医師ブログ

2019.10.31更新

当院では在宅診療も行っております。

在宅診療では基本患者さんの体調が悪化した際も家で対応することが原則ですが、家で在宅医が対応しきれない場合、付き添いの方にやむにやまれぬ事情がある場合など、やはり病院での治療をお願いしなければならないことがあります。

しかし病院へ短期間の入院をしようとしても、それが難しく家に帰されることがあります。
患者さんとその家族の期待に沿えない結果となることがあり、問題となっています。当然我々在宅医もがっかりします。

では病院が悪者なのか?何かいい方法はないのか?

解決するには双方がお互い話し合うのが一番です。
ということで昨日、在宅に関わる医療者と茅ヶ崎寒川のすべての病院代表者が集まり、会を催すこととなりました。

その名も「“ときどき入院、ほぼ在宅”を実現するには」。

私は今年の3月まではそのような患者さんを受け取る立場にいました。双方の事情を知るものとして今回この会の座長(要するに前に出て会の進行を司ったり、討論の取りまとめをしたりするお仕事)を仰せつかることとなりました。

といっても座長なんてやったことありません。会が収拾つかなくなったらどうしよ・・・

でも数日前に見込まれた参加者は20人ほどであったとのこともあり、まあそれなら何とかなるだろうと高をくくって当日会場入りすると・・・

医療部会1
まさかの100人越え・・・

座長席に座ると200個以上の眼からの視線を感じます・・・

でもこんなに多くの人に聞いてもらうチャンスもめったにないし、もう始まってしまったものは開き直るしかないっ!と、双方の立場にいた経験で感じたこと、よりよい環境にするための考えなど、今まで自分がずっと思っていたことを交えながらなんとか役をこなしました。

医療部会2

顔は笑っていますが心は引きつっています・・・

詳しく書くと長くなるのでかいつまみますが(いや、結局長くなっていますがw)、実は病院にもいろいろあり、それぞれで与えられる役割が違ってきます。
重症な患者さんを救命、治療する急性期病院と言われる大きな総合病院、リハビリを中心に行う回復型病院、慢性期の患者を診る療養型病院、認知症など精神的な病気の治療が得意な精神科病院などです(これらを組み合わせている病院もあります)。

ですがやはり医者や設備が整っているのは急性期病院で、多くの方がこういった病院での治療を希望されます。また夜は主に急性期病院しか救急車を受け入れられません(その他の病院には毎日24時間対応できる体制を作ることが難しいのです)。
ところが国は各病院を機能分化させるためにお金を誘導しており、急性期病院には慢性患者さんが長期入院をすると財政的に不利になるシステムを作り、命に係わる重症患者さんを集中的に診る施設に誘導しています。患者さんがこのような理由で急性期病院に殺到するとマンパワーの面に加え、財政面でも疲弊してしまう現状があるのです。

もちろんそのような状態のままでいい訳はありませんので、問題解決に近づくためにはその他の病床を有効活用することが大事になります。
それぞれの病院にはそれぞれの得意分野があり、病院や施設がお互い連携をとってスムーズに患者さんを託し、その病院が得意なことをするというのが大事なのではというのが私の考えです。適材適所というやつです。

今はその連携がまだ弱く、このつながりが今よりもしっかりした形になったら、困る患者や家族も減るだろうし、我々在宅医も安心して患者さんを病院に託すことができるようになると思うのです。

このような内容を各病院、在宅医と一緒にディスカッションしました。

この会で患者さんやそのご家族、寄り添う在宅医療者が病院のそのような実情を知り、病院側も普段はなかなか触れることのない在宅診療の実情を知ることができればいいなと思っていましたが、僭越ながら参加者から参考になった、ご満足頂いたという(お世辞でも)お褒めのお言葉を多くいただき、一応何とかサマになったかな・・・?と胸を撫でおろしています。

患者さん、ご家族が安心して家で過ごしていけることが在宅診療の一番の目標です。私でもまだまだやれることはありそうです。

投稿者: 医療法人社団加藤医院

2019.10.17更新

皆さまこの度の台風の影響はいかがでしたでしょうか。私の八王子の実家は大丈夫でしたが、近くの川があふれ、最寄り駅が水没してしまうなどの影響があったようです。
またこの台風を境目にだいぶ気温が下がってまいりました。今後かぜが流行りやすくなると思われますのでお気を付けください。

