医師ブログ

2023.08.29更新

前回お話しした、私が当院に来てから”9か月ぶり通算9回目”の工事が終了しました。

今回は待合室を中心にリニューアルを行いました。

一番の変化は壁の木目から白への色変更で、より明るい雰囲気で、居心地の良い空間と感じていただくようにすることが目的でした。
前回の、壁をぶち抜くなどの大胆なリフォームではありませんが、11日間かけて、結構な大工事となりました。

しかし・・・

前回改装後は「とても明るくなりましたね!」「別のクリニックみたいですね!」との声を多くいただいたのですが、今回はそのようなお声がめちゃくちゃ少ない・・・

長年当院に通い続けてくれているある患者さんからは「で、どこ工事したの?」といわれる始末。

・・・まあそれだけ今までの当院の待合室の雰囲気も自然と馴染んでいた、ということだったんでしょう。

そんな新たな壁には、いくつかリーフパネルを飾ってみて、もう少しインパクトを出してみようかと思います(べっ、別にみんなに「キレイになったね」って言って欲しいわけじゃないんだからね!)

 


さて、まだまだ続くコロナやその他の風邪の流行もあってか、以前喘息で治療をおこなったものの途中でお見えにならなくなってしまった方が、数か月、数年ぶりに症状が悪化して再度いらっしゃるという例が増えております。


喘息が悪化してしまう一番の要因は、感染症だといわれています。
加えて治療が中断されていたために、感染が喘息悪化の引き金になり、症状が大きく悪化してしまったわけです。


もちろん自己判断で(時には医師の間違った指示で)喘息の治療を中断してしまったことが、悪化の大きな要因であることは否めません。

しかし、こちらのブログでもお書きしたように、喘息の治療って、治療効果のつかみどころもないし、よくなったことをデータで出すことも簡単ではないという面もあり、なかなか続けてもらうのが難しいという側面があるのも、まぎれもない事実です。

確かに喘息の治療の主役は吸入薬があり、飲み薬に比べたらめんどくさいかもしれません。
最初に「治療は続けてね!」と言われたにも関わらず、それでも喘息治療がめんどくさくなって、ついつい治療をやめてしまった方の気持ちもよーくわかります。

でも、いったん悪くなると、そこから薬を戻してもすぐには良くならないことも少なくありません。
また改善→中止→悪化というサイクルを繰り返すことで、徐々に薬を使っても治りにくくなっていってしまう方も実際にはいらっしゃいます。

こうなってしまうと患者さんも、我々医療者も、ほんと大変です。

ですのでやっぱり患者の皆さんが後のち大変な思いをしないように、やはり喘息の治療は続けていただきたいというメッセージは、ずっと、確実にお伝えしたい、と思っています・・・

でもそしたら、そのメッセージを一人でも多くの方に届けるには、どのようにお伝えしたらいいんだろ・・・?


日々悩んでおりましたが、最近考えついたこの方法ならわかっていただけるかな?
そう思って今回その考え方をお見せしてみようと思います。



それではまず、皆さんにお尋ねしてみたいと思います。

まず、「風邪」という病気は、「治る」病気でしょうか?

もちろんほとんどの方が「治る」病気であると答えます。

それでは、「風邪が治る」とは、どういうことなのでしょう?

風邪をひくとき、体の中には病原菌やウイルスが入ってきます。
これらが体の中で暴れて症状を引き起こすのですが、薬や免疫をつかって病原菌を「排除」できれば、症状は改善するわけです。

悪いものが体から「追い出せ」れば、「治る」ということなのです。

それでは、一方「花粉症は治る」と思っている方、いらっしゃいますか?

花粉症が「そりゃ完治するっしょ!」と考えておられる方は、あまり多くないのではと思います。
花粉症シーズンになったら、その症状を「抑える」ために薬を使用すると考えておられる方が多いかと思うのです(もちろん舌下免疫療法がうまくいけば、本当に「治って」しまうことはありえます)。

花粉症は「アレルギー」による病気です。
「アレルギー」とは、人間の免疫機能が、ある環境において過剰に反応してしまい、症状を起こしてしまうことを言います。

つまり、風邪とは異なり、その原因を「追い出す」とができないのです。

「喘息」も同じことなのです。

「喘息」「花粉症」は、「アレルギー」による病気であるとの共通項があります。

別の言い方をすれば、喘息も花粉症も、それは「体質」であるともいえるのです。
その「体質」が出てくるのを抑えるために、治療は続けていく必要があるということなのです。


そして、ここでまたもう一つ難しい問題が出てきます。


「アレルギー」は、季節や環境、本人の体調などで、自然と落ち着いてしまうことが珍しくないということです。

例えば喘息についても、症状が落ち着いたからと言って勝手に薬をやめてしまった場合、やめた翌日からすぐに症状が悪くなってしまうことは正直そんなに多くありません(もちろん不安定な状態や重症度が高い場合は、すぐに悪化することもあります)

