医師ブログ

2022.12.27更新

クリスマスも終わり、オミクロンに振り回された2022年もようやく幕を閉じようとしています。

しかし最後の最後まで当院はバタバタです・・・

寒くなってから、空気が乾燥してから、そしてコロナを含めた感染をきっかけとして、当院には日々、県内全域からなかなか治らない咳に悩まれる方からのご相談が絶えません・・・

新患の方のご予約がだいぶ先まで埋まってしまい、受診ご希望の方のご期待にお応えできないことも増えてしまっており、大変心苦しく思います・・・
急な症状にすぐに受診していただくのが難しい状態は、今の当院のキャパでは如何ともしがたく申し訳ないのですが(かかりつけの方の症状悪化はなるべく全て対応いたしますので遠慮なくご連絡ください!!)少しでも多くの患者様を受け入れられるよういろいろとやりくりをしています。

外来受診枠を増設した際の1番早い情報源は当院LINE公式アカウントになりますので、ぜひご登録の上、最新情報をご確認いただければと思います!


そして発熱・感染症外来もここ最近は数十分で枠が埋まってしまう状況です(発熱・感染症外来は毎朝8:30頃にWeb上で枠を開放しています。詳しい運用はこちら)。
12月に入り、やはりコロナも増えてきていることが実感されます。

ただ、7波までとは明らかに違う光景が見られるようになりました。

そう。ここ2年間、来るぞ来るぞといって来なかったインフルエンザが、いよいよ出はじめてきたようなのです・・・

当院でも先週頃からインフルエンザ陽性の方が出てくるようになってきました。
また近隣の教育機関でも、いわゆる「クラスター」の状態となっているところがあるようです。

残念ながら、懸念していたこの状態いよいよ現実のものとなりつつあるようです・・・


そこで今回は「コロナ」と「インフルエンザ」感染症、どこが似ていてどこが違うのか、少し考えてみたいと思います。
今回は皆さんが気になっているであろう、主に症状やその経過についての違いを考えてみましょう。
ここでは公に発表されているデータに、私の主観も織り交ぜてお話ししてみたいと思います。


症状について

やはり発熱、全身の筋肉痛や関節痛、頭痛、喉の痛みなどはどちらでもよく見られます。

ただやはりこちらのブログでもお話ししたように、インフルエンザは、突然発熱をはじめとした上記のような症状がいっぺんにでる典型的なパターンが多い印象です(日本感染症学会からも、インフルエンザの無症状感染は10%しかないとのデータがでています)。

一方コロナは、無症状に近い方からインフルエンザ以上に症状が激烈な方まで、幅広くいらっしゃいます発熱のない方でインフルエンザ抗原が陽性になる例はあまりありませんが、コロナ陽性になる方は大勢いらっしゃいます)。
症状の出方も急な方からゆっくりといろいろな症状が出てくる方まで、やはりいろいろです。

とはいっても、症状で見極めることはやはり難しいです。

当院でも周囲にコロナ患者の方がいて、かつ症状が非常に軽い場合はコロナだけの検査を行うことがありますが、基本的に典型的な症状が出てきた場合は、周りの状況に関わらずインフル、コロナどちらも検査します(家にインフルエンザの方がいても、外からコロナをもらっちゃっていた方、実際にいらっしゃいました・・・)

また喘息やCOPDなど、呼吸器の病気をお持ちでない方にも息切れが出ることがあるのが、コロナの特徴かと思います。
一方インフルエンザも咳は起こしますが、激しい息切れはあまり見ません(喘息、COPDなどが悪くなったり、インフルエンザに続いて最近の二次感染を起こしたときはその限りではありません)。

呼吸器にダメージが大きいのはやはりコロナだと思います(実際私が10年以上病院での呼吸器内科医として勤務していた間、純粋なインフルエンザウイルス肺炎は1人しか担当したことがありませんでしたが、コロナの肺炎はこの2年で少なくても30人は診ていると思います・・・)
オミクロンになって確かに肺炎の方は減りましたが、それでもまだまだいらっしゃるため、インフルエンザとはやはり違う病気なんだなというのが私の印象です。

