素を外に出します。
通常、人間の体は十分な量の酸素とある程度の量の二酸化炭素を擁することでバランスを保ちますが、つまり酸素が少なくなった状態では、二酸化炭素を引き換えに酸素を得るのです。
この状態はもうひと崩れするとあっという間に酸素不足に陥る状態ですが、この時点ではSpO2には反映されません。SpO2が95%程度でも呼吸が非常に荒いときは要注意です。

このように一見手軽なパルスオキシメータですが、やはり医療機器ですのでいくつかの注意点はあります。
このことをしっかり知っておけば有用な機器ですので、お手元にある方はぜひ正しくご使用いただけると幸いです。

 

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.01.30更新

ややコロナも山を越えてきたのでしょうか。
日々報じられる感染者数も一時期よりは少なくなってきました。
当院でも冬なので発熱や咳で来られる患者さんは相変わらず多いのですが、コロナを強く疑う患者さんの数は減ったように思います。また当院で実際にコロナと診断される患者も、年明けに比べればだいぶ減ってきているようであり、現場の実感としても落ち着きつつあるのかなという印象はあります。

しかし、コロナはやはり重症化が怖い病気です。
新規感染者の数が減ってもまだまだ重症者の数は多いようで、感染が判明してしばらく経ってから重症化するというコロナの恐ろしい面が反映されています。

このコロナに関しては、呼吸困難の自覚のないまま呼吸状態が悪化する「幸せな低酸素血症」“happy hypoxia”という状態が起こることが知られており、感染からしばらく経った後、気づいたときにはかなり呼吸状態が悪くなっていることがあるようです。
この原因としてはまだはっきりとは解明されていませんが、コロナが悪化しやすい高齢者や糖尿病の方は、もともと呼吸調節を行う調節機能が落ちている、呼吸困難を感じる体内のセンサー(頸動脈小体)にコロナウイルスが感染しやすく、そこのセンサーの機能が落ちることで呼吸困難を感じにくくなる、などの理由が考えられているようです。Martin J Tobin, et al. Why COVID-19 Silent Hypoxemia Is Baffling to Physicians. Am J Respir Crit Care Med. 2020;202:356-60.
現在軽症感染者さんの主な療養場所も自宅やホテルとなっており、ただの風邪症状の方もコロナである可能性が否定できない以上、家でも早期に呼吸状態の悪化を見落とさないようにする必要があると思われます。

そこで最近注目されているのがパルスオキシメータです(当院も今後の診療能力向上のために、今年からちょっとイイやつを新たに導入しました)。


これは日本語で「経皮的動脈血酸素飽和度測定器」といって、皮膚の上から光を当て、動脈血の「赤み」を測定する機械です(ちなみにこの機械が開発されたのは日本なんです!)。


使い方は、クリップになっている部分を開き、指を挟み、爪の部分が発光部にあたるように奥まで差し込むだけです。

パルスオキシメータの使用方法

血液が赤いのは、赤血球に含まれている「ヘモグロビン」という色素のためです。このヘモグロビンは酸素とくっつく性質を持っています。

肺で取り込んだ酸素は、肺に流れこんでくる血液の中のヘモグロビンとくっついて心臓に戻り、そして全身へと運ばれます(血液の液体の中にも溶け込みますが、溶け込んだ酸素はほぼ組織には運ばれず、液体の中にただよったままです)。
このヘモグロビン、酸素とくっつくと赤くなり酸素から離れると黒くなるという性質を持っています。
すると、肺で酸素をため込み心臓から飛び出したばかりの新鮮な血液(つまり動脈血)は色が赤々としていますが全身に酸素を配り終えた後の血液(つまり静脈血)は黒めの色となります
皆さんが血液検査で血を採られると、意外に血が黒いと思われる人が多いですが、これはすでに全身に血液を配り終えた静脈血を採取しているからです。

そして、パルスオキシメータは先ほどお話ししたように動脈血の赤みを測定するため、肺から酸素をしっかり取り込めているかを測ることができるというわけです。
パルスオキシメータで測る数値を、動脈血酸素飽和度(SpO2)と呼びます。
これは血中のヘモグロビンのうち、何%のヘモグロビンが酸素と結合しているかを示しています。ですので最大値は100%になります。

パルスオキシメータの原理
そして血液中に含まれている酸素(これを酸素分圧と呼びます)と、酸素飽和度(SpO2)の関係は以下のグラフのようになります(これを酸素解離曲線と呼びます)。

酸素解離曲線

上の表でもわかる通り、通常若い方の血液中の酸素分圧は95mmHg程度で、これは酸素飽和度(SpO2)でいうと98%に相当します。
また高齢者では酸素分圧80mmHg程度で、これはSpO2 95%に相当します。
機械の誤差を含め、95~99%であればあまり大きな問題はありません(100%だと時によっては過呼吸など、呼吸が多すぎることを疑います)。
そして、我々医師は通常、肺や心臓に慢性的な病気がない方の場合、SpO2が93%程度になると焦り始め90%を切ると慌てます。これは酸素分圧60mmHgに相当し、これを下回ると呼吸不全とされます。
グラフもここを下回ると急になり、急激にSpO2が低下していき、いろんな臓器が十分な酸素を受け取れなくなってくるため危険な状態へとなっていきます。通常の場合では呼吸不全、つまり酸素分圧60mmHg、つまりSpO2 90%を下回る場合には、酸素療法や、場合によっては人工呼吸器療法によって酸素分圧を上げる必要がでてきます。
この治療の目安が指に機械を挟むだけでわかってしまうのです。

