医師ブログ

2021.05.04更新

遅ればせながら、茅ヶ崎でも一般高齢者の方への新形コロナワクチン接種の準備が進んでおり、今月末ごろから当院でも接種が開始できる予定です。

当院では現在、通院中の方にワクチン接種のご希望をお取りしています。
当院での接種をご希望の方から、リスクや年齢を考慮しながら当院の責任で接種順を決定させていただいております。

→当院の新型コロナワクチン接種ついて

今回のファイザー社の新型コロナワクチンはインフルエンザワクチンとは違い、1バイアルから6人分採取(インフルエンザワクチンは2人分程度)との人数的制約一般冷凍庫で2週間、解凍後5日間、分注後6時間などとの時間的制約がとにかくキツいので、接種体制が複雑にならざるを得ません。
加えて並行して行う通常診療と、6月からは特定健診事業も始まるなど、とにかくファンキーな未来しか想像できません。
それでも今からアタマとカラダと財布を精いっぱい使って、少しでも来院される皆さんがスムーズに診療、接種を受けていただけるような運用を目指していきたいと思います。

これに先立ち、ようやく我々医療従事者のワクチン接種も開始されました。
当院スタッフにも先日1回目の接種を実施しました。


加藤先生も
加藤先生ワクチン接種


私も
浅井院長ワクチン接種

というわけで今回は、今後接種される皆さんの参考になればと、我々のコロナワクチンの接種レポート第1弾をお送りしたいと思います。

私たちは4月23日午後6時ごろに接種を行いました。

ご存知の通り、このワクチンは筋肉注射で行います。
イメージとしては痛そうな筋肉注射ですが、実は理論上は筋肉注射の方が痛くないとされています。
垂直な分、知覚神経が多く分布する皮膚に近いエリアを最短距離で突っ切ること、筋肉には痛みを感じる知覚神経が少ないことが理由とされています。

でも、実のところ、私たちの多くは、筋肉注射をされた経験がありません。
そして・・・今回使用する(ワクチンと同時に配られる)針、結構長いんです。
針の長さは25mmあり、これを垂直に差すわけです。結構インパクトあるなあ・・・

ワクチンシリンジ針

まあしかし、これにもしっかりと根拠はあるわけです。

統計上ほとんどの場合、BMI18-19以上の方では25mmの針をしっかり垂直に刺すと、しっかりと三角筋の中に到達し、かつ骨には届かないとのことだそうですNakajima Y,et al.Hum Vaccines Immunother.2020;16(1):189-196 
ちなみにこれ以上やせている方の場合は16mm程度の深さとし、男性118kg、女性90kg以上の方では38mmの針を用いることを検討するそうです。

というわけで、私たちも推奨されているように25mmの針をしっかりと垂直に、奥まで刺しました。ブスッ。

あれっ、痛くない・・・

そう、感想としてはホントに痛くなかったんです。
当院スタッフの間でも、刺されたときにチクッと感じたスタッフが数名、中には少し痛いという人もいましたが、刺されたことに気づかなかったという人も複数いました。
あと、皮下注で行うインフルエンザワクチンの時は、薬を注入するときに痛みを感じますが、筋注のコロナワクチンでは、確かに注入時の痛みはほとんど感じませんでした。
やはり理論通りです。

さて、これからは打った後の経過です。
以前のブログでもお話しした通り、このワクチンは打った後の副反応が比較的多いと言われています。
ですので、まずは私のその後の経過です。

打った直後は特に変化はありませんでした(スタッフも全員アレルギー反応などは起きず、いつもと変わらない様子でした)。
が、帰宅して2-3時間経つと、軽度の接種部位の違和感を覚えるようになりました。
インフルエンザでも打った後には接種部位の痛みを感じますが、この時は腫れた感じの痛さを感じます。一方新型コロナワクチンではやはり薬剤の到達部位の違いでしょう、外から見た脹れはないものの、筋肉が重い感じで違和感を覚えます。
で、当日はこれ以上の悪化はなくそのまま就寝しました。

翌日(2日目)朝、やや痛みが強くなりました。
起きた時に接種した腕を下にすると、あっ、痛いって感じるくらいです。
また少し重いものを持つと痛みはありましたが、腕は上まで挙げられる程度です。

昼になり、多少のだるさを感じました。
とはいっても全身のだるさではなく、私の場合は首から肩にかけてのだるさといった感じで、日常生活には問題あるレベルではありませんでした。
夜には腕の痛みはやや引いてきて、翌朝(3日目)にはだるさは消失、筋肉の違和感は多少残っていたものの、昼にはほぼ消失し、いつも通りになりました。

ただ経過はやはり人によりいろいろなようでした。
下のグラフは当院スタッフの接種後の経過を記録してもらったものをグラフ化したものですが(わかりにくくてすみません・・・)、やはり人によってさまざまでピークがその日の夜に来た人もいれば、24~36時間経過してからピークが来る方もいました。
今回の当院の接種者は20~60代で、今回の接種ではあまり年齢と副反応の強さは関連がない印象でした。

ワクチン副反応1回目
というわけで、翌月曜の診療は通常通りに行えました。
しかし、3週間後に2回目の接種が待っています。
このワクチンの副反応はご存知の通り、2回目に強く出るケースが多いと言われています。
今回の副反応の出方を見て、診療になるべく影響がないようにスケジュールをするつもりなのですが、果たしてうまくいくのか・・・?

次回は2回目接種後のレポートをしてみたいと思います。

というわけで、念のため、5月17日(月)の外来予約は、申し訳ありませんが上記の理由によりあらかじめ通常より枠を減らさせて頂きました。
ただ私自身はどんなにしんどくても医院は開けるつもりでいます。


もし診察室で私が、そして医院内でスタッフがしんどそうにしていたら・・・お察しいただけますと幸いです(笑)

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.04.18更新

トップページにも掲載しておりますが、当院は新型コロナワクチンの接種開始に向けて動き始めています。
当院は一般高齢者の方と、近隣の医療従事者の方へのワクチン接種を行います。
ワクチン供給数、接種体制を考え、一般高齢者向けは、当面の間は当院かかりつけの方のみに限定させていただくこととしました(詳しくはこちらをどうぞ)。
医療従事者の方はこの限りではありませんので、今後開始される神奈川県の予約システム稼働開始をお待ちください(詳しくはこちらをどうぞ)。

というわけで、いよいよ接種開始間近のワクチンですが、いざ始まるとなると不安になる方も多いようです。

特に「私は打っていいの?」という質問が多く寄せられています。

とりあえず接種開始に向け、今回は「私は打っていいの?」という疑問にお答えしてみようと思います。
ややこしくなるので、今回は「私は打った方がいいの?」「ワクチンって大丈夫なの」という議論はしません。ワクチンそのものについての情報については以下をどうぞ。

