医師ブログ

2023.09.23更新

これがウィズコロナなのでしょうか?

もう7月からずーっと発熱・感染症外来が朝からすぐにご予約で埋まっている状態で、3か月経った今でも全く減る兆しが見えません。
またニュースでもご覧になった方も少なくないと思いますが、インフルエンザも9月上旬から陽性者が出始めており、下旬になり急増しております。

今は発熱・感染症外来に来られる方のおおよそ5~6割がコロナ陽性2~3割がインフルエンザ陽性といった印象です。


そんな中、先日から秋のコロナワクチン接種が始まりました。
当院でも9月25日から接種を開始します(インフルエンザ接種も同時に開始します!)。

今回のワクチンは、今までの「BA4.5株」対応ワクチンから、「XBB.1.5株」対応ワクチンにアップデートされることになりました。

また訳わかんない文字列の誕生ですね・・・


XBB株は、コロナウイルスのオミクロン株の一種です。

2022年の夏ごろに出現したと考えられていて、9月ごろにインドを中心に流行したことで世界中に広まりました。
その「祖先」のBA2.75株(さらにその前がBA2株で、BA4、BA5はBA2から別方向に派生した株です)と比べて、感染力や免疫逃避力が強くなっているとされている株です。
Nat. Commun. 14: Article number: 2800 (2023) DOI: 10.1038/s41467-023-38435-3

その後最近まで、そのXBB株が主流を占めていましたが、そこからまた派生しやがったEG.5株(いわゆる「エリス」と言われている株ですね)に現在は徐々におきかわりつつあります。

コロナ系統

という訳で、今回のワクチンの元になったXBB株は、つい最近まで主役を張っていた株ということになります。
またその派生株であるEG.5(エリス)株とも非常に距離が近く、その構造も似ているとされ、今回のXBB株対応ワクチンは理論上効果が期待できるはずです。


当院は、高齢者の方と呼吸器系の病気を持っておられる方が多く、当院にかかられている方はワクチン接種の意向が強いかなと感じます。

とはいえ、世間的にはかなり興味が失われつつあるコロナワクチン、やはり打った方がいいのでしょうか?


2023年5月にアメリカから、コロナワクチン接種とオミクロン株での重症化の関係を見たデータが出ました。

アメリカの退役軍人会に属する18歳以上の、2022年1~6月(オミクロン株流行期)にコロナウイルスに感染した約18万人のデータです。
mRNAワクチン接種を2回した人は、ワクチンをしていない人に比べて、入院となった割合が40%、人工呼吸器が必要となった割合が41%、そして死亡する割合が57%減っていたことが分かりました。
また3回接種の人2回接種の人を比較すると、3接種の人は、2回接種の人に比べて、入院となった割合がさらに35%、人工呼吸器が必要となった割合がさらに30%、そして死亡する割合がさらに49%減っていたことも分かりました。
そして、3回接種をした人の中では、最後のワクチン接種から3ヵ月以上経っていた人は、3か月以下の人よりも30%死亡率が高かったこともわかりました。BMJ (Clinical research ed.). 2023 May 23;381;e074521. doi: 10.1136/bmj-2022-074521.

やはりデータ上も、このオミクロン株に対して、ワクチンを接種することの意義はありそうです。

また、私は今でも総合病院の呼吸器内科(つまり入院された方を診察する)の先生と情報交換をする機会が少なくないのですが、先生方によると、この夏に病院では、明らかにコロナ肺炎、呼吸不全の人が増えて、エクモ(ECMO:人工肺と人工ポンプを用いて、血液を体外に送り酸素を体内に供給する治療、つまり肺がどうにも使い物にならなくなった時に機械で時間を稼ぎ、治療により肺の回復を待つ治療法です)導入にまで至ってしまう方、そして治療の甲斐なく命を落とされてしまう方も何名かいらっしゃったようです。

