医師ブログ

2022.07.03更新

いやあ、暑いですね・・・


今年は梅雨があっという間に駆け抜けてしまい、6月らしからぬ猛暑にぐったりでした。


梅雨時に気を付けるべきアレルギーについて書こうと思っていたのに、どうもタイミングを逸してしまったか・・・と思ったら、またジメジメした天気が戻ってきそうな雰囲気もあり、このスキに前回の続きを書いてみようと思います!

 

さて前回は、「梅雨時に気を付けたいアレルギー」として、カビのことを書いてみました。今回はその他にもこの時期に気を付けるべきアレルギーとして、いろいろな草木を挙げてみたいと思います。


スギ、ヒノキの花粉が終わる時期に飛散が始まるのが、イネ科の花粉です。


イネ科というと、田んぼに生えそろっている稲をとうしても想像してしまいますが、実際に人々に影響を及ぼすのは、空き地や庭に生えている雑草であるイネ科の植物です(田んぼの稲はあまりアレルギー性は強くないと言われています)。

ですので稲作地域ではないここ茅ヶ崎でも、多くの方がイネ科の花粉に悩まされています。


カモガヤというイネ科の植物があります。これは空き地や河川敷などの荒れ地に多く繁殖する雑草です。
またイネ科にはオオアワガエリという雑草もあります(英語ではチモシーと呼ばれ、こっちの名前をご存知の方も多いかもしれません)。

これも空き地や河川敷、土手などの荒れ地に生えることが多い植物です。
いずれも繁殖力が強く、よく目にする植物です。


花粉は5月くらいから飛び始め、6月ごろが一番多く、7月ごろまで続くこともあります。
症状としては鼻や目の症状が主ですが、咳や喘息悪化の原因になることも少なくなく、もともと咳が出やすい方や喘息を持たれている方は特に注意が必要です。

スギやヒノキの花粉は山から数十kmの距離を飛散しますが
イネ科の花粉は数百ⅿ程度しか飛散しません。
ですので、この時期はなるべく草むらに近づかないこと、家の周りにそのような環境がある方は、外の花粉を家に入れないようにすることが重要です。

またこの花粉症を持っている方は、反応が強く起こることが少なくありません。
一般的に運動をすると、アレルギー反応が強くなることが少なくありません。
ですので、これらの植物が多く生えているところでランニングやサイクリングなどをするアスリートの方に、アナフィラキシーなどの強いアレルギー反応が起こることがあるので、該当する方はより一層注意が必要です。


次に挙げるのがキク科です。

代表的なのがブタクサです。
結構ブタクサアレルギーを自覚される方は多い印象で、統計学上もアレルギー性鼻炎の方の10~20%がブタクサに感作されていると言われています。

時期は8月から10月、夏からが本格的なシーズンになります。

またヨモギキク科の草で、こちらはややブタクサより早く、7月から飛散が開始します。
お餅に混ぜたり、おひたしにしたりとおいしいイメージのあるヨモギですが、こちらもアレルギー性鼻炎の方の15~25%が感作されているという、夏から秋の花粉症の重要な原因となってしまっています。

また時期はもう過ぎてしまっているようですが、カバノキ科の花粉もあまり知られていないものの、喘息の方には結構悪さをすることが知られています。

関東など温かい所ではハンノキオオバヤシャブシという木がそれにあたり、北海道や本州でも標高の高いところではシラカバもその仲間です。

時期はヒノキと被る4~5月ごろで、スギやヒノキがあまりない北海道では、花粉症の一番大きい原因となっています。

前にも書いた通り、カバノキ花粉症、イネ科花粉症では、果物や野菜の食物アレルギーを合併しやすいという側面も持っており、花粉症の時期に食物アレルギーの症状が出やすくなるということもあるので、そのことに気づけるかも重要になります(大人の食物アレルギーは残念ながらあまり広くは知られていないため、長年にわたりこのことに気づかれない方も少なからずいらっしゃるのが実情です)。


あとは花粉症の後にもしつこく残るアレルゲンとしてはダニやペット、それに昆虫が挙げられます。次回以降は、これについても触れてみたいと思います。

 

さて、当院では7月4日から新型コロナのワクチン接種を開始します。
回は4回目が主になっていますが、当院では1~3回目の方も受付いたします(4回目接種についての情報はコチラ)。