というわけで、痛みなく簡単に体内の酸素の状態が分かってしまうスゴい機械、パルスオキシメータですが、使うには実はいろいろな注意点があり、使用を安易に考えると、時に問題を生じることが出てきます。長くなりそうなのでこの続きはまた次回。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.01.17更新

年が明け、1月7日からまたここ神奈川にも緊急事態宣言が発令されました。
当院でも発熱外来を行っていますが、年が明けてからはやはり発熱や咳症状の患者さんが増えてきている実感があります。新型コロナの診断となる方の数も増えてきており、茅ヶ崎でも拡がっていることをひしひしと感じます。

しかし、病気はコロナだけではありません。このようなご時世でも、治療を続けなければならない多くの病気の治療を止めてしまうことは好ましくありません。

それは当院が治療に力を入れている喘息でも同じです。
喘息は油断して治療を止めてしまうと、いずれまた悪化してしまいます。そのため平時でも、症状がよくなったからといってもやめないで、適切に治療を続けてもらうことが必要な病気です。

 

それをふまえた上で、今回は喘息と新型コロナについて、前回の記事からいろいろとわかってきたことも増えたので、そこについて触れてみたいと思います。

 

喘息と新型コロナについては、前回は昨年4月にブログに記事を書きましたが、その後いろいろと新しいデータ、知見が出てきています。

その中でも、やはり喘息を患っていることと新型コロナが重症化してしまうことにはあまり関連がなさそうなデータがいくつも出ているようです。Chhiba KD et al. J Allergy Clin Immunol. 2020; 146: 307-14.

それ以上に、どうも新型コロナに感染した人の中には、喘息を持っている人が割合少なく、喘息の方はむしろ新型コロナにかかりにくい(もしくはかかっても重症化しないために見つけられない率が高い)可能性も考えられています。Matsumoto K et al. J Allergy Clin Immunol 2020; 146: 55–57.

 

それにはどうもいくつかの理由があるようです。

一つは喘息の方が起こすアレルギー反応がむしろ役に立っているという仮説です。
新型コロナウイルスはACE2という受容体を足掛かりに体内に入ってきますが(こちらの記事をご参照ください)、このACE2受容体がどうも喘息などのアレルギー反応を起こしやすい人だと減っているようなのです。Jackson DJ, et al.J Allergy Clin Immunol. 2020 Jul; 146(1):203-206.e3
そのためウイルスの足掛かりが少なくなり、ウイルスが体内に入ってきにくくなるのではといわれています。
ちなみに喫煙は逆にこのACE2受容体を大きく増やす作用を持っているとされており、喫煙はやはり新型コロナの重症化の大きな要因になるだろうと考えられます。
コロナが怖ければタバコは止めましょう。

 

またいくつかのデータでは、喘息でちゃんと治療を行っている人の方が、そうでない人よりも重症化しにくいことも示唆されています。Eur Respir J. 2020 Dec 17;2003142. doi: 10.1183/13993003.03142-2020.

喘息治療で用いる吸入ステロイドは、気管支の炎症を抑え、空気の通り道を広げる作用を持ちます。
新型コロナに感染し重症化すると、肺へ空気が入りにくくなってしまいます。一度潰れた肺胞は再度膨らむことが難しくなり(一度完全にしぼんだ風船をがんばって膨らます状態と一緒ですね)、このことがより肺の状態を悪くしてしまいますが、吸入ステロイドはこれに対し効果を示すのかもしれません。

また吸入ステロイドは気道のACE2受容体(さきほど出た、新型コロナウイルス侵入の足掛かりでしたよね)を減らしてくれるという研究も示されており、ウイルスの侵入経路を減らす効果があるかもしれません。

具体的なデータはまだ出てはいませんが、普段から吸入ステロイドをしっかり使っていることで、新型コロナに感染しづらくなったり、感染したときに重症化を抑えたりできる可能性があります(ただ以前話題になったオルベスコという吸入ステロイドは、すでになってしまった新型コロナにかかってしまった後の治療という面では、現時点では有効性を示せなかったというデータが出ています。とはいえ死亡率や重症化率も上げることはなかったとのことであり、この結果の解釈はまだ難しいところです。いずれにせよ安易な自己判断での治療開始、治療中止は避けるべきでしょう

 

また内服薬に関しても、モンテルカスト(キプレス®やシングレア®という商品名です)が高齢者において、内服していた人の方がそうでない人より新型コロナ感染率、重症化率が低かったというデータもでているようです。Khan A, et al. Montelukast in hospitalized patients diagnosed with COVID-19. 2020. doi:10.21203/rs.3.rs-52430/v1.

 

これらから、喘息の人はやはり必要以上に新型コロナを恐れる必要はなく、今まで通りしっかりと治療を続けるのが一番だということが言えそうです。
そしてしっかりと通院を続けて薬を正しく使い続けることが、結局は新型コロナから自分の身を守ることになるということが言えると思います。

 

またこれからは春に向けてスギ花粉のシーズンが始まります。喘息の症状が悪化しやすい時期にも入ってきます。

なにより喘息の悪化による咳と新型コロナによる咳は、私たち専門医でもすぐには簡単に見極めることができません。
この時期、咳が続くとなにより患者さん自身が不安になり、日常生活を送る上での妨げとなってしまいます。

せっかくいい治療法がある現在、喘息患者さんには、感染対策がしっかりとられている信頼できる主治医のもとで、しっかりと吸入、内服治療を続けていただきたいと切に願っております。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.12.31更新

今年も1年間加藤医院をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
さて、今回は激動の2020年の加藤医院を、この場で少し振り返りたいと思います。