やめてもしばらく何も変わらないことは珍しくないのです。

すると、これを「治った」ととらえてしまう人は少なくありません。

でも、さっきもお話ししたように、アレルギーはそもそも「治る」ものではありません。
たとえ症状がなくなったとしても、それは季節や環境、本人の体調などが、再度の症状を引き起こさせない状況であっただけなのです。

となると当然、季節や環境、本人の体調が悪化すれば、またぶり返してしまいます。

これが、喘息の治療を続けていると、「体質」としてのアレルギー症状は、当然出にくくなります。
季節や環境、本人の体調の悪化など、不利な状況においても、被害は小さくて済むわけです。


つまり私は、喘息やアレルギーの治療は「医療保険」みたいなものだと考えています。


元気な時は、一見「医療保険」はムダなもののように思えます。ただお金を払っているだけの存在。
しかし、一度体に異変が生じたときに、「医療保険」の存在は大きな助けになります。
いざというときに支えてくれる存在となるわけです。


喘息の治療も同じようなものです。

症状がなにもなくて落ち着いている時、本当にこの治療は意味があるのか?ムダなんじゃないのか?と思われがちです。

しかしひとたび季節、環境、本人の体調の悪化など、よくない状況になった際、それによる症状悪化の振れ幅を最小限にしてくれるのです。

治療をしっかり続けていたことがこの時、大きな助けとなるわけです。


ある報告では、喘息の治療をしっかりと指示通りに続けられる人は40%に満たないといわれています。Tamura G, et al : Respir Med 101(9);1895-1902,2007
そして、高血圧や高コレステロール、糖尿病などの治療と比べて、明らかに続けてもらいにくいという実態も報告されています。lnternational Review of Asthma&COPD vol13 No4 2011

喘息の治療をして、「この治療意味あるのかな?」と考えられるくらい安定していることは、つまり治療がうまくいっているという意味で幸せなことなのです。
その幸せを実感しつつ、上のことを思い出してもらい、ぜひその安定している状態を維持してほしいと思います。

 

一方、ついつい治療をやめてしまった方、おめでとうございます!
皆さんは決して「少数派」ではなく、むしろ「多数派」です!

当院ではもちろん治療を中断したからと言っても怒らないので(しっかり指導はさせて頂きますよ)調子が悪くなったら遠慮なくご相談ください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2023.08.04更新

昨年のデジャブです・・・

ここ最近、発熱外来の受付が開始数分で埋まってしまいます。
そして来院される方の半数以上がコロナ陽性になっています。

昨年のこの時期がまさに同じような状態でした。
ちょうど時期も重なっており、昨年の改装に伴う夏季休診前も、てんやわんやの日々だったことを思い出します。

ただ今年は昨年と違い、大改装による導線の改善を行ったことやスタッフの増員、それとスタッフもだいぶ慣れてきたことも重なり、多少お待たせはさせてしまっているものの昨年よりはスムーズに行えています。
あと今年は世間で大きく騒がれてはいないので、スタッフの「追い込まれている感」が薄いのも確かに感じます。

昨年は8月にピークが来てその後収束しました。
今年もさっさとピークアウトしてもらいたいものです・・・


さて、そのような状況の中で、発熱や頭痛、全身の関節痛などのつらい風邪症状に対して、「熱冷まし」、「痛み止め」を希望されるケースが増えています。

その中で、「喘息の方」が熱冷まし、痛み止めを使えるかというご質問を多く受けるようになりました。

今回はそのご質問にお答えしてみよう!っと思います。

例えばけがや虫歯などで病院や薬局を訪れた際も、喘息であることを告げると、いわゆる解熱鎮痛薬を出すことをためらわれることが少なくありません。
ではそもそもなぜ、喘息の方は解熱鎮痛薬を使うことに対し、ナイーブになってしまうのでしょうか?

それは、喘息の方の「一部」に、解熱鎮痛薬を使用すると大変な発作を起こしてしまう方がいらっしゃるからです。

そのような喘息の型を、「アスピリン喘息」と呼びます。

アスピリン喘息は、解熱鎮痛薬であるNSAIDsエヌセイズと呼びます。日本語では「非ステロイド系抗炎症薬」と呼ばれています)を使用すると、喘息発作(実は「発作」という用語は、現在「急性増悪」という用語に変更されています。ただ今回ここではなるべくわかりやすく説明したいので、あえて「発作」という用語のままで説明を続けます)が起こってしまう病気です。

この喘息発作はしばしば強烈で、呼吸不全や窒息寸前まで行ってしまうことも珍しくありません。
そして、量的にはほんの少しのNSAIDsでも起こってしまうため、湿布や目薬などでも重い発作を起こしてしまいます。

「アスピリン」もNSAIDsであり、当初はアスピリンで発作の起きる病気ということでこの病名がついたのですが、今はアスピリン以外の多種多様なNSAIDsにも反応してしまう病気だったことがわかっています。

