医師ブログ

2025.08.05更新

いよいよ8月になり、夏の甲子園も始まりました。

私は東京出身(東京って言っても八王子だろ!高尾だろ!!カッペが都民気取るなっ!!!というツッコミはどうぞご遠慮願います)なのですが、大学が秋田だったこともあり、甲子園ではつい秋田代表を気にしてしまいます。

7年前の甲子園で金足農業が金農旋風を巻き起こしましたが、今年はまた金足農業が秋田代表!そして7年前の金農メンバーの弟世代がこぞってメンバーに入っていたこともあり、新・金農旋風!ということで大いなる期待を持っております!

8/7追記:残念ながら0-1の善戦も1回戦敗退でした・・・(沖縄尚学さんおめでとうございます!)


そして、医学部の体育会系部活にもこの時期、1年の目標となる大会があります。
医学生の体育系部活はこの時期、東日本、西日本と分かれ、全国大会を行うのです。

その名も東・西日本医科学生総合体育大会
通称「東医体」「西医体」

私は大学時代野球部で主将として(勉強そっちのけ?の)部活生活を送っていたので、やはり母校の後輩たちは気になります。
昨年は久しぶりの東日本3位入賞、そんな後輩たちが出場する今年の東医体野球競技が、今年は神奈川県開催で、しかも今日の朝10時から中井町で1回戦だという連絡をもらい・・・

居てもたってもいられず、午前診療が終わってから午後診療までの時間を使い、中井町に約15年ぶりに応援に飛び出しました。

野球


序盤先制して有利に試合を進めているとの連絡をもらっていましたが、到着するとすでに8回、逆転されて5点のビハインド。
相手も130kmをコンスタントに投げる好投手で、母校を必死に応援しましたが、終盤反撃するも結局力及ばず・・・

野球

野球

残念ながら今年は1回戦敗退となってしまいましたが、私の時と変わらぬユニフォームを着ながら、必死に戦う後輩の姿は、何よりもカッコよく、輝いてみえました。

野球


そういえば俺も真夏のグランドを元気に駆け回っていた時代があったなあ
今じゃゴルフでもカート必須なのに・・・(;´∀`)


ここからが本題です!


さて、お盆休みも近づき、当院は夏期休診前の大混雑でてんやわんや状態です。
本日火曜は、当院史上はじめて、1日に200人以上の方にご来院頂きました。
(おかかりつけで症状に少しでも変化のある方、お薬がなくなりそうな方、お盆前に診察しますので、遠慮なくお知らせくださいね!)


そして、相変わらず市内外から多くの「長引く咳」にお困りの新患の方も、毎週新たに50人以上いらっしゃっています。

当院では、すでに長く治療されているのにもかかわらず、なかなか症状が改善しない咳のためにお越しになる方も多く、すでに数週間~数カ月以上(場合によっては年単位で)咳にお困りで途方に暮れた末にお越し頂いている方も少なくありません。

ですので当院では、初診の時から詳しくお話をお伺いし、なるべく早期に原因を特定し、長引く咳を治療しています。

そのような診療の中で、私たちが診る長引く咳の原因として、やはり多いのは「喘息(咳喘息も含む)」なのですが、私の印象でも、本当に喘息と診断できる長引く咳の方は、せいぜい50~60%前後との印象です。

その他の40~50%の方の長引く咳の原因のうち、大きな割合を占めるのが、この前ご紹介した「胃・食道逆流」、それに鼻汁が喉に落ち込むことが原因になる「鼻の炎症による咳」の2つです。

そう、気管支や肺ではなく、遠く離れた鼻や副鼻腔、さらには喉のアレルギーや炎症が引き金となり、慢性の咳を誘発することは、実は少なくないのです。

そこで今回は、原因として少なくないにも関わらず、しばしば見逃されやすい、鼻症状による咳について、その理由、対処法をお話ししてみようかと思います。


鼻の咳の原因「後鼻漏」

鼻が炎症を起こすと、鼻水(医学的には鼻汁といいます)がでてきます。

通常鼻水は鼻の穴から出てくることが多いのですが、前ではなく後ろ、つまり鼻の奥から喉の後ろの壁にかけて鼻水が垂れ込んでしまうことがあります。

これを後鼻漏といいます。



後鼻漏によって咳が出る理由

喉に鼻水が落ちてくると、その物理的な刺激によって咳が出てきます
(これは落ちてきた鼻水=痰を排出させるための仕組みでもあります)。

それだけでなく、その鼻水は炎症の結果起こっているものですので、鼻水には炎症性の物質を多く含んでいます。
その物質が喉の粘膜を刺激すると、喉にある感覚神経を刺激して、咳反射を起こしてしまいます。

またアレルギー反応によって生じた鼻水には、ヒスタミンロイコトリエンなどのアレルギー反応を引き起こす物質が含まれていることもあり、これが喉の粘膜に働きかけると、その粘膜にもアレルギー反応を引き起こし、喉がむずむずかゆくなるという症状を引き起こすこともあります。


そして、この状態が長く続き、感覚神経に刺激が加わり続けると、感覚神経の過敏(以前こちらこちらでお話しした咳過敏症症候群の状態です)を引き起こすこともあり、こうなるとなかなか治らない、長引く咳になってしまうわけです。


咳を起こす鼻の病気は?

では、どんな病気が後鼻漏を引き起こすのかを見てみましょう。

まずはアレルギー性鼻炎です。


アレルギー性鼻炎は水っぽい鼻水が後鼻漏に

たとえば、花粉症やダニアレルギーに代表されるアレルギー性鼻炎では、花粉やハウスダストなどのアレルゲンに対するIgE抗体が鼻粘膜で反応を起こし、ヒスタミンロイコトリエンといった化学伝達物質が放出されるアレルギー反応です。

この炎症によりくしゃみや鼻水、鼻づまりが生じると、余分な鼻汁がのどの奥へ流れ込み、後鼻漏となります。
そしてこの鼻水はさらさらしている、水っぽい鼻水であることが多いです。

後鼻漏が咽頭の粘膜を刺激すると、咳中枢が反応して「しつこい咳」を繰り返す原因となり、また鼻水に含まれるヒスタミンロイコトリエン喉のむずむず、いがいがを引き起こします。



次に、副鼻腔の炎症を見てみましょう。

副鼻腔炎ではドロッとした鼻水が後鼻漏に

鼻の周りには「副鼻腔」という、いくつかの空洞が分布しています。

その空洞上に何らかの理由で細菌やウイルスが入り込み、炎症が起きると、「副鼻腔炎」になってしまいます。
副鼻腔炎が起こると、副鼻腔に「膿」を伴った濃い鼻水が溜まり、これが喉の奥に落ちてくると、黄色くドロッと粘っこい痰を伴った咳になってきます。


膿の鼻水が出ていかないと慢性化する

ただ通常はここに炎症が起こっても、副鼻腔炎と鼻の間には「自然口」という狭い通路があり、ここから膿を排泄することで治癒に向かいます。

しかし、何かしらの理由で「自然口」が塞がってしまうと、膿の逃げ場がなくなってしまい、副鼻腔炎が慢性化してしまうことがあります。
すると副鼻腔の線毛機能が低下し鼻水を排出しにくくなるので、より膿性分泌物がたまりやすくなります。

そしてこの濃厚な膿が喉へ流れ込み続けると、これが刺激になり続け、長引く咳に発展してしまうのです。


副鼻腔炎が慢性化したときに考えるべき病気

そんな副鼻腔炎が慢性化しているときには、いくつか考えるべき特殊なケースがあります。
それを挙げていきましょう。

① 副鼻腔気管支症候群
鼻と気管支はつながっているために、副鼻腔炎などの鼻の炎症が気管支に波及してしまう事もあり、慢性副鼻腔炎により慢性的な気道の炎症が起こってしまうことがあります。
「副鼻腔気管支症候群」と呼ばれ、こうなると、気管支の炎症が生涯残存し、咳が慢性化するという事態になってしまうこともあるのです。


② 様々な特殊な副鼻腔炎
副鼻腔炎には他にも、上あごの虫歯によって歯の根元から副鼻腔に菌が入ってくるタイプのもの(「歯性副鼻腔炎」といいます)や、カビによるもの、癌などのできものによるものなど、いろんな原因があります。
症状の重さや鼻の形から、手術で治してしまった方がいい副鼻腔炎もあります。

このような場合は耳鼻咽喉科の、手術ができる先生とのコラボレーションも重要になります(当院は近隣の各総合病院の耳鼻咽喉科とも綿密に連携を取っております)。


③ 好酸球性副鼻腔炎
副鼻腔炎の中で、鼻にポリープができ(鼻茸といいます)、強い副鼻腔炎の症状をきたしながら、喘息の症状も強く出る病気があります。
「好酸球性副鼻腔炎」といって、治療がなかなかやっかいな病態です(国の難病指定もされています)。

とはいえ、この病気も、診断さえつけば耳鼻咽喉科の専門医の先生と我々呼吸器内科の専門医が連携を取りながらであれば、今では十分症状コントロールできる時代になりました生物学的製剤を使用することができます)。

しかし実は、何年もの間、この病気が見抜かれずに、ずっと苦しんでいる方も少なくありません(当院に来院される方でもやはり見つかることがあります)

副鼻腔炎と喘息が両方ともある場合は、なるべく早めに呼吸器専門医、もしくは耳鼻科専門医にご相談ください。


喉のアレルギーで咳が出ることも

鼻だけでなく、喉の粘膜自体もアレルギー反応を起こすことがあります。

アレルゲンや後鼻漏、空気の乾燥などが原因で、喉頭の感覚神経が過敏になり、ちょっとした刺激で強い咳反射が起こるのです。

アレルギー性鼻炎や、アレルギー反応の関わる副鼻腔炎が起きると、喉の粘膜も一緒にアレルギー反応を生じて起こってしまうことも少なくありません。

「のどがむずむずする」「のどに異物感がある」「痰が絡む感じが抜けない」という症状が出ることがあり、なかなか治らない咳に発展することがあります。

これらのように喉から上の炎症で咳が起こる場合、喉の下である気管支の炎症を抑える、喘息の吸入薬のような治療をしても、当然症状は良くなりません(ただしアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎は喘息と合併することがあるので、この場合ば部分的に効果が出ることもあります)。

また痰が絡んでいる咳になることが多いため、無理やり咳止めを使うと、かえってたまった痰を出すことができずに、息が苦しくなってしまうことも少なくなく、薬をずっと使っているのに症状がなかなか改善しない「長引く咳」になりやすい原因の一つと言えるのです。

さて次からは、これらの見極め方や治療についてお話を進めようと思いますが、だいぶ長くなってきましたのでまた次の機会に。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.07.21更新

いやぁ、暑いですねぇ・・・

今年の夏も記録的な猛暑が続き、多くの家庭やオフィスでエアコンがフル稼働しています。

エアコン

もちろんこのような環境、エアコンは絶対必要不可欠です。
しかし夏の到来、エアコンの利用とともに、咳が止まらなくなったという方のご相談が増えています。

日本の夏を快適に過ごすためには欠かせなくなったエアコンですが、実は咳や喘息の症状を悪化させる要因になることが少なくありません。

喘息

快適と思われる室内環境が、なぜ呼吸器にダメージを与えてしまうのでしょうか・・・?

今回は「エアコンと咳」との関係とその対策について、掘り下げてみましょう!

 

エアコンで咳が悪化することがある!

夏のエアコンは、室温を素早く下げる一方で、屋外との温度の差、湿度の差を生み出します。
この温度差、湿度差が、気道に大きなストレスを与えることがあるのです。
その理由について、少し詳しく見ていきましょう。


冷たい空気はなぜ咳を起こす?

まず、私たちの気道(のどや気管支)には、異物や刺激をキャッチする小さなセンサー、「機械受容器」が無数に張り巡らされています(前回の逆流性食道炎と咳のブログでも触れました)。
いつもはホコリやウイルスを検知すると、「余計なものが入ってきたぞ」と脳の咳中枢に信号を送り、異物を吐き出す咳反射が働きます。

ところが、冷たい空気も、このセンサーに「低い温度」という刺激を与えます。
冷たい空気がセンサーに触れると、「温度が急に下がった!」という強い信号が咳中枢へ伝わり、防御反応としての咳が起こりやすくなるのです。


気道は乾燥にも弱い

次に、エアコンには除湿効果もあります。
そのため、エアコンの冷気は湿度も低く乾燥してきます。

その結果、気道表面を覆う粘液の量が減ってしまいます。
具体的には湿度が40%を切ると、粘膜表面は潤いを失ってしまうと言われています。

本来この粘液は、粘り気のあるゼリー状で微細なゴミや微生物をからめ取る役割を果たし、繊毛という小さな毛がゆっくり動くことで、口から外へ運び出します。

しかし、空気が乾燥する粘液の水分が失われ、ゼリーがかたまりやすく繊毛の動きも鈍くなってしまいます。

その結果、本来なら自然に流れ出すはずの異物がなかなか気道から出て行けず、体は咳を使って排除しようと頑張ってしまうわけです。


冷気は気道の血流も悪くする

さらに、冷たい空気は気道にある血管にも影響を及ぼしてしまいます。

冷気を吸うと、気道の粘膜の下にある細い血管がギュッと縮んでしまい、局所的に血流が悪くなります。
血流が減ると、傷ついた粘膜を修復するための栄養や酸素が届きにくくなり、バリア機能が落ちてしまいます。

すると、気道の粘膜に炎症が起こりやすくなって、余計に咳が誘発されるという悪循環に陥ってしまうのです。

 


エアコン内部の湿気で「カビ」が・・・

また、エアコンを使用する上では「カビ」「ホコリ」なども大きな問題になります。

カビ

エアコン本体は、熱交換器(エアコン内部の金属フィン)とファンでできています。
この中に、「アスペルギルス」や「ペニシリウム」「トリコスポロン」といった、呼吸器に症状を起こしやすいカビが繁殖することがあるのです。

まず、冷房運転中は熱交換器が冷やされ、そこに室内の水蒸気が触れると結露が生じます。
この結露水熱交換器や結露水を受け止めるトレーにたまりやすく、湿気が好きなカビにとって絶好の“水分環境”ができあがります。
エアコンを連日使用すると、毎日のように結露が発生し、水分がずっと居残るので、カビの増殖リスクが高まります。


フィルターの汚れも悪影響!

フィルター汚れ

次に、エアコンは空気中のホコリや花粉、皮膚のフケなどをフィルターで捕まえますが、フィルターの目をすり抜けた微細な汚れは熱交換器やトレーの表面に到達します。
これらの有機物は、カビにとって栄養源になるため、これらの汚れが溜まるほどカビのエサが豊富になります。
特にフィルター清掃をサボっていると、内部に送り込まれる汚れが増え、カビの増殖がさらに加速してしまいます。


「カビ」はエアコンの中が大好き!

