前回お話しした、私が当院に来てから”9か月ぶり通算9回目”の工事が終了しました。
今回は待合室を中心にリニューアルを行いました。
一番の変化は壁の木目から白への色変更で、より明るい雰囲気で、居心地の良い空間と感じていただくようにすることが目的でした。
前回の、壁をぶち抜くなどの大胆なリフォームではありませんが、11日間かけて、結構な大工事となりました。
しかし・・・
前回改装後は「とても明るくなりましたね!」「別のクリニックみたいですね!」との声を多くいただいたのですが、今回はそのようなお声がめちゃくちゃ少ない・・・
長年当院に通い続けてくれているある患者さんからは「で、どこ工事したの?」といわれる始末。
・・・まあそれだけ今までの当院の待合室の雰囲気も自然と馴染んでいた、ということだったんでしょう。
そんな新たな壁には、いくつかリーフパネルを飾ってみて、もう少しインパクトを出してみようかと思います(べっ、別にみんなに「キレイになったね」って言って欲しいわけじゃないんだからね!)。
さて、まだまだ続くコロナやその他の風邪の流行もあってか、以前喘息で治療をおこなったものの途中でお見えにならなくなってしまった方が、数か月、数年ぶりに症状が悪化して再度いらっしゃるという例が増えております。
喘息が悪化してしまう一番の要因は、感染症だといわれています。
加えて治療が中断されていたために、感染が喘息悪化の引き金になり、症状が大きく悪化してしまったわけです。
もちろん自己判断で(時には医師の間違った指示で)喘息の治療を中断してしまったことが、悪化の大きな要因であることは否めません。
しかし、こちらのブログでもお書きしたように、喘息の治療って、治療効果のつかみどころもないし、よくなったことをデータで出すことも簡単ではないという面もあり、なかなか続けてもらうのが難しいという側面があるのも、まぎれもない事実です。
確かに喘息の治療の主役は吸入薬があり、飲み薬に比べたらめんどくさいかもしれません。
最初に「治療は続けてね!」と言われたにも関わらず、それでも喘息治療がめんどくさくなって、ついつい治療をやめてしまった方の気持ちもよーくわかります。
でも、いったん悪くなると、そこから薬を戻してもすぐには良くならないことも少なくありません。
また改善→中止→悪化というサイクルを繰り返すことで、徐々に薬を使っても治りにくくなっていってしまう方も実際にはいらっしゃいます。
こうなってしまうと患者さんも、我々医療者も、ほんと大変です。
ですのでやっぱり患者の皆さんが後のち大変な思いをしないように、やはり喘息の治療は続けていただきたいというメッセージは、ずっと、確実にお伝えしたい、と思っています・・・
でもそしたら、そのメッセージを一人でも多くの方に届けるには、どのようにお伝えしたらいいんだろ・・・?
日々悩んでおりましたが、最近考えついたこの方法ならわかっていただけるかな?
そう思って今回その考え方をお見せしてみようと思います。
それではまず、皆さんにお尋ねしてみたいと思います。
まず、「風邪」という病気は、「治る」病気でしょうか?
もちろんほとんどの方が「治る」病気であると答えます。
それでは、「風邪が治る」とは、どういうことなのでしょう?
風邪をひくとき、体の中には病原菌やウイルスが入ってきます。
これらが体の中で暴れて症状を引き起こすのですが、薬や免疫をつかって病原菌を「排除」できれば、症状は改善するわけです。
悪いものが体から「追い出せ」れば、「治る」ということなのです。
それでは、一方「花粉症は治る」と思っている方、いらっしゃいますか?
花粉症が「そりゃ完治するっしょ!」と考えておられる方は、あまり多くないのではと思います。
花粉症シーズンになったら、その症状を「抑える」ために薬を使用すると考えておられる方が多いかと思うのです(もちろん舌下免疫療法がうまくいけば、本当に「治って」しまうことはありえます)。
花粉症は「アレルギー」による病気です。
「アレルギー」とは、人間の免疫機能が、ある環境において過剰に反応してしまい、症状を起こしてしまうことを言います。
つまり、風邪とは異なり、その原因を「追い出す」とができないのです。
「喘息」も同じことなのです。
「喘息」「花粉症」は、「アレルギー」による病気であるとの共通項があります。
別の言い方をすれば、喘息も花粉症も、それは「体質」であるともいえるのです。
その「体質」が出てくるのを抑えるために、治療は続けていく必要があるということなのです。
そして、ここでまたもう一つ難しい問題が出てきます。
「アレルギー」は、季節や環境、本人の体調などで、自然と落ち着いてしまうことが珍しくないということです。
例えば喘息についても、症状が落ち着いたからと言って勝手に薬をやめてしまった場合、やめた翌日からすぐに症状が悪くなってしまうことは正直そんなに多くありません(もちろん不安定な状態や重症度が高い場合は、すぐに悪化することもあります)。
やめてもしばらく何も変わらないことは珍しくないのです。
すると、これを「治った」ととらえてしまう人は少なくありません。
でも、さっきもお話ししたように、アレルギーはそもそも「治る」ものではありません。
たとえ症状がなくなったとしても、それは季節や環境、本人の体調などが、再度の症状を引き起こさせない状況であっただけなのです。
となると当然、季節や環境、本人の体調が悪化すれば、またぶり返してしまいます。
これが、喘息の治療を続けていると、「体質」としてのアレルギー症状は、当然出にくくなります。
季節や環境、本人の体調の悪化など、不利な状況においても、被害は小さくて済むわけです。
つまり私は、喘息やアレルギーの治療は「医療保険」みたいなものだと考えています。
元気な時は、一見「医療保険」はムダなもののように思えます。ただお金を払っているだけの存在。
しかし、一度体に異変が生じたときに、「医療保険」の存在は大きな助けになります。
いざというときに支えてくれる存在となるわけです。
喘息の治療も同じようなものです。
症状がなにもなくて落ち着いている時、本当にこの治療は意味があるのか?ムダなんじゃないのか?と思われがちです。
しかしひとたび季節、環境、本人の体調の悪化など、よくない状況になった際、それによる症状悪化の振れ幅を最小限にしてくれるのです。
治療をしっかり続けていたことがこの時、大きな助けとなるわけです。
ある報告では、喘息の治療をしっかりと指示通りに続けられる人は40%に満たないといわれています。Tamura G, et al : Respir Med 101(9);1895-1902,2007
そして、高血圧や高コレステロール、糖尿病などの治療と比べて、明らかに続けてもらいにくいという実態も報告されています。lnternational Review of Asthma&COPD vol13 No4 2011
喘息の治療をして、「この治療意味あるのかな?」と考えられるくらい安定していることは、つまり治療がうまくいっているという意味で幸せなことなのです。
その幸せを実感しつつ、上のことを思い出してもらい、ぜひその安定している状態を維持してほしいと思います。
一方、ついつい治療をやめてしまった方、おめでとうございます!
皆さんは決して「少数派」ではなく、むしろ「多数派」です!
当院ではもちろん治療を中断したからと言っても怒らないので(しっかり指導はさせて頂きますよ)、調子が悪くなったら遠慮なくご相談ください!