2021.2.11 いよいよ新型コロナワクチン接種開始! ~ところでコロナワクチンってどんなもの?~

もちろんまだわからないことも多く、また医学に絶対はありませんが、ひとまず現時点でわかっていることがここにまとめられていますので、この中から疑問の解消になりそうな部分をいくつか抜粋して紹介しましょう(なおThe New England Journal of Medicine(NEJM):「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」は、医学系雑誌の中で最も歴史が長く、最も有名な雑誌です。ここに掲載されている情報の信ぴょう性は医学界では一般的に非常に高いと言われており、我々もコロナに限らず普段から多くの最新情報をこの雑誌から学んでいます)。あくまで今回の内容はこのNEJMに記載されている情報が基本となります。

Q1:「私は打っていいの?」
A1:このワクチンを絶対打ってはいけない人(「禁忌」といいます)は、過去にこのワクチンでアナフィラキシーなどの重度のアレルギーを起こした人(今回は誰もがはじめてこのワクチンを打つので、つまり1回目で反応を起こしてしまった人)、またこのワクチンに含まれている添加物である「ポリエチレングリコール」、またこれと交差反応を起こしうる「ポリソルベート」に重度のアレルギーを起こしたことのある人だけです。
「ポリエチレングリコール」は他にも軟膏剤や化粧品、食品(乳化剤として)など、日常的に多く使われています。また大腸内視鏡検査で用いる下剤(ニフレック®)はまんまこれです。
また「ポリソルベート」様々な薬の添加物に加え、インフルエンザワクチンや13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー)、ロタウイルスワクチン、ポリオワクチンなど様々なワクチンに含まれていますワクチン接種後に熱が出た、だるくなった、強く腫れた程度の症状は重度のアレルギーには該当しません)。

つまりこれらに対しアナフィラキシーなどの重度アレルギーが起こったことがある人以外は、すべて「打っていけない」人ではないということが言えます。

Q2:「っていっても、私アレルギーあるんだけど、本当に大丈夫?」
A2:アレルギーを持っているだけではワクチンを打てない理由にはなりません。
上記の添加物以外のアレルギーは問題視されません。つまり食物アレルギー、花粉症、喘息などのあるなしには関わらないということです。
ただしアレルギーを持っている方は接種後15分ではなく、念のため30分の経過観察が勧められます。

Q3:「私は癌にかかったことあるんだけど・・・本当に大丈夫?」
A3:癌を持っていたり、免疫を抑制する薬を飲んでいたりする方は新型コロナの重症化リスクが高いため、できれば接種したほうがいいです。
ただし、これらの人のデータが少なく、安全性や効果のデータは少ないのが現状です。
また免疫機能が低い方では、理論上有効性が低くなる可能性があります(あくまで推定です。データはありません)。

Q4:「何か症状があったらワクチンは打てないの?」
A4:基本的に急性疾患にかかっている方は接種を延期する必要があります。
つまり風邪をひいたり、37.5℃以上の発熱をきたしている方などです。
ただし、この症状が慢性的にある方はこの限りではありません。例えばCOPDの方の咳や呼吸困難、炎症性腸疾患の方の慢性胃腸症状などです。

Q5:「コロナにかかったことあるんだけど、打った方がいいの?」
A5:結論から言えば打った方がいいです。
新型コロナにかかっても、3か月以降は再感染するリスクがあります。かかってから3か月以上経過してから、ワクチンを接種することが推奨されています。

以上、今回はコロナワクチンの疑問の中から、「私は打っていいの?」という部分にフォーカスを当てて情報を載せてみました。
あくまでも任意接種ですし、強制されるべきものではないと思いますが、やはり客観的なデータや分子生物学的な原理から考えると、それほど危険なものとは思えないという印象は持っています。
現時点では、ファイザーのワクチンに関しては、他のワクチンで騒がれている「血栓症」の目立った報告もないようです(因果関係不明の死亡例は某週刊誌が大騒ぎしていますが・・・)。

ワクチン接種も近くなり、ワクチンの情報量も増えてきました。
中には信用性の低いデータや、個人の主張にとどまる情報も少なくないようです。
接種するにせよ、しないにせよ、とにかく信用度の高い情報を正しく理解することで、皆さんが十分納得して判断をしていただければと思います。

私どもも、もうそろそろワクチンが回ってくるようです。私は接種しようと思っていますので、接種したらそのレポートをまたこちらで行いたいなと思います。

あとご報告。
懲りずに行った院内改装工事第4弾が終わりました。
今回はレントゲン室の前、呼吸機能検査エリアから第3診察室入口、処置室(現発熱外来連絡口)入口エリアまでの壁塗装です。
以前はあまり患者さんが入るエリアでなかったため、だいぶ年季が入ったままの状態でしたが、今回ツートンカラーに塗りなおし、だいぶ明るい印象になりました。

 壁塗り替え

壁塗り替え

壁塗り替え


ひとまず予定していた今回の改装工事は一旦完成です。が、古くなっている部分もまだ多く残っており、そのうち続きをやるかもと考えています。改装マニアの方、次回まで今しばらくお待ちください(笑)

 

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.04.01更新

今日から4月、新しい年度の始まりです。

私も本日で加藤医院に赴任し、丸2年が経ちました。
下の図はこの2年間での、1日に当院にご来院頂いた患者さんの数ですが、おかげさまでこの2年間で多くの方々に新しい加藤医院を知っていただき、呼吸器、アレルギー症状にお困りの方をはじめとした多くの患者さんにご来院いただきました。

患者数


と同時に、ご来院いただく方の増加に伴い、混雑でご迷惑をお掛けしております。
昨年12月から新予約システムが始まり、徐々に混雑状況は改善していますがまだまだ改善の余地があります。
いろいろとデータも集まり傾向も見えてきましたので、このデータを活かし更なるサービスの改善に努め、一人でも多くの患者さんにご満足いただけるよう、3年目も職員一同精進したいと思います。
2021年度の加藤医院も引き続きよろしくお願い致します。

さて、前回は花粉症の市販薬についてお話ししてみました。
鼻水、鼻づまり、咳などの症状が出た場合、ご本人が花粉症と認識している場合は、前回の花粉症薬を使われるケースが多いですが、本来これらの症状は風邪と見極めることが簡単ではありません。
患者さんとお話しをしていると、かなりの割合で風邪薬を多用されている患者さんもいらっしゃることが分かりました。

そこで今回は、風邪薬、その中でもよく利用される総合感冒薬について、その特徴、注意点についてまとめてみようと思います。

風邪には実に様々な症状が現れますが、総合感冒薬は、その中でも頻度の高い症状に対し、だいたい対応できるようにしたものです。
そこで今回はその総合感冒薬を考えるにあたり、Google検索で「風邪薬」と検索し、1番目にヒットした第一三共ヘルスケア社の「新ルルAゴールドDX」を例にしてみましょう。
この薬剤は解熱鎮痛薬としてのアセトアミノフェン去痰薬としてブロムヘキシンアレルギー性鼻炎症状を抑える抗ヒスタミン薬抗コリン薬、抗ヒスタミン薬の副作用による眠気を抑えたり疲労感を回復させるための無水カフェイン咳を抑えるための中枢性鎮咳薬気管支拡張薬喉の腫れを抑えるためのトラネキサム酸など、実に多くの薬剤が配合されています。

