医師ブログ

2021.04.01更新

今日から4月、新しい年度の始まりです。

私も本日で加藤医院に赴任し、丸2年が経ちました。
下の図はこの2年間での、1日に当院にご来院頂いた患者さんの数ですが、おかげさまでこの2年間で多くの方々に新しい加藤医院を知っていただき、呼吸器、アレルギー症状にお困りの方をはじめとした多くの患者さんにご来院いただきました。

患者数


と同時に、ご来院いただく方の増加に伴い、混雑でご迷惑をお掛けしております。
昨年12月から新予約システムが始まり、徐々に混雑状況は改善していますがまだまだ改善の余地があります。
いろいろとデータも集まり傾向も見えてきましたので、このデータを活かし更なるサービスの改善に努め、一人でも多くの患者さんにご満足いただけるよう、3年目も職員一同精進したいと思います。
2021年度の加藤医院も引き続きよろしくお願い致します。

さて、前回は花粉症の市販薬についてお話ししてみました。
鼻水、鼻づまり、咳などの症状が出た場合、ご本人が花粉症と認識している場合は、前回の花粉症薬を使われるケースが多いですが、本来これらの症状は風邪と見極めることが簡単ではありません。
患者さんとお話しをしていると、かなりの割合で風邪薬を多用されている患者さんもいらっしゃることが分かりました。

そこで今回は、風邪薬、その中でもよく利用される総合感冒薬について、その特徴、注意点についてまとめてみようと思います。

風邪には実に様々な症状が現れますが、総合感冒薬は、その中でも頻度の高い症状に対し、だいたい対応できるようにしたものです。
そこで今回はその総合感冒薬を考えるにあたり、Google検索で「風邪薬」と検索し、1番目にヒットした第一三共ヘルスケア社の「新ルルAゴールドDX」を例にしてみましょう。
この薬剤は解熱鎮痛薬としてのアセトアミノフェン去痰薬としてブロムヘキシンアレルギー性鼻炎症状を抑える抗ヒスタミン薬抗コリン薬、抗ヒスタミン薬の副作用による眠気を抑えたり疲労感を回復させるための無水カフェイン咳を抑えるための中枢性鎮咳薬気管支拡張薬喉の腫れを抑えるためのトラネキサム酸など、実に多くの薬剤が配合されています。

これらは、正しい使い方をしていれば、典型的な風邪症状に対して効果を期待できます

ただ、やはり注意しなければならない点もあるのです。

まずは含まれる薬剤が多いことのデメリットです。
上に書いた薬剤は、あくまで症状を和らげるための「対症療法」薬です。一つ目はつまり、その症状がなければ、その薬剤は「ムダ」ということになってしまいます。
また似たような症状でもこれらの薬を使わない方がいい場合もあります。
例えば咳に対して中枢性鎮咳薬が含まれていますが、これはどんな原因の咳も、脳の咳中枢に働きかけて止めてしまう効果があります。
咳には痰の少ない乾いた咳と痰の多い湿った咳がありますが、痰の多い湿った咳は、その痰を出すために咳反射が起きています。
この咳を無理やり止めてしまうと、出すべき痰が出なくなり、かえって苦しくなってしまうことも起き得たりするのです。

二つ目はこれらの薬に含まれている薬剤の量です。
「新ルルAゴールドDX」で見てみると、抗ヒスタミン薬は通常処方で出される量の半分トラネキサム酸は20~60%程度のようで、やや抑えめに入っていることがあります(とは言っても「新ルルAゴールドDX」は比較的それぞれの薬剤がしっかり配合されている印象を受けました)。
もちろん各社しっかり計算したうえで配合していると思いますが、やはり診察なしで買えることもあり、安全域を広めにとっているのではと思います。

三つめは、これらの薬剤にやや古いタイプの薬剤が配合されていることがあることです。
例えばアレルギー性症状を抑える、ここに入っている抗ヒスタミン薬であるクレマスチンという薬剤は、「第1世代抗ヒスタミン薬」というカテゴリーに入り、眠気が強く出やすいといわれています。
そのためにわざわざ眠気を抑える「カフェイン」が入っている訳です。
一方処方薬では、そもそも眠気の少ない「第2世代抗ヒスタミン薬」が主流となっています(アレルギーに特化したOTC薬にも第2世代の薬剤はあります)。
第1世代はキレの良さがあるため、あえて選ばれているのかもしれませんが、長く使うにはやはり適していませんし、運転をする方にも使用できません。