さらに、エアコン内部は光が届きにくく、暗所となっています。
カビは暗い場所を好む性質があり、昼間の太陽光や室内照明が届かない熱交換器内部は、カビの繁殖に適した環境です。

加えて、運転停止後は、冷えた熱交換器内部の温度が温かい室温に近づきつつ、湿度だけは残ってしまうため、カビは夜間やオフシーズン中にも育ち続けることがあります。


これらの「結露による水分」「ホコリなどの栄養源」「暗所」「暖かさ」という、カビが大好きな条件がそろうことで、エアコン内部はカビにとって非常に繁殖しやすい場所になります。

エアコンのカビ

これらのカビが、エアコンを運転することによって冷気と一緒に部屋の中にまき散らされると、咳の原因になってしまうのです。

 


喘息があると、もっとしんどい

これらの原因によって、エアコンを使用すると、呼吸器に負担がかかりやすい状況になります。

そして、喘息をお持ちの場合、これらの反応がより起こりやすくなることがしばしばあるのです。

喘息

喘息の方は、気道過敏性といって、気管支が刺激に敏感になるという特性をもっているので、喘息の無い方に比べて、冷たく、乾いた空気への反応がとても敏感になり、咳が出やすくなります。
さらには喘息の方の場合、この気道の冷却、乾燥によって気管支平滑筋が収縮してしまうため、気道が狭くなることで息苦しさを招いてしまうのです。

また喘息の方は、ホコリやカビに対するアレルギーを持っているケースが少なくありません。
ですので、エアコンによってまき散らされたホコリやカビによって気道にアレルギー反応が起こると、これもまた喘息の発作を誘発しやすくしてしまいます。

喘息の方がエアコンで症状が悪化するのは、このような背景によるものなのです。


高齢者、お子さん、免疫の低い方も要注意!

また、高齢者の方お子さんは、体温調節機能が未熟あるいは低下しており、温度差や湿度変化に弱い傾向があります。

子どもの喘息

また、免疫抑制状態(ステロイドや免疫を抑える薬を飲んでいる、がんや糖尿病などを持っているなど)の方も、微量なカビが気道に入ることで、体がカビを排除しきれずに肺の中で繁殖してしまうリスクがあり、エアコンの使い方を誤ると症状が急変することがあります。

該当する方は、エアコンの管理に注意する必要があります。

 


呼吸に優しいエアコンの使い方

では、どのように対処したらよいのでしょうか?

まずはエアコンの使い方からお話ししてみましょう。

まず設定温度外気温との差を5~7度に抑え風量「中」や「弱」に設定して急激な冷却を避けます。

リモコン
また冷気が直接気道に入らないように風向きを設定して、直接冷風が体に当たらないようにすると良いでしょう。
サーキュレーターで部屋の温度を均一にすると、温度のムラがなくなり、設定温度を高く設定しても快適に過ごすことができます。

室内湿度50~60%を目安に設定し、湿度が低くなりすぎるようであれば加湿器や濡れタオルなども活用してみましょう。

マスクを着用すると呼吸時に気道に取り込まれる空気の温度差、湿度差を緩和でき、気道への刺激を軽くすることができます。
またHEPAフィルター搭載の空気清浄機を併用すると、ホコリや花粉、カビ胞子などの微粒子を効率的に除去できます。

 


自分でできるエアコン掃除

次にエアコンの掃除についてお話ししてみましょう。

自分でできる掃除としては、まずはフィルター掃除です。

フィルター掃除
フィルターはできるだけこまめに(最低でも月に一度は)掃除しましょう。

またエアコン内部に水分が溜まり続けないことも大事です。
エアコンの室外機の近くに「ドレンホース」という蛇腹状の細いホースがあるのですが、このホースは内部の結露水を室外に排出する役割があります。

ドレンホース
ドレンホースは長年使用していると詰まってくることがありますので、時々外に出て、ドレンホース内にゴミが溜まっていないか見ておき、詰まりそうな場合は、汚れを取り除きましょう。

また、吹き出し口も結露からカビの黒ずみが生えてくることがあるので、見つけたら早めに掃除してしまいましょう。


年に1度は専門業者にお掃除を!

しかし、一番カビが付着しやすい熱交換器内部は、自力の掃除ではなかなか手が届きません。

年に一度、エアコンを使用し始めるシーズンの前に、専門業者に依頼し、内部ユニットを分解して徹底的にクリーニングしてもらうことが、そのシーズンを快適に過ごせるようにするにはとても効果的です。

エアコン清掃


旅行先や外出先でのエアコン対策

外出先のエアコン使用環境は自宅と異なり、設定温度や湿度管理が適切でない場合があります。
バスや電車の冷房も温度差、湿度差が大きくなりやすいので移動中や宿泊先ではマスクを活用するのが無難です。

マスク
旅行先でも、お部屋が乾燥するようであれば、加湿器を貸してもらったり、濡れたタオルを干したりして、部屋の過度な乾燥を防ぎましょう。

 


喘息の方が夏を切り抜けるには?

エアコンを使用すると喘息が悪化しやすい傾向のある方は、この時期にあらかじめ喘息治療を強めることも効果的です。

喘息は、症状が悪化してから対処するより、症状が悪化する前に予防的に対処するほうが、はるかにコスパがよく、また苦しい思いもしなくて済みます。

まずは、症状がなくても、必ず吸入などの治療は医師の指示通りに続けましょう。


主治医とのコミュニケーションが一番のカギ!

また、その方の1年間の傾向をよく理解してくれる、喘息診療に詳しい主治医の元であれば、症状が悪化しやすくなる時期をあらかじめ先取りし、治療をアップダウンしてくれます。

毎回の受診時に、前回受診時から生じた細かい症状の変化も、隠さずしっかりと主治医に伝えることで、主治医も症状の変化を予測しやすくなります。

主治医とのしっかりしたコミュニケーションが症状コントロールのカギなのです。

コミュニケーション


また、しっかり治療していても症状が悪化することも少なからずあります。

悪化「しそうに」なったら、なるべく早めに発作治療薬(メプチン、サルタノールなど)を使用しましょう。
「苦しくなる前に使用する」ところがミソです(詳しい発作止めの使い方はこちらもぜひ!)

また、発作止めを使用しても苦しい場合は躊躇なく医療機関を受診してくださいね。

 


エアコンを正しく使って猛暑を乗り切る!

毎年続く猛暑、エアコンは欠かせないもののひとつです。
熱中症を防ぐためにも、エアコンは呼吸器に過度な負担をかけないように適切に使用する必要があります。

これらの対策をしっかり行って、過ごしやすく、かつ呼吸器にも優しい夏をお過ごしください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.07.07更新

当院はおかげさまで咳にお困りの患者さんが一年を通していらっしゃいますが、その中でも4~6月はやや来院される患者さんの数が落ち着きます。

4月から池田医師永山医師、6月から中島医師の診察が始まり、当院はここ数年にはなかった、ご予約の取りやすい状況になっています(昨年同時期に比べて、当院にご来院頂く患者さんの数はおかげさまで8%近く増えてはいるのですが)。


ただこれからは、例年8月のお盆に向けて、混雑が徐々に始まる時期でもあります(なお今年の当院の夏期休診期間は8月10日~8月18日の9日間です。ご不便をおかけしますが、私たちにも少し休みをください・・・)。


この時期、咳の症状にお悩みの方は、お早目の受診がお勧めです。

お気軽に当院にご相談ください!



さて、当院が治療を得意とする「長引く咳」。
その原因として、皆さんもよくご存じなのは「喘息」「咳喘息」です。

また鼻炎による「後鼻漏」によって咳が長引く方も少なくありません。

しかし、「長引く咳」の原因としてもう一つ、頻度はかなり多いながらもしばしば見逃される「ある原因」があるのです。

それが「胃酸の食道への逆流」、すなわち「胃・食道逆流症」です。

逆流性食道炎

「逆流性食道炎」といえば、皆さん一度は聞いたことのある病気だと思います。
でも、胃、食道といった消化器系の病気が、なぜ呼吸器系の症状である「咳」を引き起こしてしまうのでしょうか?



今回は、そんな「長引く咳」の隠れた3大要因の一つ、「胃・食道逆流症」を、「咳」の観点からお話ししてみましょう。

 

「胃・食道逆流症」ってなに?

まずはキホンから。
「胃・食道逆流症」とは?というところからお話ししてみましょう。



胃が胃酸に強いワケ

胃は、口から食べた食べ物を溜めて、消化する器官です。
食べ物を消化するために、「胃酸」が常に分泌されています。

「胃酸」の主成分は皆さんが小中学校でも習った「塩酸」、これはいわゆる「強い酸性」の物質です。

人間の体は通常「酸」には弱いのですが、いつも胃酸にさらされる胃は、そんなことは言ってられません。

胃壁には「ムチン」という粘液と「重炭酸イオン」などからできたゲル状の層に覆われています。

「重炭酸イオン」「アルカリ性」の物質で、胃酸を中和することができます。
そして「ムチン」という粘液は胃壁に効率よくこびりつき、重炭酸イオンを胃壁にずっととどめておくことができるのです。

また、胃壁の構成成分である胃粘膜も酸に強く出来ています。

加えて、この粘膜の下には豊富な血流があり、ここには「酸」によって損傷した組織を、すみやかに修復する栄養や酸素が流れています。
これによって、例え胃粘膜が傷ついても速やかに傷を修復できるという仕組みを持っています。

胃粘膜


というわけで、この3つのしくみによって、胃壁は胃酸からしっかりと守られているのです(このバランスが崩れると胃炎胃潰瘍になってしまうというわけです)。


でも食道は胃酸には強くない・・・

ところが、その上にある「食道」には、このような機構がありません。

ですので、何かしらの原因で胃酸が食道に逆流してしまうと、食道は容易に傷ついてしまうのです。


胃酸が逆流してしまうワケ

では、なぜ胃酸が食道に逆流してしまうのでしょうか?


①食道を閉じる筋肉が弱くなる

胃と食道の境界には横隔膜があり、その近くには「下部食道括約筋」という輪状の筋肉があって、本来は収縮して食道と胃の境目を閉じることで、胃内容物の逆流を防いでいます。

しかし、この括約筋の力が弱まってしまうと、本来閉じているべき場所がゆるんでしまい、胃酸や胃内容物が食道へ逆流しやすくなります。

さらに、胃のなかに食べ物やガスがたまって過度に膨らむと、下部食道括約筋が一時的にゆるんでしまうことがあります。
本来は嚥下と連動してのみ緩むはずの下部食道括約筋が、この過剰な膨張刺激によって無関係に弛緩してしまうと、胃の内容物が逆流しやすくなるのです。

下部食道括約筋


②胃の動きが悪くなり、奥に中身が流れない

また、胃の働きが悪くなり、内容物の排出が遅れても、逆流のリスクが高まります。
糖尿病や自律神経障害などで神経機能が落ちてしまうとこのようなことが起きやすくなります。



③腹圧が高くて内容物が押し戻される

加えて、肥満妊娠などで腹圧が高くなると、物理的に胃内容物を食道側へ押し上げる力が強くなり、逆流が起こりやすくなります。



④「食道裂孔ヘルニア」が生じる

そして、この腹圧によって胃が押されたり、横隔膜が加齢で弱くなったりすると、胃が横隔膜を超えて上側に飛び出してしまうことがあります。

これを「食道裂孔ヘルニア」といい、これが生じると、常に非常に逆流が起こりやすくなってしまうのです。

食道裂孔ヘルニア



「逆流性食道炎」?「胃・食道逆流症」??

ところで、今回私は胃・食道逆流症」と書きました。

皆さんには「逆流性食道炎」という名前が良く知られています。

わざわざあまり知られていない言葉を使ったのは、呼吸器科医師の分際で消化器の病気も知ってるよーってイキってみよう!と思ったから。
では、もちろんありません・・・。


胃カメラで何もなくても・・・

「逆流性食道炎」
は、胃酸が逆流して食道の粘膜にただれを起こすため、胃カメラで内視鏡で直接確認することができます。

しかし、「非びらん性逆流性食道炎」という病態があります。
これは、胃酸が食道に逆流しているにもかかわらず、粘膜に明らかなただれがない状態です。

実はこの状態でも、酸が逆流する回数や時間は、「逆流性食道炎」とほぼ同じか、それ以上の場合があり、咳や胸やけを誘発します。

しかし、食道が荒れていないため、胃カメラで問題ないと言われてしまうことが珍しくないのです。

「胃・食道逆流症」は、胃酸が食道に逆流していることを指すので、食道が荒れていようがいまいがかは関係ないという訳です。

胃カメラで異常がないからと言って、必ずしも「胃・食道逆流症」は否定ができないという点は、診断の上ではとても大事な点になります。



「胃・食道逆流症」の咳は、診断が難しい

しかし、「胃・食道逆流症」は、咳の原因として、しばしば見逃されてしまっています。
その原因として、まさか呼吸器の症状が胃や食道から来てるとは思わないと、医師も患者も考えてしまうということがあります。


加えて、「胃・食道逆流症」他の病気と被ることも多いのです。

例えば、喘息や後鼻漏、長引く感染症などで咳が続いた時、その咳によって腹圧がかかってしまうことがあります。
するとその腹圧によって胃酸が逆流して、先ほどの原因と併せてダブル、時によってはトリプル以上の要因によって咳が止まりにくくなることが珍しくないのです。


喘息や後鼻漏などと診断されて治療してもなかなか良くならない咳の中に、このようなパターンが潜んでいることがあるのです・・・

 

「胃・食道逆流症」が咳をおこすしくみ

さて、「胃・食道逆流症」が咳を引き起こすしくみを見ていきましょう。

咳の刺激の伝わり方

咳は、のどや気管にある「センサー」が刺激を受け取って脳の咳中枢に伝え、反射的に咳を出す流れで起こります。

詳しく見てみましょう。

最初に食道やのど、気管などにある受容器(センサー)が、何かしらの刺激を感じ取ります。
次にその情報は、神経の線維を上って行って脳へ伝わり、脳の「咳中枢」に届きます。
刺激を受け取った「咳中枢」は、この状況を判断し、咳を起こすかどうかを決定します。

「咳をする」と脳が決めた時、咳中枢の指令は、今度は神経線維を下って胸や腹の筋肉、声帯など、様々な場所に送られ、これらを協調的に動かして激しい空気の流れを作り出し、異物を押し出すのです。


胃酸が食道の神経を刺激する

受容器(センサー)には主に2種類あります。

一つが、酸や炎症性の物質に反応する「化学受容器」で、もう一つが、圧力や引っ張りに反応する「機械受容器」です。

のどや気管には「化学受容器」が張り巡らされており、胃酸が逆流すると、「化学受容器」がこの酸の刺激を拾ってしまいます。
ここからの信号は、「迷走神経」の中の「上咽頭枝」という細い線維を上って「咳中枢」へ送られて、咳が出てしまうという訳です。



刺激を受け続けると、どんどん過敏に!