当院予約システム、および茅ヶ崎市ワクチン予約ページから、それぞれ枠をご用意しています。
居住地、当院での接種歴や受診歴は問いませんし(茅ヶ崎市外に在住の方は茅ヶ崎市の予約ページはご利用いただけませんので、当院予約システムからご予約下さい)、お手元に接種券が届いていない方も、予約日が接種可能な日時なら(4回目接種は3回目接種から5ヵ月経過後となっています)、接種当日に前回接種日が分かるものがあれば大丈夫です。

また以前からお伝えしているように、当院は8月7日(日)~8月25日(木)まで2週間半の間、改装工事のためにお休みを頂きます。
当院かかりつけの方は受診時にお薬がなくならないように適宜調整を致しますし、病態によってはこの時期に悪化を極力避けられるよう、治療内容の調整を行うこともございます。

ご不明な点、ご不安な点がございましたら、お気軽に外来受診時に私など医師にお申し付けください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2022.05.09更新

「茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック」として新しい船出をしてから1ヶ月、おかげさまで少しずつ新名称にも慣れてきました。

当初はスタッフの言いまつがいもありましたが、最近は新名称がスムーズに出てくる様になっています。


直接電話応対をすることの少ない私が、実は一番慣れてません(笑)

 

また4月から髙倉先生の循環器専門外来が開始し、おかげさまでこの1ヶ月で、すでに多くの患者さんにご来院いただいております。

この時期、花粉症から始まった長引く咳など、咳のなかなか治らない多くの患者さんにもご来院いただいており、それは医師冥利につきますが、いよいよ院内の待合スペースに限界が来つつあります。

 

そこで今回、GWを利用して、少しだけ待合室を拡充する工事をしました。

 

入口のスロープを少し狭めて(車椅子も通れる十分なスペースは残しています)ベンチを下げ、できたスペースにテーブルでお待ちいただける待合スペースを増設しました。

玄関改装

よしできた!工事が終わってホッとしていたのですが、

 

「椅子、ないじゃん・・・」

 

スペースを作ることばっかり目を向けて、椅子を買うことを忘れてました(๑´ڡ`๑)テヘペロ♡

とりあえず院内にあるパイプ椅子をかき集めて何とか3席確保しました(あとでちゃんとした椅子、買います!)。

入口改装

このスペースでの飲食はできませんが、本を読んだり、書き物をしたり、PCなどを使って作業することもできたりするスペースです。なるべく待ち時間を少なくできるように努力しますが、貴重なお時間をお使いいただくスペースとして是非ご活用ください!

 


さて、スギ、ヒノキの花粉症の方も、ようやく症状のピークを超え、今年も一般的な花粉症シーズンは終わりを迎えつつあります。

しかし、中にはこれからの季節も花粉症シーズンが続く方がいらっしゃいます。

そして、実はこの時期に合わせて、果物などの食物を食べると口の中が痒くなったり、じんましんが出てきたりする「食物アレルギー」の症状が出てくる方がいらっしゃいます。

 

実は、一部の食物アレルギーの方には、ある花粉症と関連がある場合があります。

 

例えば、バラ科の果物、例えばモモやビワ、さくらんぼ、苺、りんご、梨など、それに豆類特に豆乳では強く出やすく、アナフィラキシーまで起こる可能性があり要注意!、ヘーゼルナッツ、セロリやニンジンなどで、喉や口のかゆみなどの症状が出たりする方の中に、カバノキ科(ハンノキ、シラカバなど)の花粉症がある方がいらっしゃいます。

この花粉には、「PR-10」というタンパク質が含まれているのですが、このタンパク質へのアレルギーを持っていると花粉症を発症します。

そして、先に挙げた食べ物にも、この「PR-10」というタンパク質が含まれているため、アレルギー症状を起こしてしまうのです。

そして、この花粉症の時期が4〜6月、つまり今頃であり、この時期に食物アレルギー反応の症状が出やすくなることも知られています。


また、ブタクサ、ヨモギ、イネ科の花粉症の方も、同様に花粉に含まれる、「プロフィリン」というタンパク質に対するアレルギーを持っている場合、ウリ科の果物など、例えばメロンやスイカ、カボチャ、きゅうりなど、それに柑橘系の果物、トマト、バナナなどにも含まれる「プロフィリン」にも反応をしてしまい、アレルギー症状を起こしてしまう例も知られています。

これらの花粉は初夏〜秋がシーズンなので、こちらもこれから気をつけるべき季節となります。

その他にも、スギやヒノキの花粉症に関連したバラ科や柑橘系果物、梅干しなどの食物アレルギーなども知られており、これらは「花粉-食物アレルギー症候群」と呼ばれ、症状をコントロールするには、花粉症の治療も正しくしっかりと行うことが大事になります。