最後に、これだけ多くの薬剤を含んでいることは、使ってはいけない人がそれだけ増えることも意味します。
例えばアレルギー症状を抑えるために配合されている抗コリン薬の影響で、前立腺肥大症や高齢の方に尿が出せなくなる症状(尿閉)や、自覚のない緑内障をお持ちの方に急性発作を起こすリスクはあります(眼科医にしっかり診断、治療されていれば大丈夫です)。
また「ルル」ではないのですが、解熱鎮痛薬として「イブプロフェン」を含んでいる薬剤は、一部の喘息の方(アスピリン喘息)では、大きな発作を起こす可能性があるので注意が必要です。

 

これらのように、総合感冒薬は、それなりに押さえておかないといけないことも多い薬剤です。
ただ通常短期間で使用するのであれば大きな問題にならないことも多いと思います。なにより医療機関を受診することなく、薬局ですぐに手に入るのは大きなメリットです。
(漢方は別として)風邪を治すことは医師でもできません。あくまで症状を和らげることです。そのような意味では総合感冒薬は十分その代替になります。

ただ、風邪として非典型的である場合(咳がやたらと強い、頭痛が激しい、症状の経過が1週間以上などと長いなど)の場合は、もちろん原因検索のため、そしてその症状によりピンポイントで対応できる処方薬を服用するために、医療機関の受診を検討していただきたいこともあります。
そのためには、気軽に受診できる、かかりつけ医にすぐ相談できることが、症状の重症化を防ぐ大事な対策になるのです。


ましてやこのコロナ禍、いろいろと体のことで不安になることも多いものです。
今こそ、ささいなことでも気軽に相談できる、信頼できるかかりつけ医を是非持っておいてください。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.03.21更新

ようやく本日で緊急事態宣言が終了します。
しかしここ茅ヶ崎でも、まだ散発的にコロナ陽性患者さんは出ております。
やはり毎日診察していて感じるのが、他人と接触しやすい環境にいる方が陽性になるケースが多いということです。
当院では接触歴が思い当たらない方はほぼ陰性になっています。
やはり距離をとる、長時間の密室空間を避けるなどの基本的な対策が有効であると思いますし、それさえできていれば過剰な心配をする状況でもないと思います。
茅ヶ崎の高齢者ワクチンの開始は5月になりそうですが、徐々に出口もぼんやりながら見えてきていると思っています。

一方やはり事前の予想通り、花粉のほうはデータを見てみても昨年よりは飛散量が多いようで、昨年よりも症状が強くなってしまった方が多いようです。
今年は当院にも例年より多くの方がアレルギー症状でいらっしゃっています。


花粉飛散量

環境省HP「神奈川県環境科学センター(平塚市)の花粉飛散量」より

 

ただ昨今、ドラッグストアなどに出ている花粉症の薬剤もだいぶ種類が増えてきました。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる、処方箋で出していた薬と同成分の薬剤も店頭に並ぶケースが増えてきています。

そこで今回は花粉症に対し使用するお薬について、市販薬と処方薬の違い、市販薬を使用する際の注意点をお話ししようと思います。

 

まずは内服薬です。
アレルギーの薬として、基本薬となるのが「抗ヒスタミン薬」です。
これは、アレルギーの症状のもとになる「ヒスタミン」がくっつく細胞のヒスタミン受容体をブロックする薬剤です。

ただこの「ヒスタミン受容体」は脳にもあり、脳の覚醒や判断力、集中力にかかわってもいます。
このヒスタミン受容体が脳に作用してしまうと、脳の覚醒、判断力、集中力が妨げられてしまい、「眠気」の副作用として出現することとなってしまいます。「第1世代」の抗ヒスタミン薬はここが問題でした。

そこで、これらの副作用を改善させるべく、脳になるべく届かないようにした「第2世代」の抗ヒスタミン薬が開発され、現在ではこちらが主流となっています。

OTC医薬品でも、抗アレルギー薬として販売されている薬剤は「第2世代」が中心となっています。
現在は「アレグラ」「アレジオン」「エバステル」「クラリチン」「タリオン」「ジルテック」に相当するOTC医薬品が出ています。