またこのような胃酸逆流が続いてしまうと、「化学受容器」が慢性的に興奮し、迷走神経線維の先端で、炎症性の物質(サブスタンスPやCGRPなど)が作られるようになります。

これによって、今度は神経そのものが炎症を起こしてしまいます「神経原性炎症」といいます)。

炎症を起こした細胞から放出された物質はさらに受容器を刺激し、神経線維全体の敏感度を高めます。

その結果、ちょっとした温度変化や香り、水分の飲み込みなど、普通なら咳が出ない刺激でも咳反射が暴走しやすくなることがあるのです。

さらに、「咳中枢」のある脳幹でも、長期間絶え間なく刺激が届くことによって咳中枢が過敏になってしまい、わずかな刺激でも過剰な咳命令を出すようになります「中枢感作」といいます)。

 逆流性食道炎

こうして末梢(体の末端)と中枢(脳幹)の両面から神経が「咳モード」にロックされ、治りにくい長引く咳へとつながるわけです(この状態を「咳過敏症症候群」といい、コロナ感染とかでも神経が傷ついてこうなったりすることがあります。こちらについては以前こちらのブログ 2023.7.16 コロナの後に続く咳・・・なぜ?どうしたらいい?? で詳しく触れていますので、ご興味のある方はどうぞ!)。



胃酸は声帯にも影響する

また、胃酸がのどに到達すると、のどにある化学受容体が感応してしまうのですが、この際に反射的に声帯が閉じてしまうことがあります。
併せて胃酸の酸そのものが声帯を傷つけてしまうことも相まって、声帯の機能が低下してしまうことがあります。

これによって「声がれ」が出ることが少なくないのですが、これに合わせて「のどのいがいが」や、声帯が閉じることによって生じる「のどのつまり感」が生じることがあり、これらの症状が伴う咳は、「胃・食道逆流症」によるものの可能性が高くなります(この状態を「声帯機能不全」といいますが、これは私たちの世界では最近ちょっとアツい話題ですので、今後改めて詳しく触れてみようかと思います)。



他の原因の咳と、どこが違う?

「胃・食道逆流症」による咳は、他の疾患が引き起こす咳と比べて次のような特徴があります(必ずしもすべてが当てはまるわけではない点には注意が必要です)。

①発作のタイミングと誘因

「胃・食道逆流症」の咳では、食後すぐや、就寝中など、横になったときに咳が増えることが多いのが特徴です。
特に夕食後に横になると逆流が起きやすく、また就寝中は夜間から早朝にかけて咳で目が覚めるケースが目立ちます。

咳の性状

「胃・食道逆流症」の咳は、神経を刺激する咳なので、乾いた空咳が中心で、痰を伴わないことが多いです。
ただし、喘息や後鼻漏など、他の要因による咳と被ることがあり、その時には痰を伴うことは珍しくありません。

③随伴症状の違い

「胃・食道逆流症」では、胸やけ呑酸(酸っぱい液の逆流感)を自覚する人がいますが、これも実は半数程度と言われていて、残りの半数は出ないことが分かっています。

先ほどお話しした、「のどのいがいが感」「声がれ」、「のどの詰まる感じ」も起きやすいのですが、のどのアレルギーや長引く喘息でもこのような症状をきたすことはあるので、やはり診断は一筋縄ではいきません・・・

さらに、先ほどお話ししたように、ダブル、トリプルの要因があると、症状の特徴が大きく様相が変わることがあるので、診断が難しい場合は、専門医にお任せしちゃった方が無難です。


生活習慣の改善ポイント

さて、「胃・食道逆流症」による咳と診断されたらどう対処しましょうか?

まずは生活習慣から見直してみましょう。

咳を抑えるための基本は、胃酸の逆流を防ぐことです。以下のポイントを参考にしてください。


①食事の工夫

1回の食事量を減らし、1日5~6回に分けると、満腹にならずに腹圧の上昇を抑えることができます。
また、脂っこいものや刺激物(コーヒー、チョコレート、炭酸飲料、アルコール、ミントなど)胃酸分泌を促進してしまうので、摂りすぎは避けましょう。
あと、食後すぐに横にならないことや、夕食を遅くとりすぎないことも重要です。

②就寝時の姿勢

咳が止まらない時は、食道への胃液の流入を抑えるため、頭を10~15センチ上げて寝ると効果的です(枕の下に板や枕、タオルなどを入れて対処します)。
仰向けで寝ると逆流しやすい場合は、左を下にして横向きで寝るのも効果的です(胃はは体の左側にあるため、左を下にすると胃が食道より低くなり、逆流しにくくなるのです)。

逆流性食道炎

③体重管理

肥満は腹腔内の圧力を上げ、逆流を助長するので、体重が重い方は減量が効果的です。
適度な運動(ウォーキング、ストレッチ、軽いジョギングなど)は減量に効果がある上、胃を積極的に動かし、内容物を胃の先の十二指腸まで送り届けやすくなるというメリットもあります。

逆流性食道炎

④衣服や生活環境

きついベルトやウエストの締め付けは腹圧を上げるので避けましょう。
喫煙は下部食道括約筋を弛緩させてしまって、逆流を悪化させるため、できるだけ避けたいところです(もちろん「咳」の観点からのまず最初に対応すべき箇所です)。
ストレスは胃酸分泌を増やすため、リラックス法(深呼吸、ヨガ、趣味の時間)を取り入れても良いかもしれませんね。

逆流性食道炎


薬の使い方

これらの対策と合わせ、薬を使っていくこととなります。
症状が軽い場合は市販の胃薬でも一時的に逆流症状を抑えられますが、長引く場合は病院での処方薬のほうがベターでしょう。

胃酸分泌を強力に抑える「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)」などに加え、胃を動かして内容物を奥に送り届けてしまう「消化管運動亢進薬」を併用することもあります。

前者が「ネキシウム」「タケプロン」「オメプラール」「タケキャブ」など、後者が「ガスモチン」「ガナトン」などが代表的な薬です。


これらによって2~4週間まずは様子をみて(神経過敏があることがあるので、適切な診断、治療でも改善までずいぶんと長引くことが珍しくないのがイヤらしいところです・・・)、その後の症状の変化具合でさらに見立てを進めていく、というのが、一般的な治療の流れになるかと思います。


なかなか良くならないときは咳治療に詳しい専門医へ!

と、今回もついつい長くなってしまいましたが、胃・食道逆流症による咳は、ここまでお話ししたように診断、治療が簡単でない上に、他の疾患と被るケースが少なくなく実際に適切に診断、治療するのはかなり難しく、私たち呼吸器専門医でも悩ましく思うケースもあるほどです。

やはり長引く咳でなかなか良くならない時は、一度深く掘り下げてみないと見えてこない原因が隠れていることが多いものです。

ぜひそんな症状の時は、私たち呼吸器専門医を頼ってみてください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.06.21更新

ついこの前まで寒さが和らいだと思ったら、急に真夏になってしまいました・・・
連日熱中症になりそうな猛暑が続いており、カラダのバランスを崩してしまう方が後を絶ちません。

この時期外で体を動かす際は、是非とも熱中症には気を付けてほしいと思います。

と同時に、実はこの時期の運動は、熱中症だけではなく、喘息など呼吸器のトラブルが起こりやすいことはあまり知られていません。

実はこの時期、「地上オゾン」「PM2.5」と呼ばれる大気汚染物質が増えやすい季節なのです。
これらの物質が呼吸器にいろんなトラブルを引き起こすことがあるのです。

呼吸器

季節外れのクソ暑い今回は、「暑い夏に運動することによる“呼吸器”のトラブルとその対策」について、触れてみようかと思います。


「地上オゾン」って何?

そもそもまず、「地上オゾン」とは何でしょうか?

オゾンというと、上空の成層圏にある「紫外線をさえぎる層」を思い浮かべる人もいますが、地上近くでできる「地上オゾン」は、成層圏オゾンとは別物です。

「地上オゾン」とは別名「悪玉オゾン」とも言われ、自動車の排ガスや工場から出る「窒素酸化物(NOx)」と、塗料や溶剤、ガソリンなどに含まれる「揮発性有機化合物(VOC)」が、太陽の強い紫外線を浴びて化学反応を起こすことで作られる気体です。

呼吸器


夏は「オゾン」が溜まりやすい

夏は紫外線が強く、日射時間も長いため、これらの化学反応が起きやすくなります。
また温度も高くなると、化学反応の速度も上がってしまい、結果としてオゾンがたくさん発生します。

加えて、夏は風が弱いために大気がよどみやすく、風が弱い日が続くと、汚れた空気が山や海を越えて流れることができなくなり、そのまま街中にとどまって濃度がさらに上がってしまうのです。


オゾンはカラダを傷つける・・・

「オゾン層」は、環境破壊によって地球上から減っていることはよく知られています。
ですので「オゾン」というと、いかにもキレイな気体を想像してしまいます。

でも実は「オゾン」は強い酸化作用を持ち、細胞を傷つけてしまうため、高濃度の状態で私たちの周りにあると、カラダを傷つける、実は恐ろしい物質なのです。

オゾン

「オゾン」を吸って気道に取り込んでしまうと、私たちの気道の内側にある粘膜の細胞に小さな傷をつけます。
細胞膜には「脂質」が含まれているのですが、「脂質」「オゾン」と結びつくと、脂質が酸化される(錆びついてしまうような感じです)のに加えて、「活性酸素」という物質を作り出します。

「活性酸素」他の物質を強く酸化させる作用を持っています。

そのため、体内にできた「活性酸素」は、いろいろな細胞成分を酸化させることで細胞を傷つけ、炎症を起こします。
炎症が起きると、体は炎症をくい止めようとして白血球を集め、「サイトカイン」という伝達物質を出します。

気道の細胞は「活性酸素」によって炎症が起き、気道のむくみや痛み、咳、息苦しさを引き起こしてしまうのです。

 

では、「PM2.5」とは?

では次に「PM2.5」について触れてみましょう。

「PM2.5」は直径2.5μm以下、髪の毛の太さの約30分の1ほどの微粒子です。
その非常に小さい大きさ故、鼻やのどを通り抜け、肺の奥深くにある「肺胞」まで到達してしまう特徴を持っています。

PM2.5


「PM2.5」が夏に増える理由

「PM2.5」には、工場の排煙や自動車の排気ガスから直接出る「一次粒子」と、大気中のガス(先ほど出てきた「窒素酸化物(NOx)」や「揮発性有機化合物(VOC)」など)が光化学反応など酸化されて粒子に変化した「二次粒子」があります。

このうち、夏の高温、高湿度に加え、紫外線が強い環境では、「二次粒子」への変化が起きやすい環境で、他の季節と比べて「二次粒子」が多くなる傾向があります。


また昼間は車の排気ガスや工場からの排出などで「PM2.5」が活発に作られますが、高気圧に覆われやすい夏の昼間は風が弱いことが多く、作られた「PM2.5」が拡散しないでその場にとどまりやすくなることが多くなる傾向にあります。

また、中国大陸で発生した工業排出物を含んだ「一次粒子」である「PM2.5」が、偏西風に乗って日本にも飛んできます(日本ではこちらの方が有名ですね)。
主に春に飛んでくるのが有名ですが、工業排出物に由来する「PM2.5」は、実は1年中飛来しており、夏にも多く飛んでくることがあるのです(黄砂に由来するPM2.5は、春以外はあまり飛んでこないようです)。

加えて、雨が少ない日が続いたり、暑さで地表が乾燥しやすくなると、地上のホコリや花粉などが舞い上がる現象も起こり、これらから「PM2.5」が作られてしまうこともあります。


「PM2.5」が引き起こすカラダの炎症

ではこれらの「PM2.5」を吸い込んでしまうとどうなるのでしょうか?

先ほどお話ししたように、「PM2.5」非常に小さな微粒子で、一旦吸い込むと気管支の奥深くにある「肺胞」まで届いてしまいます。

「肺胞」は、酸素と二酸化炭素を交換する「肺の主役」ともいえる場所ですが、そこに「PM2.5」が沈着すると、体は「異物が入った!」と判断して、肺胞の周りに白血球やマクロファージ(掃除をする細胞)をたくさん集めます。

これが続くと肺胞に炎症が起き、正常なガス交換が妨げられ、息切れや呼吸のしづらさを生じます。

また、「PM2.5」には微量の重金属や化学物質がくっついていることがあり、これらが肺胞に到達した後に溶け出すと、全身に炎症が広がり、疲れや頭痛、アレルギー症状の悪化を招くこともあります。

呼吸器


「夏の運動」は汚染物質を吸いやすい状況!

こうした反応は、たとえ持病がない健康な若い人でも、長時間または繰り返し汚染物質を吸い込めば起こりえます。

特に運動中は呼吸が速く深くなるため、「オゾン」や「PM2.5」の濃度が高い状況では、通常よりたくさんの空気を肺に取り込むことで、ダイレクトに影響を受けやすくなるのです。


じゃあ、どうすればいい?

夏場はもちろん「熱中症」に気を付けなければなりません。
しかしこのような「オゾン」「PM2.5」などの大気汚染物質も、実は夏場には気を付けなければならない、手ごわい敵なのです。

では夏に活動する際、私たちは、何をどのように気を付けたらよいのでしょうか?


大気汚染情報をこまめに確認する

環境省が提供する「そらまめくん」(大気汚染物質広域監視システム)、「地上オゾン」と「PM2.5」の濃度をチェックしましょう。
最近は(主に海外系の)気象系アプリでも大気汚染情報が提供されていることがあるので、こちらを活用することも有用かと思います。

光化学スモッグ注意報が出ているときは、運動を控えるか、時間帯を変えましょう。


朝か夕方に運動時間をずらそう

「地上オゾン」日射が強い正午~午後3時頃に高くなるので、午前5~7時、または午後5時以降の涼しく、かつ紫外線が弱まった時間帯に体を動かすとリスクを減らせます(もちろん熱中症を防ぐにも重要です)。

「PM2.5」は交通量の多い朝夕のラッシュ時間にも増えやすいので、症状が出やすい方はこの時間を避けたほうが良いでしょう。

運動


運動後のケアで呼吸器を守る!