これらは、正しい使い方をしていれば、典型的な風邪症状に対して効果を期待できます

ただ、やはり注意しなければならない点もあるのです。

まずは含まれる薬剤が多いことのデメリットです。
上に書いた薬剤は、あくまで症状を和らげるための「対症療法」薬です。一つ目はつまり、その症状がなければ、その薬剤は「ムダ」ということになってしまいます。
また似たような症状でもこれらの薬を使わない方がいい場合もあります。
例えば咳に対して中枢性鎮咳薬が含まれていますが、これはどんな原因の咳も、脳の咳中枢に働きかけて止めてしまう効果があります。
咳には痰の少ない乾いた咳と痰の多い湿った咳がありますが、痰の多い湿った咳は、その痰を出すために咳反射が起きています。
この咳を無理やり止めてしまうと、出すべき痰が出なくなり、かえって苦しくなってしまうことも起き得たりするのです。

二つ目はこれらの薬に含まれている薬剤の量です。
「新ルルAゴールドDX」で見てみると、抗ヒスタミン薬は通常処方で出される量の半分トラネキサム酸は20~60%程度のようで、やや抑えめに入っていることがあります(とは言っても「新ルルAゴールドDX」は比較的それぞれの薬剤がしっかり配合されている印象を受けました)。
もちろん各社しっかり計算したうえで配合していると思いますが、やはり診察なしで買えることもあり、安全域を広めにとっているのではと思います。

三つめは、これらの薬剤にやや古いタイプの薬剤が配合されていることがあることです。
例えばアレルギー性症状を抑える、ここに入っている抗ヒスタミン薬であるクレマスチンという薬剤は、「第1世代抗ヒスタミン薬」というカテゴリーに入り、眠気が強く出やすいといわれています。
そのためにわざわざ眠気を抑える「カフェイン」が入っている訳です。
一方処方薬では、そもそも眠気の少ない「第2世代抗ヒスタミン薬」が主流となっています(アレルギーに特化したOTC薬にも第2世代の薬剤はあります)。
第1世代はキレの良さがあるため、あえて選ばれているのかもしれませんが、長く使うにはやはり適していませんし、運転をする方にも使用できません。

最後に、これだけ多くの薬剤を含んでいることは、使ってはいけない人がそれだけ増えることも意味します。
例えばアレルギー症状を抑えるために配合されている抗コリン薬の影響で、前立腺肥大症や高齢の方に尿が出せなくなる症状(尿閉)や、自覚のない緑内障をお持ちの方に急性発作を起こすリスクはあります(眼科医にしっかり診断、治療されていれば大丈夫です)。
また「ルル」ではないのですが、解熱鎮痛薬として「イブプロフェン」を含んでいる薬剤は、一部の喘息の方(アスピリン喘息)では、大きな発作を起こす可能性があるので注意が必要です。

 

これらのように、総合感冒薬は、それなりに押さえておかないといけないことも多い薬剤です。
ただ通常短期間で使用するのであれば大きな問題にならないことも多いと思います。なにより医療機関を受診することなく、薬局ですぐに手に入るのは大きなメリットです。
(漢方は別として)風邪を治すことは医師でもできません。あくまで症状を和らげることです。そのような意味では総合感冒薬は十分その代替になります。

ただ、風邪として非典型的である場合(咳がやたらと強い、頭痛が激しい、症状の経過が1週間以上などと長いなど)の場合は、もちろん原因検索のため、そしてその症状によりピンポイントで対応できる処方薬を服用するために、医療機関の受診を検討していただきたいこともあります。
そのためには、気軽に受診できる、かかりつけ医にすぐ相談できることが、症状の重症化を防ぐ大事な対策になるのです。


ましてやこのコロナ禍、いろいろと体のことで不安になることも多いものです。
今こそ、ささいなことでも気軽に相談できる、信頼できるかかりつけ医を是非持っておいてください。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.03.21更新

ようやく本日で緊急事態宣言が終了します。
しかしここ茅ヶ崎でも、まだ散発的にコロナ陽性患者さんは出ております。
やはり毎日診察していて感じるのが、他人と接触しやすい環境にいる方が陽性になるケースが多いということです。
当院では接触歴が思い当たらない方はほぼ陰性になっています。
やはり距離をとる、長時間の密室空間を避けるなどの基本的な対策が有効であると思いますし、それさえできていれば過剰な心配をする状況でもないと思います。
茅ヶ崎の高齢者ワクチンの開始は5月になりそうですが、徐々に出口もぼんやりながら見えてきていると思っています。

一方やはり事前の予想通り、花粉のほうはデータを見てみても昨年よりは飛散量が多いようで、昨年よりも症状が強くなってしまった方が多いようです。
今年は当院にも例年より多くの方がアレルギー症状でいらっしゃっています。


花粉飛散量

環境省HP「神奈川県環境科学センター(平塚市)の花粉飛散量」より

 

ただ昨今、ドラッグストアなどに出ている花粉症の薬剤もだいぶ種類が増えてきました。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる、処方箋で出していた薬と同成分の薬剤も店頭に並ぶケースが増えてきています。

そこで今回は花粉症に対し使用するお薬について、市販薬と処方薬の違い、市販薬を使用する際の注意点をお話ししようと思います。

 

まずは内服薬です。
アレルギーの薬として、基本薬となるのが「抗ヒスタミン薬」です。
これは、アレルギーの症状のもとになる「ヒスタミン」がくっつく細胞のヒスタミン受容体をブロックする薬剤です。

ただこの「ヒスタミン受容体」は脳にもあり、脳の覚醒や判断力、集中力にかかわってもいます。
このヒスタミン受容体が脳に作用してしまうと、脳の覚醒、判断力、集中力が妨げられてしまい、「眠気」の副作用として出現することとなってしまいます。「第1世代」の抗ヒスタミン薬はここが問題でした。

そこで、これらの副作用を改善させるべく、脳になるべく届かないようにした「第2世代」の抗ヒスタミン薬が開発され、現在ではこちらが主流となっています。

OTC医薬品でも、抗アレルギー薬として販売されている薬剤は「第2世代」が中心となっています。
現在は「アレグラ」「アレジオン」「エバステル」「クラリチン」「タリオン」「ジルテック」に相当するOTC医薬品が出ています。

この第2世代の中でも眠気が非常に出にくい薬剤と、やや出やすい薬剤がありますが、OTC医薬品では比較的眠気が出にくい薬剤が多いです(OTCの中では「ジルテック」のみが運転禁止「アレジオン」「エバステル」「タリオン」運転注意で、「アレグラ」「クラリチン」運転に支障がありません)。
なお総合感冒薬は別です!これはまた次回お話しします。

