医師ブログ

2020.06.07更新

緊急事態宣言が解除され、茅ヶ崎市内も人通りが戻ってきているようです。
加藤医院のある茅ヶ崎駅周囲もお店が開き始めて活気が戻ってきていますが、3密っぽい環境もちらほら見かけるようです。
引き続き感染予防を続けていただくことが大事です。少しずつ日常を楽しみながらも、依然油断しないように過ごしていきましょう。

前回は高齢者の肺炎の原因、対策までお書きしました。
今回は肺炎の対策で、大きな役割を占める「予防接種」についてお話しします。どうしても長くなってしまうので、途中難しかったらそこは飛ばしてお読みください。

肺炎はその20-30%が肺炎球菌という菌が原因となることが分かっています。

肺炎球菌は、莢膜という厚い膜に覆われている菌で、攻撃性の強い菌と言われています。
この菌はその名の通り、肺炎を引き起こすことが多い菌で、特に小さな子供と高齢者にとって重症肺炎をおこるリスクが高い菌です。
また喘息、COPD、糖尿病、慢性的な心臓、腎臓、肝臓の病気を持っている方など、抵抗力の弱い方はより重症化しやすいとのデータも出ています。Shea, K. M. et al.:Open Forum Infect Dis 1(1)
加えて、肺炎球菌という名前にも関わらず、この菌は脳炎や髄膜炎、中耳炎なども引き起こすことがあり、命にかかわることも少なくありません。

これらに対し、肺炎球菌ワクチンというワクチンが存在し、上記のような方には接種をしたほうがいいと言われています。

成人の方が接種できる肺炎球菌ワクチンには、23価肺炎球菌ワクチン(ニューモバックスNP)と、13価肺炎球菌結合型ワクチン(プレベナー13)という2種類があります。(ちなみにプレベナー13は以前加山雄三がCMキャラクターを演じていました。雄三通りにある当院との相性はバッチシです(笑))

これらのワクチンは高齢者の重症肺炎球菌性感染症の発症率を減らすという報告がされています。
ここからはワクチンと免疫のちょっと難しい話をするので、説明不要な方は読み流してください。

 

「23価」肺炎球菌ワクチン「13価」肺炎球菌結合型ワクチンの「価」とは、肺炎球菌の莢膜がもっている型のことです。この型が違うと、毒性や感染性などの性質が少しずつ変わるとされており、この型は現在90種類以上あると言われています。ただこの中で我々人間に対し強い影響を示す型はいくつかに限られています。
で、23価のワクチンというのは23種類の型を、13価のワクチンというのは13種類の型をカバーするというわけです。13価ワクチンでカバーする型は、ほぼ23価ワクチンでカバーできています。

そしたら、「23価だけでいいじゃん」ということになるわけですが、ここで13価「結合型」ワクチンという「結合型」という言葉の出番です。

体の中には「B細胞」という、リンパ球の一種があり、このB細胞は外からの刺激を受けると、敵を排除するための「抗体」を作れるようになります。一つのB細胞は1種類の抗体しか作れません。
23価ワクチンは、このB細胞を直接刺激して、23種類の肺炎球菌の型の抗体を作ることを促すワクチンです。

一方、体の中にはもう一つ、「T細胞」といわれるリンパ球もあります。

T細胞にもいろいろありますが、この中のヘルパーT細胞はいわゆる「免疫の司令官」と言われており、T細胞が敵の情報を受けると、B細胞にその敵の性質、弱点などの情報を詳しく提示することができます。
するとB細胞はより的確に敵を排除するための抗体を作れるようになります。
また一度情報を教えてもらったB細胞のうちの一部は、その情報を一生記憶して体内に残り続けます(これをメモリーB細胞といいます)。これがあると次に肺炎球菌が侵入してきたときに、より早く、より多く必要なB細胞を作ることができ、すぐに抗体を大量に作ることができるようになります(これを「免疫応答」といいます)。

13価結合型ワクチンは、この「T細胞」が認識できる成分が「結合」されており、これにより「免疫応答」を導くことが出来るワクチンです(一方23価ワクチンには残念ながらこの「免疫応答」を導くことができず、時間が経つと効果がなくなってしまいます)。

肺炎球菌ワクチンの機序


簡単にまとめると、23価肺炎球菌ワクチンであるニューモバックスNPは、肺炎球菌を広くカバーできるものの効果が長続きしない特性があり、13価肺炎球菌結合型ワクチンであるプレベナー13は、カバーはそこまで広くない(それでも主要なものは大体カバーできています)ものの、その戦い方を覚えこませることで、一生効果を持続させることができるという特性があると言っていいでしょう。

で、これらはどちらかを選びましょうというわけではありません。どちらも接種したほうがいいとされています。それぞれ働きが違うので、両方を接種することで肺炎球菌に対する対策を万全にすることができます。

ただしこれらのワクチンは同時に接種することができず、一定期間開ける必要があります。
またニューモバックスNPは上記のように効果が長続きしないため、1回目接種後5年経過したら再接種することが推奨されています。
そして現在各自治体では肺炎球菌ワクチンに対する助成があり、茅ヶ崎市ではその年に満65,70,75,80,85,90,95歳、そして100歳以上になる方に対し、生涯1回目のニューモバックスNP接種時のみ助成が出て、4000円で接種可能です。
一方プレベナー13この5月に接種できる対象が広がり、対象となる方がニューモバックスNPと多少の違いがあります。

このように状況は人それぞれですので、どちらから接種したほうがいいのか、どのようなスケジュールで行ったほうがいいかは、当院など、肺炎球菌ワクチンに詳しい医師にご相談ください。

肺炎球菌ワクチン

またもう一つ、インフルエンザワクチンは肺炎球菌ワクチンと併用することで、肺炎全体の発症、肺炎球菌性肺炎の発症、侵襲性肺炎球菌感染症による入院、死亡を減らす効果が認められており、必ず毎年接種していただきたいワクチンです。
これはインフルエンザに罹患することで気管支がダメージを受けると肺炎球菌がその後から付きやすくなることで、重複感染しやすくなるためと考えられているからです。

新型コロナもおそらく同様であろうと私は思っています。新型コロナも気管支粘膜に対して作用を示しやすいウイルスです。まだ併用効果を示すデータはありませんが、接種することで新型コロナの肺炎重症化を防止できる可能性は十分にあると考えています。

 

2種類の肺炎球菌ワクチン接種を完了させるには時間が必要です。新型コロナの第2波が訪れる前に、早めに肺炎球菌ワクチンについての行動を取っていただくことを強くお勧めします!

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

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