医師ブログ

2023.01.21更新

年が明けてからも、当院には発熱・感染症外来のお問い合わせを非常に多くいただいており、当日の枠が受付開始後数分で埋まってしまう日も珍しくありません。

コロナの流行もあいかわらずなのですが、以前のブログでお書きした、今年はインフルエンザにも注意したほうが・・・という予想が、残念ながら当たってしまったようです。

インフルエンザは全国的にも広がりつつある状態ですが、特にここ茅ヶ崎ではどういうわけだかかなりインフルエンザの患者数が増えており、現在「注意報レベル」までになってしまったとのことです。

神奈川インフルエンザ

【定点当たり報告数の保健所別推移(神奈川県 2022年第50週~第52週)】 神奈川県衛生研究所HPより

 

当院へお越しになる発熱・感染症外来の方でも、今年はコロナだけでなく、インフルエンザ陽性の方が少なからずいらっしゃいます。
私の肌感覚では全体の6~7割がコロナかインフルエンザ陽性、その中でコロナ:インフルは7:3くらいかなという印象です。

また当院でもフルロナ or フルコビットと呼ばれる、コロナとインフルエンザの同時感染の方も数名出ております(「ウイルス干渉」でどちらかしか流行ることがないとの説はずっと有力でしたが、やはりウイルスのふるまいとはそんな単純なものではなく、まだまだ予想しきれないことも多いようです)。

この冬まだしばらくの間、試練の日々は続きそうです。


一方そんな当院の外来風景で今年、例年とは少し違った兆候が見えているように思います。

なんだか今年は、1月のこの時期にやたら「花粉症」の症状を訴えられる方が多い気がするのです。

 

今年の花粉飛散予測は、例年よりも多くなる予想で、特に関東など東日本で、昨年の倍かそれ以上の飛散量が予想されています。

神奈川県の発表によると、県内のスギ林、ヒノキ林で、花粉を飛散させる雄花の状態を調べてみると、今年はスギの雄花が過去30年で最もフィーバーしてしまっているようなのです(着花点数が昨年の37.8点、平年の45.8点を大きく上回り、77.8点だったとのこと)・・・。
ヒノキもここ11年で2番目に多い状態であり、今年はかなーり花粉が多く飛ぶのは間違いないようなのです・・・ああ、もうこれ書くだけで目や鼻がかゆくなる・・・

神奈川県スギ花粉

 

神奈川県ヒノキ花粉

神奈川県HPより


思い出してみると、昨年の6~7月は季節外れの猛暑となり、40℃近くになった日もありました。
この時期の「高温・多照・少雨」が、スギの花芽の形成にはとても有利になるんだそうです。

公式発表では現在のところまだ飛散開始とはなってはいないのですが、今年は例年に比べてすでにスタンバイしている花粉が非常に多く、局所的にフライングして飛び出した花粉も多いのではと見込まれ、それが例年にないこの時期の症状を訴えられる方の多さにつながっているのでは、と考えられるのです。


ということで、花粉症の方は心してかかった方がいい2023年春、それではいつから治療を始めたほうがいいのでしょうか?


花粉症治療では、「初期療法」という考え方があります。

「初期療法」とは、花粉飛散時期前の症状のない時期(もしくはごく軽度の時期)から治療を開始する方法で、特に大量飛散すると予想される年には有効とされている治療法です。

 

目安としては例年の症状が始まる時期の1~2週間前に始める方法となり、それはちょうど今の時期にあたるのです。


ではなぜ初期療法がおすすめなのでしょうか?

 

花粉症のアレルギー性鼻炎では、症状が出ない程度の花粉の曝露でも、鼻の粘膜には炎症が起き始めていることがわかっています。

また、粘膜にある血管には、アレルギー症状を引き起こす細胞を引き寄せるタンパク質(これを「接着分子」と呼びます)が現れますが、初期治療を行うと、このタンパク質が出にくくなることが知られており、いざ本番となったときにもアレルギー症状が起きにくくなると考えられています。

(喘息もそうなのですが、)アレルギーは「燃え広がってから鎮火する」より、「燃え広がる前に初期消火をする」、もしくは「燃え広がらないように防火する」ほうが圧倒的に有利なのです。

 


そして薬の使い方なのですが、花粉症治療では主に「アレルギーの飲み薬」(抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬など)がベースとして用いられるので、まずはこれらを初期療法として用います。

また鼻炎ではステロイド点鼻薬(市販でよく売られている、多くの鼻づまりを治す系 ~血管収縮薬~ ではダメです。その理由はこちら)、抗アレルギー点眼薬(ステロイド点眼薬は長期に使うと眼圧が上がるため、初期療法には適していません)も、初期療法として用います。

これらの薬は効果を示すのにしばらく時間がかかるという特徴があるので、そのような意味でも早めの治療が効果的なのです。


当院に通っていただいている花粉症をお持ちの方にも、今年は特に早めにお薬をお出しし、来たる大飛散に備えるようにしています。

花粉症の方は、特に今年はお早目の治療開始、ご検討ください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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