2020年は1月の診察室の模様替えから始まりました。これに伴い私と加藤医師の診察室が入れ替わりました。またX線透視装置を撤去し、内視鏡室を移動しました。

そして春に数名の新しい事務スタッフを迎えたところでコロナの流行が始まりました・・・

当然この時期はまだまだ風邪が流行る時期でもあり、多くの発熱した患者さん、咳や痰の止まらない患者さんがいらっしゃいました。
我々もコロナのことがまだよくわからない時期であったため、かかりつけの患者さんやスタッフのことを考えた時に、発熱患者さんを受け入れるかどうかの決断を迫られました。
しかし、このころにはかかりつけの方にとどまらず、周りから医療機関を受診できなくなった発熱患者さんの相談を多く受けるようになっていました。この頃は総合病院の発熱外来くらいしか受け皿がない状態でした。
一方、私自身がつい1年前まで市立病院での感染対策チームで活動していたその経験から、いわゆる飛沫、接触感染であるコロナは、しっかりした対策を取れれば患者さん、スタッフへのリスクをある程度しっかり抑えることはできるだろうという見込みを持っていました

最終的には、自分たちがしっかりと発熱患者さんに対応することで、当院が発熱して困っている方の受け皿になり、さらにそれによって総合病院の負担を少しでも減らせればとの結論に至り、発熱患者さんの受け入れの継続、院内の大改造へと舵を切ることとしました。



まずは受付のパーティションを設置し、待合の椅子をすべて交換し、個別の椅子にした上ですべての椅子の間にアクリルパーティションを自作しました。
待合椅子パーテーション

 

そして、移動した内視鏡室を、検査のない日は発熱診察室としても使えるようにし、いままで点滴室として使用していたエリアを発熱外来専用待合室に改造しました。

第3診察室

発熱待合室

 

幸い昨年1年間、当院では院内感染、クラスターの発生はなく、私を含めスタッフへの感染も生じておりません。

6月には加藤医院が加藤浩平先生から正式に私浅井偉信が加藤医院を継承し、新体制での船出となりましたが、加藤医師の診察は週2回継続しており、特に患者さんの当院の使い勝手にはお変わりはないものと思います。


7月からは1か月遅れで特定健診、9月からは予定通り高齢者検診が始まり、お受けいただいた患者さんからは幸い病気の早期発見につながった方が何名もいらっしゃいました。

9月には新しい体制のもと、念願であったトイレの改装をはじめ、

トイレ

 

診察室のドア変更などの工事を施行、

診察室

 

続いて11月には受付、待合エリアの壁や床の張替え、荷物置き台の設置などを実施し、より過ごしていただきやすいクリニックを目指し歩を進めています。
受付

 

また新しい看護師が新たに仲間に入り、より充実した診療体制になりました。

10月からはインフルエンザの予防接種が開始し、コロナ禍の中少しでも密を回避しながら一人でも多くの方に接種いただけるように致しましたが、それでもご希望にお応えすることができないケースもありました。この場を通じてお詫び申し上げます。
12月には新たにネット、電話、窓口で受付可能な即時予約システムが稼働し、我々もまだ手探りな状態でありつつも徐々に慣れつつあるところで2020年を終えました。

というわけで、この一年間は世の中がコロナ禍で激変する中、当院は加えて院長交代、呼吸器アレルギー専門診療2年目、ハード、ソフトの変更、スタッフの入れ替わりなどで、加藤医院史上かつてないほどの変化があった1年だったように思います。
度重なる変更で患者さんにも少なからずご負担、ご迷惑をお掛けしている面があろうかとは存じますが、今後も安心して快適にご受診いただけるクリニックを目指す過渡期とご理解いただけると幸いです。
どうぞ皆様2021年も加藤医院をよろしくお願い致します。


なお新年は5日より診療を開始します(県の要請により29日、30日と発熱患者さんの対応をさせていただいた影響で、1日開始を遅らせていただきました)。
報道の通り、茅ヶ崎も例外ではなくコロナ陽性例は大幅に増えており、当院でも複数の陽性例が出ています。
しかし私の印象では、少なくとも当院で確認した陽性者の多くはやはり接触者で、自身の不注意ではなく、避けられないシチュエーションだった方がほとんどな印象です。

報道では人々のモラルの低下を嘆く声も多いですし、あたかもモラルが低いから感染すると言った論調も聞こえてきますが、私がここ茅ヶ崎で見た限り、ここではそのような方は少なくとも多数派ではなく、大多数の方はしっかりと感染対策を理解し、対応をされているように思います。

そもそも冬は風邪(=ウイルス性急性上気道炎)が流行りやすい季節なのです。
24時間365日引きこもっていない限り、誰だっていつ感染するかわかりません。


どうか感染した方を責めることなく、周りや社会で温かくサポートしてほしいと思います。

そして感染を隠す空気を決して作ることなく、皆さんが体調のトラブルについて気軽に相談できる世の中の雰囲気であり続けることを切に願っています。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.12.09更新

2020年も12月に入り、間もなく悪夢の1年が終わろうとしていますが、相変わらず年の瀬までコロナ、コロナの世の中です。ここ茅ヶ崎でも、都会ほどではないですが連日陽性者の報告が上がっています。

海外ではワクチンの接種が始まり、わが国でも来年には始まるでしょう。ワクチン接種がどのような結果を生むのかは誰にもわかりませんが、1日も早く通常の世界に戻ることを切に願っています(あー、忘年会、やりたかったなあ・・・)

