医師ブログ

2021.07.12更新

新型コロナワクチンの接種が進んでいます。
茅ヶ崎でも高齢者の方の接種完了にある程度メドがつき、茅ヶ崎市のシステムでは本日から60-64歳の方のワクチン接種予約が始まりました。

当院でも先週から16~64歳の方に対するワクチン接種予約を開始しています。
全国的にはワクチン供給量の不足が報じられており、まだ見通しが不透明な部分もありますが、茅ヶ崎市はワクチン確保に頑張ってくれているようで、7月にもそれなりの量が入ってくることになったようです。
我々のような個別の医療機関にどれくらい配分されるかはまだわかりませんが、配分量、時期が決定し、配送の目安がつき次第、順次予約枠を開放していきます。


予約開始日時、予約枠などの詳しい内容は逐一下記ページでお伝えし、また当院のLINE公式アカウントでも最新情報をタイムリーにお伝えしておりますので、是非ご活用いただければと思います。

一般の64歳未満の方への新型コロナワクチン接種について

当院のLINE公式アカウント登録は以下よりどうぞ

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さて今回は、最近の外来で皆さんからよくお伺いすることについて書いてみます。

茅ケ崎市ではコロナワクチンの接種を、当院のような医院での個別接種に加え、茅ヶ崎市の施設や公民館などで行う集団接種、それに企業内で行う職域接種でも行っています。
今後変更のある可能性はありますが、現在のところ当院のような医院での個別接種はファイザー社のワクチン集団接種はモデルナ社のワクチンを使用することが多くなっています。

では、このファイザーとモデルナのワクチン、何が違うのでしょうか。このことについて書いてみようと思います。

まず、ファイザー、モデルナのワクチンは、いずれもmRNAを使用したワクチンとなります(mRNAワクチンとはなんぞやという方はこちらへ → 2021.2.21 いよいよ新型コロナワクチン接種開始! ~ところでコロナワクチンってどんなもの?~
ファイザー社のワクチンは、実はドイツのベンチャー会社であるビオンテック社が開発した技術をベースに開発されています(ファイザー社がビオンテック社に開発協力をした形です)。
ビオンテック社は以前よりRNAをがん治療に用いることを目指し医薬品開発をしていた企業です。

一方モデルナ社もmRNAを用いるワクチンなどの医薬品開発を目指して設立されたアメリカのベンチャー企業です。

ということで、どちらも実は大企業が財力に任せて何もない所から新たに開発したというわけではなく、これらのノウハウをすでに持っていた企業の技術が、今回の事態になり初めて活かせるようになったという経緯のようです(こんなに早く開発できるのはおかしいという人もいますが、もともとのベースはコロナ前からすでにあったわけですね。その他にも理由はあると思いますが、それらはこちらに)。

同じシステムを用いている両社のワクチンですが、全く同じものというわけではありません。

内部に含まれるmRNAの量が違ったり(モデルナの方がファイザーより大きいmRNAを使用します)、mRNAを包む脂質の膜に使われている脂質の違いがあったりします。

また両者には、保存方法の違いファイザーは-90~-60℃、モデルナは-20℃で保管)があります。
ただこの違いの根拠は実は明らかにはなっておらず、おそらく双方のワクチンの安定性に大きな違いはないだろうと考えられていますファイザー社はやや安全圏を広くとって考えているようです。実際ファイザーのワクチンは新しいデータが出たことにより、保管条件がここ1か月ほどで緩和されてきています)。International Journal of Pharmaceutics Volume 601, 15 May 2021, 120586

また使用間隔にも違いがありますファイザーは3週、モデルナは4週空けて2回)。
これも、治験のやり方の違いがそのまま使用方法の違いになったためです。
動物実験や少数の人への治験(第1相試験といいます)で得られた結果は、さらに大人数での試験を行う(第2相、第3相試験といいます)時の基礎になります。
この得られた基礎データを活かすときに、ファイザーのワクチンでは3週間、モデルナのワクチンでは4週間空けて治験をするという判断の違いが出たわけです。
これは基礎データに対する解釈の違いであり、現時点では両者が異なるということを必ずしも示すものではありません。

次に効果ですが、これも両者ほぼ同様で、ファイザーが95%、モデルナが94.1%の発症予防効果が示されています(発症予防効果とは?という点についてはこちらからどうぞ)。
両者に大きな差はないと言っていいでしょう。

ただほんのわずかだけ違いを見つけるならば、治験では両方ともほぼ全ての人に抗体ができたものの、モデルナの方がほんの少しだけ(数日程度)早く抗体ができる可能性があるかもという報告がありました。
これはモデルナのワクチンはファイザーに比べて、使用するmRNAの量が多いためではないかとされています。https://www.news-medical.net/news/20210622/Do-the-Moderna-and-Pfizer-COVID-19-vaccines-elicit-different-antibody-responses.aspx(not peer-reviewed)
まあこれも判断材料になるほどの差ではないように思います。