一方、やはりその分、やや効きがややマイルドな薬剤がOTCには選ばれているように思います(これは私の主観も伴いますが)。
対して処方薬は眠気や内服方法など、多少の注意点がある一方、効果がより期待できる薬もあります(なお抗ヒスタミン薬の効果の強さは一律で語れるものではなく、強いと言われるものよりマイルドと言われるものの方が効くこともあります。抗ヒスタミン薬にも系統がいくつかあり、その系統の合う合わないが人によって変わる面があるからです)

またこれらの一般的な抗ヒスタミン薬は「サラサラした鼻水」に効果を示しやすいですが、「鼻づまり」には別の対処が必要になります。
鼻粘膜の血管を収縮させて浮腫をとる成分を配合した「ディレグラ」や、抗ヒスタミン作用とはまた別の作用をもたせた「ルパフィン」が有効ですし、喘息にも使用される「オノン」「キプレス、シングレア」などの「ロイコトリエン受容体拮抗薬」は、鼻づまりに対して効果が高いことが示されており、これらの薬剤にはOTCはありません。

 

次に点鼻薬についてです。
点鼻薬は大きく分けて「血管収縮薬」「ステロイド」「抗ヒスタミン」「ケミカルメディエータ抑制薬の4種類があります。
この中で現在の主力は「血管収縮薬」「ステロイド」ですので、今回はこの2つに対して述べてみます。

「血管収縮薬」は、鼻の粘膜の中に流れる血管を収縮させることで、粘膜のむくみをとる薬です。鼻づまりに即効性がある薬剤で、つらいときには重宝されます。

ただこの薬剤の問題点は2点あります。

一つ目は、徐々に効きにくくなってしまう問題です。
どうもこの薬は、使用を続けているとこの薬剤が作用する受容体が減ってしまうこと(ダウンレギュレーション)があるのではとされています。
そのため、継続して使用していると徐々に薬剤が作用できる受容体がなくなり、効果が落ちてしまうのです。

もう一つが、この薬の連用による「薬剤性鼻炎」です。
長い間この薬剤を使うと、むしろ粘膜の組織が増殖してしまい、むしろ鼻づまりが悪化するケースがあるのです。
この薬は当初は「キレ」がいいものなので、ついつい反復して使用してしまうケースが多く、その結果より治りづらい鼻炎となって来院されるケースがあるのです。

そしてこのような諸刃の剣である血管収縮薬の点鼻ですが、実は結構気軽に店頭で手に入ってしまいます。
ですのでこのタイプの点鼻薬を使用する際は、しっかりと注意事項を守って使う必要があります。

次に「ステロイド」の点鼻についてです。
こちらは血管収縮薬の点鼻よりはずっと安全に使えますが、即効性がありません(吸入薬と同じですね)。
この薬剤は血管収縮薬とは違い、症状があるときに使用するという使い方ではなく、むしろ症状を出させないように比較的続けて使う必要のある薬剤になります(これも吸入薬と一緒ですね)。
局所治療薬ですので、全身性の副作用を心配する必要もあまりありません(またまた吸入薬と同じですね)。

診察していると、市販の点鼻を使用している方で、自分がどのタイプを使用しているかを把握している方は少ない印象です。

この点、処方の場合なら薬剤の特徴や使用方法を直接お伝えすることができますし、点鼻ステロイド薬にしても薬の成分や噴霧様式など、市販薬よりも工夫が凝らされ効果を高められる点鼻薬もあり、選択肢も広がります。
この点でも医療機関にかかり、処方薬を使用できることのメリットはありそうです。

 

以上、花粉症などのアレルギー性疾患に対するOTC医薬品使用のポイントをお話ししてみました。

市販薬は気軽に治療を開始できるという面で非常に有用性はあると思います。

ですがやはり症状がコントロールできなかったり、より効果の高い治療を行いたい場合内科や耳鼻科のアレルギー専門医にお尋ねになることも検討してみるといいかもしれません。
また今は重症花粉症に対する注射治療(ゾレア)、アレルギー反応を根本から弱める舌下免疫療法もありますので、花粉症などのアレルギー症状で困った場合は当院にも是非お気軽にご相談ください。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.03.01更新

この土日を使って、改装工事第3弾、中待合から呼吸機能検査エリアにかけての床張り替え工事を行いました。
約30年にわたり皆さんの足元を支えていた床に別れを告げ、受付エリアと同じ、木目の床で統一しました。
また廊下の棚も撤去し、新たなラックに置き換えたことで通路の拡張も行いました。
まだまだ院内の混雑で皆さんにはご迷惑をおかけしておりますが、また少し若返った加藤医院をご堪能いただければ幸いです。

床工事後
また3月中には懲りずに早くも第4弾を予定しております。
工事の影響で、3月22日(月)は臨時休診とさせていただきます。ご迷惑をお掛けしますが、この頃に受診をご予定の方はお気をつけくださいますようよろしくお願い致します。

 

さて前回は、今回日本で接種が予定されているファイザー社のmRNAワクチン「コミナティ」を念頭に、新型コロナウイルスワクチンの仕組み、特徴についてお話ししました。
今回は、いざ皆さんが接種するとなったときの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします(報道にもあるようにワクチンは当分は数に限りがあり、国や県、市などが運用方法を工夫せざるを得なくなることも出てくる可能性があります。今後変更があり得ることは予めご承知おきください)。

まずはこのワクチン、対象は16歳以上です。15歳以下の子供は今回対象にはなっていません。

今回は費用は全額国持ちとなり接種者はタダで受けることができます。

またこのワクチンは基本的には2回打っていただくこととなります。1回目のワクチンを接種してから3週間後に2回目のワクチンを接種するのが基本スケジュールになります。
しかしファイザー社は42日(6週間)間隔が空いても効果があるとの見解を出しており、どうしても3週間間隔で打てない場合もできるだけ早く2回目を打っていただくことで対応します。

2回目のワクチンは1回目のワクチンと同じものでなければならず、別の種類のワクチンを使用してはいけません。

接種する際は発熱していたり、他の急性の病気にかかっていたりしていないことが接種できる条件となります。

妊婦、授乳婦は利益がリスクを上回るときには接種可能とされ、除外はされていません。産科婦人科学会などは感染リスクが高い医療従事者、肥満、糖尿病など新型コロナ感染症が重症化しやすい妊婦は接種を検討するよう提言しています。

また現時点では既感染者といえど再感染しないとは限らず、おそらく既感染の方も接種対象になると思われます(ただWHOは感染後6か月以内の再感染は少ないことから、接種を感染後6か月以降に遅らせることはできるとのスタンスをとっています)。

異なるワクチン(肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチンなど)とは、アメリカでは14日(2週間)の間隔を空けるよう勧告しています。おそらく日本でもこれに近い方向で勧告されるものと思われます。

