医師ブログ

2021.11.20更新

コロナワクチンもひと段落付いたと思ったら今度はインフルエンザのワクチンでてんてこまいです・・・

かかりつけの方がおかげさまで以前より増えたため、今年は相対的にワクチンの数が足りません・・・。
何とかかき集めていますが、やはりかかりつけの方の接種のご希望には最優先で応える必要があるので、インフル専用枠のご用意がわずかしかできていないのが実情です。
かかりつけの方の接種は10月11日から開始しており、ある程度行き渡りつつあります。
これがひと段落すると枠のご準備ができるようになると思いますので、ご希望の方はもう少々お待ちいただければと思います。
最新情報もできるだけLINEアカウントに掲載しますので、フォローしていただけると幸いです。

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さて、当院には呼吸器の疾患をお持ちの方が多くいらっしゃいますが、もちろん一般的な内科診療もしっかりと行っております。
ですので、血圧上昇、コレステロール値や中性脂肪値の上昇(脂質異常症)、糖尿病と言った生活習慣病の方が数多くご来院されます。
その中でも高血圧や血圧が高めの方は非常に多く、呼吸器疾患など他の疾患でかかられていても、同時に血圧も高くて気にされている方は少なくありません。

そりゃそうです。

現在の診断基準で、わが国で高血圧に当てはまる方は4300万人と言われています。
日本人全体に占める割合としてはちょうど3人に1人ということになりますが、この分母は、子供や病院に全く通っていない若い方を含めた数値となるので、当院にいらっしゃる方の中で見ると割合は当然もっと上がり、むしろ「血圧が高めでない」人の方が少ない印象です。
ですので、当院にいらっしゃる血圧が高めの方、つまり大部分の方は、当院の中で血圧を測定する機会があります(もちろん強制ではありませんが)。

ここで良く言われるのが「私、病院に来るといっつも血圧高くなるの。家ではいつも低いのよ」というお言葉です。

確かに、血圧記録を持ってきていただくと理想的な血圧なのに、当院の血圧計での血圧では30も40も高い方がいらっしゃいます。

医学的にはこの状態を「白衣高血圧」といいます。

白衣を見ると緊張して血圧が上がってしまうことから名づけられましたが、クリニックの中で測ることそのものも緊張するでしょうし、必ず白衣を見ることだけが要因ではありません。
この「白衣高血圧」、統計的には診察室血圧が正常な方と比べて脳や心臓の血管トラブルのリスクが高く、また白衣高血圧から持続性の高血圧に移行する例も多く注意すべきとされています。

ということで「白衣高血圧」を見抜くことは大事なのですが、本当に院内で血圧が高く出た方は皆さん「白衣高血圧」、なのでしょうか?
そこで今回は、クリニックで血圧を測るときの、本当に正しい血圧の測り方とはどうなのか、ということについて考えてみたいと思います(写真のモデルは当院のエースブロガー、深田です)。

 

まずは血圧を測るタイミングからです。

当院にいらっしゃったときに、すぐに血圧計で測ってしまうと血圧は高めに出ます。
欧米では5分以上安静にしてから測定するように定められていますが、簡便性を考慮し、日本では1~2分以上安静にするようにされています。
とはいえ、混雑もあるし、後ろがつまるとドキドキで血圧がかえって上がってしまいそうです。

最低1分(激しく動いてきた場合は2分)待ってから測るようにしましょう。

あと、健康診断や診察などで来院され、尿を検査で出す場合があり、尿を我慢して来院されることもあるかと思います。
この場合は先に尿を検査に出してしまいましょう。
満タンの膀胱から排尿を済ませると血圧は10mmHg程度下がります。
この間に体を休めることもできるので、最低1分の休息の点に関しても満たすことができます。

次に測るときの衣服です。

もちろん理想は半袖で、皮膚にカフを直接巻くことですが、薄手の長袖ならそのまま上から巻いてしまっても問題ありません。
複数の報告では2mmの薄手のニット程度までの服では、ほぼ測定する血圧に影響はなく、4mmのやや厚手の服になると約3mmHg、7mmの厚手の服になると約5mmHg血圧が高く出る傾向があるようです。


血圧測定時の注意

当院の血圧計に掲示してある注意書きです


また無理に袖をまくって上腕が締め付けられると、血圧がやや高く出る原因となりますので、できれば簡単に薄着になれる服でご来院ください。

次に測る姿勢についてです。

やはり正しい姿勢にならないと血圧は高く(もしくは低く)出てしまう可能性があります。

まずは腕の高さです。

台に腕を置き、カフをまいた時にそのカフが心臓の高さに来る必要があります、と言ってもわかりにくいので、カフの高さを男性は乳首の高さ、女性は乳房の高さに合わせてもらうといった方が分かりやすいかもしれません。

血圧測定

その位置に椅子の高さを合わせてください。
ちなみにこの位置よりカフが5cm低いと3~4mmHg血圧が高く出ます。

 