さてまだまだ落ち着かないコロナ禍の中、市中では自由診療におけるPCR検査が注目されているようです。安価で提供できるPCRセンターが街中にでき、予約が殺到しているとの報道もありました。

検査に関しての結果の確からしさという点では、以前にもこちらのブログで触れています。
まずはPCR検査の結果は絶対ではありません。とはいえ、現時点でコロナの診断のゴールドスタンダードはやはりPCRですあくまで医療機関、検査機関で正しく検体を扱い、精度の高い検査機関で行ったものに限ります。安くてもこの部分がいい加減な検査は論外です)。

では自費でのPCR、これってやはり「あり」、なのでしょうか。
テレビや雑誌では相変わらずPCRの議論が喧しいですが、ここらでもう一度冷静に検査の原理を復習しながら、その意義と問題点を考えてみたいと思います。

以前の記事で感度、特異度の説明をした際、特異度を90%と仮定し、偽陽性が多く出る可能性があると書きましたが、実際PCR検査の特異度(=病気でない人を正しく陰性と判断できる確率)はもっと高いようです(つまり病気がないのに陽性となる確率が低い=陽性と出たら病気である可能性が高いということ)。
基本的に微量の遺伝子を増幅して検出するので、ごくごく少量のウイルス遺伝子でもしっかりと拾い上げることができるためです。

それでも100%ということはあり得ないと思います(特異度が100%なら偽陽性は存在しないことになりますが、実際に体操の内村選手など、偽陽性のケースが実際に報告されていることがその証拠です)。これは検体の中に他の検体のウイルスが混入する可能性もあるためと言われています(クロスコンタミネーションと呼ばれ、他の感染症検査でも珍しくない要素です。今の検査の現場はおそらく検査数も多く非常に忙しいため、どんなに対策をしていたとしても混入を完全に防ぎきれない可能性はありえるでしょう)。

とはいえ、特異度は99%かそれ以上はあるとのことですので、ひとまず偽陽性のケースは(ありえることではありますが多くはないと考え)、ここでは置いておきましょう。

自費PCRを受ける方の受診動機は何でしょうか。
おそらく出社や会合に出るために必要である、出社や会合に出るために必要である帰省するために確認したい、高齢者や病気の方と会うときにリスクを排除しておきたい、などではないでしょうか。
となるとやはり自費PCRを受ける方の目的は、多くの場合「自分が陽性であったらどうしよう」ではなく、「自分が陰性であることを確認しよう」というのがほとんどなんだと思います(もちろん例外はあるでしょう)。

検査の動機

しかし、この検査は陽性に出ることに意味がある検査なんだと思っています。

その理由をご説明します。

この検査は特異度が高い一方、感度はそれほど高くありません。

特異度が極めて高ければ、前に書いた通り、陽性と出れば、その人がコロナである可能性はかなり高いといえるわけです(本当にそう言い切れるかどうかはまだ議論の余地があります。さきほどのクロスコンタミネーションの可能性もありますし)

一方感度(=病気の人を正しく陽性と判断できる確率)はそれほど高くない検査でもあります。
例えば感度が70%とすると、病気の人を陽性と出せる確率が70%ということです。つまりコロナの人のうち、30%は見逃すということです。

図で表しましたが、この場合、検査前の確率が高い場合、「陰性だけどコロナである可能性」は上がります一方検査前の確率が低い場合は「陰性だけどコロナである可能性」は非常に少なくなります。

検査前確率

ということは、その人の検査前の感染確率によって解釈を変えなければならないわけです。

ところが検査前の確率はその人その人によって大きく変わります。
例えば濃厚接触者は当然検査前確率が上がります(が、このケースではそもそも「行政検査」となり、費用は公費負担になります)が、毎日飲み屋で感染対策をせずに飲み歩いている人も検査前の確率は高くなるでしょう。
一方買い物以外では出歩かず、常に感染対策を怠らず、周りに風邪をひいた人がいない場合は検査前の確率は低くなるはずです。
当然その中間の人も多くいるでしょう。

これらの人は、それぞれ検査結果の解釈に違いが生まれるはずなのです。
検査前確率が高い人は、結果が陰性でも結構な確率で偽陰性があり得るということです。この状態で陰性だからと安心してしまうのは危険です。
一方検査前確率が低い人は、結果が陰性がでればまあ確からしいのですが、それは検査をしなくても大きな変化はないともいえるのです(検査前確率が低い人が検査でひっくり返る可能性は極めて低いわけですから)。

となると、やはりPCR検査は、「陽性がでてなんぼ」の検査というわけです。
陰性はコロナじゃないことの証明にはならないわけです。ただ陰性の結果を欲しい人にはあまり向いていない検査なのです。

あまり出歩かない検査前確率が低い人は、そもそも検査を受ける必要性が低いわけですし、検査前確率が高い人は、陰性でもコロナである可能性が他の人より高くなるので、その解釈に気を付けなければならないわけです(検査前確率を自ら高める行動をとっている人が、この原理を理解せずに陰性で喜んでしまう事態が一番怖いとも言えます。厳しいこと言うようですが、このような行動をとってしまっている人は自費PCRを受けるべきではないといってもいいのかもしれません・・・)。

この検査前確率はやはり第三者である我々医療機関が保険診療で問診、診察で判断して、陽性の可能性を高めたうえで行うべきだと考えます(検査を絞ろうという意味ではないです。もちろん必要な検査はどんどん出しますよ)。
やっぱり一般の方が自由に受けられてしまう自費PCR検査は、このような面から何かと問題がある気がして、もやもやしている今日この頃です。