さて、いざ接種です。

このワクチンはインフルエンザワクチンと異なり、肩への筋肉注射を行います(実はインフルエンザなど、日本で皮下注射で行われているワクチンも、他の多くの国では筋肉注射で行われているのが実情です。実は皮下注射より筋肉注射の方が、効果、痛み、副作用の出現で有利とも言われているのですが、日本では過去に抗菌薬や鎮痛薬の筋肉注射で筋肉が萎縮する後遺症が多発したことがあり、歴史的に筋肉注射に慎重となっていることが原因とされています。ワクチンではこれらの問題は起きていないことから、本来は改めるべきことかもしれません)。

接種後に注意すべきはアナフィラキシーです。
インフルエンザワクチンと比べると5~10倍の頻度と言われており、そのためワクチン接種後は医療者の目の届く範囲に15~30分アナフィラキシーを起こしたことのある人は最低30分待機することが定められています(とはいえ、前回ブログにも書いたように、よく使われる他の薬剤の方がよっぽど高い確率で起こしうるということを知っておくことも大事です)。
アレルギーがあること、アナフィラキシーの既往があることそのこと自体だけで即接種不適当者になるわけではないようです。

前回のブログでも副反応が1~2日経って出やすくなることを記載しました。ほとんどの場合、様子を見るだけでその後は症状も軽くなるようです。
ただどうしても副作用の症状が強く出たり長引いたりしたときは、まずは接種した医療機関やかかりつけに相談となりました。また副反応のための相談窓口が作られるようであり、こちらのチャネルを利用していただくことが想定されているようです。

というわけで、現在のコロナワクチンの注意点を、わかっている範囲でお話ししてみました。

それでは、当院ではどのようにして接種するか、なのですが、残念ながらまだ何も決められません( ノД`)・・・
現在茅ヶ崎市からは4か所の集団接種会場に加え、当院のような診療所や病院で接種できるようにする方向で調整しています。
当院も当然ワクチン接種には手上げをしており、接種会場となる予定ですが、接種開始時期はもちろん、当院にどれくらいワクチンが入ってくるのか(今回はすべて国が取り仕切るようになっており、当院になんら権限がありません)、予約は市が行うようですがそれがどのように行われるのかなど、細かいことの通知がなく、外来での皆さんの疑問にお答えできない状況です。

決まったことがあれば随時このホームページや院内でお知らせしますので、お待ちいただければ幸いです。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.02.21更新

ようやく待ちに待った新型コロナのワクチン接種が日本でも開始されました。
現在は第一線で奮闘されている医療従事者から接種が開始され、今後その他の医療従事者を経て一般の方への接種が始まる予定です。
それに合わせ、昨日厚生労働省からの医療機関向け説明会がウェブで開催されました。
私たちも断片的な情報しか知り得ませんでしたが、この説明会で少しずつアウトラインが見えてきました。
そこで今回はこのワクチンについて、現在わかる範囲でこちらでも解説してみようと思います。

当院でのコロナワクチン接種について
→一般高齢者の方向けページ
→医療従事者の方向けページ

まず今回接種が開始されるワクチンは、アメリカのファイザー社が製造したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンというタイプのものです(商品名は「コミナティ」というそうです)。

ワクチンの原理ですが、ワクチンとは基本的に体に疑似的に感染した状態を引き起こし、それに対する免疫を人工的に引き起こすことができるようにする手段です。

いままでのワクチンは生ワクチン(症状が出ないように限りなく弱くした病原菌そのものを入れる)や、不活化ワクチン(病原菌にいろいろな処理をして病原性をなくしたものを入れる)などの手段がありました。

人類はこれら生ワクチンや不活化ワクチンを作った多くの経験を持っています。
が、このワクチンをつくるためにはウイルスそのものが必要です。
今回のように全世界で短期間にワクチンを作らなければならない場合、大量にウイルスを培養、複製しなければなりませんが、それには専用施設が必要だったり、培養の時間がかかったりと、すぐにそんなに多くのウイルスを作ることはできないのです。

そこで今回のワクチンではコロナウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)というものを使用することにしました。mRNAはコロナウイルスのいわゆる「設計図」です。

今回のウイルスの目的は、ひとつにはコロナウイルスの表面にある突起物(=スパイクたんぱく質)を攻撃するための抗体を作り出すことです。
そしてコロナウイルスのmRNAの一部分に、このスパイクたんぱく質の設計図が含まれています。
この設計図部分を取り出して、脂質の殻でコーティングしてあげます(RNAはとても壊れやすいので殻で保護するのと同時に、この殻のおかげで人体の細胞にmRNAを送り込むことができるようになります)。
これを注射すると、人体の細胞の中にmRNAが取り込まれて、設計図の情報をもとに細胞の中でスパイクたんぱく質をつくります(取り込まれたmRNA分解されますし、人間のDNAが存在する細胞核の中には原理的に入ってこないので、人の細胞に取り込まれることはまずありません。Twitterなどでそのようなデマも見ることがありますが、皆さん決して惑わされないようにしましょう)。
スパイクたんぱく質が体内で作られると、体の中で免疫が発動し、すみやかに抗体を作ることで、いざコロナウイルスが入ってきたときに速やかに攻撃態勢を作れるようにすることができるようになります(液性免疫)
また攻撃の仕方をキラーT細胞に指示して覚えこませて、免疫細胞が直接ウイルスを撃退できるようにもなります(細胞性免疫)

ワクチン

今回これだけ早くワクチンが完成したのは、遺伝子解析の技術が以前と比較にならないほど早くなったことが理由の一つです。今回の新型コロナでは武漢で流行の始まった昨年1月にはすでに遺伝子解析が終わっていたため、すぐにワクチンの研究に取り掛かれました。昔じゃ考えられなかったことです。
また先ほども述べたように、mRNAワクチンを作るのにはウイルスそのものは必要ない(設計図であるmRNAだけあればよい)ので、培養するのに時間を要する必要がないのも要因の一つです。
その他にも多くの資金がかけられたこと、全世界で急速に広がったため、それがかえって臨床試験の被検者を集めたり、結果を判定することが容易になったことも重要です。

そしてこのワクチンの効果ですが、全世界で行われた、約4万人を対象に行われた臨床試験では、接種後約2~3か月の期間において、全体で95%の発症抑制効果があったとのことでした。
具体的にはこのワクチンを接種してでその後発症した人が18559人中9人プラセボ(本人も接種者も見た目ではわからない偽物)を接種してその後発症した人が18708人中169人だったとのことです。
これは接種しない時に発症する割合を100としたときに、接種をした人の発症割合がおおよそ5程度になったということです(決してワクチンを打つと100人中95人効くという意味ではないのでご注意を)。

ワクチン

インフルエンザワクチンも抑制効果は50~60%程度と決して悪くはないのですが、現在のところ正直「段違い」の効果、ともいえると思います。

そしてこの効果は性別、年齢、人種、肥満やその他のリスク因子のあるなしにかかわらず大きな効果が変わらず認められていることも重要な点です。
現時点では(少なくても短期的には)効果の期待できない人はあまりいないという結果がでています。