副反応についても両者は近い結果になっていますが、全体的にはモデルナのほうがファイザーよりも副反応の頻度は高い傾向があることが報告されています。Eur Rev Med Pharmacol Sci 2021; 25(3):1663-1669
特にモデルナでは、いわゆる「モデルナアーム」と言われる、ワクチン接種の後にやや遅れて(4~11日後)腕がかゆみを伴って赤く腫れる現象が0.8~3.5%に起こるようです。N Engl J Med 2021; 384:403-416、厚生労働省研究班
これはファイザーではあまり見ない副反応です。
とはいえ基本的には自然に改善し、症状が強い場合は痛み止めや抗アレルギー薬でだいたい対処できます。後はこれが起こっても特に2回目の接種の可否には影響はありませんので、あまり気にすべきことでもないかもしれません。

 

アナフィラキシーは一見ファイザーの方が多く見えます(報告ではファイザーは100万回に4.7回、モデルナは100万回に2.5回)。
しかしアナフィラキシーの頻度は非常に少ないため、1件の差でも数字が大きく変わる数字のマジックも考える必要があります。
また同じ条件で比較した数字ではないので本来は直接比較をすべきではなく双方とも大きな差はない(つまり、どちらも非常にまれ)と考えていいと思います。

そして変異株についての効果ですが、これも双方の違いを直接比較する報告はありません。
これらのmRNAワクチンは、多少発症予防効果が低下する可能性は言われているものの、未接種時と比べた発症予防効果は十分に保たれているとの報告が多いです。
今一番蔓延が危惧されているデルタ株(いわゆる「インド型」)に対しての最新のデータは以下の通りです。

両者とも十分な効果はあると考えてよいでしょう。

 英国の研究
ファイザー:1回接種で33%、2回接種で88%の感染予防効果。
アストラゼネカ:1回接種で33%、2回接種で60%の感染予防効果。

 カナダの研究
ファイザー: 初回接種後14日以降に56%、2回接種後87%の感染予防効果。
モデルナ:初回接種後14日以降に72%の感染予防効果。
アストラゼネカ: 初回接種後14日以降に67%の感染予防効果。
(モデルナ、アストラゼネカでは2回目の投与については十分なデータなし)

 イスラエルの研究
ファイザー: 2回接種で64%の感染予防効果。
(調査期間中に感染した人数が少なく、無症状の感染も含まれている可能性あり)

 スコットランドの研究
ファイザー:2回目接種後14日以降に79%の感染予防効果。
アストラゼネカ社:2回目接種後14日以降に60%の感染予防効果。

これらはまだ生データの段階のものも多く、より統計学的にデータを処理する必要があるものも多く残っていますので、はっきりとしたことはもう少し待たないと言えないかもしれませんが、大きく覆ることもないでしょう。

いずれにせよ、何とか違いを見つけようと頑張りましたが、違いはやはり小さいものでした。

ここで最後に、東京都の感染者数の推移を見てみましょう。

こちらが全体の感染者数の推移です。


東京都感染者数


一方こちらが65歳以上の感染者の推移です。

65歳以上東京都感染者数

いずれも東京都ホームページ

 


現在(7月8日時点)東京では65歳以上の方の中で、1回目接種完了が約75%、2回目接種完了が約50%とのことです。
65歳以上のワクチン接種が進んだ5月以降、明らかに全体の感染者数と65歳以上の感染者数の動きに違いが出ています。

これが、「ワクチンの効果」、なのでしょう。

というわけで、両者には確かに副作用の種類や頻度など、細かい所に違いはあります。

でもワクチンを打つのなら、その細かな違いに特に深いこだわりがない限り、両者の選択よりもまずは「射てる時に射てるものを射つ」、という姿勢でいいんじゃないかな、って思います。

 

最後に。おかげさまで当院のホームページが月100万PVを達成しました。
100万PV
特にアフィリエイトをやっているわけでもないので、1円の収益にもなるわけではありませんが(笑)、良くも悪くもさまざまな情報が飛び交うこのご時世、なるべく少しでも正確な情報を広めていきたいと、診療終了後や休みの日に眠い目こすって書いています。
この「医師ブログ」も、小難しい医学の内容を、なるべく多くの方に理解していただけるように「翻訳」をしながら書いているつもりです。

これをお読み頂く皆さんが、医学や病気、ご自身のカラダに興味を持って、正しく理解を深めていただくことを心より願っています。

そのお役に、このホームページが少しでも立っていられるよう、今後も気合いを入れて書いていきます!

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信