というわけで、当院では現在保険診療でPCRを行えるように準備を行っています。従来通り抗原検査もコロナ、インフルエンザ双方とも準備をしており、状況に応じて使い分けるように計画しています。困ったらお気軽にお電話にてご相談ください。

あと、上記の理由にて当分自費PCRは行わない予定ですが、医学は一昔前の常識が非常識となる分野です。今後も柔軟に、その時のベストを考えられる加藤医院でありたいなと思っています。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.11.20更新

新型コロナの患者数が最高記録を更新するという報道が毎日流れており、何だか気が滅入る毎日です。
ここ最近の医療機関の検査体制の充実(当院でも10月からは積極的に自院での抗原検査、茅ヶ崎市検査センターへのPCR検査依頼を行っています)による検査の敷居の低下は陽性者数増加の要因の一つとしてあるとは思います。
ただ当然ながら気候の問題、人の流れの問題など、増える要素はあるわけであり、ここが気の引き締めどころでしょう。
適切なマスク装着、密の回避、手指の清潔など、改めて感染(させないように意識する)予防の基本に立ち返って頂き、メリハリのある対策を行っていきましょう。

なお当院では12月から新しい予約システムを導入します。
詳しくはまた別途お知らせしますが、今までの新患のみならず、再診の方も24時間ネット予約が可能になります。もちろん窓口予約もできます。
そして今後はある程度の診察開始時間目安を来院後にお伝えすることができるようになり、時間がかかりそうな場合は院外でお買い物をしながら時間までお待ちいただくこともできるようになります。今まで通り予約なしで直接来ていただくことも可能なシステムにしておりますが、予約によりお待ち時間が減らせますので、是非新しい予約システムを一度ご利用ください。

もう一つ、明日診療後から月曜のお休み日までの期間を使い、懲りずにまた工事します。今回は受付エリアが変わりますのでお楽しみに。

さて、このブログを始めて以来、雑誌やメディアなどの取材をいくつかお受けしましたが、今までとは趣の異なる方からインタビューのご依頼を受けました。
今回、早稲田大学法学部社会保障法ゼミ様からのご依頼で、新型コロナ感染症対応策についての政策を提言するという課題に対して取り組まれている中で、医療現場の現状をお知りになることで政策提言に生かしたいとの趣旨でした。
このブログをご覧になって、場末の当院にたどり着いたとのことです。
このブログをこのような方々まで読んでいらっしゃるんだなと、少し驚きつつ、若い世代の方々の将来のためならと思い、協力させていただくことにしました。

私もまだまだ(この開業医の世界の中では)若いと勘違いしておりましたが、やはりもうすでに40代(今日もまた1歳余計な年を取りました・・・)、zoomの画面越しでも、年代の果てしない距離をひしひしと感じたことをここに記しておきます。

今回は実際の医療現場において我々が直面していることについてのご質問でしたが、このことをブログで発信し、皆さんに知っていただくことも一つの意義になるのではと思い、その一部をここにも載せてみることにしました(以下の記載はあくまで私個人の経験、意見です)

① 現場で困難だったことは何でしょうか?
A.3-4月当初のマスクやガウンなどの消耗品の入荷不足、値段の高騰は大きな影響がありました。今後いつ品薄が再燃するか、常に気がかりです。
またクラスターが発生した場合に施設名を名指しで発表されてしまうと、当然クリニック運営に対しては致命的な打撃となります(ほかの業種ももちろん同じでしょう)。このことにより医療施設が萎縮したことも、軒並み発熱患者を受け入れなくなった一因かと思います。そのため一部の発熱患者を診療する医療機関に殺到して、職員、患者に更なる不安を与えてしまったように思います。クラスターつぶしは必要なことですが、私個人としては、マスコミで施設名まで殊更大きく発表しなくても十分可能なのではと思います。

② 貴院がもし政府の手を借りることができるとしたら、どのような施策を希望しますか?
A.一番は仮に院内感染がおこった場合の行政のサポート(職員の雇用維持や家賃の補償など)です。実際の収入減に対するサポートはありましたが、何か今後起こる困難に対するサポートが不十分です。これがしっかりしていると診療に対する危機感は薄まり、おそらく発熱診療に手を挙げる施設も増えるように思います。また前述の通り頑張って発熱患者を受け入れているところをさらし者にしないでほしい。とにかく発熱患者を診ることに対するネガティブな要素を取り除いてもらうことが一番大事です。

③ 初期に感染者の出た地域に物資や人手を集約するという施策を考えるとして懸念等はあるでしょうか?
A.通常医師、看護師には、勤務地のテリトリーがあります。医師が持ち場を離れると、担当患者を診る医師がいなくなり、そこに対する手当が必要になります。自然災害のようにある程度援助すべき場所と期間がはっきりわかっていれば、そこを何とかやりくりすることもできるが、今回のような場合はいつまで続くか、どこに集約すべきかというのが見通せないため、現実的には難しいのではないでしょうか。物資に関しても、現在流行地でないところには感染対策器具が必要ないわけではない(むしろ世間からの圧力により、新たな流行元になってはならないと考えるでしょうから、それらの需要はむしろ高まるかもしれません)ので、集約させることは難しいのではないでしょうか。