副作用ですが、頻度の多いものとしては打った後の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛、38℃程度までの発熱が多いようです。
発現割合としては高齢者よりは比較的若い方に多そうで、また接種後1~2日経って出ることが多いようです。
またアメリカの市販後調査では、約10万人に0.5人の割合でアナフィラキシーが起き、死者はいなかったとのことです(ちなみに抗生物質であるペニシリンのアナフィラキシーは10万人中10-50人と言われ、ケタが違います。比較的ワクチンは安全なようです。と言うより、アナフィラキシーに関してはワクチン投与より不適切な抗生物質投与の方がよっぽど危ないとも言えるでしょう)。

ということで、まだまだ長期データがなくわからないことも多いワクチンですが、現時点ではかなり有望なのは間違いないようです。私も接種することにしました。

次回はこのワクチンの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.02.07更新

結局緊急事態宣言が延長された2月、当院ではここしばらくコロナ陽性例はいらっしゃいません。
が、減ったとはいえまだ茅ヶ崎でも1日10名程度は報告されており、まだまだ気を緩めることはできません。
私もまだまだステイホームということで、今日は息子が学校の図書に載っていた「おひさまパン」を作ろうと朝からパン生地をこねこねして焼きました。人生初の自家製パンでしたが出来上がったら直径25cmと予想外の大きさとなってしまい、4人で食べても腹パンパンです(いやダジャレのつもりじゃなかったのですが、ホントに・・・)

おひさまパン

というわけで、今回は前回の続き、パルスオキシメータについてです。今回はパルスオキシメータを扱う際の注意点について書いてみようかと思います。

今アマ〇ンや楽〇などで検索すると、本当にいろいろな価格帯のパルスオキシメータが発売されているようです。
中には1000~2000円で買えるものもあり、私もびっくりしました(コロナ前は検索しても出てこなかった価格帯です。それだけ需要も増えたのでしょう)。
ただ前回もお書きした通り、酸素飽和度(SpO2)は95%を下回ると、その数字の扱いについては慎重にならないといけなくなります。98%と96%ならその違いはあまり気になりませんが、94%と92%ならかなり意味合いは変わってきます。
またパルスオキシメータはその指先の血流をとらえます。特に寒い冬のこの時期、指先が冷えている方は少なくありません。すると指先の血流は少なくなっている状態になります。また病態が悪化し血圧が下がってしまったときも同様です。
この血流を正しく捉えられるかはそのセンサーの精度にもよります。いざというときのモニタリングですので、もし家庭に常備しておくからにはやはりここが信頼できる機器でないとあまり好ましいとは言えないかもしれません。
やはりベストは医療機器認証を受けたものだとは思いますが、やはりやや高価ではあるので、極端に安価なものに手を出さないようにすればまずはいいのかなと思います。

次にパルスオキシメータで実際に測定する際の注意点です。

まずはマニキュアなどを塗っていると当然正しい血液の色が測定できません。使用するときはマニキュアを落とします(爪が特に濁っていなければ足の指で測ることは可能です)。

そして指を差し込むときにはしっかり奥まで差し込みます。センサー部分が爪にあたっていないと正確な脈波が拾えません。

上述の通り、寒かったり血の巡りが悪く指先が冷たいときは測定が不正確になることがあります。
通常パルスオキシメータには脈波も同時に表示されますが、これの表示が弱い場合は指を温めたり、血流の良い他の指で測定するなどの工夫をしましょう。

また指を動かしていると正しい測定ができません。
その理由は、指を動かすとセンサーの発光部と受光部の間にある指が動くことで、拍動のノイズになってしまうことがあるからです。
測定するときはパルスオキシメータを装着した指を机などに固定していただくといいです(できれば心臓と同じ高さであるとベストであり、日本呼吸器学会はできれば胸の前で固定することを推奨しています)。

測定すると数秒で値が出てきますが、20-30秒間は値が安定しません。しばらく時間が経ってからの値を読み取るといいと思います。

前回の記事で、SpO2の原理を説明しました。全体のヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンの割合を測ることで測定しますが、もともと貧血があると、そのヘモグロビンの量が減ります。
するとそもそも酸素の乗っているヘモグロビンも少なくなるので、SpO2が保たれていても酸素が足りないということがあり得るので注意が必要です。

また一部の薬剤で測定値に影響が出ることがあります。狭心症発作で使われるニトロや、一部の不整脈の薬を内服するとSpO2が低くでることがあります。

またSpO2が正常範囲でも絶対に大丈夫とは言えません。
人間は通常、体内の酸素が少なくなると、呼吸の回数や量を増やすことで対応しようとします。この時酸素の取り入れと引き換えに二酸化炭素を外に出します。
通常、人間の体は十分な量の酸素とある程度の量の二酸化炭素を擁することでバランスを保ちますが、つまり酸素が少なくなった状態では、二酸化炭素を引き換えに酸素を得るのです。
この状態はもうひと崩れするとあっという間に酸素不足に陥る状態ですが、この時点ではSpO2には反映されません。SpO2が95%程度でも呼吸が非常に荒いときは要注意です。

このように一見手軽なパルスオキシメータですが、やはり医療機器ですのでいくつかの注意点はあります。
このことをしっかり知っておけば有用な機器ですので、お手元にある方はぜひ正しくご使用いただけると幸いです。

 

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.01.30更新

ややコロナも山を越えてきたのでしょうか。
日々報じられる感染者数も一時期よりは少なくなってきました。
当院でも冬なので発熱や咳で来られる患者さんは相変わらず多いのですが、コロナを強く疑う患者さんの数は減ったように思います。また当院で実際にコロナと診断される患者も、年明けに比べればだいぶ減ってきているようであり、現場の実感としても落ち着きつつあるのかなという印象はあります。

しかし、コロナはやはり重症化が怖い病気です。
新規感染者の数が減ってもまだまだ重症者の数は多いようで、感染が判明してしばらく経ってから重症化するというコロナの恐ろしい面が反映されています。

このコロナに関しては、呼吸困難の自覚のないまま呼吸状態が悪化する「幸せな低酸素血症」“happy hypoxia”という状態が起こることが知られており、感染からしばらく経った後、気づいたときにはかなり呼吸状態が悪くなっていることがあるようです。
この原因としてはまだはっきりとは解明されていませんが、コロナが悪化しやすい高齢者や糖尿病の方は、もともと呼吸調節を行う調節機能が落ちている、呼吸困難を感じる体内のセンサー(頸動脈小体)にコロナウイルスが感染しやすく、そこのセンサーの機能が落ちることで呼吸困難を感じにくくなる、などの理由が考えられているようです。Martin J Tobin, et al. Why COVID-19 Silent Hypoxemia Is Baffling to Physicians. Am J Respir Crit Care Med. 2020;202:356-60.
現在軽症感染者さんの主な療養場所も自宅やホテルとなっており、ただの風邪症状の方もコロナである可能性が否定できない以上、家でも早期に呼吸状態の悪化を見落とさないようにする必要があると思われます。