ですので呼吸器系の重症化リスクコロナの方が断然高いです。
また血栓症などもコロナの方がリスクが高いです。

ただインフルエンザも特に高齢者では命取りになることがあるので、どちらもワクチン、手洗い、必要時のマスクなどの感染対策は必要です(年明けのコロナワクチンはコチラで、インフルエンザワクチンはコチラで引き続き受け付けています)。

あとは、コロナの方が下痢が多い印象です。
また味覚嗅覚障害もコロナに多いのはご存知の通りです。


感染から発症までの期間について

次に症状が出るまでの期間ですが、こちらもインフルエンザよりコロナの方が幅広いという印象です(WHOも感染から発症までの期間はインフルエンザで1~4日、コロナで2~14日と報告しています)。


後遺症について

最後に後遺症ですが、ご存知のようにコロナにはさまざまな後遺症が起こります。

当院の特性もあるのでしょうが、やはり呼吸器系の症状(咳や息苦しさ)が何週間、場合によっては何カ月も続くケースが数多くいらっしゃいます。

一方インフルエンザにもコロナではないにせよ、咳などの症状が続く方はいらっしゃいます。
ただ、インフルエンザ後の長時間続く咳は、大半がいわゆる「感染」をきっかけとした喘息やCOPD、鼻炎の悪化が大半なのですが、コロナの場合はこれに加えて純粋な感染後遺症としての長引く咳が一定数いらっしゃり、診断、治療がより難しいという特徴を持っているように思います。


という訳で、楽しみな年末年始を前にしていよいよ現実味を帯びてきてしまった「フルロナ同時流行」台無しにしないためにも必要な対策はしっかりとって、楽しく元気に過ごしましょうね!

それでは皆様よいお年を!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2022.12.04更新

ワールドカップ、日本代表の目覚ましい活躍で、患者さんも寝不足の人だらけですね(笑)

私もそりゃ見たいと思っていますが、朝4時に起きて見てしまうと間違いなく臨床能力が落ちてしまいます・・・
応援できる方は、精一杯画面の向こうにパワーを送ってください!

そういえば、数年前、元日本代表の岡崎慎司選手が「アスリート喘息」であることを告白したことが話題になりました。
他にも有名どころではフィギュアスケートの羽生弓弦選手、レスリングの吉田沙保里選手などがこの病気をお持ちのようです。

 

そしてこの時期は、体育や部活,運動などで苦しくなるということで受診される方が増えるのです。

 

そこで今回はこの「アスリート喘息=運動誘発性喘息」にフォーカスを当ててみたいと思います。

喘息はこちらでも書いている通り、気管支が敏感になることで咳が出やすくなり、気管支の壁がむくんだり、炎症の結果痰が多く分泌されるようになるために空気の通り道が狭くなり、ゼーゼー、ヒューヒューいったり、息苦しくなる病気です。

喘息模式図

その喘息が起きるにはいろいろな原因があります(アレルギー、感染症、環境などなど)が、その中でも「運動」が原因となる場合があり、これを「運動誘発性喘息」と呼んでいます。

運動誘発性喘息は気道に乾いた、冷たい空気が多く入ってくることによっておこると言われています(一方、喘息を持たない人が、運動の時だけ同じような症状が起こることがあり、これは「運動誘発性気管支攣縮」とよばれています)。

具体的には、乾いた空気が入ることで気管支表面の細胞から水分が失われ、それが刺激となっていろいろな炎症が起こるのではないかと言われています。
冷たい空気は温かい空気に比べ、含まれる水分量が少なくなるため、より細胞の渇きが強くなっていまい、寒く、乾燥するこの時期に症状が出やすくなってしまいます。

また当然運動量が増えると口呼吸となります。
口呼吸は
、副鼻腔で加温・加湿された空気を取り込める鼻呼吸と比べて、冷たく乾いた空気が入ってきやすくなる上、「鼻毛」というフィルターを通さない分、様々な異物・刺激物を通過させてしまうため、気管支の刺激になってしまいやすいのです。

 鼻呼吸、口呼吸

そしてこの現象は、より冷たく乾いた空気が多く入る、マラソンサイクリング、走る距離の長いサッカースキースケートなどのウインタースポーツで起きやすいと言われています(今回のワールドカップでも鎌田大地選手は初戦のドイツ戦で12km以上走ったそうです。野球部だった私には到底想像できない運動量です・・・)。