帰宅後はすぐにうがいや鼻うがいをして、気道に残った微粒子を洗い流しましょう。

食事では、ビタミンCやEを含む野菜・果物、ナッツ類を積極的に取り入れ、体内の酸化ストレスを減らすことも有効です。

栄養


大気汚染物質に気を付けて快適な活動を!

「地上オゾン」も「PM2.5」も、目には見えないのですが、呼吸器に影響を与え、炎症を引き起こすことがあります。

特に夏は高温や紫外線の強さ、大気の停滞などの影響で、他の季節よりリスクが高まる時期です。


この時期は熱中症だけでなく、「空気の質」にも気を配り、安全で快適な夏のアクティビティを楽しみましょう!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.05.31更新

皆さんは普段、googleなど、webの口コミはご覧になられているでしょうか?

 

今の時代、お店を選ぶ際には、webの口コミを参考にされる方も多いかと思います(私もお店探しの時は正直参考にはしています)。

webの口コミは、今まで人づてでしか聞けなかったそのお店の評判を多く知ることができたり、情報がない店の客観的な情報を得られたりするという面で、大きな役割を果たしています。


しかし、その匿名性から、口コミを書く人の主観に偏りすぎる一方的な視点からの書き込みから、いわれのない誹謗中傷まで、信ぴょう性に疑問符を抱かざるを得ない情報も残念ながら少なからず存在します。


医療機関界隈でも、Webの口コミには、患者の受診体験の率直な感想など正当な評価や、改善点の指摘などの貴重な意見を書かれていることも多いのですが、その一方、残念ながらクリニックと患者さんの行き違いなどから、書かれた方は気の毒にも思える低い評価を書きこまれていることもあります。


「基本的に不快な時に行く場所である」医療機関は、その時の思わしくない体調がネガティブな感情を呼び起こしやすい状況もあり、どうしても不満の方が書かれやすいという、他の業種にはない特徴も持っています。

 


また、残念ながら医療機関の中には、自作自演などの手段を使って、自らの医療機関の評価を不当に上げたり、一方ライバルと目す医療機関に虚偽の書き込みをして相手の評価を不当に下げるところがあるのも事実です(当院もやられたことがあります)。

また、これまた非常に残念なことなのですが、そのような行為をあっせん、委託する業者や、また虚偽の低評価を書きこんで、「書き込みを消す」といって高額を請求する極めて悪質な業者さえもいるのも、事実なのです(実際にダイレクトメールなどで営業がかかってくることもあるのです)。

挙句の果てには、自院にかかれた低評価の口コミに対し、「開示請求を行い、実名を公表する」などと脅しをかける医療機関まで・・・

残念ながら、Webの口コミは、そのすべてがクリーンではありません(もちろん当院は不当な自作自演は一切行ってはおりません)。


そこで当院では、患者さんの生の声をお聞きいたしたく、ご来院いただいた、主に新患の方に、受診時の印象を評価いただくアンケートを実施しています。


クリニックで生の患者さんの声を聴くことは、実は簡単ではありません。

ありがたいことに当院には非常に多くの、定期的に通院していただく患者さんがいらっしゃいます。

そして、定期的に当院に通い続けていらっしゃる方からは非常に多くのお褒めの言葉を頂きます(もちろん時には問題点を指摘頂く、貴重なご意見を頂くこともございますが)。

大変うれしく、また私たちスタッフの診療の励みになる貴重なお声です。

ただ一方、中には当院の診療に不満があり、その後当院にいらっしゃらなくなる方がいるというのも紛れもない事実です。
このような方は、不満を抱えながらも、何もおっしゃらずに当院を去っていく方が多いですので、このような方のご指摘のお声は、通常耳にすることは難しいものです。


私たちも人間ですので、お褒めのお言葉のみを聴くだけなら、こんなに気持ちいいことはありません。

ただしかし、受診への満足を提供できなかった方の声なき声の中にも、私たちの医療サービスを改善できる「ヒント」が隠されているのも、また事実です。


そのような、すべての「患者さんのありのままの声」もあえて聴きたく、当院では昨年5月から、このアンケート調査を開始しました。


このアンケートは、問診を記入された方(=当院に新患で受診されるほぼすべての方新たな症状があり問診を書いて頂く再診の方など)すべてに、受診後1時間後にメールでお送りする形で行っています。

そしてこのたび、この取り組み開始から1年が経過しました。

いろいろなお声が集まり、お褒めの言葉をいただきうれしいと思う反面お叱りと改善をお求めになるお声もいただき、身が引き締まる思いでした。


そこで今回は、当院に届いた「ありのままのお声」の一部を皆様にお見せし、私たちクリニックの気持ち、取り組み、それに患者さんの皆さんにもご理解いただきたいことなどをお示しすることで、今後当院と患者さんがどのようしたら良い関係を築き、お互いが満足する医療を実践していけるかを考えてみたいと思います。


まずは、アンケートにお答えいただいた患者さんからいただいた、当院のご評価を公開したいと思います。

ご意見は790名の方から頂くことができました。

各項目の評価は4:「満足」から1:「不満」4段階評価としており、当院は及第点を3以上と定めました。
また総合評価のみ5:「とても満足」、4「満足」、3「普通」、2「不満」、1「とても不満」の5段階としています。

では始めて行きましょう!
コワイヨーコワイヨー(◞‸◟)

1.受付スタッフの対応、説明についてはいかがでしたか?

enquete

おかげさまで最高評価の4を71%の方から3以上の及第点以上を94.4%の方からいただくことができました。
患者さんが非常に多く、忙しい窓口ですが、その中でもホスピタリティーある応対を目指してきました。このような評価を頂き、非常に喜んでいます!

2.受付から診察時間までの待ち時間はいかがでしたか?

enquete

うーん、こちらはやや厳しい結果です。
及第点以上の評価をいただけたのは75.7%にとどまりました。約1/4の方からご不満のお声をいただきました。
患者さんの混雑状況や、時間のかかる診察のあとになると、どうしても最大1時間程度お待ち頂くことがある状況です。

より対策を深めていく必要があります。

3.看護師の応対、説明についてはいかがでしたか?

enquete

こちらは最高評価の4を71.8%の方から、及第点以上の評価は95.0%の方からいただくことができました。

看護師も、病気や検査でご不安な患者さんに、なるべく安心していただけるような応対を心がけています。
当院の提供したい「安心感」を、多くの方にご評価いただき、非常にうれしく思います!

4.医師による診療の内容はいかがでしたか?

enquete

こちらも最高評価の4を77.4%の方から、及第点以上の評価は94.7%の方からいただくことができました。

やはり診察は、当院の一番重要な「サービス」です。
当院の医師は内科、呼吸器、アレルギーを専門として、患者さんの病気に全力で立ち向かっています。
多くの患者さんにその診察内容をご評価いただき、正直ホッとしています・・・

5.医師の症状説明および治療方針に対する納得度はいかがでしょうか?

enquete

有り難いことです。
最高評価の4を77.4%の方から、及第点以上の評価は93.6%の方からいただくことができました。

いくら良い診察を行っても、そのことを患者さんが理解でき、納得して頂けないと、その後の治療効果も限定的になってしまいます。
当院では病態の説明にも力を入れておりますので、その点をご評価いただけて良かったと思っております。

6.診察終了からお会計までの待ち時間はいかがでしたか?

enquete

やはり当院にとって、「待ち時間」は鬼門なのか・・・

最高評価の4は46.7%にとどまり、及第点以上の評価をいただけたのは80.4%約1/5の方から不満のお声をいただきました。
医療費あと払いサービスの導入なども行ってはいるのですが、やはり時間帯によっては会計にお待ち時間が発生してしまう時間もあります。

フローの改善はここ数年ずっと行っているのですが、まだまだ進めなければいけないと考えています。


最後に総合評価です。

総合評価

最高評価の「とても満足」が52.1%「満足」が34.0%で、86%以上の方から「満足」以上の評価をしていただきました。

全体的には高い評価を頂くことができたようで、やはり正直にうれしいです。

 

というわけで、内心びくびくしながら集計してみた結果ですが、多くがご評価のお声で、正直ほっとしたところです。

しかし最初もお話しした通り、当院の診療に満足いただけなかった残り数%の方の、その中でも頂けた貴重なご指摘を、逃げずに拾い上げることも、とても大事なことです。
「不満」の方が3.6%、「とても不満」の方が0.4%と、厳しい評価をお持ちの方が全体の4%いらっしゃったことも、しっかり刮目する必要があります。

そこでここでは、恥を忍んでそのようなご意見の一部を抜粋して掲載し、併せてこのご意見に対する当院からのお答えを載せてみたいと思います(問題点のご指摘は60件ほど頂きました。掲載したご意見は原文ママで掲載しています)。

 

「会計の待ち時間の長さと予約の取りにくさが不満です」

申し訳ありません。どうしても患者さんの集中する時間になると、お待ち時間が出てきてしまいます。なるべくすぐお呼び出しできるように、今まで以上にシステムをブラッシュアップします。診察後会計をお待ちになることなくお帰り頂ける「クロンスマートパス」というシステムもご用意しているので、ぜひご利用ください。また予約の取りにくさの件も、枠の調整や医師の増員などで対応したいと思います。


「予約なのに待ち時間が長過ぎます」

こちらも申し訳ありません。どうしても一人一人に診察時間をかけてしまうと、その分後ろが押してしまうことがあります。また状態が悪化した方が続くとどうしても診察時間が長くなってしまいます。Web問診をもっとブラッシュアップして、診療の質の維持をしながら極力後ろの方に影響が出ないようにする、お早めにお帰り頂きたい方は担当医変更のご提案をすることで、なるべく早く診察を開始するなどの柔軟な対応を行って、できる限り対応したいと思います。


「診察前の血圧測定について、ほぼ満席の待合室のところで測定するのは少し配慮に欠けるとおもう」

申し訳ないのですが、現状では待合室しか血圧計を備え付ける場所がありません。周囲の方の目が気になる場合は、気兼ねなくスタッフにお声掛けください。看護師が処置室で測定いたします。またなるべくお待ち時間を短くすることで、待合室の混雑緩和に努めてまいります。


「パソコンによる予約がスタッフに正しく認識されておらず混乱があった。」

ご迷惑をおかけしました。時々当院で起こっていることで、原因探索するとシステムの不具合が原因であったり、当院内での伝達がうまくいっていなかったりするケースがあるようです。今後しっかりと院内でも意思伝達のミスを極力減らすシステムをつくり、予約システムのベンダーともシステム改修に取り組みたいと思います。


「発熱でつらいときに、長時間狭い椅子で座っているのはつらい」

体調不良の中、ご不便をおかけしました。発熱・感染症待合室には、感染防止のために椅子の間にパーティションを設置していますが、その影響で狭くなってしまっています。お越しいただいたらできるだけ早く診察を行い、会計まで終了できるように、スタッフ配置の調整、検査から診察、会計までのフロー改善を行います。


「発熱の疑いがあるのはわかるが、来院を煙たがるような印象を受けた」

申し訳ありません。当院としては発熱・感染症外来を行っている以上、すべての患者さんを誠意をもってお迎えする気持ちでおりますが、そのような印象を持たれてしまったのは私どもに責任があります。院内スタッフ全員に年1回接遇セミナーを行っており、このように思われた方がいらっしゃったことについてはスタッフ、講師と情報を共有しております。


「早めに来たにも関わらず、私より後に来た人の方が先に呼ばれ会計されていた」

ご不快な思いをさせてしまい申し訳ありません。検査内容から会計に至る確認作業や、処方の内容によって、会計が前後することがございます。ご不快になる方が少なくなるよう、このことを事前に周知しながら、なるべく早く会計が終えられるように改善に取り組んでまいります。


「抗生剤が欲しかったのにもらえなくて残念」

当院では診察の内容によって、その時その時で最善な治療を選択しています。あくまで医学的に妥当な治療を行いますので、ご希望に添えないことがあることはご了承ください。


「電波がつながりにくい」

ご不便をおかけしています。鉄筋コンクリートのクリニックのつくり上、電波が建物奥まで届かないケースがあり、電波増幅器を設置しているもののつながりにくい場所が残っているのは事実です。現在院内フリーwifiを整備中であり、2025年夏までには稼働予定です。


「発熱外来の為仕方ないとは思いますが、外での検査は辛いものがありました」

お辛い思いをさせてしまい申し訳ありません。どうしても場所が限られており、建物内で検査をすると他の方への感染リスクが生じてしまうので、現在も外で検査を行っております。寒いときにはカイロをお渡しする取り組みも行っておりますので、ご理解いただけましたら幸いです。


「検査キットに記入する名前を間違えられた。名前の間違えがどれだけ重要なことかしっかりと実感していただきたい。」

おっしゃるとおりです。ご不安をおかけし、大変申し訳ありませんでした。ダブルチェックを徹底するなど、このミスを無駄にすることなく改善に取り組んでまいりたいと思います。


「今日の先生はあまり人の話を聞いてもらえず、質問しても上から目線的な感じがあった」
「長く続いている症状なのに、ありふれた薬を出して「2週間様子を見ましょう」はナシでしょう、と思いました」

せっかく受診いただいたのにご満足いただけずに申し訳ありませんでした。医師と患者にはどうしても相性というものが生じます。また診療内容の意図が必ずしもうまくお伝えできないこともあります。当院では通常必ず2名以上の医師が同時に診察していますので、診療内容にご満足いただけなかった場合は、スタッフに申し出ていただければもう一人の医師がもう一度診療を行うことも可能です。希望があれば当該医師にはその情報は伝わらず、またこのようにして頂くことによる患者さんの不利益も全くございませんので、是非ともお気軽に御声掛けください。
もちろん医師もこのご意見を真摯に受け止め、改善できるように努めていくとともに、各医師の間で診療方針が統一できるように、今まで以上に医師間の意思疎通を図って参ります。


「お薬を60日分いただきたいです。」

基本的に受診間隔は、疾患の状態を見て決定しておりますが、当院ではきめ細かい医療を実践することをクリニック全体のモットーとしており、わずかな変化でも早期にとらえることを目指していますので基本的には6週間までの受診間隔としています(非常に安定しており、悪化するリスクの極めて低い方では2~3か月ごとの処方をすることもあります)。ご理解いただけますようよろしくお願いいたします。


「予約1ヶ月先は病院ではできないので、1ヶ月先の自分でやってくださいとか意味がわかりません」

意図がうまくお伝え出来なかったようで申し訳ありません。当院は6週先までのご予約は可能ですが、受付の混雑を緩和し、会計作業などをよりスムーズに行えるようにする目的に、窓口でご予約できる枠よりWebからご予約できる枠の方が多くなっています。おそらく1か月先の窓口で可能な予約枠がすべて埋まっていたものと考えられます。Web予約が可能な方は、ぜひWebからご予約いただけますようご協力をお願いいたします。

 

他にもいろいろとご意見をいただきましたが、その中でも代表的なご意見を、忖度なく掲載してみました。

正直当院では対応の難しいご意見もありましたが、やはり多くは当院の改善をお求めになる、(愛のある)厳しいご意見だったように思います。
私たちの気づきにもなりました。

忌憚ないご意見をいただき、誠にありがとうございました!