そこで最近注目されているのがパルスオキシメータです(当院も今後の診療能力向上のために、今年からちょっとイイやつを新たに導入しました)。


これは日本語で「経皮的動脈血酸素飽和度測定器」といって、皮膚の上から光を当て、動脈血の「赤み」を測定する機械です(ちなみにこの機械が開発されたのは日本なんです!)。


使い方は、クリップになっている部分を開き、指を挟み、爪の部分が発光部にあたるように奥まで差し込むだけです。

パルスオキシメータの使用方法

血液が赤いのは、赤血球に含まれている「ヘモグロビン」という色素のためです。このヘモグロビンは酸素とくっつく性質を持っています。

肺で取り込んだ酸素は、肺に流れこんでくる血液の中のヘモグロビンとくっついて心臓に戻り、そして全身へと運ばれます(血液の液体の中にも溶け込みますが、溶け込んだ酸素はほぼ組織には運ばれず、液体の中にただよったままです)。
このヘモグロビン、酸素とくっつくと赤くなり酸素から離れると黒くなるという性質を持っています。
すると、肺で酸素をため込み心臓から飛び出したばかりの新鮮な血液(つまり動脈血)は色が赤々としていますが全身に酸素を配り終えた後の血液(つまり静脈血)は黒めの色となります
皆さんが血液検査で血を採られると、意外に血が黒いと思われる人が多いですが、これはすでに全身に血液を配り終えた静脈血を採取しているからです。

そして、パルスオキシメータは先ほどお話ししたように動脈血の赤みを測定するため、肺から酸素をしっかり取り込めているかを測ることができるというわけです。
パルスオキシメータで測る数値を、動脈血酸素飽和度(SpO2)と呼びます。
これは血中のヘモグロビンのうち、何%のヘモグロビンが酸素と結合しているかを示しています。ですので最大値は100%になります。

パルスオキシメータの原理
そして血液中に含まれている酸素(これを酸素分圧と呼びます)と、酸素飽和度(SpO2)の関係は以下のグラフのようになります(これを酸素解離曲線と呼びます)。

酸素解離曲線

上の表でもわかる通り、通常若い方の血液中の酸素分圧は95mmHg程度で、これは酸素飽和度(SpO2)でいうと98%に相当します。
また高齢者では酸素分圧80mmHg程度で、これはSpO2 95%に相当します。
機械の誤差を含め、95~99%であればあまり大きな問題はありません(100%だと時によっては過呼吸など、呼吸が多すぎることを疑います)。
そして、我々医師は通常、肺や心臓に慢性的な病気がない方の場合、SpO2が93%程度になると焦り始め90%を切ると慌てます。これは酸素分圧60mmHgに相当し、これを下回ると呼吸不全とされます。
グラフもここを下回ると急になり、急激にSpO2が低下していき、いろんな臓器が十分な酸素を受け取れなくなってくるため危険な状態へとなっていきます。通常の場合では呼吸不全、つまり酸素分圧60mmHg、つまりSpO2 90%を下回る場合には、酸素療法や、場合によっては人工呼吸器療法によって酸素分圧を上げる必要がでてきます。
この治療の目安が指に機械を挟むだけでわかってしまうのです。

というわけで、痛みなく簡単に体内の酸素の状態が分かってしまうスゴい機械、パルスオキシメータですが、使うには実はいろいろな注意点があり、使用を安易に考えると、時に問題を生じることが出てきます。長くなりそうなのでこの続きはまた次回。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2021.01.17更新

年が明け、1月7日からまたここ神奈川にも緊急事態宣言が発令されました。
当院でも発熱外来を行っていますが、年が明けてからはやはり発熱や咳症状の患者さんが増えてきている実感があります。新型コロナの診断となる方の数も増えてきており、茅ヶ崎でも拡がっていることをひしひしと感じます。

しかし、病気はコロナだけではありません。このようなご時世でも、治療を続けなければならない多くの病気の治療を止めてしまうことは好ましくありません。

それは当院が治療に力を入れている喘息でも同じです。
喘息は油断して治療を止めてしまうと、いずれまた悪化してしまいます。そのため平時でも、症状がよくなったからといってもやめないで、適切に治療を続けてもらうことが必要な病気です。

 

それをふまえた上で、今回は喘息と新型コロナについて、前回の記事からいろいろとわかってきたことも増えたので、そこについて触れてみたいと思います。

 

喘息と新型コロナについては、昨年4月にブログに記事を書きましたが、その後いろいろと新しいデータ、知見が出てきています。

その中でも、やはり喘息を患っていることと新型コロナが重症化してしまうことにはあまり関連がなさそうなデータがいくつも出ているようです。Chhiba KD et al. J Allergy Clin Immunol. 2020; 146: 307-14.

それ以上に、どうも新型コロナに感染した人の中には、喘息を持っている人が割合少なく、喘息の方はむしろ新型コロナにかかりにくい(もしくはかかっても重症化しないために見つけられない率が高い)可能性も考えられています。Matsumoto K et al. J Allergy Clin Immunol 2020; 146: 55–57.

 

それにはどうもいくつかの理由があるようです。

一つは喘息の方が起こすアレルギー反応がむしろ役に立っているという仮説です。
新型コロナウイルスはACE2という受容体を足掛かりに体内に入ってきますが(こちらの記事をご参照ください →2020.5.21 コロナと喫煙、そしてCOPD)、このACE2受容体がどうも喘息などのアレルギー反応を起こしやすい人だと減っているようなのです。Jackson DJ, et al.J Allergy Clin Immunol. 2020 Jul; 146(1):203-206.e3
そのためウイルスの足掛かりが少なくなり、ウイルスが体内に入ってきにくくなるのではといわれています。
ちなみに喫煙は逆にこのACE2受容体を大きく増やす作用を持っているとされており、喫煙はやはり新型コロナの重症化の大きな要因になるだろうと考えられます。
コロナが怖ければタバコは止めましょう。 

→COPDについて
→禁煙外来について

 

またいくつかのデータでは、喘息でちゃんと治療を行っている人の方が、そうでない人よりも重症化しにくいことも示唆されています。Eur Respir J. 2020 Dec 17;2003142. doi: 10.1183/13993003.03142-2020.