一般にはあまり知られていない病気のため、このような状態になっているのに気づかない方もいらっしゃいます。
最近急にパフォーマンスが悪化した、成績が急に落ちたということで、心配された監督やコーチから医療機関を受診されて診断できたケースも少なくありません(他に、特に女性の場合なら貧血なども原因として考えておく必要があります)。

さて、このような運動誘発性喘息が起きた時、一番皆さんが心配されるのは、「私は運動をしてはいけないの?」といったことです。
実際、当院に来院される方のお話しでは、他の医療機関や学校で運動を避けたほうがいいとずっと言われていたため、体育を何年も休んでいたという方もいらっしゃいました。


結論から言うと、運動をあきらめる必要はないのです!あきらめてはいけません!

しっかりと対策をすればほとんどの場合、症状はしっかりとコントロールができるからです。

事実、運動誘発性喘息、つまりアスリート喘息は、一般の方よりアスリートの方に有病率が高いと言われています(より激しい運動で誘発されやすくなるので、当然と言えば当然です)。

しかし、しっかりと対策をしてパフォーマンスを維持できた多くのアスリートが輝かしい実績を残すことが出来ているのです(上記に挙げた3人はいずれも世界トップクラスの実績を残しましたよね)。
「正しい治療」を行った場合、そのパフォーマンスに影響は出ないことがわかっていますImmunol Allergy Clin North Am. 2018 May;38(2):205-214

 

ではどのような治療をすればいいのでしょうか?

 

まず、一番有効性が高いのが、運動をはじめるちょっと前(5~20分前)に、気管支拡張薬の吸入薬(サルタノールとかメプチン)を使用することです。
これは効果がすぐに現れ、2~3時間効果が続くとされています。

また「キプレス」「シングレア」「オノン」などの、ロイコトリエンという炎症性物質の働きを抑える薬も有効性が高いというデータも出ています。

そして喘息についてはしっかりと吸入ステロイド中心とした喘息予防薬を使用しつづけることが大事になります(運動誘発性喘息ではなく単なる気管支攣縮なら必要ありませんが、喘息は診断まで数年の間ずっと見逃されていた例にしばしば出会いますので、喘息がないという判断はかなり慎重に行う必要があります)。

喘息のコントロールが悪いと、当然ながら運動時に症状は明かします。

さらには、薬剤を使用しない方法も試してみたいところです。

例えばウォーミングアップとして、運動強度を10~15分かけて徐々に強めることで、気管支の炎症反応を起こりにくくする効果があるとされ、こちらは結構データがそろっています。Am J Respir Crit Care Med. 2013 May 01;187(9):1016-27

また肥満がある場合はやせることで気管支の炎症が起こりづらくなることもわかっています。Respiration. 2015;89(6):505-12

他にもマスクを着けた運動なども有効性が考えられていますが、そもそもマスクだと強度の高い運動はしづらくなるので、やはりしっかりと薬剤を使用したほうがよさそうです。

レベルの高いアスリートだと、ドーピングなども気にしなければいけないことになりますが、基本的に吸入ステロイドを基本とした長期管理目的の吸入薬は、ほとんどが全く問題なく使用できます(エナジア、アテキュラのみまだ使用できず、特例申請が必要です。レルベア、テリルジーは2020年まで禁止でしたが、2021年から使用可能となっています)。

「発作止め」に当たる吸入気管支拡張薬については、サルタノールは申請なく使用可ですがメプチンは通常使用できず、どうしても使用しなければならない場合、特例申請が必要となります(もちろんメプチン錠、メプチンミニ錠など、メプチンの内服薬も使用できません。そもそも現在の治療で、どうしてもこの薬がないといけない場面は、私はほとんどないと考えていますが・・・)。

内服薬もキプレスなどのロイコトリエン受容体拮抗薬、それに抗ヒスタミン薬(いわゆる花粉症の薬ですね)は申請なく使用できますが、よく巷では使用される「ホクナリンテープ」は通常使用ができないので注意が必要です。

内服のステロイド薬(プレドニン錠、デカドロン錠、リンデロン錠など)はもちろん使用できません。
(なおこの情報は2022年時点のものになりますので、最新情報は都度ご確認ください)。

喘息治療薬とドーピング

 

という訳でなんだか最近運動すると苦しいなと感じられた方、まずはお近くの呼吸器内科(お子様なら小児科)に、お早めにご相談ください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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