それでは最後に、手前味噌にはなりますが、当院にいただいたお褒めのお言葉の一部をご紹介させて頂こうかと思います(お褒めのご意見は200件ほど頂きました。本当にありがとうございます!)。

「咳に加えて、頭痛やアレルギー症状までも診てもらえた。経過や症状の変化等の話を真摯に聞いてもらえた。改善する為に、これからの治療方法を解り易く丁寧に説明してもらえた。沢山患者さんいたにも関わらず、スタッフも含めててきぱきお仕事されていた。」

「ちょうど大雨のなかの通院になってしまいましたが、看護師さんが雨で濡れながらも、こちらを気遣ってくださって嬉しく思いました。薬局との連携もスムーズで助かりました。」

「対処療法でなく、症状やその先も考えて治療計画を教えてくださり、治療をしてくれます。安心して治療が続けられます。」

「受付、検査、診察の全てが丁寧でした」

「医師の説明がとても丁寧で、病気に対する不安もなくなりました。受付や看護師の方もとても親切で安心できます。予約制なので、混雑の割には待ち時間も思ったほど長くありません。」

「インフルコロナの検査と採血などを対応していただいた看護師の方がとても親切丁寧だったのが印象的でした。ありがとうございました。」

「スタッフ皆様親切で、検査もしてもらったが全体に進行がスムーズ。医師の説明も分かりやすく、自分の状態を簡単に理解することができた。」

「先生を初め看護師さん、受付の方皆さん丁寧で一生懸命にされている様子が伺え、安心して通院出来る医院です。いつも混んでいるイメージはありますが、人気がある理由も納得行くので、長く通院しております。」

「急遽体調不良になってしまったが対応していただいた。感謝しかないです。」

 

「先生は患者の症状を細かく聞いてくださり、尚且適切な答えを分かりやすく説明してくださります。また、先生、スタッフの方々の惜しみない努力のせいでしょうか、受付から診察、会計までの時間が、格段に早くなったと思います。これからもずっとお世話になりたいと思います。」

 

「電話での問い合わせを何度かしたことありますが、的確に丁寧に対応をしてくださいます。忙しい中でも電話対応がいつも丁寧なので問い合わせするのも安心です。」

 

「スタッフの対応が良いですね。」

 

「喘息でお世話になっております。いろいろ他院を受診してきましたが、自分に合うお薬が無く、こちらで処方していただいたお薬で改善されました。常に新しい知識と情報をお持ちの先生方だと思います。いつも助かっています。」

 

「謎のせきの原因を突き止める為に色々試行錯誤して下さいました。長年苦しめられていたので、本当に良かったです。」

 

「喘息治療でこちらの先生に診てもらいたくて病院変えました。先生はとても話しやすいので気になることを再確認したり、体調についてもいつでも相談出来ます。先生含めすべてのスタッフさんが優しく対応してくれます。火曜日に限り午後7時半まで診察してくれるのは助かります、サラリーマンには大変ありがたいです。」

 

「大変満足しております。初診時少し待ちましたが受付の方々をはじめ看護師の方々も今までの病院とは違いとても親切で言葉使いも不快がありません。説明なども的確であり無駄な馴れ馴れしさも無いのが良かったです。少し受付の辺りが患者さんが多くてごちゃごちゃしているのがわかりづらかったですが再診からは問題はありませんでした。」

 

「コロナ禍と変わらず、感染対策の徹底がすばらしいです。それは患者と医療従事者、そこにその場に居合わせるすべての人を守るために本当によく考えられていると思います。インターネットでの予約システム、あらかじめの問診入力もあわてずに家でもできること、お会計をクレジットカードの登録で後払いできること(診察後は待たずに帰れます) 処方箋の流れも隣接の薬局とスムーズに連携されていたりと、至れり尽くせりのシステムができていました。なによりも具合がよくないなと感じた時に診てもらえる、検査してもらえるという安心感が本当にありがたいです。」

 

「診察が丁寧で話しやすい先生方なので安心して受診できます。また受付の方も丁寧に対応して下さいます。薬局もお隣なのも助かります。」

 


あぁ、首がこそばゆい(笑)

 

お知らせ

 

6月17日より、新たに呼吸器専門医が私たちの仲間に加わることにになりました!

 


中島健太郎(なかしまけんたろう)先生
の診療が火曜午前、金曜午前に開始となります。

 


中島先生は今年3月までの直近の3年間は、藤沢市民病院の呼吸器内科で診療を行っておりました(現在も引き続き外来診療を担当されています)。
医師として14年の経験をお持ちで、総合内科専門医、呼吸器専門医を所持しておられた、非常に気さくで物腰の柔らかい先生です。

 

診断が難しい咳や、治療が困難な気管支喘息などの治療の経験も豊富で、また総合内科専門医をお持ちの通り、一般内科の診療も高レベルで行うことができます。

いままで午前中の受診枠がやや少なめで、午前のご予約枠が取りづらい状態でしたが、火曜と金曜の午前予約枠が新患、再診とも大幅増枠となり、いままで以上にご予約がお取り頂きやすくなります!


ご予約は当院Web予約システムから、火曜午前、金曜午前「内科・呼吸器科枠」でお取りください!



 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.05.15更新

ヒノキ花粉症も終わり、いつもなら当院も少し落ち着くはずな5月です。

しかし、今年は長引く咳の方が絶えません。

もちろん喘息や鼻炎など、季節の変わり目などで咳が出ていらっしゃる方は相変わらず多いのですが、今年はそのような咳だけではなく、今まで咳が全くなかった方が、突然長引く咳をきたすケースが増えています。
そして、お子さんを含めた家族みんなが咳をしているケースも少なくありません。

このパターンではいわゆる「感染症」による咳を考えやすいのですが、通常ウイルス性上気道炎(つまりは「風邪」、です)だけでは数週間も咳が続くことはありません「風邪」がきっかけで気管支喘息が悪くなったり慢性的な鼻炎、副鼻腔炎になったりなど、もう一つの何かが起こることで咳が長引くことは多々あります)。

長引く咳を起こす病原体の代表格が「マイコプラズマ」で(詳しくはこちらの記事「2024.9.1 【歩く肺炎】マイコプラズマって、いったいどんな病気?」から!)、そのほかにも「結核」「クラミジア」なども、しつこい咳を起こしやすい病原体です。



その中でも特に長く咳が続くものとして「百日咳」という感染症があります。

そして、今年はそんな「百日咳」がやたら目立つのです。

いつもは当院からは年に数人ほどしかいらっしゃらない「百日咳」感染の方が、今年は1日に2~3人出ることもあり、いつもとは明らかに異なる様相です。

実際に4月末の1週間の全国統計データでは、昨年の80~120倍もの患者さんが百日咳と診断されているとのことです。

百日咳
NHKサイト「感染症データと医療・健康情報:百日咳」より


「百日咳」といえば、通常はお子さんの病気だと思い浮かべる方が多いですよね。

しかし(当院には咳がなかなか治らなかったり、治療が難しい喘息のお子さんもいらっしゃってはいますが)小児科ではない当院が今年目にする機会が増えているのが、「大人の百日咳」です。

数日~数週間咳が続き、喘息や鼻炎による咳などを疑った方が、念のための検査をしてみるとあらびっくり、百日咳感染だったという例が、頻繁に起きているのです。


でも、そもそも「百日咳」ってどんな病気でしょうか?
それから子供と大人の百日咳の違いは何でしょうか?

今回は、今知っておきたい「百日咳」のことについて、すこし詳しくお話ししてみようかと思います。

 

百日咳のキホン

まず、百日咳の原因となるのは「百日咳菌」という細菌です(インフルエンザやコロナと違い、ウイルスではありません)。

この菌は咳やくしゃみなどで放出される「飛沫」だけでなく、空気中に菌が漂うという「飛沫核」という状態でも気道に入り込み、感染します。

感染力は非常に強く、免疫を持たない人が感染している人と同じ部屋に短時間いるだけでも感染することがあります。


また、百日咳菌は粘膜に付着し、そこから毒素を作り出し気道の線毛を破壊して繊毛運動を妨げます。
その結果、気道の分泌物がうまく排出できなくなり、頑固な咳を引き起こしてしまうというのが大きな特徴です。


潜伏期間(感染してから症状が出るまでの期間)は通常1~2週間ですが、短い場合は4日ほど、長いと3週間程度かかることもあります。

過去に百日咳に感染したことのある方も、残念ながら免疫は一生は持たないので、その後再度かかることもありますし、年齢や体調によってはより重症化をしてしまうこともある病気です。


どんな症状?

最初は風邪にとてもよく似ていて鼻水、くしゃみ、軽い咳、微熱などがみられます。
この時点では本人も「ただの風邪」と思いがちで、その見極めは私たち呼吸器の専門医でも簡単ではありません。

風邪

しかし、この間に百日咳菌はせっせと「毒素」を作って、肺に貯めこんでいきます。

そして、その後1〜2週間経つと、この「毒素」による、一度出ると止まらない、激しい発作性の咳が襲ってきます。

百日咳
子供の場合、息を吸い込む際にヒューヒューといった、笛を吹くような特徴的な音が聞かれたり、激しい咳の後に嘔吐をすることがあるのですが、一方で、大人の場合はこのような典型的な発作性の咳や嘔吐が起こりにくく、単に「しつこく、長びく咳」しかきたさないことが少なくありません。

咳は夜間から明け方にかけてひどくなることが多く、慢性的に数週間~数ヶ月続き(その名の通り「100日」続くことも珍しくありません)、睡眠不足に悩まされたり、胸や背中の筋肉痛や疲労感、食欲不振など、生活に大きな支障が出たりすることも少なくありません。

しかし、このような症状の場合、百日咳を疑って検査をしないと、しばしば長引く風邪や気管支炎、喘息など、他の長引く咳の病気と誤診されてしまいます。

 

厄介な咳が出たら、もう遅い・・・

そして、その治療の難しさに、百日咳の難しさがあります。

百日咳菌が入り、発症したときには、「軽い風邪」のような症状しか出ませんでした。
その後、百日菌菌が毒素を出して、それが増えてくると厄介な咳が始まってしまうのでした。

百日咳菌には抗菌薬(マクロライド系:クラリスロマイシン、アジスロマイシンなど)が効くのですが、実はこれらの抗菌薬、毒素には全く効かないのです。

つまり、厄介な咳が出始めた時は、もう抗菌薬が効く段階ではなくなってしまっているのです・・・

つまり、百日咳菌に感染したあと、咳を回避するためには、厄介な咳が出る前に、状況などから百日咳を早くに疑って検査を出し、早期に診断して治療を開始する必要があるのです。

 
でも、診断も難しい・・・

しかし、残念ながらその診断も簡単ではありません。

困る

最初の「風邪」症状の時に検査を出したらいいのですが、症状だけで見ると「風邪」と変わらないので、確実に診断しようとすると、「風邪」の方全員に検査をする必要があります。


ちなみに百日咳の検査では以下のような種類があります(総合的なおススメ順に並べています)。

①PCR検査(ぬぐい液):鼻咽頭ぬぐい液を採取し、百日咳菌の遺伝子を増幅・検出します。
日本ではより簡単に検査ができる「LAMP法」を行います。精度は非常に高いのですが、検査結果が出るのにやや時間がかかるのが弱点です。

②抗体検査(採血):血液を用いて百日咳菌に対するIgG抗体を測定します。PT抗体という種類の抗体の数値が100EU/ml以上あれば確定診断です。
採血検査なので、検査が比較的カンタンで苦しくなく、また長引く咳を精密検査する際は他の要素も疑うので、1回の採血でそれらの検査も同時にできることがメリットですが、発症からある程度時間が経過しないと数値が上がらないことがあったり、中途半端に上がっている場合の解釈が難しいことが難点です。

③抗原定性検査(ぬぐい液):インフルエンザやコロナの検査のように、鼻咽頭ぬぐい液を使用する事で、15分で結果が分かるキットです。
簡単に検査ができるメリットは大きいのですが、百日咳であるのに陰性となることが少なくないことに加え、百日咳でないのに陽性に出てしまうケースもあるため、かなり解釈が難しい点が欠点です。

④培養検査(ぬぐい液):綿棒で鼻やのどから百日咳菌を採取して、培養する方法です。
菌が生えてくれば確定診断ですが、結果が判明するまで時間がかかること、偽陰性(百日咳菌がいるのに、培養では生えてこない)が少なくないことから、使いやすい検査ではないのが実情です。

※ちなみにレントゲンでは影はでないことがほとんどで、(上の抗体検査を除いて)採血検査でも特別上がったり下がったりする数値はありません。


最初は風邪と見極めがつかないのですが、風邪の方全員にPCTとか採血での抗体検査など、上の検査を行うことは、時間、費用、手間と非常にムダが大きく、患者さんの負担も大きくなるため、現実的ではありません。
しかも、例え検査を行ったとしても、これらの百日咳の検査は(抗原定性検査を除いて)その日のうちにはわからないのです。

(周りに同じように長く続く咳をきたした方がいたなど)状況的に、強く百日咳感染を疑う場面でもない限り、早くから百日咳の検査を行うことは困難なのです。

つまり、まだ治療が間に合う
毒素が溜まる前のタイミング」で、百日咳を診断して、治療を始めることが難しいということなのです。

(だったら最初の風邪の症状の時にみんな抗菌薬やったらいいじゃんという話にもなるのですが、それはそれでいろんな問題があるのです・・・。詳しくはこちらのブログ「2019.10.19 「風邪」と「抗生物質」で)

 

咳もつらいが・・・

かくして、百日咳はしばしば診断が遅れてしまう、代表的な感染症です。
診断が遅くなると、以下のような様々な問題が出てきてしまいます。


まず、咳が数カ月もの間長く続くと、社会生活にも著しく制限がかかり、仕事や学校生活などに大きな障害になってしまうことが大きな問題となります。

しかもこの咳は非常に激しく、かつ1日中続くものなので、体力もかなり削られ、生活をさらに困難にしてしまいます。

疲労

 

赤ちゃん、高齢者の方に移すと一大事!