この第2世代の中でも眠気が非常に出にくい薬剤と、やや出やすい薬剤がありますが、OTC医薬品では比較的眠気が出にくい薬剤が多いです(OTCの中では「ジルテック」のみが運転禁止「アレジオン」「エバステル」「タリオン」運転注意で、「アレグラ」「クラリチン」運転に支障がありません)。
なお総合感冒薬は別です!これはまた次回お話しします。

一方、やはりその分、やや効きがややマイルドな薬剤がOTCには選ばれているように思います(これは私の主観も伴いますが)。
対して処方薬は眠気や内服方法など、多少の注意点がある一方、効果がより期待できる薬もあります(なお抗ヒスタミン薬の効果の強さは一律で語れるものではなく、強いと言われるものよりマイルドと言われるものの方が効くこともあります。抗ヒスタミン薬にも系統がいくつかあり、その系統の合う合わないが人によって変わる面があるからです)

またこれらの一般的な抗ヒスタミン薬は「サラサラした鼻水」に効果を示しやすいですが、「鼻づまり」には別の対処が必要になります。
鼻粘膜の血管を収縮させて浮腫をとる成分を配合した「ディレグラ」や、抗ヒスタミン作用とはまた別の作用をもたせた「ルパフィン」が有効ですし、喘息にも使用される「オノン」「キプレス、シングレア」などの「ロイコトリエン受容体拮抗薬」は、鼻づまりに対して効果が高いことが示されており、これらの薬剤にはOTCはありません。

 

次に点鼻薬についてです。
点鼻薬は大きく分けて「血管収縮薬」「ステロイド」「抗ヒスタミン」「ケミカルメディエータ抑制薬の4種類があります。
この中で現在の主力は「血管収縮薬」「ステロイド」ですので、今回はこの2つに対して述べてみます。

「血管収縮薬」は、鼻の粘膜の中に流れる血管を収縮させることで、粘膜のむくみをとる薬です。鼻づまりに即効性がある薬剤で、つらいときには重宝されます。

ただこの薬剤の問題点は2点あります。

一つ目は、徐々に効きにくくなってしまう問題です。
どうもこの薬は、使用を続けているとこの薬剤が作用する受容体が減ってしまうこと(ダウンレギュレーション)があるのではとされています。
そのため、継続して使用していると徐々に薬剤が作用できる受容体がなくなり、効果が落ちてしまうのです。

もう一つが、この薬の連用による「薬剤性鼻炎」です。
長い間この薬剤を使うと、むしろ粘膜の組織が増殖してしまい、むしろ鼻づまりが悪化するケースがあるのです。
この薬は当初は「キレ」がいいものなので、ついつい反復して使用してしまうケースが多く、その結果より治りづらい鼻炎となって来院されるケースがあるのです。

そしてこのような諸刃の剣である血管収縮薬の点鼻ですが、実は結構気軽に店頭で手に入ってしまいます。
ですのでこのタイプの点鼻薬を使用する際は、しっかりと注意事項を守って使う必要があります。

次に「ステロイド」の点鼻についてです。
こちらは血管収縮薬の点鼻よりはずっと安全に使えますが、即効性がありません(吸入薬と同じですね)。
この薬剤は血管収縮薬とは違い、症状があるときに使用するという使い方ではなく、むしろ症状を出させないように比較的続けて使う必要のある薬剤になります(これも吸入薬と一緒ですね)。
局所治療薬ですので、全身性の副作用を心配する必要もあまりありません(またまた吸入薬と同じですね)。

診察していると、市販の点鼻を使用している方で、自分がどのタイプを使用しているかを把握している方は少ない印象です。

この点、処方の場合なら薬剤の特徴や使用方法を直接お伝えすることができますし、点鼻ステロイド薬にしても薬の成分や噴霧様式など、市販薬よりも工夫が凝らされ効果を高められる点鼻薬もあり、選択肢も広がります。
この点でも医療機関にかかり、処方薬を使用できることのメリットはありそうです。

 

以上、花粉症などのアレルギー性疾患に対するOTC医薬品使用のポイントをお話ししてみました。

市販薬は気軽に治療を開始できるという面で非常に有用性はあると思います。

ですがやはり症状がコントロールできなかったり、より効果の高い治療を行いたい場合内科や耳鼻科のアレルギー専門医にお尋ねになることも検討してみるといいかもしれません。
また今は重症花粉症に対する注射治療(ゾレア)、アレルギー反応を根本から弱める舌下免疫療法もありますので、花粉症などのアレルギー症状で困った場合は当院にも是非お気軽にご相談ください。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信