④ マスコミや政府の発表と現場での体感で乖離している事柄があればお聞きしたいです。
A.PCR検査は(少なくとも現在の当地では)それほど敷居の高い検査ではなく、我々が必要あると考えれば受けることはそれほど難しくありません。おそらく敷居が高いといわれている一つの要因としては、検査が必要なのにできないということでなく(もちろんそういうケースもあったのでしょうが)、そもそも検査が必要ないと医療者が考えて検査を出さないというケースも少なくないからかもしれません。一般的な検査の感度、特異度を考えた場合、臨床的判断がない状態で検査を行ってもこちらを参考に)、その検査の結果が診断の確からしさを上げることには寄与しにくく、むしろ偽陽性、偽陰性を生み出すリスクが出てきます(無症状の選手たちに連日検査を行い偽陽性となった体操の内村選手がよい例です)。また現在でもコロナPCR検査におけるはっきりとした感度、特異度は未だ明確ではなく、検査結果の確からしさを推測することさえ難しいのが現状です。

⑤ 院内感染の予防策をいくつか教えていただきたいです。
A.当院では来院時の手指消毒、飛沫感染予防のための受付のアクリルパーティション、患者さん同士の感染を避けるためのパーティション、定期的な院内アルコール消毒、発熱患者さんと一般患者さんの動線分離、予約システム導入による待ち時間減少、屋外での検体採取、診察時のマスク、手袋、ガウン装着、診療開始時間の目安の提示(一旦外出させることが可能)などを行っています(今後実施予定のものを含む)。

⑥ 医療従事者目線から、新型コロナウイルスの感染拡大対策はどこで何をすべきであったと考えますか?
A.一般的にはコロナ感染症は飛沫接触感染と考えられます。通常特殊な環境でない限り空気感染は起きないといわれています(いろいろ説は出ていますが、もし空気感染がおこりやすい感染症であれば感染者数はこんなものではないはずです)。また症状発症前や無症状患者からの感染を示唆されています。つまり大事なのは適切なフィジカル、ソーシャルディスタンスであり、やはり密の形成を避けることは理にかなっています。また感染可能性のある場面での正しいマスク装着は非常に大事だと思いますが、逆に屋外で街を歩く程度ではマスクの必要性は低いかもしれません。

⑦ オンライン診療等あれば院内感染を防げたと考えているのですが、オンライン診療の障壁等あれば教えていただきたいです。
A.私個人の考えとしては、今の回線品質では、顔色なども十分に反映せず、もちろん触ったり音を聞いたりの診察、各種検査はできません、画面上で本人の顔を見ても、得られるのは多少の安心感だけで、その画面からはほとんど有益な情報は得られないように思います。現状のオンライン診療から得られる情報はあくまでも問診の情報のみにとどまるので、受診を迷う患者の相談窓口としては機能するかもしれませんが、処方もいわゆる対症療法しかできません(風邪診療の方法についてはこちらから)。つまり現時点では使い道はないわけではないものの、対面診療の代わりにはなりえないと思います。

⑧ 病床数が不足していた際に、例えば政府がより多くのホテルを病床として確保するという施策は解決になりえるでしょうか?
A.ホテルを病院の代替として利用することは難しいのではないでしょうか。医療器具などが揃っていないので患者の十分なケアを行うことができません。また急変があった場合、患者からの直接の申し出がないと医療者も気づかないので、見逃してしまうリスクもあります(病院なら看護師が定期的に巡回して、状態悪化があればバイタルモニターを装着します)。あくまで隔離施設としての活用に留まるのではないかと思います。


正直今私は発熱患者さんの入り口の役割を演じており、現在コロナ治療の最前線に立っているわけではありません。ですので最前線の実情を見られているわけではありませんが、1年半前までは呼吸器専門医として各種呼吸不全の病態に対峙し、またインフェクションコントロールドクター、院内感染対策部門担当として何度もアウトブレイクに対応した経験、それを今でも戦っている先輩方、我々から受け継いだ後輩たちから伺う現況から、今最前線で起きていることを推測してお話ししました。
とにかく私個人もこの立場でできることを精一杯頑張るので、最前線の皆様たちも是非頑張ってこの難局を乗り越えていってほしいと思っています。

そして、今回インタビューを申し込んでいただいた早稲田大学法学部の皆さん、ありがとうございました。答えのない課題だとは思いますが、頑張って皆さんなりの最適解を導いてください。そしていっぱい考えることで成長し、私たちの次の世代として社会を支える人材となれることを期待しています!

 

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.11.03更新

ここ1か月ほどブログがご無沙汰になってしまいました。

理由は2つ。一つはインフルエンザワクチン接種で多くの方にご来院いただき、非常に多忙となってしまったためです。
今年はワクチンの入荷が早く、また早期から接種を希望される方が非常に多かったため、10月のワクチンの接種数が例年よりもかなり多くなりました(当院でも10月は、昨年の約5倍の方にワクチン接種を行いました)。
大変申し訳ありませんが、当院のワクチン在庫も例年とは傾向が異なっているため皆様のご希望に沿えない場合もあるかもしれませんが、最新情報は逐一こちらのページで発信致しますのでご参照ください。


もう一つが講演会の準備でした。10月30日に茅ヶ崎寒川薬剤師会とコラボをして、吸入指導連携セミナーの講演をしてまいりました。少数の医師、薬剤師の先生方に現地でご来場いただいた上で、その他の多くの先生にはオンラインでご視聴いただきました。

茅ヶ崎寒川吸入指導連携セミナー

今回は新しい試みとして、いろんな種類の吸入器具を大量に現地に持ち込み、吸入薬の使い方のコツ、患者さんがミスしやすいところを実演し、それをオンラインで配信するという方法でやってみました。回線速度に限界がありやはりやや見にくい面はあるようでしたが、予想以上の人数の先生方にご視聴いただき、また講演後はありがたくもご評価の声を多く頂くことができました。
現地にご参加いただいた先生方、オンラインでご視聴いただいた先生方、この場を借りて御礼申し上げます。誠にありがとうございました。