その光景は2年前のデルタ株流行の時とほぼ変わらない、と。

ただ、デルタの時との違いもあります。
このような不幸な経過をたどってしまった方には共通点があり、それはやはりワクチンを全く打ったことのない、もしくは2回で終了してしまっており、最後のワクチン接種から長く時間が経過してしまった、それも高齢の方がほとんどだったとのことでした。

一方、若い方でこのような肺炎に至ってしまう方は、ワクチン未接種でもそれほどはいらっしゃらなかったということです。
ただ再び当院に目を転じると、当院を受診される、コロナ感染後の長期的な後遺症(咳、だるさ、頭が働かないなど)が圧倒的にデルタの時より増えています。
そして、これらの症状でお悩みの方は、ワクチンを全く打っていなかったり、最後のワクチン接種から1年以上経過している方がやはり多い印象です
(もちろんワクチンを打たれている方も長引く咳でいらっしゃる方は少なくないです。しかしそのような方は実は喘息や鼻炎など、他の要因が大きく治療で改善したり、コロナによる直接の症状出ったとしてもわりと早めに良くなられて、長期後遺症の範疇には入らなかった方が多かったかなと思います)。


もちろん、ワクチンによって後遺症をきたしてしまった方がいらっしゃることも事実です。

実際当院にも時々ワクチンの後遺症で相談される方はいらっしゃいますし、かかりつけの方でもワクチン接種後体調がすぐれなくなった方もいらっしゃいます。

副反応が強く出て、2~3日寝込んでしまった方などを含めると、コロナワクチンでネガティブな経験をされた方は少なくありません。


ですので、コロナワクチンを打つべきかどうか、絶対的な正解はありません。
どちらにも、一定の「可能性」は、秘めています。

でも、決めなければいけません。

私は、ワクチンを打った時、そして打たなかった時の「デメリット」を比較すると決めやすいのかな、と思います。
つまり、ワクチンを打った時のデメリットは「副反応」や「ワクチン後遺症」などワクチンを打たなかった時のデメリットは「重症化」や「コロナ後遺症」などということになります。
それを比較して、どちらをより避けたいと思うかで考えると良いのではと考えています。

コロナが騒がれなくなって、メディアでも話題にも上りにくくなった昨今、ワクチンを打たないことによるデメリットは、今までよりもより見えにくくなったのかもしれません。

しかし、少なくても一般の方よりはいろいろなことを見聞きしている、私達のような立場からみると、ワクチンをずっと打たないことのデメリットは、決して軽視できないよなあ、と感じてしまいます。

もちろん自らがワクチンを打ったことによるデメリットを経験してしまった方、それに身近にそのような方がいらっしゃった方は、そのネガティブな心を乗り越えてまで打った方がいいとは思いません(それはそれで悪影響が出る気もします)

ただ巷には、信頼度の低い知識や噂レベルの情報、そしてあえて流されるフェイクニュースが、悪意、時には善意をももとに広がり、そこに更にいろいろな尾ひれがついて、世の中を跋扈しています。

ワクチンをするしないはもちろん皆さんの自由なのですが、その根拠となる情報源にはくれぐれも注意を払っていただきたい、というのが私からのお願いです。


世の中からはだいぶマスクをしている方が減りました。
今回これだけ長い期間コロナ、そしてインフルが流行り続けているのは、多くの方がマスクを取り、大勢で集まり、楽しく過ごしていることも原因でしょう。

でも今の時代、私はそれが悪いとは思いません。
人間が人間らしい社会生活を取り戻すことも大事です(ぶっちゃけ、私も人との距離が近づくところ以外では、例え室内でもマスクは外しています)。
このような世の中では、どれだけ気を付けていても、コロナもインフルもかかるときにはかかります。

これらに対峙するための武器を得た今、かかったときに大ごとにならないようにする、そのための対策を打てる人から打つ。
それがアフターコロナ、ウィズコロナの正しい形なのかなと思っています。


国の方針ではおそらく今回が公費で、つまり無料で打てる最後のコロナワクチンです。

ワクチンを打てる方だけで結構です。打てる方は、今回は是非前向きにワクチン接種を考えていただきたいなと思っています!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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