加えて、適切な治療が遅れると、感染を広げてしまうことで、患者さんの周りにいる赤ちゃんや高齢者に感染させてしまうリスクが出てきます。


赤ちゃんの場合、百日咳に感染すると、症状が重く入院が必要になることもありますし、特に生後6カ月未満の赤ちゃん重症化しやすく、肺炎や呼吸停止、重篤な神経合併症を起こすリスクが高くなってしまいます。
また高齢者や基礎疾患を持つ人でも百日咳感染がそれに続く肺炎を引き起こすリスクとなり、命に関わる場合もあります。

 

大人が保菌者となって周囲に百日咳菌を広めてしまうことは、周りの方の生命に関わる、非常に大きな問題となるのです。

 

じゃあどうしたらいい?

治療時期を逸した百日咳の場合、症状を抑える鎮咳薬や漢方薬、気管支拡張薬などを使用し、毒素が抜けるのを待ちます。

咳が激しい場合は、肋骨の筋肉痛や頭痛を伴うこともあるため、痛み止めを併用することもあります。

そして、咳をすることで症状してしまった体力を回復させるための十分な休息、乾燥に弱い粘膜を潤すための水分補給室内の加湿や暖かく保つ環境作りが対策になります。



症状には効かないのに「抗菌薬」??


ただ、実は、治療時期が過ぎても抗菌薬の内服はしておいた方がいいといわれています。

抗菌薬

咳がひどくなったら手遅れって言ったのに、なぜでしょう??

それは、感染の拡大を防ぐいう目的のためです。

感染してから3週間以内であればまだ百日咳菌は体内に残っており、この百日咳菌を抗菌薬でしっかり排除すれば、周りの人に感染させる可能性は減るという目的を達成することができるからです。

(ただしこの場合、本人の咳の症状はあまりよくならないことが多いことは知っておく必要があります)。

 

百日咳を予防するには・・・

では、大人の百日咳にかからないためにはどうしたらよいでしょうか?

最も効果的な方法はワクチン接種です。

ワクチン

日本では子供の頃に百日咳のワクチン(3種混合(DPT)ワクチン)を接種していますが、その効果は時間とともに徐々に弱くなります。
そのため、大人になってからも百日咳にかかるリスクがあります。

特に小さな子供や高齢者、妊婦など周囲に感染させたくない家族がいる場合は、この百日咳ワクチンを10年ごとに再接種することが推奨されています。


また、新生児や免疫に問題がある方が近くにいる場合「コクーニング(繭)戦略」といって、家庭内の大人が先に接種して、感染に弱い方を守るという戦略が有効ですので、積極的にワクチン接種を考えて頂きたいと思います。


生活面で気を付けること

咳が出た時に、それが絶対に百日咳ではないと判断することはできません。

日常生活での対策としては、やはり風邪を引いた時には咳エチケット(咳やくしゃみをする際にマスクやティッシュで口を覆う)を心がけ、こまめな手洗いや消毒をする、そして体調が悪いときにはしっかり休み、早めに医療機関を受診することが重要です。

感染対策

また、職場や家庭内で咳が長引いている人がいる場合は、その方になるべく早めの医療機関の受診を勧めてください。


さいごに

大人の百日咳は、一度かかると長期間咳が続き、日常生活に非常に大きな支障をきたすうえ、まわりにも大きな影響を及ぼすことが多いため、軽く考えてはいけません。

「ただの風邪」として片づけてしまうと、知らぬ間に周囲へ広がり、特に免疫力の弱い人々に深刻な影響を与えてしまいます。


また残念ながら一度かかった方でも再度かかる可能性のある病気ですので、しっかりとした感染対策が必要な病気です。

 

正しい知識を持ち、ワクチン接種や咳エチケット、早期受診を徹底することで、自分自身と大切な人々を守ることができます。

そして咳が「何週間も続く」場合は、ためらわずに当院など、咳に詳しい医療機関に遠慮なくご相談ください!


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投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.04.28更新

先日、私が担当させてもらっている公立中学校の、年に1回の健診業務に行ってきました。
私が担当するのは10クラス約400人。

健診

診察の際はカーテンですべて仕切って、生徒さんと養護教諭の先生と、3人きりになります

 

普段の診察ではまず診ることのない人数で、座りっぱなしでおしりは痛いし・・・聴診器つけっぱなしで耳は痛いし・・・(*´ω`)

しかし、流れ作業にせずしっかり診察すると、やはり見つかっていない病気が見つかるものです。

昨今、学校の健診で服を脱がせるのかどうかが議論になっています。
呼吸器内科医として聴診器を自分の体の一部のように扱うように育てられた私は、やはり服の上から聴診器を当てることによって、聞こえるべきものを逃してしまうのはどうしてもイヤなのです。。。
ですので私はもちろんシャツはまくし上げないように配慮しながら、できる限り肌に直接聴診器をあてて診察したいなと思っています。

今回見つけた方のうち何人かは、おそらく服の上から聴診器を当てていたら逃していた自信があります・・・

心臓の音に問題が見つかった方が何人かいらっしゃった一方、呼吸の音でも、気管支が狭まっていたり、痰が絡んでいたりする音が聞こえた方を何名か見つけました。

お話しを聞くと、「今まで咳が出るのが当たり前だと思って、我慢して生活していた」「よっぽど困ったときだけ病院に行っていた」というようにお話しする生徒がいました。
その方たちには、「まず医療機関にかかって、しっかりと診察を受けましょうね」とお話をしました。

その一方、しっかり病院やクリニックにかかっているのに、「喘息という診断をされて、吸入薬は出されたことがあるけど、『なるべく使わないで』と指導されていた」という生徒が複数いらっしゃいました。
曰く「吸入薬は、心臓に負担がかかるからあまり使ってはいけないよ」、と。

せっかく受診しているにもかからわず、十分に症状がコントロールできずに、日常生活でも咳や息苦しさに制限される生活を強いられていたのでした。

もちろん現在の観点では、この治療は適切ではありません。
現在の正しい治療法は、このブログで一億万回述べたように、基本薬は吸入ステロイドとなり、その他、抗アレルギー薬などさまざまな薬を組み合わせながら、調子が悪化した時にいわゆる「発作止めの吸入薬」を使う、というものです。

症状がずっと出ているにも関わらず、吸入ステロイドを使用していない時点で適切ではないという訳です。

という訳で、しっかりと正しい治療をしましょうね、ということなのですが、

今回お話ししたいのはそこではありません。


この場面でののもう一つの問題点、なぜ「発作止めの吸入薬は、なるべく使ってはいけないよ」と言われてしまうのか?

そもそも「発作止めの吸入薬」と言われる薬は、いったい何者なのか?
そして「発作止めの吸入薬」は、どの様に使ったらいいのか??

喘息の治療の中で、「発作止めの吸入薬」はとても重要な役割を果たします。
しかし結構誤解されている部分も少なくありません。

そこで今回は「発作止めの吸入薬」について、少しずつ紐解いていこうと思います。


そもそも「発作止めの吸入薬」って何?

いわゆる「発作止めの吸入薬」と言われている薬、これは正確には「吸入短時間作用型β₂刺激吸入薬」(これを「SABA吸入薬」と略します。これ以降はわかりやすく「SABA」という単語で記載します。「サバ」と呼んでください)という薬です。
名前の通り、効果が短時間で出てきて、その効果持続時間も短時間であるというのが特徴です。

代表的な薬剤にはサルブタモール(商品名:サルタノール、ネブライザーで行う場合はベネトリン)、プロカテロール(商品名:メプチン)などがあります。

SABA

 

ところで、β2って何でしょうか?

正確には、「交感神経」のβ2受容体という部分の事を指しており、この部分が刺激されると平滑筋(血管、気管支など、いわゆる内臓の筋肉が緩み気管支が拡がります

同時に、「交感神経」を刺激されると心臓は脈が速く、強くなります(血管が過剰に開くことで頭痛も発生することがあります)。
また骨格筋(いわゆる体を動かす、皆さんが通常イメージする筋肉)に対しては、「交感神経」が刺激されると、筋肉が緩んだり縮んだりを繰り返し、「ふるえ」の症状になって現れます。

ですので、この部分を刺激する薬を入れると気管支が拡がるため、喘息の時に急に気管支が狭くなって息が苦しくなったときの“駆け込み寺”的な薬として使用されるわけです。
一方、使いすぎると、その心臓への働きから動悸や頭痛、ふるえなどの症状が出てしまうのです。


喘息の治療の歴史

吸入ステロイドはゆっくりと効果を発揮し、気道の炎症を抑えて発作の起こりにくい状態に改善する役割を担います。

大昔には吸入ステロイドはこの世の中に存在せず、初めて吸入ステロイドが用いられるようになったのは1978年、今から46年前の事でした。
しかし最初の吸入ステロイド薬は、喉への刺激も強く、また一回に噴霧できる量も少ないため、回数を多く使わなければならないなど、煩雑なものでした。

その上、吸入ステロイドはその「ステロイド」というイメージから、長期で使用する事の抵抗感が患者だけでなく医師にも強かったようです。
その為、発売から十数年たっても喘息治療では、SABAを中心に「息苦しくなったら吸入」「楽になったらやめる」をくり返すような使われ方が当たり前でした。

 

しかし吸入ステロイドは炎症を抑える一方、SABAは炎症を抑えません(気管支を拡げるだけです)。
その上、SABAはずっと使用していると効きづらくなるという仕組みがあることがわかりました(ずっとSABAを使っていると、なぜだかβ2受容体が減っていってしまうのです)。

※なお、このことは後の時代になって明らかになったことでした。



そのような治療を続けた場合、炎症が持続的に起こりっぱなしになるため治りづらくなり、その上徐々にSABAも効かなくなってしまいます。
するとSABAの使用量はどんどん増えてしまうのですが、するとその副作用である動悸、頭痛、ふるえなどがどんどん悪化し、最終的には心臓がくたばってしまうわけです。

事実、現在年間の死者は1000人前後である気管支喘息のこの時代の死亡者数は、実に7000人を超えていたのです。

喘息死亡者数

厚生労働省・人口動態統計[1994~2022年は確定数、2023年は概数]から作図

その後、気道の炎症を抑えることが大事だという考え方がようやく30年ほど前から広がり、また吸入ステロイドを長期で使用することの危険性も低いことがわかって、1993年に吸入ステロイド薬はようやく治療ガイドラインに載ることになり、その後2000年前後から吸入ステロイド薬は一気に広がることとなりました。

現在では、炎症を抑えるための「コントローラー」(=吸入ステロイド)に、発作を抑えるための「リリーバー」(=SABA)を組み合わせることで、発症予防と症状緩和を両立させる治療が基本となりました。


SABAの位置づけは変わったが

この変化に伴って、SABAの位置づけも“主役”から“脇役”へと移行することになりました。

日常的な使用は控え、症状が出たときのみに限定することで、過剰な副作用を抑えるように注意することが大事となりました。

しかし、吸入ステロイドの普及前、症状の安定しない喘息の方が毎日のようにSABAを使用し、毎日副作用に苦しむ姿を見ていた医師、薬剤師の苦い経験は、今でも心の奥深くに刻まれています。
そして、そのような経験は、また下の代に語り継がれていきました(それはそれで大事なことですが)。

ですので、一部の医療者の間では、SABAをいわゆる「最後の砦」として、「なるべく使わない方がいい薬」との位置づけで理解されてしまうことと相成ったのです。

SABAをガマンしすぎてしまうと・・・

しかし、それによる問題も出てくるようになりました。

吸入ステロイドを使用しても、その症状の強さ、薬の強度、吸い方による気管支の奥への届き方によって、症状が十分にコントロールできない喘息の方は今でも多くいらっしゃいます。
また、普段安定している方でも、風邪や花粉症など、引き金を引いてしまうことで、ある時急に悪化してしまうこともあります。

その場合、SABAを「最後の砦」として、ギリギリまで使用しないとどうなってしまうでしょうか。

気管支が狭い状態が続くので、息苦しく、咳も止まらない状態が続いてしまいます。

咳

苦しくなると、もちろん日常生活は著しく制限されてしまいます。
それだけでなく、苦しい状態で頻呼吸をすることで、それが気管支へのさらなる負担となってしまい(気管支は乾いた大量の空気に弱いのでした)、さらに炎症が悪化、気管支が狭くなってしまう事態となってしまいます。
そして悪化状態が続くと、喘息は悪化した状態でそのまま固まってしまうこともあり、より不安定に、より重症になってしまうわけです。

もちろん、吸入ステロイドを正しい量で、正しく使うことが一番大事なのですが、それでも調子が悪くなった時、SABAを躊躇なく使うということは、今でもとても大事なことなのです。


では、どんなときにSABAは使えばよい?

大事なことは「ガマンし過ぎない」ことです(苦しいのを耐えることが美徳という考えもあるのかもしれませんが、喘息の場合苦しいのを耐えると、次に余計苦しくなる状況がやってくるだけで、全く割に合わない努力です・・・)
吸入

たとえば、喘息の調子が悪く「なりそう」だったら、早めにSABAを使用してもらったほうが、結果的には使う総量が増えないで済みます。
逆にSABAを「最終手段」と考えて、我慢できなくなってからSABAを使用しても、もはやSABAは効かなくなってしまうのです。

確かに使いすぎると副作用は出る可能性がありますが、心臓に対する大きなダメージは、基本的に長期間継続的にSABAを使ったときです。
たまに来る、調子の悪い時のみにSABAを多く用いても、基本的には一時的な副作用の問題を引き起こす可能性があるのみです。

またすぐに効いて、すぐに抜ける薬なので、動悸、頭痛、ふるえなどの症状が出ても、その時点でやめてしまえば、その副作用が何日も続くことはありません。

苦しくなったら、メプチンやサルタノールは、躊躇なく、症状が落ち着くまでしっかり使いましょう!



「運動すると苦しくなる場合」はどうする?

一方、階段を駆け上がったあとや、自転車を急いでこいだ時、それに有酸素運動(ランニング、サッカーなど)をした時に、息切れやぜーぜーがひどくなることがあります。

「運動誘発性喘息」と言い、こちらは症状が悪化してからすぐに使うのはもちろん、運動の前や、運動を始めて最初の数分のうちに吸入してしまうことで症状を軽減できるのです。

運動前吸入

運動で苦しくなることが予想されるときは、SABAは予防的に使ってしまいましょう!