講演1

講演2

 

さて、今回はその吸入薬の中で、ブリーズヘラーについて取り上げてみましょう。吸入薬の落とし穴シリーズ第三弾です。

ブリーズヘラーは、今までは主にCOPDの治療に用いられている「ウルティブロ」「オンブレス」「シーブリ」に用いられる器具です。ここにこの8月、喘息に用いられる薬剤として「エナジア」「アテキュラ」が加わり、全5種類となりました。
特に「エナジア」は、ステロイドと、β2刺激薬という気管支拡張薬の配合に加え、新たに抗コリン薬というタイプの気管支拡張薬も一緒に配合された、本邦初めての3種配合の喘息治療薬となります(他にも3種配合の吸入薬はすでにありますが、現時点ではCOPDのみに使える薬剤です)。
1日1回の吸入で済むこともあり、今後なかなか症状のコントロールが難しい重症喘息の方に良い選択肢になるのかなって思います。

ただ、やはり何度もこちらで触れている通り、吸入薬は使い方が大変重要です。間違って使ったらどんなにいい薬でも効きません。
さて、この吸入器具にはどんな落とし穴が待っているのでしょうか。

この薬剤は下のような器具にカプセルを入れて、横のボタンを押すと出てくる針でカプセルに穴をあけ、それを吸い口から吸うという薬剤になっています。

ブリーズヘラー

まずはカプセルを取り出すときの注意点です。実は上の5種類の薬剤で、「オンブレス」という薬剤だけは通常のフィルムと同様、押し出してカプセルを取り出します。そしてその他の薬剤は、フィルムを剥いて取り出します。このカプセルの取り出し方を間違うとカプセルが潰れてしまい、使えなくなってしまうので、よく説明を確認して取り出しましょう。

ブリーズヘラー

また器具の中にセットした後、横のボタンを押して、それによって出てくる針でカプセルに穴を開けるわけですが、穴を開けずに吸ってしまったら全く薬は出てきません。
それと、ボタンは左右ともあるので、両方とも押すことでカプセルの左右両方から針が出てきて穴を開けられます。しかしか片方しか押さないと穴も片方しか開かず、中の粉がうまく出てこなくなります。
一方吸入するときにはボタンを離さなければなりませんが、ボタンを押したまま吸入すると、当然カプセルは串刺しのままになるので全く薬は出なくなってしまいます(実際に時々見かける落とし穴です)。

ブリーズヘラー

あとは、この器具は、吸うとカプセルが中でカラカラ音を立てて回りながら中の粉末が気道に吸われていくので、そのカラカラカプセルが回る音が鳴ることがうまく吸えた合図になりますが、その音が鳴らないまま吸入を終えてしまうと粉が出てきません。
うまく吸うには少しコツがいる場合がありますので、うまくいかない場合は、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。

ブリーズヘラー


最後に、このカプセルは当たり前ですが飲んではいけません。他の内服薬とつい一緒に飲んでしまわないよう、間違わないようにしましょう。

いままでご紹介した他の器具に比べ、吸えていることが自分で確認できるなど、わかりやすさを追求した吸入器ですが、やはり落とし穴はいろんなところに散りばめられています。
わからないことは何でも遠慮なく聞いて使用するようにして下さい!

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.10.07更新

10月からインフルエンザの予防接種を開始しております。
今年のインフルエンザ予防接種はいつもの年とは運用が変わっております。
昨年と大きく変わっていることでいろいろとご不便をおかけしているとは思いますが、なるべく院内での密を回避し、安心してご受診いただけるようにとの策です。どうかご理解いただきますようよろしくお願い致します。

さて今回は吸入薬の落とし穴シリーズ第二弾、タービュヘイラー編をお送りします。

タービュヘイラーは、主に喘息の治療薬であるシムビコート、パルミコート、COPDに対するオーキシスに使われている器具です(シムビコートの後発品であるブデホルという薬剤も、タービュヘイラーに近い器具ですが、厳密には異なるもののようです)。
ここではおそらく一番使っている方が多いであろうシムビコートに焦点を絞ってお話ししてみます。

シムビコート

まずタービュヘイラーの使い方です。

この器具もエリプタと同様、パウダーを吸うタイプの薬剤です。
下の丸い円盤を一度半回転させ、それを戻すことで(クルッカチッ)1回分の薬が充填されます。充填された薬剤を勢いよく吸い込むことで薬剤が肺へ届きます。

この吸い方のコツ、落とし穴はエリプタと共通しています。すなわち吸入する力が弱かったり、吸入時間が短いと、しっかりと肺に薬剤が届きません(シムビコートはパウダーの粒が比較的小さく、一度吸い込むと肺の末梢まで行き渡りやすいといわれているので、すべての方の息止めは必須ではないようです)。

次に円盤の回し方です。
円盤の回し方
この薬剤は円盤を回すと上のタンクから薬剤が1回分落ちてくる仕組みなのですが、しばしば図のように傾けて回してしまうことが少なくありません(これ、自分でもやってみたのですが、立てて回すのって結構意識しないとできないもので、無意識にやると誰もが傾けたり倒したりしながら回すだろうなあと思いました)。

傾ける
傾けると当然1回分の薬剤が充填されない可能性があるので、治療不足に陥ってしまうリスクが出てきます。

またシムビコートはステロイドと気管支拡張薬のパウダーが配合された薬剤です。
同じものに前回お書きしたレルベアやアドエアなどがあります。レルベア、アドエアは症状の強さによって、それぞれ強さの異なる剤型が用意されています。
一方シムビコートは1種類しかありません、ではどのように症状の強弱によって調整するのかというと、1回の吸入の回数を増減することによって行っています。