次に測る姿勢です。

座る椅子ですが、これは背もたれにもたれかかれることが重要です。

背もたれによりかからないで測るだけで6~10mmHg程度上がると言われ、前かがみの姿勢だとさらに血圧は上がりやすくなります。

血圧測定

実は当院でも以前は回転式スツールを使用していたため、この姿勢になってしまっていました。
このことに気づき、当院では以下の写真のような配置とすることにしました(ミソは血圧計の「横」に背もたれ付きの椅子を置いてあることです。このようにすればアームイン式でも前かがみにはならず、背もたれに背を付けながら血圧を測れます)。

血圧測定

 

当院では腕を入れるアームイン式の血圧計を置いていますが、この血圧計、工夫しないと上の図のように、前のめりの姿勢でないと腕が入りません。

ですので、当院では血圧計の後ろではなく、横にいすを置くこととしており、また左、右どちらでも測れるように椅子を二つ設置することとしました。

血圧計

(足をがっちり固定したので動かないようにしたはずしたが、私達の周知不足でやはり皆さん椅子を動かそうとされる方が多く、すでに椅子が1つ壊れました・・・
でもそりゃそうですよね、今までと全然違う配置だもの。
うちのブロガー深田もスタッフブログで一生懸命お知らせしてくれてます。わからないことがあったらお気軽にスタッフにお聞きください!!)

また、足を組まない、足を地面につけてブラブラしないということも大事です。
足を組むと血圧は2~8mmHg上がる可能性があります。

血圧測定

また測っている間ですが、この時にはお話をしないようにしましょう。
お話ししながら測ると5~10mmHg程度上がってしまうことがあります。心を無に。

測る回数ですが、2回以上測ると体、ココロともに慣れた2回目以降の方が下がる方が多いです。この場合は2回の平均を取ってください。


というわけで、このようなことを周知してから当院で血圧を測定した時に、以前より下がったというお声を頂くことが増えてきました。

ただこれを守ってもなお血圧の高い方はやはり要注意です。
その場合、家でも血圧を正しく測り、自分の血圧を知っていただくことが重要となってきます。

その家での測り方についても、次回以降また時間見つけて書いてみようかな?と思ってます。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.11.01更新

前編はこちら!
2021.10.13 喘息の吸入薬は続けるべき?

 

ようやくコロナも落ち着き、ここ加藤医院のある茅ヶ崎、そして雄三通りにも活気が少しずつ戻ってきています。

ただ、ありがたいことなのですが、その活気は当院院内にも及んでいます。

この時期は季節の変わり目で、咳など呼吸器症状でご来院いただく患者さんも非常に多く、数日前からずっと予約枠が埋まってしまう状態が続くなどご利用いただく患者さん方にご迷惑をお掛けしてしまっています・・・

先週からまたスタッフを増員するなどできるだけの対策は打ってはいます。
が、やはり当院は主に咳という判断の難しい症状を主に診察している手前、どうしても患者さんからお話を伺う時間が長くなったり、また症状が悪化してしまった方にも細かく状況をお伺いしたり対処法をお話しさせていただいたりと、診察にお時間が必要となるクリニックです。

現在スタッフの増員の他にも、システムやフローの抜本的見直し、新しいシステムへの設備投資などを可及的速やかに行っており、まだ道半ばの状態です。

まだしばらくはご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが、少しずつ改善の兆しも出ています。今しばらくお待ちいただけるようお願い致します。

なお受診枠が埋まってしまい、なお早急な受診をご希望される際は、可能な範囲でなるべく早めに診察できるようにスタッフが受診調整をさせて頂いておりますので、遠慮なくお電話でご相談ください。


というわけで、私も多忙を極めていましたのでなかなかブログの更新ができませんでした・・・
ようやく時間を作った今午前0時、何だか目もギラギラしてるので、執筆に取り掛かろうと思います。


さて、前回は喘息という病気を続けることの難しさについて書いてみました。

今回は、じゃあ喘息の人はどうしたらいいの?ということについて、少し考えを書いてみたいと思います。

まずは喘息の治療をしている方が、この治療をいつまで続けたらいいかの判断についてです。

まずその根拠として考えるのは、その方の喘息という診断が本当に正しいかどうかの確認です。

以前もお話しした通り、喘息には「数字」がありません。
ですので、通常は症状や背景、歴史などから総合的に判断するしかないのが現状です。

そして、これが結構難しいのです。

私の外来にもいままで喘息と言われて治療をしていたものの、いろいろ診察してみたら実は喘息でなかった方という方が時々いらっしゃいます。
その場合、真の原因の治療を行うことで症状が出なくなれば、治療の終了は当然可能となります(ただ真の原因があっても、そこに喘息が合併していたという可能性は常に考える必要がありますが)。

