3月中旬を過ぎて、発熱・感染症外来にお見えになる方はピークと比べても半分かそれ以下になってきました。世間もマンボウがようやく解除され、報道でも(ウクライナ、北朝鮮の報道に追いやられているのかも知れませんが・・・)コロナ一色では無くなってきたようです。
当院にとっても少しホッとする一面ではありますが、依然花粉症や長引く咳、そしてワクチン接種にて多くの方に受診いただき、混雑や予約の取りづらさで皆様にはご迷惑をおかけしております。
以前のブログでお話しした通り、当院は4月から「医療法人社団加藤医院 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック」へとバージョンアップをします。
これと共に、4月から循環器専門医である高倉美登里先生が仲間に入り、診察枠が増やせることになりました。
高倉先生は、専門である循環器専門診療に加え、生活習慣病や風邪などの急性期疾患などを含めた一般内科診療も担当いたします。
一般的な現在のところ曜日限定ではありますが、診察枠増枠による混雑の緩和も期待できるかと思います。
現在はほぼ3日先までの診療枠が埋まってしまっている状態で、直近でのご予約がなかなか取れないとのお声も多くいただいておりますが、この状態の解消まで今しばらくお待ちいただければ幸いです。
そして本日、当院で使用するレントゲン装置の刷新を行いました。
やはり呼吸器専門診療をするにあたり、そのキモとなるレントゲン装置は妥協できません。ましてやこれからは循環器専門診療も始まり、心臓や血管もなるべくわかりやすい画像でより正確に診断したいものです。
ですので当院で今まで使用していたレントゲン装置と比べ、圧倒的な解像度の違いを誇る、最新式の「いいヤツ」を導入しました(お陰でけっこういい高級外車を購入できるくらいの諭吉さん達がめでたく旅立って行きました(^^)/~~~)
(新旧の比較写真を載せてみましたが、外見はほとんど一緒でしたね・・・)
というわけで、今回は祝!最新式レントゲン装置導入記念ブログということで、レントゲンって一体どんなものなの?ということを書いてみようと思います。
レントゲン写真は、正式にはX線写真と言います。
X線を見つけたのがレントゲン先生だったので、今でもその名前が残っているのです。
ご存知の通り、レントゲン撮影には放射線を用います。
放射線を浴びるのは心配だとお考えの方も多いのですが、人間が普通に生活して受ける1年間の放射線量がおおよそ2.1ミリシーベルト、健康に影響が出る放射線量が年間100ミリシーベルト以上とされる中、一度の胸部レントゲン検査で浴びる放射線量は、けた違いの0.06ミリシーベルト程度です(ちなみに放射線は宇宙から多く届くため、飛行機で空を飛ぶと放射線を受けやすくなります。東京からニューヨークまで飛行機で往復すると、胸部レントゲン撮影3〜4回分に相当する0.2ミリシーベルトを浴びるそうです)。
少なくとも胸部レントゲンの放射線量は常識の範囲内であれば複数回取ってもほとんど問題ない程度と言っていいと思います。
さて、できあがった胸部レントゲン写真を見てみましょう。まずは正常なレントゲンを。
このレントゲン写真ですが、皆さんの中には、この中に肺や心臓しか映っていないように思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、このレントゲン写真は、後ろから照射したX線が背中の皮膚から胸の皮膚まで貫通し、そのデータをすべて前方のカセッテという板に焼き付けることで作る画像です。
ですので、その写真には肺や心臓だけでなく、肺の中の気管支、血管、リンパ節、心臓へつながる血管、胃や食道に加えてその中に含まれる空気、それに肺の外側である骨、筋肉、脂肪組織、乳房、皮膚など、そこに存在する臓器すべてが1枚の写真の中に重なり合って映っています。
だいたいの概要を描いています。専門的な線の解説は全て省いています。
これがレントゲン検査の奥深く、難しい所です。
たった1枚の写真なのですが、これらが重なり合うことで、偶然肺の中の影のように見えてしまう場合、それに偶然他のものに隠されて病変が見えにくくなってしまう場合が常に起こりえることになるのです(ですので、当院ではなるべく見落としを防ぐ方法として、基本的に横からのレントゲン撮影も同時に行っています)。
例えばこんな画像。どこかに2か所、異常があるのですがわかるでしょうか?
答えはここです。
CTで見るとこんな感じ。赤い矢印が病変です。これは肺がんでした。
特に肺のてっぺんのあたりは、鎖骨、肋骨、肩甲骨などが重なり合って映る場所で、非常に見にくいところです。
次はこの写真です。これはかなり難易度高いです(我ながらよく見つけられたなって思います)。
答えはここでした。
CTでみるとわかりやすいのですが、レントゲンでは完全に横隔膜の裏に隠れちゃってます。
実際、矢印のところが肺がんで、この方は手術して助かりました。
実は横隔膜の裏や心臓の裏にも肺があり、こんなところに病気が隠れている場合もあるのです。
ですので、私たちは少しでも怪しいと思ったらCT検査などで確認するようにしています(2次元の画像であるレントゲン検査で前後に重なる影も、3次元の画像であるCT検査では分けて見ることが可能なのです)。
CT検査は1回で5~20ミリシーベルトと、胸部レントゲンに比べると多くの被ばくがあるため、簡単に何度も撮ることは避けるべきですが、数回程度ならまず健康被害は出ないので安心して撮影していただいて大丈夫です。
レントゲン検査の一番のメリットは、なんといってもその手軽さ、被爆の少なさです。
確かにそれをしっかりと読み切るのは医師の技量を必要としますし、どうしてもその検査の特性上、「読みすぎ」、もしくは「見落とし」は(例えどんなに優れた読影医、それにAIが読んだとしても)必ず起こり得ます。
しかしこの簡単な検査で病気が見つかることも非常に多いのも事実です。
是非必要な時は、信頼できる医療機関でレントゲン検査、受けてみてください!