医師ブログ

2023.08.04更新

昨年のデジャブです・・・

ここ最近、発熱外来の受付が開始数分で埋まってしまいます。
そして来院される方の半数以上がコロナ陽性になっています。

昨年のこの時期がまさに同じような状態でした。
ちょうど時期も重なっており、昨年の改装に伴う夏季休診前も、てんやわんやの日々だったことを思い出します。

ただ今年は昨年と違い、大改装による導線の改善を行ったことやスタッフの増員、それとスタッフもだいぶ慣れてきたことも重なり、多少お待たせはさせてしまっているものの昨年よりはスムーズに行えています。
あと今年は世間で大きく騒がれてはいないので、スタッフの「追い込まれている感」が薄いのも確かに感じます。

昨年は8月にピークが来てその後収束しました。
今年もさっさとピークアウトしてもらいたいものです・・・


さて、そのような状況の中で、発熱や頭痛、全身の関節痛などのつらい風邪症状に対して、「熱冷まし」、「痛み止め」を希望されるケースが増えています。

その中で、「喘息の方」が熱冷まし、痛み止めを使えるかというご質問を多く受けるようになりました。

今回はそのご質問にお答えしてみよう!っと思います。

例えばけがや虫歯などで病院や薬局を訪れた際も、喘息であることを告げると、いわゆる解熱鎮痛薬を出すことをためらわれることが少なくありません。
ではそもそもなぜ、喘息の方は解熱鎮痛薬を使うことに対し、ナイーブになってしまうのでしょうか?

それは、喘息の方の「一部」に、解熱鎮痛薬を使用すると大変な発作を起こしてしまう方がいらっしゃるからです。

そのような喘息の型を、「アスピリン喘息」と呼びます。

アスピリン喘息は、解熱鎮痛薬であるNSAIDsエヌセイズと呼びます。日本語では「非ステロイド系抗炎症薬」と呼ばれています)を使用すると、喘息発作(実は「発作」という用語は、現在「急性増悪」という用語に変更されています。ただ今回ここではなるべくわかりやすく説明したいので、あえて「発作」という用語のままで説明を続けます)が起こってしまう病気です。

この喘息発作はしばしば強烈で、呼吸不全や窒息寸前まで行ってしまうことも珍しくありません。
そして、量的にはほんの少しのNSAIDsでも起こってしまうため、湿布や目薬などでも重い発作を起こしてしまいます。

「アスピリン」もNSAIDsであり、当初はアスピリンで発作の起きる病気ということでこの病名がついたのですが、今はアスピリン以外の多種多様なNSAIDsにも反応してしまう病気だったことがわかっています。

「アスピリンだけじゃない」という部分をしっかりと理解しておく必要があります。


体の中で炎症が起きると、体内では「プロスタグランジン」という物質が作られます。
NSAIDsは体の中でプロスタグランジンを作らせないように作用するのですが、アスピリン喘息の方ではどういうわけかプロスタグランジンを作らせない代わりに、ロイコトリエンという物質をたくさん作り始めてしまうのです。
このロイコトリエンという物質は、気管支を収縮させたり、アナフィラキシーを誘発させたりする、タチの悪いアレルギー物質です(この物質を抑える薬として、「モンテルカスト(商品名:キプレス、シングレア)」とか「プランルカスト(商品名:オノン)」とかいった薬があります)。

このような特徴を持つアスピリン喘息の方は、喘息全体の方のうちの約10%といわれています。
そして30~50代くらいの女性に多いとされています。

逆に言うと、90%の喘息の方ではこのような反応は起こりません。
その違いが、どこにどうあるのかといったことは、まだよくわかっていない部分も多いのです。

では、喘息の患者さんにNSAIDsは使っていいのでしょうか?