次にやはり症状の原因が喘息であった場合、その症状の原因が明らかになっている場合は、その原因の除去にトライしてみます。
例えば長く使用していた家具や寝具などにアレルギーの原因であるダニが多くいたりペットを飼っていることで症状が起こっていたりなどという場合です。
その原因を除去したら全く症状が出なくなるケースがあるので、その場合は治療中止が可能かもしれません(ペットを手放すことはなかなか難しいのですが・・・)

しかし、原因を完全に除去できることは、正直あまり多くはありません。
また取り除けない原因(花粉やカビ、自宅や職場の環境、温度差や湿度の変化など)も多くありますし、そもそも原因がはっきりしない、もしくは全くない場合も少なからずあります。

このような場合は、やはり簡単には治療を中止できません。

前回も書いたように、喘息は、患者さん自身が症状が落ち着いていると感じていても、実際には気道に炎症が残っており夜だけの咳とか、天気の変化による咳とかといった多少の症状が残っていることが少なからずあります。
この場合は、何かをきっかけとして症状の悪化をきたすリスクがあります。そしてこの状態を繰り返すと、炎症はだんだんと治まりにくくなってしまいます。

炎症が続いている場合は、しっかり治療を続けることに異論の余地はありません。


一方、しっかりと吸入を続け、症状を完全にコントロール(24時間まったく咳がないのが続く状態です)し続けられている場合を考えてみます。
その場合、ずっとその吸入を続けなさいというのは簡単なのですが、患者さんには「とは言っても、症状もないのにいつまで続ければいいんだろう・・・?」という疑問が必ずわきます。

症状がなくなったら、治療はいつまで続ければいいものなのでしょうか?

これに対する正解は、実はまだありません(先月出された最新の「喘息予防・管理ガイドライン2021」でも、その中止の基準はないとはっきり明記されています)。

そこは患者さんの状況や考え方と、我々医師の考え方のすり合わせで決まっていくものなのです。


そこでここからは私個人の考え、やり方を書いてみます。

私は、まずしっかりと正しい治療を行い、症状がなくなっていることを2-3か月確認したら、少しずつ治療レベルを下げてみます(吸入薬のレベルを下げたり、内服薬をやめてみたりします)。
またしばらく見て大丈夫そうなら更に治療レベルを下げ、できるだけ低い治療レベルまでもっていきます。

その状態でどのシーズンも悪化してないことを確認したら、やめてみることはできるかもしれないと考えています。


また近年、新しいデータも出てきました。


吸入薬である「シムビコート(吸入ステロイドと気管支拡張薬のハイブリッドの薬です)」は現在、1日2回の定期的な吸入に加え、症状が悪くなった時にも追加で吸入できるという使用法(SMART “スマート” 療法)ができます。
シムビコート

これを、軽症の喘息の人に対し「定期的な吸入をせずに、症状が悪化した時だけ吸入をする」という使い方をさせたところ、通常の「毎日吸入ステロイドを使い、悪化時に発作治療薬を使う」使い方と比べて、悪化の頻度を変えなかったという研究結果がでました。N Engl J Med. 2018:378(20):1877-87.  N. Engl J Med. 2019;380:2020-30.
実際、喘息の国際ガイドライン(Global Initiative for Asthma;GINA)では、軽症の喘息の患者さんにはこの治療法が一番勧められている治療法になっています。

ただこれにも問題点があります。

まずはこの治療法が、今のところ日本では保険上認められていないということです。

実はこの研究には日本人が含まれていませんでした。
治療というのは人種差がでることがあり、確かに日本人で同じ結果になるという保証はなく、まだ大っぴらにはこの治療をおすすめすることはできないのが実情です。

二つ目が、前にも述べたように、どう「軽症な」喘息であるということを判断するかということです。

症状が軽くても、たびたび出てしまうような方では、「軽症」とは言い切れないのでやはりこの治療法は好ましくありません。

また、この治療法を行っているときに、本当に患者さんの状態が安定しているかどうかは大事な点です。
本当はもっと悪い状態なのに、本人にその自覚がない場合は、それを患者さんとのお話だけで見抜くのは簡単ではありません。

とはいえこの治療法も、患者さんの状況によっては有力な選択肢となるかもしれません。
少なくとも患者さんにとって、「症状があるときだけ使えばいいよ」と言われること、将来的にはそのような状態になりうる期待ができうることは、精神的にはずいぶん楽になるのではと思います。
「将来的には」ひとつの良い選択肢にはなり得るかもしれませんね。(「現在は」保険適応はありませんが、うまくやれば・・・なにをすめr

ちなみに症状があるときだけ発作治療薬(メプチンやサルタノール)のみを使う治療に関しては、気管支の炎症を悪化させること、悪化、入院の頻度を増やしてしまうことから、最新の国際ガイドラインで否定されています。
このような治療法は、今はよほどの軽症でない限り、基本的にはおすすめできないと思います。

とにかく、喘息の治療はいろんな面で主治医とのコミュニケーションが大事な病気です。
よーく主治医と話し合って、お互いが納得できる治療法を選択していきましょう。


というわけで、午前3時半になりました。ギラギラです。ランナーズハイです(笑)

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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