 

 


またゴム製品に対してのアレルギー(ゴム手袋をしていると手が赤くなったり腫れたりするといったエピソードが多いです)があると、食物(特にバナナ、栗、桃、キウイ、パパイア、パイナップルなどの果物やアボカドが代表的です)アレルギーを発症してしまう「ラテックス-フルーツ症候群」という病態があったりもします。

 

これらはいずれも、一見関係なさそうな2つの症状が関係しあっている、知らないと気付かない病態です。


食物アレルギーといえば子供の方が圧倒的に多く、一般的には小児科で取り扱われることが多い病気なのですが、実は上に挙げたような病態は大人特有のものなのです。

大人の食物アレルギーを診断、治療できる医療機関が非常に少ないため、何年も原因不明として扱われてしまい、生活の質が低下したまま長年が経過するケースも少なくありません。

このような症状は、やはりアレルギー専門医にご相談されると、花粉症ともどもうまく治療できると思います(鼻の中を見たり、処置までできたりするという意味では、食物アレルギーにも非常に精通している耳鼻科の先生がベストかもしれませんが、耳鼻科的な処置までは必要なく、薬だけでよくできる程度であれば、我々の様な内科のアレルギー専門医でも大丈夫だと思います)。

手前味噌ですが、当院でも今後皮膚アレルギーテストの導入を予定しており、採血だけではわからないアレルギーの原因をより見極めることができるようになる予定です。


アレルギー診療は、原因の見極めや薬の選択、さじ加減、それに正しい薬の使い方や生活面での指導など、診療の質の違いが結果の差になって現れます。

 

なんか治りがイマイチだなあ・・・と感じる時は、是非アレルギー専門医の受診をお考えになってみてください!

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.03.21更新

ようやく本日で緊急事態宣言が終了します。
しかしここ茅ヶ崎でも、まだ散発的にコロナ陽性患者さんは出ております。
やはり毎日診察していて感じるのが、他人と接触しやすい環境にいる方が陽性になるケースが多いということです。
当院では接触歴が思い当たらない方はほぼ陰性になっています。
やはり距離をとる、長時間の密室空間を避けるなどの基本的な対策が有効であると思いますし、それさえできていれば過剰な心配をする状況でもないと思います。
茅ヶ崎の高齢者ワクチンの開始は5月になりそうですが、徐々に出口もぼんやりながら見えてきていると思っています。

一方やはり事前の予想通り、花粉のほうはデータを見てみても昨年よりは飛散量が多いようで、昨年よりも症状が強くなってしまった方が多いようです。
今年は当院にも例年より多くの方がアレルギー症状でいらっしゃっています。


花粉飛散量

環境省HP「神奈川県環境科学センター(平塚市)の花粉飛散量」より

 

ただ昨今、ドラッグストアなどに出ている花粉症の薬剤もだいぶ種類が増えてきました。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる、処方箋で出していた薬と同成分の薬剤も店頭に並ぶケースが増えてきています。

そこで今回は花粉症に対し使用するお薬について、市販薬と処方薬の違い、市販薬を使用する際の注意点をお話ししようと思います。

 

まずは内服薬です。
アレルギーの薬として、基本薬となるのが「抗ヒスタミン薬」です。
これは、アレルギーの症状のもとになる「ヒスタミン」がくっつく細胞のヒスタミン受容体をブロックする薬剤です。

ただこの「ヒスタミン受容体」は脳にもあり、脳の覚醒や判断力、集中力にかかわってもいます。
このヒスタミン受容体が脳に作用してしまうと、脳の覚醒、判断力、集中力が妨げられてしまい、「眠気」の副作用として出現することとなってしまいます。「第1世代」の抗ヒスタミン薬はここが問題でした。

そこで、これらの副作用を改善させるべく、脳になるべく届かないようにした「第2世代」の抗ヒスタミン薬が開発され、現在ではこちらが主流となっています。

OTC医薬品でも、抗アレルギー薬として販売されている薬剤は「第2世代」が中心となっています。
現在は「アレグラ」「アレジオン」「エバステル」「クラリチン」「タリオン」「ジルテック」に相当するOTC医薬品が出ています。