喘息治療で用いる吸入ステロイドは、気管支の炎症を抑え、空気の通り道を広げる作用を持ちます。
新型コロナに感染し重症化すると、肺へ空気が入りにくくなってしまいます。一度潰れた肺胞は再度膨らむことが難しくなり(一度完全にしぼんだ風船をがんばって膨らます状態と一緒ですね)、このことがより肺の状態を悪くしてしまいますが、吸入ステロイドはこれに対し効果を示すのかもしれません。

また吸入ステロイドは気道のACE2受容体(さきほど出た、新型コロナウイルス侵入の足掛かりでしたよね)を減らしてくれるという研究も示されており、ウイルスの侵入経路を減らす効果があるかもしれません。

具体的なデータはまだ出てはいませんが、普段から吸入ステロイドをしっかり使っていることで、新型コロナに感染しづらくなったり、感染したときに重症化を抑えたりできる可能性があります(ただ以前話題になったオルベスコという吸入ステロイドは、すでになってしまった新型コロナにかかってしまった後の治療という面では、現時点では有効性を示せなかったというデータが出ています。とはいえ死亡率や重症化率も上げることはなかったとのことであり、この結果の解釈はまだ難しいところです。いずれにせよ安易な自己判断での治療開始、治療中止は避けるべきでしょう

 

また内服薬に関しても、モンテルカスト(キプレス®やシングレア®という商品名です)が高齢者において、内服していた人の方がそうでない人より新型コロナ感染率、重症化率が低かったというデータもでているようです。Khan A, et al. Montelukast in hospitalized patients diagnosed with COVID-19. 2020. doi:10.21203/rs.3.rs-52430/v1.

 

これらから、喘息の人はやはり必要以上に新型コロナを恐れる必要はなく、今まで通りしっかりと治療を続けるのが一番だということが言えそうです。
そしてしっかりと通院を続けて薬を正しく使い続けることが、結局は新型コロナから自分の身を守ることになるということが言えると思います。 

→喘息の治療について

 

またこれからは春に向けてスギ花粉のシーズンが始まります。喘息の症状が悪化しやすい時期にも入ってきます。

なにより喘息の悪化による咳と新型コロナによる咳は、私たち専門医でもすぐには簡単に見極めることができません。
この時期、咳が続くとなにより患者さん自身が不安になり、日常生活を送る上での妨げとなってしまいます。 

→2020.3.1 花粉症と咳のただならぬカンケイ

 

せっかくいい治療法がある現在、喘息患者さんには、感染対策がしっかりとられている信頼できる主治医のもとで、しっかりと吸入、内服治療を続けていただきたいと切に願っております。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

2020.12.31更新

今年も1年間加藤医院をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
さて、今回は激動の2020年の加藤医院を、この場で少し振り返りたいと思います。


2020年は1月の診察室の模様替えから始まりました。これに伴い私と加藤医師の診察室が入れ替わりました。またX線透視装置を撤去し、内視鏡室を移動しました。

そして春に数名の新しい事務スタッフを迎えたところでコロナの流行が始まりました・・・

当然この時期はまだまだ風邪が流行る時期でもあり、多くの発熱した患者さん、咳や痰の止まらない患者さんがいらっしゃいました。
我々もコロナのことがまだよくわからない時期であったため、かかりつけの患者さんやスタッフのことを考えた時に、発熱患者さんを受け入れるかどうかの決断を迫られました。
しかし、このころにはかかりつけの方にとどまらず、周りから医療機関を受診できなくなった発熱患者さんの相談を多く受けるようになっていました。この頃は総合病院の発熱外来くらいしか受け皿がない状態でした。
一方、私自身がつい1年前まで市立病院での感染対策チームで活動していたその経験から、いわゆる飛沫、接触感染であるコロナは、しっかりした対策を取れれば患者さん、スタッフへのリスクをある程度しっかり抑えることはできるだろうという見込みを持っていました

最終的には、自分たちがしっかりと発熱患者さんに対応することで、当院が発熱して困っている方の受け皿になり、さらにそれによって総合病院の負担を少しでも減らせればとの結論に至り、発熱患者さんの受け入れの継続、院内の大改造へと舵を切ることとしました。



まずは受付のパーティションを設置し、待合の椅子をすべて交換し、個別の椅子にした上ですべての椅子の間にアクリルパーティションを自作しました。
待合椅子パーテーション

 

そして、移動した内視鏡室を、検査のない日は発熱診察室としても使えるようにし、いままで点滴室として使用していたエリアを発熱外来専用待合室に改造しました。

第3診察室

発熱待合室

 

幸い昨年1年間、当院では院内感染、クラスターの発生はなく、私を含めスタッフへの感染も生じておりません。

6月には加藤医院が加藤浩平先生から正式に私浅井偉信が加藤医院を継承し、新体制での船出となりましたが、加藤医師の診察は週2回継続しており、特に患者さんの当院の使い勝手にはお変わりはないものと思います。


7月からは1か月遅れで特定健診、9月からは予定通り高齢者検診が始まり、お受けいただいた患者さんからは幸い病気の早期発見につながった方が何名もいらっしゃいました。

9月には新しい体制のもと、念願であったトイレの改装をはじめ、

トイレ

 

診察室のドア変更などの工事を施行、

診察室

 

続いて11月には受付、待合エリアの壁や床の張替え、荷物置き台の設置などを実施し、より過ごしていただきやすいクリニックを目指し歩を進めています。
受付

 

また新しい看護師が新たに仲間に入り、より充実した診療体制になりました。

10月からはインフルエンザの予防接種が開始し、コロナ禍の中少しでも密を回避しながら一人でも多くの方に接種いただけるように致しましたが、それでもご希望にお応えすることができないケースもありました。この場を通じてお詫び申し上げます。
12月には新たにネット、電話、窓口で受付可能な即時予約システムが稼働し、我々もまだ手探りな状態でありつつも徐々に慣れつつあるところで2020年を終えました。

というわけで、この一年間は世の中がコロナ禍で激変する中、当院は加えて院長交代、呼吸器アレルギー専門診療2年目、ハード、ソフトの変更、スタッフの入れ替わりなどで、加藤医院史上かつてないほどの変化があった1年だったように思います。
度重なる変更で患者さんにも少なからずご負担、ご迷惑をお掛けしている面があろうかとは存じますが、今後も安心して快適にご受診いただけるクリニックを目指す過渡期とご理解いただけると幸いです。
どうぞ皆様2021年も加藤医院をよろしくお願い致します。


なお新年は5日より診療を開始します(県の要請により29日、30日と発熱患者さんの対応をさせていただいた影響で、1日開始を遅らせていただきました)。
報道の通り、茅ヶ崎も例外ではなくコロナ陽性例は大幅に増えており、当院でも複数の陽性例が出ています。
しかし私の印象では、少なくとも当院で確認した陽性者の多くはやはり接触者で、自身の不注意ではなく、避けられないシチュエーションだった方がほとんどな印象です。

報道では人々のモラルの低下を嘆く声も多いですし、あたかもモラルが低いから感染すると言った論調も聞こえてきますが、私がここ茅ヶ崎で見た限り、ここではそのような方は少なくとも多数派ではなく、大多数の方はしっかりと感染対策を理解し、対応をされているように思います。

そもそも冬は風邪(=ウイルス性急性上気道炎)が流行りやすい季節なのです。
24時間365日引きこもっていない限り、誰だっていつ感染するかわかりません。


どうか感染した方を責めることなく、周りや社会で温かくサポートしてほしいと思います。

そして感染を隠す空気を決して作ることなく、皆さんが体調のトラブルについて気軽に相談できる世の中の雰囲気であり続けることを切に願っています。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

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