「アスピリンだけじゃない」という部分をしっかりと理解しておく必要があります。


体の中で炎症が起きると、体内では「プロスタグランジン」という物質が作られます。
NSAIDsは体の中でプロスタグランジンを作らせないように作用するのですが、アスピリン喘息の方ではどういうわけかプロスタグランジンを作らせない代わりに、ロイコトリエンという物質をたくさん作り始めてしまうのです。
このロイコトリエンという物質は、気管支を収縮させたり、アナフィラキシーを誘発させたりする、タチの悪いアレルギー物質です(この物質を抑える薬として、「モンテルカスト(商品名:キプレス、シングレア)」とか「プランルカスト(商品名:オノン)」とかいった薬があります)。

このような特徴を持つアスピリン喘息の方は、喘息全体の方のうちの約10%といわれています。
そして30~50代くらいの女性に多いとされています。

逆に言うと、90%の喘息の方ではこのような反応は起こりません。
その違いが、どこにどうあるのかといったことは、まだよくわかっていない部分も多いのです。

では、喘息の患者さんにNSAIDsは使っていいのでしょうか?

結論から言うと、「アスピリン喘息」でなければ、使うことはできます。
ただし、注意しなければならない点がいくつかあります。

アスピリン喘息は、通常生まれ持って出てくるものではないとされています。
大人になってから出現してくる病気なのです。

そして、アスピリン喘息になる前は、普通に解熱鎮痛薬を使用できていたことが少なくありません。

いままで解熱鎮痛薬を使っても何ともなかったから、自分は大丈夫、とは言いきれないのです。
だから、「その喘息は、アスピリン喘息でない喘息だ」と簡単には言えないという問題点があるともいえます。

また、NSAIDsにもいろいろな種類があり、発作を起こしやすいものと、比較的起こしにくいものがあります(ただアスピリン喘息の人の中でもその起きやすさは様々で、起きづらいといわれている薬剤でも重症な発作を起こすことがあります)。
比較的発作を起こしづらい薬で大丈夫だった方が実はアスピリン喘息だったという例もあるので、その投薬歴は十分に確認、吟味する必要があります。

一方、普通の喘息の方がアスピリン喘息に移行することは通常ありません(通常の喘息に後からアスピリン喘息が加わることが全くないとは言い切れませんが、基本的にはまれです)。
喘息の診断の後に特に症状が大きく変わっておらず、かつ診断後に解熱鎮痛薬を使用して問題が起きていなければ、通常はアスピリン喘息ではないと考えて大丈夫です。

逆にどういう人に疑うかというところも考えておいたほうがいいでしょう。

アスピリン喘息を持っている方は、高確率で慢性的な副鼻腔炎を持っています。
そしてそれによって嗅覚障害をきたしている方も少なくありません。

喘息だけでなく、よく鼻水や鼻づまりなど、慢性的な鼻炎を起こしている方、それに嗅覚が弱い方は注意したほうがいいかもしれません。

上記から、完全にアスピリン喘息を否定しきれない人は、万が一アスピリン喘息であったとしても比較的危険性が大きくない薬剤から使用したほうが無難だといえます。
例えばNSAIDsの範疇には入らない「アセトアミノフェン(商品名:カロナール)」はまだ安全性が高いとされています(絶対ではありませんし、一応添付文書上ではアスピリン喘息の方には使用してはいけないとされています)。

ほかにはセレコキシブ(商品名:セレコックス)という「COX-2阻害薬」といわれる薬や、チアラミド(商品名:ソランタール)といった「塩基性NSAIDs」と呼ばれる薬が、まだ多少は安全性が高いとされていますので、怪しい方の場合はこちらから使用することもあります(とはいえ、NSAIDsにも症状や病気によって使い方が制限されることもあるので、全員にこの薬剤というわけにはいかないのが難しいところです)。
症状によっては漢方薬を使用するという選択肢もあるでしょう。

一般的によく使用される、「ロキソニン」「ボルタレン」、それに市販の解熱鎮痛剤などの薬を、喘息の方が使用する場合は、呼吸器の専門施設の元でアスピリン喘息の可能性について検討してもらい、しっかり否定されてから使うようにされたほうが安心だと思います。


さて、当院は8月10日から、昨年に引き続き少し長めの夏季休診に入ります。

おかかりの方には2年連続で大変ご迷惑をおかけしてしまうのですが、今回も院内の改装工事を行うためです。

今回は待合エリアの工事を行います。

今までよりもより明るい雰囲気となり、またほんのわずかですが窓側のスペースが増えるため、今までよりも少しだけ余裕をもって移動することができるようになります(席数は今までと変わりありません)。
あと、診察室奥の作業スペースの工事も行います。
こちらは患者さんにはあまり関係ない部分なのですが、一応皆様の目に入る部分ではあるので診察室の雰囲気も多少ですが変わるかもしれません。

一部では「茅ヶ崎のサグラダファミリア」とも呼ばれているそうで、改めて数えてみたら、私がこのクリニックに来てから、足掛け3年半で都合9回目の工事のようです(笑)
でもさすがにサグラダファミリアも今回の工事でいったん完成を見るものと思います。

改装が終わり皆さんの中には改装ロスでさみしい方もいらっしゃるかもしれませんが(笑)、またお休み後のクリニックの様子を楽しみにお待ちください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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