でも、やはり「使い過ぎ」にはご注意を


ただし、SABAはあくまで「発作を一時的にやわらげる」ための薬です。
症状が出たらすぐ吸入することを忘れない一方、楽になったらすぐやめる ── これが鉄則。

また、あくまで喘息の炎症を抑えるのは吸入ステロイド。

SABAをつかったらすぐに楽になると言って、SABAに頼りきって、吸入ステロイドを飛ばしてしまうことは絶対にやめましょう。

30年前の、あの時代の治療法に逆戻りです・・・

SABA副作用


SABAを使用する際に気を付けるべきポイント

では、最後にSABAを正しく安全に使うための注意点を以下にまとめます。


使用頻度の管理


「1日4回」など、医師の指示がない限り、あらかじめ決めた範囲を超えないよう心がけましょう。

目安を超えたら、吸入ステロイドの増量や変更など、何かしらの治療変更が必要になるタイミングです。
次回受診前でも、お早目の予約外受診を検討しましょう(当院はおかかりつけの方なら、ご連絡をいただければ診察日には必ず当日、もしくは翌日受診が可能です)。


吸入方法の確認
気管支までしっかり薬剤を届けるには、他の吸入薬と同じく、吸入器の使い方を正しくマスターする必要があります。
定期的に医師や薬剤師、それに看護師に確認してもらいましょう(当院では今年から看護師による吸入指導を開始しております!)。


全身症状に注意
手の震え、動悸、頭痛、倦怠感などの副作用が強い場合は、SABAの使い過ぎです。
人によっては、SABAが子供の量(時には幼児の量)でも、副作用が強く出てしまう方がいらっしゃいます。

SABAの使い方をカスタマイズすると、SABAをより有効に使えるようになることもあります。
喘息の治療経験が豊富な医師にご相談いただきたいところです。

また同時に、喘息の治療を適切な強度に変更したり、また時には、そもそも喘息ではなく他の疾患である可能性も考えなければいけないときもあります。
こちらも要相談です。


記録を残す
SABAを使用した時間・回数などを記録し、定期的に医師と共有しましょう。
詳しいデータがあると、医師も今の状況を把握しやすくなり、適切な指示を出しやすくなります。

 

SABAをうまく使いこなせるようになれば、喘息はずっと楽になります。
また、悪くなっても対処ができるという安心感も、長く付き合っていくには重要なことです。

ぜひ、うまくSABAを活かして、快適な生活を送ってください! 


お知らせ

茅ヶ崎駅北口のロータリーの今井薬局さんのビル3階に、糖尿病を専門とするクリニックがオープンされました。
「おおくぼ内科クリニック」さんで、茅ヶ崎市立病院代謝内分泌科出身の大久保 和哉先生が院長をされています(当院にもご挨拶に来られました)。

開院

幅が違うな~


もちろん、糖尿病専門医の資格をお持ちの先生で、血糖値のご不安に、専門医の技術で対応されます。
昨今、専門医でもないのに呼吸器、糖尿病を宣伝し、(それでも症状がよくなればいいのですが)症状がよくならずに当院に駆け込む患者さんが増えてしまっています・・・

おカラダのお悩みを相談するなら、ぜひ確かな技術を持った医師にご相談を!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.04.07更新

いよいよ4月、新年度に入り、新しい生活がスタートした方も少なくはないでしょうか。

当院でも4月から診療体制の変更で、新しく池田 秀平先生、永山 貴紗子先生の2名の呼吸器内科の先生に仲間に入っていただき、金曜午後の診療時間の延長も行い、金曜午後は13時から診療を開始しております。

毎年4月上旬は、新生活でお忙しかったり、また保険の切り替えの方も少なくないからか、やや診療枠に余裕が出ることが多い時期です。
今年もパンパンだった3月までとは多少異なり、時間帯によっては枠に余裕のある日もあるようです。

また新しく2名の先生がいらっしゃったことにより、新患の方のための枠も大幅に増加しました。
(日による違いはありますが)火曜午後、金曜午後は新患の方の枠がお取り頂きやすくなっているようです。

長引く咳やアレルギー症状でお困りの方は、今なら比較的直近のご予約をお取り頂けるようですので、(当院はそんなに敷居の高いクリニックであるつもりは毛頭ございませんので・・・)ぜひお気軽にご予約下さい!


いよいよヒノキ花粉の飛散が開始!

さて、そんな4月は、スギ花粉の飛散がそろそろ終盤を迎えるのと同時に、ヒノキ花粉の飛散が始まる時期でもあります。

皆さんご存知の通り、「スギ花粉症なのに、ヒノキの花粉にも反応してしまう」方は少なくありません。
そして実際、採血検査でも、スギ花粉とヒノキ花粉の両方に陽性反応を示すケースが非常に多く見られます。

RAST

これはたまたまなのではなく、しっかりとした理由があります。


「花粉症のしくみ」

花粉症というのは、花粉という異物(抗原)が体内に入ったときに、免疫システムが過剰に反応してしまうことで起こります。
通常、免疫システムは病気を引き起こす細菌やウイルスを攻撃するために働きますが、花粉症の方の場合、無害な花粉のタンパク質にも過敏に反応してしまうのです。


花粉症の悪の主役、「おバカ抗体」IgE

具体的には、花粉が体に入ると、免疫細胞が花粉を「異物」として認識し、IgEという抗体を作ります。
以前もお話ししましたが、抗体とは異物を除去するための体内で作る「飛び道具」なのですが、IgEはいわゆる「おバカ抗体」で、このIgE抗体はあまり体に有益な働きをせずに、アレルギー反応を起こしてしまう抗体です。

IgE

異物である花粉が体内に入ってくると、アレルギー体質のある人はIgE抗体を作ってしまいます。
するとIgEは体内にあるマスト細胞という細胞にくっつきます。
マスト細胞の中には、アレルギーを引き起こすヒスタミンやロイコトリエンなどの化学物質の顆粒が大量に含まれています。

その後再び花粉が体内に入ってくると、マスト細胞にくっついたIgE抗体に、花粉のタンパク質(抗原)がくっついて、マスト細胞からアレルギーを引き起こす化学物質が大量に放出され、くしゃみや鼻水、目のかゆみといった症状が引き起こされるわけです。


「スギ」と「ヒノキ」の花粉は形が似ている!

では、なぜスギ花粉症の人がヒノキ花粉にも反応するのでしょうか?

その理由は「交差反応」という現象にあります。
「交差反応」とは、一つの物質に対して作られた抗体が、構造がよく似た別の物質にも反応してしまう現象のことを言います。

スギとヒノキはともにヒノキ科に属し、実は非常に近い植物同士です。
そして、スギ花粉に含まれるタンパク質(主要抗原Cry j1、Cry j2)と、ヒノキ花粉に含まれるタンパク質(主要抗原Cha o1、Cha o2)の構造は非常に似ています。

そのため、スギ花粉に対するIgE抗体がヒノキ花粉にも結合してしまうのです。


それゆえ、スギ花粉に対する反応を起こす患者さんは、ヒノキ花粉の時期にも症状が続いてしまいます。
スギ花粉の飛散ピークは通常2月~3月ですが、その後3月下旬から4月にかけてヒノキ花粉の飛散が始まってしまうため、春を通して症状が長く続いてしまう人が多いのです。

交叉反応


「ヒノキ」花粉症にはのどのいがいが、咳が多い!

とはいえ、スギ花粉症とヒノキ花粉症が全く同じという訳でもないようです。

報告では、ヒノキ花粉症はスギ花粉症より、喉の「掻きたくなるようないがいが」や、それに伴う咳の症状が多いようです。
またその症状も、ヒノキ花粉が少しでも飛び始めただけの時期でも強い症状がでることがあり、とてもヒノキ花粉に対して敏感に反応するということがあるようです(その理由はまだよくわかっていないようです)。
いがいが

実際、当院でも3月下旬のヒノキ花粉飛散時期から、目に見えて喉のいがいがと、これに伴う咳の症状の方が増えています。


咳と言えば「喘息」ですが・・・

長引く咳というと、やはり「気管支喘息」のイメージを持たれる方が多いかと思います。
このブログでも何度もお伝えしているように、気管支喘息は「ステロイド吸入薬」が治療の一番の主役です。

一般的に「ステロイド吸入薬」を使用するとよくなる咳は、「気管支喘息」と診断されることが多いです(風邪の咳はステロイド吸入薬が効かないため)。



「ヒノキ」花粉症の咳は「喘息」と間違えられやすい!

しかし、この「花粉症による咳」も、実はステロイド吸入薬が効いてしまうのです。
ですのでこの時期、咳で医療機関を受診した方の中で、実際は「花粉症による咳」だったにもかかわらず、ステロイド吸入薬を使用して改善したことで、「気管支喘息」と誤診されてしまっている方も少なくありません。

でも、よくなったんだったらどっちでもいいじゃん。。。

そのように思われる方もいらっしゃるかとは思いますが、でもやはり、「気管支喘息による咳」と「花粉症による咳」は、しっかりと区別する必要があるのです。


「喘息」と「花粉症」の咳は、治療する期間が異なる

その理由は、お互いの病気を行う「治療の期間」が異なるためです。


以前にもお伝えしたように、気管支喘息は、基本的には症状がよくなっても治療を続けて頂きたい病気です(しかし吸入で症状がよくなったら止めていいというように医療機関から指示されている方が少なくないのがまた悩みの種です・・・)。

ですが一方、花粉症は(あたりまえですが)シーズンが終わったらもちろん治療を終了していい病気です。

治療期間

これらを見極めることが、続ける必要がある治療、シーズン終了で終わっていい治療をしっかり区別することにつながるというわけです。


その見極めは難しい・・・是非「専門医」へ!

でも、先ほどお話したように、「喘息の咳」と「花粉症の咳」は、「ステロイド吸入薬」の反応では見極めがつかず、一般的な診療では非常に難しいと言われています。

その見極め方法は、お持ちの体質や既往歴、症状の特徴や経過、随伴症状、今までの治療の反応性などなど・・・ここで皆さんに説明するには少し複雑すぎるので。。。

そこら辺の見極めはどうぞ私たちにお任せください!

私たち専門医が、様々な角度からお話をお伺いし、いろんな検査も駆使して、その咳を止めるだけでなく、今後の長期の対策も一緒に立てていきます。


「長引く咳」に終止符を打ちたい方、私たち専門医と一緒に、その目標をぜひ叶えましょう!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.03.23更新

前回ブログを上げてからおおよそ1か月が経ってしまいました・・・。
月2本はブログを執筆したいと思っていたのに、痛恨の極みです。

そんな中、当院は相変わらず多くの患者様にご来院頂いておりますが、3月に入り、長引く咳だけでなく、なかなか良くならない目や鼻のアレルギーにお悩みの方のご来院が増えてきております。

前回のブログでもお見せした、神奈川の花粉飛散量は2月25日ごろから本格的に増加しています。

花粉飛散状況

神奈川県自然環境保全センター 研究企画部HPより

 

また今週から黄砂の飛散も始まりそうで、ますますアレルギーをお持ちの方にはおツラいシーズンになりそうです。


結膜炎に「塗る」薬!?

そんな中、目の症状に対する新しい選択肢が現れました!

それは、まぶたに塗る塗り薬!

「アレジオン眼瞼クリーム」という新しい剤型のお薬が今年から使えるようになりました!

アレジオン眼瞼クリーム
これまで花粉症やアレルギー性結膜炎の、目のかゆみや赤み、涙目などの症状には、主にアレジオン点眼液やパタノール点眼液などの「抗アレルギー点眼薬」を使用してきました。

「抗アレルギー点眼薬」は、目の表面に直接働きかけてヒスタミンをブロックし、かゆみや充血を抑える働きがあります。
さらに症状が強い場合にはステロイド点眼薬が用いられ、炎症をより強力に抑制します。


しかし点眼薬には目にさす際の刺激感が気になる方もいらっしゃいます。
また使用する際にわずらわしさを感じる方もいらっしゃり、毎日2~4回の点眼をなかなか定期的にできないという方も少なくありません。


レジオン眼瞼クリームは「結膜炎」の薬

一方でアレジオン眼瞼クリームは、まぶたの皮膚に塗るタイプの外用薬で、アレジオン点眼液と同成分の抗ヒスタミン成分が配合されています。
このお薬は、あくまで目の中のかゆみに効果を示すお薬です(目の周りのかゆみにも効果はありますが、それがメインの目的ではないのです)。
1日1回、上下のまぶたに塗ることで、抗ヒスタミン成分がまぶたを通じてゆっくりと目の結膜に浸透し、目の周りだけでなく目の中にも効果を示します。

その効果はアレジオン点眼液と同等となるように設計されています。


「1日1回」は使い勝手がいいかもね

アレルギー疾患は、出てから抑えるより、出ないように抑える方が効果が高くなります。

できればシーズンの間は、症状が出ないように予防的にお薬を使っていただきたいのですが、忙しい、忘れやすい、目薬が苦手、それに昼に点眼する事でメイクが崩れてしまうなどのために点眼しにくいなどの理由で1日2~4回定期的な点眼ができない方は、1日1回塗るだけでいいアレジオン眼瞼クリームは良い選択肢となりそうです。


今までも点眼で問題ないのなら無理に変えなくてもいいです

一方、やはり即効性という面では点眼薬の方がやや上かなという印象は受けます。
とはいえど、先ほどお話しをしたようにアレルギー性結膜炎は、症状が出ないように定期的に薬を使用してほしいものなので、そもそも即効性はあまり重要ではないかもしれません(定期的に使用してもかゆみが残る場合は、そもそも飲み薬の変更やステロイド点眼薬の上乗せを考えるためです)。

また、点眼した時の爽快感を感じる方もいらっしゃいます。
さきほどもお話ししたように、点眼とクリームは正しく使用していれば効果は変わらないといわれているので、点眼で問題なく症状がコントロールできている方は無理に変える必要はありません。


クリームは「塗り方」が超重要!!

アレジオン眼瞼クリームがしっかり効果を出るように使うには、塗り方がとても重要です。
とても小さなチューブなのですが、そのチューブから片眼につき1.3cmの薬を絞り出し、上まぶたと下まぶたに半分ずつつけて目の周りに広げるという塗り方を守ることが大事です。

この際、薬が目の中や粘膜に入ってはいけません(点眼薬より濃度がとても濃いからです)。
目に入ったら洗い流しましょう。

塗った直後は入浴、洗顔ができませんが、しばらく経ったら入浴、洗顔、メイクしても大丈夫です。
そのため、夜寝る前に使うと使いやすいかもしれませんね。


コンタクトでもOK!