今回はそのかぜに対して、抗生物質(正しくは抗菌薬といいますが)を使うことの是非についてです(呼吸器内科医はその業務の特性上、抗生物質について考える機会が特に多く、だいたいの人がここら辺にこだわりを持っています。なので少々長くなりますがご容赦を)。

以前にも書いたように、かぜとは一般的には病原菌が上気道(のどや気管など)に感染して起こる病気のことで、そのほとんどの原因はウイルスです。

抗生物質は細菌をやっつけるためのお薬ですので、ウイルスは全くの無力です。

しかし難しいのは、一見かぜに見える、細菌性の感染症の存在です。たとえば肺炎もいつも急に重い症状が出るわけでなく、徐々に悪くなっていくケースがあります。いわゆる「かかりたて」の頃には、ちょっとした咳、ちょっとした鼻水、微熱と、いわゆるかぜの状態と見極めがつかなくなることはしばしばあります。
また高齢者の方では、ウイルスが原因だったとしても、それによって弱った体に細菌が感染する「2次感染」の問題が起こり得ます。
これらの場合は抗生物質が必要なこともあります。

じゃあ、見極めがつかなければ、とりあえず抗生物質使っておけばいいんじゃない?

となりがちなところなのですが、この弊害が昨今大きなテーマとなっています。

まずは抗生物質の使い過ぎによる、「耐性菌」の問題です(つい本日も、多剤耐性菌による院内感染死亡のニュースが流れました https://medical.jiji.com/news/25260)。
抗生物質にもいろいろな種類があり、ターゲットにできる菌が比較的少ない「狭域」の抗生物質、多くの種類の菌に効く「広域」の抗生物質があります。
だったら広域のほうがいいじゃないかと思われるかもしれませんが、広域の抗生物質は、薬価が高く副作用が多い上に、耐性菌を作りやすいことが知られています。
これは患者さん個人にとっても、地域社会にとっても(もちろん国にとっても)大きな問題となります。特に日本は広域抗生物質の使用量(特にセフェム系、キノロン系といわれる薬剤)が際立って多いといわれており、ヨーロッパなどに比べて耐性菌が多い国の一つです(実際国の報告では、国内で年間延べ40万人が耐性菌に罹患し、そのうち10000人が命を落としているという統計が出ています)。
そのため国も以下のようなキャンペーンを張り、5年間で国内の抗生物質使用量を3分の1削減することを目指しています(AMRとはAntimicrobial Resistance つまり薬剤耐性のことです。ガンダム使っているのはちょっとしたダジャレなんですね)。

AMR

 

次が抗生物質の副作用の問題です。
抗生物質は下痢、吐き気をはじめとして、さまざまな副作用を引き起こしやすい薬剤です。
かぜに対し抗生物質と偽薬を使った患者さんを比較したところ、抗生物質は偽薬に比べて80%も副作用が増えたと報告されています。一方もともと元気な方が、かぜ症状の時に抗生物質を投与することにより、投与しないときと比べて期待できる効果はほんのわずかしかないというデータもあります。

薬の効果と、それに対する弊害のバランスがあまりよくないのです。

また例え細菌性であったとしても、抗生物質の投与をせずとも良くなる感染症が思いのほか多い(というか抗生物質を使っても結果に差があまり出ない)ということも報告で多く上がっています。

これらを考えると、やはりかぜに対する抗生物質の使い過ぎはあまりいい点がなさそうです。

ただし前も書いたように、かぜをかぜと見極めることは容易ではありません。
ただ昨今は抗生物質が必要な状態かどうかを見極める問診、診察ツールもありますし、「なんとなくこの方には抗生物質を出しておかないとヤバそうだな・・・」という医師のカンが働くときも確かにあり、必要時には躊躇なく処方します。
はっきりしない場合は、少し経過を見ることでわかることもあるので、可能な範囲であえて少々待って様子を見させていただくケースもあります(やみくもな薬の処方で、むしろいろいろな面での弊害が大きくなるのを避ける意味合いもあります)。

やはり抗生物質は我々(一応)プロが、正しい知識で大事なところで使用すべき「限りある資源」だという考え方が私はしっくりくるように思います。

というわけで、当院での治療の際は、上記に基づき必ずしもご希望の抗生物質の処方ができるとは限らないことをご理解いただければ幸いです。

もちろん疑問点には外来でしっかりとご納得いただけるようご説明いたしますし、かぜにはその他にもいろいろと対策法があるので、そのうちそちらもご紹介しようかと思います。

 

投稿者: 医療法人社団加藤医院

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