結論から言うと、「アスピリン喘息」でなければ、使うことはできます。
ただし、注意しなければならない点がいくつかあります。

アスピリン喘息は、通常生まれ持って出てくるものではないとされています。
大人になってから出現してくる病気なのです。

そして、アスピリン喘息になる前は、普通に解熱鎮痛薬を使用できていたことが少なくありません。

いままで解熱鎮痛薬を使っても何ともなかったから、自分は大丈夫、とは言いきれないのです。
だから、「その喘息は、アスピリン喘息でない喘息だ」と簡単には言えないという問題点があるともいえます。

また、NSAIDsにもいろいろな種類があり、発作を起こしやすいものと、比較的起こしにくいものがあります(ただアスピリン喘息の人の中でもその起きやすさは様々で、起きづらいといわれている薬剤でも重症な発作を起こすことがあります)。
比較的発作を起こしづらい薬で大丈夫だった方が実はアスピリン喘息だったという例もあるので、その投薬歴は十分に確認、吟味する必要があります。

一方、普通の喘息の方がアスピリン喘息に移行することは通常ありません(通常の喘息に後からアスピリン喘息が加わることが全くないとは言い切れませんが、基本的にはまれです)。
喘息の診断の後に特に症状が大きく変わっておらず、かつ診断後に解熱鎮痛薬を使用して問題が起きていなければ、通常はアスピリン喘息ではないと考えて大丈夫です。

逆にどういう人に疑うかというところも考えておいたほうがいいでしょう。

アスピリン喘息を持っている方は、高確率で慢性的な副鼻腔炎を持っています。
そしてそれによって嗅覚障害をきたしている方も少なくありません。

喘息だけでなく、よく鼻水や鼻づまりなど、慢性的な鼻炎を起こしている方、それに嗅覚が弱い方は注意したほうがいいかもしれません。

上記から、完全にアスピリン喘息を否定しきれない人は、万が一アスピリン喘息であったとしても比較的危険性が大きくない薬剤から使用したほうが無難だといえます。
例えばNSAIDsの範疇には入らない「アセトアミノフェン(商品名:カロナール)」はまだ安全性が高いとされています(絶対ではありませんし、一応添付文書上ではアスピリン喘息の方には使用してはいけないとされています)。

ほかにはセレコキシブ(商品名:セレコックス)という「COX-2阻害薬」といわれる薬や、チアラミド(商品名:ソランタール)といった「塩基性NSAIDs」と呼ばれる薬が、まだ多少は安全性が高いとされていますので、怪しい方の場合はこちらから使用することもあります(とはいえ、NSAIDsにも症状や病気によって使い方が制限されることもあるので、全員にこの薬剤というわけにはいかないのが難しいところです)。
症状によっては漢方薬を使用するという選択肢もあるでしょう。

一般的によく使用される、「ロキソニン」「ボルタレン」、それに市販の解熱鎮痛剤などの薬を、喘息の方が使用する場合は、呼吸器の専門施設の元でアスピリン喘息の可能性について検討してもらい、しっかり否定されてから使うようにされたほうが安心だと思います。


さて、当院は8月10日から、昨年に引き続き少し長めの夏季休診に入ります。

おかかりの方には2年連続で大変ご迷惑をおかけしてしまうのですが、今回も院内の改装工事を行うためです。

今回は待合エリアの工事を行います。

今までよりもより明るい雰囲気となり、またほんのわずかですが窓側のスペースが増えるため、今までよりも少しだけ余裕をもって移動することができるようになります(席数は今までと変わりありません)。
あと、診察室奥の作業スペースの工事も行います。
こちらは患者さんにはあまり関係ない部分なのですが、一応皆様の目に入る部分ではあるので診察室の雰囲気も多少ですが変わるかもしれません。

一部では「茅ヶ崎のサグラダファミリア」とも呼ばれているそうで、改めて数えてみたら、私がこのクリニックに来てから、足掛け3年半で都合9回目の工事のようです(笑)
でもさすがにサグラダファミリアも今回の工事でいったん完成を見るものと思います。

改装が終わり皆さんの中には改装ロスでさみしい方もいらっしゃるかもしれませんが(笑)、またお休み後のクリニックの様子を楽しみにお待ちください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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