今回、久しぶりに雑誌からの取材をお受けしました。
今回は週刊大衆さんから、「花粉症を市販薬で治すには?」というお題目の中で、内服、点鼻薬、そして漢方薬を使う際のコツや注意点についてお話してきました。
そして先日、記事が掲載された雑誌を双葉社さんより当院にお届け頂きました。
待合室において、皆さんにお読みいただこうかなと思ったのですが・・・
うーん・・・
というわけで、とりあえず記事の部分だけは、こちらにお載せ致すことに致しました・・・(拡大してどうぞ)
(他の記事も気になる方は、書店へGO!)
さて、今回はおとなのワクチンシリーズ第2弾、帯状疱疹ワクチンについてです。
帯状疱疹ワクチン、最近よくテレビCMなどでも見かけることがあるかと思います。
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そもそも帯状疱疹ってどんな病気なのでしょうか?
帯状疱疹は、その名の通り、「体に帯状に水ぶくれが出る病気」です。
この病気は、ご多分に漏れず、ウイルスによって起こります。
その名も「水痘・帯状疱疹ウイルス」といいます。
皆さんお気づきの通り、「帯状疱疹ウイルス」だけじゃないんですね。
その前に書いてある「水痘」とは、いわゆる「水ぼうそう」のことです。
「水痘・帯状疱疹ウイルス」は、初めてかかると「水ぼうそう」として発症します。
このウイルスは感染力が非常に強く、感染者のまわりから空気中をただよい、他の人に感染することができます(これを「空気感染」とよび、この形の感染を起こすものは非常に感染力が高いです。空気感染を起こすのは、ほかには「麻しん」や「結核」などがあげられます)。
そのため「水ぼうそう」は通常、子供の集まる幼稚園や小学校で流行することが多く、「子供に多い感染症」とされています。
ただ通常は症状は軽いことが多く、通常はまずかゆみの伴う発疹から始まり、これと同時に熱が出て、数日後には発疹が周囲が赤い水ぶくれとなり、最終的にかさぶたとなって治ります。
ちなみに、子供の水ぼうそうを減らすために、2014年から1~2歳の子に水痘ワクチンが定期接種化され、その後から子供の水ぼうそうの患者数は激減しています。
国立感染症研究所HPより
一方、このワクチンを受けてない世代の感染者の割合が相対的に上がっています。
もし、「水ぼうそう」を子供のうちにかからなかった上に、ワクチンも接種していない「抗体未保有」の状態のまま大人になった後に、初めてこのウイルスに感染してしまうと、肺炎をきたしたり、皮膚もただれたりしてしまうなど、子供よりもずっと重くなってしまいやすくなるといわれています。
加えて、妊婦さんにこれが起こってしまうと、流産や、先天性水痘症候群という先天性障害、それに妊婦さん自体も重症水痘肺炎になりやすくなるなどのリスクが出てきます。
自身にワクチン接種歴がなく、水ぼうそうにもなったことのない方は、検査で確認することなく「水痘ワクチン」を接種することが可能ですので、気づいたら早めに接種していただくことをお勧めします!