そこでときどき起こる勘違いです。
例えば1回に2吸入してくださいと指示があった場合、正しくは一度円盤を充填してから(クルッ、カチッしてから)吸入するという動作を2回繰り返すのですが、クルッ、カチッを2度続けてから吸入する方がいらっしゃいます。
2度クルッ、カチッとやると、1回目に充填された薬剤はキャンセルされてしまうので、治療不足に陥ってしまいます。

また、タービュヘイラーには上下部に吸気口があります。

吸気口位置
吸ったときにここから外気を取り入れることで空気の流れを作るのですが、吸うときに指で下部吸気口を塞いでしまうとうまく薬が流れません。

吸気口塞ぐ
一方吸うときに唇を浅く加えると、十分な吸気になりませんが、逆に深く加えすぎると、今度は上部にある吸気口を唇で押さえてしまうことがあり、この場合も薬が出なくなってしまいます。

くわえ方


最後に、この器具、振るとシャカシャカ音がします。
これは薬の音ではありません。中に乾燥剤が入っているためです。
ですので薬を使い切って空になってもシャカシャカ音がしますので、これを「薬が残っている」と勘違いしないように気を付けましょう。

この器具は吸入が一見簡単そうに見える器具なのですが、落とし穴も少なからずちりばめられています。不安な場合はぜひ処方医や薬剤師にお聞きください。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.09.20更新

茅ヶ崎もようやく猛暑から解放されて、少し過ごしやすい季節になってきました。
しかし昨年にもお書きした通り、この時期は、実は喘息が悪化しやすい時期です。
季節の変わり目であり温度、湿度が変化しやすい時期であるうえ、ダニアレルギーのピークとなる時期でもあります。

特に毎年この季節に咳が出やすい方は要注意です。
急激な悪化をきたす前に早めにご相談いただくことをお勧めします。


さて、当院は9月20日から5日間のお休みをいただいております。
この時期より、当院は順次大きなリニューアルを行って参ります。

一つ目は施設の改装です。

メインはトイレの全面改装です。設備が古くなってきたことに加え、このコロナ禍でなるべく感染リスクを減らすように、手洗いの水栓をタッチレス化、また今まで分かれていた手洗い室とトイレのスペースを一体化します。
合わせてより開け閉めしやすい診察室の扉の導入、受付の荷物置き台の新設、待合室に柔らかな光を取り入れるロールスクリーンの導入を行い、皆様によりご利用いただきやすいクリニックにしてまいります。


二つ目は通常受診の患者さんと発熱など感染症が疑われる患者さんの動線の一層の分離と、冬に向けての発熱患者さんの診療、検査体制強化に向けたレイアウト変更です。

具体的には今まで点滴、処置用として使用していた診察室裏のスペースを、全面的に模様替えしております。
また当院でも新型コロナの抗原検査が実施できるように運用面での調整を行っています。
こちらは9月中に完成する予定ですので、完成次第HPでお伝えしようと思います。

また今年度のインフルエンザ予防接種を10月1日から開始する予定です。
以前のブログでもお伝えしたように、コロナ禍の収まっていない今年は特にインフルエンザ予防接種を受けていただくことが重要となります。

当院に通院されている方は、昨年と同様、診療時に随時お受けいただくことができるように致します。

また当院に通院されていない方で、接種をご希望の方には以下の方法をご用意することといたしました。

① 月、水、金の14時から14時15分までの間に、完全予約制のインフルエンザ予防注射専用受付枠をご準備いたします。
現在のところ1日10名までお受けし、インターネット予約専用ページ、もしくはお電話で予約をお受け致します(予約専用ページについてはこちら)。
この時間は通常診療の方はクリニックにお入りになりません。また待ち時間も少ないと思われますので、他の患者さんとの接触をできるだけ避けたい方はこちらの枠をお使いいただくことをお勧めいたします。

② 通常の診療時間帯でもインフルエンザ予防接種をお受けいたします。
但し混雑予防のために、当院おかかりつけでない方は必ず事前にお電話でお問い合わせください。なるべく混雑の少ない時間でご案内する予定です。
お電話を頂かずに直接お越しになった場合は、かなりの待ち時間となる可能性がありますので、御協力を宜しくお願い致します。


三つ目は、現在、そして今後の院内混雑回避、感染リスク低減です。

当院に受診いただく患者さんの急増により、現在受診していただいている患者さんの皆様には、ここ最近の混雑で大変ご迷惑をお掛けしております。
先日椅子の入れ替えを行いました(スタッフブログもご覧ください)が、今後この椅子の間にアクリルパーティションを設置いたします。お座りになれる患者さんを増やしつつ、感染リスクを低減するレイアウトを導入いたします。

またもう少し後になりますが、更なる混雑回避のために、新規予約システムを導入する予定です。
初診や再診の方が今まで以上に予約しやすく、一方今まで予約なしで直接来院されていた方にもなるべくご負担をお掛けしないシステムを考えております。
とは言え、当初は運用面で慣れないこともあるかと思いますので、多少の面はご容赦いただければ幸いです。


今年の冬は、当院にとっても初めて経験する冬です。
至らない点も数々生じるとは思いますが、スタッフ一同全力で、当院にいらっしゃる方が少しでも快適に受診できるよう、できる限り最善の診療体制を作ってまいります。



引き続き新しくなる加藤医院をよろしくお願い致します!

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

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