この第2世代の中でも眠気が非常に出にくい薬剤と、やや出やすい薬剤がありますが、OTC医薬品では比較的眠気が出にくい薬剤が多いです(OTCの中では「ジルテック」のみが運転禁止「アレジオン」「エバステル」「タリオン」運転注意で、「アレグラ」「クラリチン」運転に支障がありません)。
なお総合感冒薬は別です!これはまた次回お話しします。

一方、やはりその分、やや効きがややマイルドな薬剤がOTCには選ばれているように思います(これは私の主観も伴いますが)。
対して処方薬は眠気や内服方法など、多少の注意点がある一方、効果がより期待できる薬もあります(なお抗ヒスタミン薬の効果の強さは一律で語れるものではなく、強いと言われるものよりマイルドと言われるものの方が効くこともあります。抗ヒスタミン薬にも系統がいくつかあり、その系統の合う合わないが人によって変わる面があるからです)

またこれらの一般的な抗ヒスタミン薬は「サラサラした鼻水」に効果を示しやすいですが、「鼻づまり」には別の対処が必要になります。
鼻粘膜の血管を収縮させて浮腫をとる成分を配合した「ディレグラ」や、抗ヒスタミン作用とはまた別の作用をもたせた「ルパフィン」が有効ですし、喘息にも使用される「オノン」「キプレス、シングレア」などの「ロイコトリエン受容体拮抗薬」は、鼻づまりに対して効果が高いことが示されており、これらの薬剤にはOTCはありません。

 

次に点鼻薬についてです。
点鼻薬は大きく分けて「血管収縮薬」「ステロイド」「抗ヒスタミン」「ケミカルメディエータ抑制薬の4種類があります。
この中で現在の主力は「血管収縮薬」「ステロイド」ですので、今回はこの2つに対して述べてみます。

「血管収縮薬」は、鼻の粘膜の中に流れる血管を収縮させることで、粘膜のむくみをとる薬です。鼻づまりに即効性がある薬剤で、つらいときには重宝されます。

ただこの薬剤の問題点は2点あります。

一つ目は、徐々に効きにくくなってしまう問題です。
どうもこの薬は、使用を続けているとこの薬剤が作用する受容体が減ってしまうこと(ダウンレギュレーション)があるのではとされています。
そのため、継続して使用していると徐々に薬剤が作用できる受容体がなくなり、効果が落ちてしまうのです。

もう一つが、この薬の連用による「薬剤性鼻炎」です。
長い間この薬剤を使うと、むしろ粘膜の組織が増殖してしまい、むしろ鼻づまりが悪化するケースがあるのです。
この薬は当初は「キレ」がいいものなので、ついつい反復して使用してしまうケースが多く、その結果より治りづらい鼻炎となって来院されるケースがあるのです。

そしてこのような諸刃の剣である血管収縮薬の点鼻ですが、実は結構気軽に店頭で手に入ってしまいます。
ですのでこのタイプの点鼻薬を使用する際は、しっかりと注意事項を守って使う必要があります。

次に「ステロイド」の点鼻についてです。
こちらは血管収縮薬の点鼻よりはずっと安全に使えますが、即効性がありません(吸入薬と同じですね)。
この薬剤は血管収縮薬とは違い、症状があるときに使用するという使い方ではなく、むしろ症状を出させないように比較的続けて使う必要のある薬剤になります(これも吸入薬と一緒ですね)。
局所治療薬ですので、全身性の副作用を心配する必要もあまりありません(またまた吸入薬と同じですね)。

診察していると、市販の点鼻を使用している方で、自分がどのタイプを使用しているかを把握している方は少ない印象です。

この点、処方の場合なら薬剤の特徴や使用方法を直接お伝えすることができますし、点鼻ステロイド薬にしても薬の成分や噴霧様式など、市販薬よりも工夫が凝らされ効果を高められる点鼻薬もあり、選択肢も広がります。
この点でも医療機関にかかり、処方薬を使用できることのメリットはありそうです。

 

以上、花粉症などのアレルギー性疾患に対するOTC医薬品使用のポイントをお話ししてみました。

市販薬は気軽に治療を開始できるという面で非常に有用性はあると思います。

ですがやはり症状がコントロールできなかったり、より効果の高い治療を行いたい場合内科や耳鼻科のアレルギー専門医にお尋ねになることも検討してみるといいかもしれません。
また今は重症花粉症に対する注射治療(ゾレア)、アレルギー反応を根本から弱める舌下免疫療法もありますので、花粉症などのアレルギー症状で困った場合は当院にも是非お気軽にご相談ください。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信