さて話を戻します。
先ほど「水痘・帯状疱疹ウイルス」に初めてかかった場合は、「水ぼうそう」になるといいました。
一般的に「水ぼうそう」は、体の免疫がウイルスを抑え込み、自然と治ります。
しかし、残念ながら、体はウイルスを完全に除去することができません。
免疫による攻撃を受けたウイルスは、体の中の「知覚神経節(神経節とは神経細胞が集まってこぶ状になっているところ)」という部分に逃げ込みます。
そしてそこで体の免疫力に抑え込まれ、長い眠りにつくのです・・・
さて、ウイルスを持った子供は大人になり、年齢を重ねていきます。
そして年を取ってくると、徐々にウイルスを抑え込んでいた免疫が弱まってきます。
すると長い間抑え込まれて眠っていたウイルスが、徐々に目を覚まして、活動を始めていきます。
この時、ウイルスは「初めて感染した」時と違い、眠っていた時にいた「知覚神経節」から、知覚神経に沿って進んでいきます。
この時、ウイルスは知覚神経を傷つけながら進んでいくため、それによってとても強い痛みをきたしてしまいます。
そしてそのウイルスが皮膚に顔を出すと、神経の通り道に沿った皮膚に水ぶくれをきたしてしまうのです。
そして、この病気の非常にやっかいなところが、後遺症の存在です。
一番頻度が多くて、やっかいな後遺症が「帯状疱疹後神経痛」です。
帯状疱疹は神経を傷つけ、神経に炎症を引き起こします。
炎症をおこした神経は、その傷がずっと残ってしまうことがあります。
すると水ぶくれがなおっても、神経が傷ついたことによって、その神経からは常に痛みを感じるようになってしまいます。
神経そのものが傷ついた痛みですので「刺すような」「電気がびりっと走るような」「焼けるような」とても不快な痛みとして出ます。
また、軽く触れただけでもびりっと痛くなる「アロディニア」という症状を引き起こすことがあり、こうなってしまうと体が冷えたり、服に触れただけでも痛みが出たり、まともに体も洗えなくなったりと、日常生活に多大なる影響を与えてしまいます。
また一度傷ついた神経はなかなか治りません。
3か月程度は続いてしまうことが多く、状況がよくないと数年以上かけてもよくならないという状態に陥ることも稀ではありません。
その治療も特効薬はなく、なかなか難しいのが実情です。
そのほかにも、帯状疱疹が頭部で発症した場合は、顔面神経麻痺や耳鳴り、めまい、難聴を生じる「ラムゼイ・ハント症候群」や、ウイルスによる角膜、結膜、ぶどう膜炎によって視力低下、失明を生じるなどの重大な後遺症を引き起こすこともあるのです。
ほんと、とても厄介な病気、それが「帯状疱疹」なのです。
なので、この病気には本当に極力かからないほうがいいわけです。
そのために、できる対策はないものでしょうか?
そうです、そこで「ワクチン」なのです!
「水痘・帯状疱疹ウイルス」に対するワクチンを接種すれば、免疫力のてこ入れによってこのウイルスの目覚めを大幅に抑制することができるのです。
先ほど挙げた「水痘ウイルス」も、帯状疱疹の発症予防に役立ちます。
このワクチンは、ウイルスを弱めて作ったワクチンで、「生ワクチン」というカテゴリーのワクチンです。
このワクチンによる帯状疱疹の発症予防効果は約50%、帯状疱疹後神経痛の予防効果は約65%といわれています。
一方、この「水痘・帯状疱疹ウイルス」の表面のタンパク質を攻撃するようにデザインされた不活化ワクチン「シングリックス」が、2020年に発売されました。
「シングリックス」は、今までの生ワクチンに比べて段違いの効果を示します。
現時点のデータでは、このワクチンを接種することで、接種後10年間での帯状疱疹の発症予防効果が約90%に達し、帯状疱疹後神経痛の予防効果に至っては、85~ほぼ100%と、とんでもなく高い効果を示しています。
帯状疱疹の発症、帯状疱疹後神経痛は、50歳を過ぎると発症するリスクが飛躍的に上がることがわかっており、80歳までに日本人の3人に1人がかかるといわれています。
そのため、50歳以上のすべての方に、ワクチン接種がおすすめされています。
「シングリックス」は2か月以上あけて2回接種することになっています(水痘ワクチンは1回接種です)。
「シングリックス」は確かに費用は少しお高めです(当院では1回税込22,000円×2回となります)が、基本的に効果は一生もので、一回接種したらそれでおしまいですので、そう考えると将来の健康に対するそんなに高くない投資なんじゃないかなと思います。
先ほどもお話ししたように、帯状疱疹は全くまれな病気ではなく、みんなが等しくなる可能性のある病気です。
そしてたぶん、発症しちゃったら、「あの時打ってよけばよかったな」と思うワクチンです。
そうなる前に、50歳以上の方は、ぜひ一度、帯状疱疹ワクチンについて接種を考えてみてください!