他の点眼薬や塗り薬を併用する際は、このアレジオン眼瞼クリームを最後に使うことが大事です。
コンタクトを付けたままの使用は構いません。


薬価は少し高いかな

1本で両眼に1か月使用する事ができます。すると3割負担で1か月1000円ほどとなります。
点眼薬ではアレジオンLX点眼が(先発品ということもあり)一番高いのですが、1か月750円ほどになり(他の後発品はもっと安くなります)、値段の面では現時点では一番かかることはお伝えしないといけません。


「花粉症」にガマンはいりません!

花粉症の時の目のかゆみは、症状の中でもツラいものの一つです。
「ガマンすれば何とかなる」と考えていらっしゃる方も少なくないのですが、ガマンしなくてもいいならその方がいいですよ、絶対・・・

春風の気持ちいい季節、気持ちよく外出して春を楽しむためにも、是非積極的な治療を検討してみてください!



さて、1か月ぶりのブログです。

そもそも、なぜこんなにブログを書くことができなかったのか・・・


呼吸器内科医が5名から7名に!!

当院は今年4月からまた診療体制を強化することになりました。
新しく呼吸器内科医を2名お迎えし、呼吸器内科医総勢7名での診療体制が開始になります!

ただ、医師が増えることによる診療の方向性のぶれはなるべくなくしたいと思っております。

その為この1か月間、私は当院の診療方針となる「茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 診療マニュアル」の作成に力を注いでいました。

まずは少しずつ書き始めたのですが、徐々に自分の18年の診療経験で、「あれもこれも伝えたい!」と書きたいことがどんどん湧いてきて・・・

結果140ページを超えるマニュアルに成長しました(つまり、こっちばっか書いていたためにブログ執筆に使う時間が無くなってしまったという訳でした)。

マニュアル
当院にいらっしゃる他の先生もそれぞれの診療経験、診療のコツをお持ちですので、他の先生のそれらのエッセンスも取り込んでいます。

この診療マニュアルも活用し、どの先生を受診された際もできるだけ均質な診療ができる体制を整えていこうと思っています!


新しい医師のご紹介!

ここで今回新たにお越し頂く2名の医師を紹介したいと思います。

永山 貴紗子(ながやま きさこ)先生

【火曜午後、金曜午後】内科・呼吸器科・皮膚科担当

現在30代の先生です。
国が指定する「アレルギー中心拠点病院」であり、国内のアレルギー診療の総本山である「国立病院機構 相模原病院」で研修の後、そのまま現在に至るまでスタッフとして診療に当たられています。

内科、呼吸器科領域を専門に研鑽をされ、呼吸器専門医をお持ちですが、何と横浜市立大学皮膚科でも2年間の勤務経験を持つという、希少性の高い経歴をお持ちです。

そのためアレルギーに関わる皮膚の病気に関しても造詣が深く、アレルギー診療に対する幅の広さ、懐の深さは随一の先生です。

喘息や花粉症、アレルギー性鼻炎、それに皮膚疾患に加え、食物アレルギーなどのなかなか専門診療が受けられない分野の診療も専門的に行うことができます。


池田 秀平(いけだ しゅうへい)先生

【金曜午後】内科・呼吸器科担当

現在30代の先生です。

横浜市立大学医学部出身で、その後大学で研鑽した後、現在は横浜栄共済病院呼吸器内科のスタッフとして中心的役割を果たしています。

当院にも今まで何度か診療のお手伝いをしてくれていましたが、今回晴れて当院で継続的な勤務が始められることになりました。

医師としての能力も高く、その中でも基幹病院で培った内科、呼吸器科、アレルギー科診療の総合力が持ち味です。

それに加え非常にきさくで話しやすい先生で、たぶん今後人気になる先生だと思います。


金曜午後の昼診療を開始します!

またこれに合わせ、金曜日の診療時間を延長することになりました!

午後の診療は通常2時30分から開始ですが、金曜に限り午後1時から開始になり、診療時間が1時間30分延長することになりました(終了時間は従来通り5時30分となります)。


新患枠も増やします!!

また、枠が増えることで、4月から新患で受診希望の方の枠を増枠することができるようになりました!

いままで咳やアレルギーでお困りの時に、受診できるまで数日以上お待ち頂かざるを得ないケースも少なからずありましたが、今後しばらくは、前日や当日のご予約もお取り頂きやすくなるかと思います。



これからしばらく続くつらいアレルギーの季節、どうぞお気軽にご予約下さい!

アレルギー専門診療ならではのきめ細かい治療で、快適な春をお届けします!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.02.25更新

※本題はこのブログの真ん中以下です!!


この連休、皆さんはどうお過ごしでしたでしょうか?

当院の、小学校を卒業するinstagram動画作成スタッフ(=私の息子)は、卒業記念には
「どーしても雪を見たいっ!!」
と、ずっと言っていました。

藤沢生まれ、茅ヶ崎育ちの息子は、数年に1回の、それもみぞれ交じりの雪しか体験できていません。

ちょうど先週から、日本列島には強烈な寒気が入り、日本海側で大雪に見舞われているタイミングでした。

せっかく雪を見に行くなら、豪雪のパウダースノーを体験できる今しかないっ!!というわけで、この連休を使って私たち親子2人で越後湯沢に行ってきました(妻と娘は寒いのがニガテなので留守番です)。

そして雪遊びをしたいという息子に、本格的な雪遊びをさせようということで、人生初のスキーを体験させました。


スキー場に行ったこともなければ、スキー板を履いたこともない息子ですので、半日のスキーレッスンを受けさせることにしました。

マンツーマンレッスンだったので私は離れていたのですが、終了時にインストラクターの方が

「お父さんお医者さんなんですってね」
「はい、そうですが・・・」
「実は私も医師なんですよ」
「!?、整形外科とかやられているんですか?(スポーツ好きは整形外科という院長独自調べおよび偏見)」
「呼吸器、アレルギーが専門なんです」
「!!??」
「品川で呼吸器クリニックを開業していて、週末に越後湯沢まで来てインストラクターをしてるんです」

なんと、インストラクターの方は、同業者でした!
先生のお名前は「林 永信 先生」とおっしゃり、大井町で「はやしクリニック」という、呼吸器、アレルギーを専門とし、CTまで併設するクリニックを経営されている先生でした(記事への掲載の許可は頂きました)。

「皆さんには医師とインストラクターの二足のわらじを履くのがすごいと言われるのですが、私は好きでやっているので、何もすごくないんですよ」と。

いや、すごいですよ、先生・・・


さらにお伺いすると、すでに医師を50年以上されている先生とのこと・・・!

もう、開いた口がふさがりません。

大学で20年、総合病院で20年、研究、診療を精力的に行われ、総合病院副院長まで務められた後にクリニックをご開業されたことの事で、コロナの際も医療機関を受診できない患者さんのためにCTを駆使して診察を続けられたとのことです。

これに加えてスキー指導員の資格をお持ちになりながら、週末にスキーを教えに越後湯沢に新幹線に通ってらっしゃるとのことで・・・


私が到底過ごすことのできないであろう生き方をされている、まさに羨望の眼差しで見ざるを得ない、輝かしい後光が差す偉大な先生でした。

 スキー


息子へのレッスンは午前で終了し、初心者だった息子は午後にはリフトに乗って1本滑り降りてきました。
丁寧にレッスン頂いたことに感謝し、最後には「今日はすごい雪でしたが、明日からは暖かくなるようで、私たちも花粉症の診療で忙しくなりますが、お互い頑張りましょう」と、私にまで激励いただきお別れをしました。

「ん?忙しくなる・・・?」
そうだった!休み明けの仕事を思い出しました!

寒気が去って暖かくなる今週、多分、花粉、飛ぶんだった Σ(゚д゚lll)


そんなわけで、今回も花粉症についての記事を書いてみたいと思います。


※ここからが本題です!

 

今年の花粉はこ・れ・か・ら ♪

今年は1月に多少花粉が飛びましたが、その後は比較的落ち着いていました。
今時点で「今年はあまり症状が出ないかも」とおっしゃる方も少なくありません。

しかし、データを見てみると、ここ神奈川では、まだ本格的な花粉の飛散は起きていないようです。
さらに、今年の花粉の飛散量は、昨年を超える可能性が考えられています。

下の図で昨年と比較をしてみましたが、これを見ると、花粉の飛散はまだまだ、これからだ、ということがよーくわかります。

神奈川花粉飛散量

神奈川県自然環境保全センター 研究企画部HPより

ですので、今週以降、花粉症の方は、心してかかる必要があります。



花粉症は目と鼻だけではない!

花粉症というと、くしゃみや鼻水、目のかゆみが一般的な症状として知られていますが、実はそれだけではありません。

花粉は全身にさまざまな影響を及ぼし、皮膚や神経、消化器、さらには睡眠にも影響を与えるのです。

しかし、その症状が花粉が原因で起こっていることに気づいていない方も、実は少なくありません。


そこで今回は、花粉症の方で意外と悩まれている方も多く、また気づかずに困っていらっしゃる方も多くいらっしゃる「花粉症が起こす、目と鼻以外の症状について触れてみたいと思います。


花粉は喉に影響します

まず、花粉が鼻や口から吸い込まれることで、喉の粘膜が刺激され、炎症を引き起こすことがあります。
その結果、喉の痛みやかゆみが現れることがあります。

咽頭掻痒

これは、ヒスタミンロイコトリエンという、アレルギー反応を起こす物質が喉に作用してしまうためです。

また、喉に刺激が加わることで、長引く咳が起こることも珍しくありません(喉頭アレルギー、アトピー咳嗽などがこれにあたります)。

かゆみと咳

その上、もともと喘息を持っている方は、鼻の炎症が気管支に波及して、喘息の悪化につながることもあるので、喘息をお持ちの方は、危険なシーズンであるとも言えるのです。

こうした症状を和らげるためには、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬といった内服薬を服用したり、ステロイド点鼻をしたりすることで(喉頭アレルギー、アトピー咳嗽による頑固な咳は一時的にステロイド吸入を行うことが有効です。また喘息の方は、切れ目なく吸入を継続する必要があります)対処します。

またこまめに鼻うがいをしたりすることも有効ですし、さらに咽頭スプレーのどぬーるスプレーなどですね」を使うと、喉の違和感を和らげる助けになります。


今度は肌への影響も

また、花粉は肌にも影響を与えることがあります。

特に敏感肌の方やアトピー性皮膚炎を持っている方は、花粉が皮膚に付着することでバリア機能が低下し、かゆみや肌荒れが悪化することがあります(これを「花粉皮膚炎」と呼びます)。

この時期は空気も乾燥していることが多く、皮膚の乾燥もバリア機能の低下につながります。
すると、皮膚から花粉のアレルゲンとなるたんぱく質が侵入し、皮膚でアレルギー症状を引き起こします。
皮膚炎

症状としては皮膚のかゆみ、発赤(特に目や鼻の周囲が悪化しやすいです)、かさつき、ほてりなどがみられます。

花粉症の方のうちの約30%もの方が、皮膚のかゆみ、肌荒れを訴えているとも言われています。

これを防ぐためには、花粉症の治療薬である抗ヒスタミン薬をしっかり内服したうえで、保湿をしっかり行い、程度に応じて塗り薬を使用することが大切です。

また、外出後はすぐに顔を洗って花粉を落とすなど、花粉と皮膚が接触する時間をなるべく短くすることで、肌トラブルを軽減できます。


頭痛だって引き起こす・・・

花粉症は、頭痛を引き起こすこともあります。

頭痛

まず、花粉症によって鼻が詰まってしまうと、酸素が脳に十分に届かず、頭痛が起こってしまうことがあります。

また鼻の粘膜がアレルギー反応によってむくんで鼻詰まりとなり、その影響で副鼻腔と鼻腔の間の道がふさがれてしまうことがあります。

すると出口をふさがれてしまった副鼻腔の内部の圧力が上昇し、頭痛の原因となります。
加えて副鼻腔の中で逃げ場を失った細菌が増殖してしまうと、副鼻腔炎を発症し、これが原因の頭痛をきたしてしまうこともあるのです。

こうした症状を和らげるために、抗ヒスタミン薬点鼻ステロイドを使用して鼻の炎症を改善し、シーズン中それを維持することが効果的です。



また一方、もともと片頭痛持ちの方は花粉症によるアレルギー反応がきっかけで、片頭痛発作を誘発しやすくなる場合があります。

片頭痛の場合は、ズキンズキンと脈打つような痛みが強まることが特徴です。

普段からの片頭痛治療をしっかり続けることが大事になります。



不眠の原因になることも

さらに、花粉症は睡眠にも大きな影響を与えます。

鼻の症状やだるさなどのせいで寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりすることが増え、結果として日中の眠気や集中力の低下につながります。

 不眠

実際に、花粉症の患者さんの多くが睡眠の質の低下を訴えており、特に深い眠りであるレム睡眠が短くなることが指摘されています。

これを防ぐためには、適切な治療を行いつつも、寝る前に鼻洗浄や、寝るときの寝室の湿度を適切に保つ、鼻詰まりが強いときは少し上半身を起こして寝ることも有効と考えられます。



だるさもアレルギー反応のせいのことが

また、アレルギー反応によって、体内に炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質が分泌されます。
このサイトカインが体全体に炎症を引き起こすことで、体がだるく感じたり、集中力が落ちたりすることがあります。

また、先ほどお話しした鼻詰まり、頭痛などの症状により、先ほどお話しした不眠が起こると、それがだるさになって表れてしまいます。

だるい

薬による治療はもちろん、さらに血流を良くするために軽い運動を取り入れたり、オメガ3脂肪酸やビタミンDを含む食品を積極的に摂るのもおすすめです。


また治療薬によってもだるさが出てくることがあります。
アレルギー薬の主役である「抗ヒスタミン薬」の中には、眠気をきたす可能性のある薬剤がありますが、これが昼まで持ち越すとだるさとしてとらえられます。

このような症状が出た際は、適切に抗ヒスタミン薬の種類や投与可否の再検討をする必要がありますので、処方医にお早めにご相談ください。


花粉症とおなかの症状!?

意外かもしれませんが、花粉症は消化器にも影響を及ぼすことがあります。

腹痛

最近の研究では、腸内細菌のバランスとアレルギー症状には密接な関係があることがわかってきました。

そのため、花粉症の方の中には、腹痛や下痢、便秘などの症状を訴える人も少なくありません。
これは、腸の粘膜が炎症を起こすことで腸内環境が乱れるためだと考えられています。

また、先ほど挙げた「サイトカイン」が、腸に作用してしまうケースもあります。

対策としては、やはりアレルギー治療はしっかりと行いつつ、乳酸菌を多く含むヨーグルトや発酵食品を摂取し、腸内環境を整えることが重要です。
また、アレルギーを引き起こしやすい食材を避けることも、症状の改善につながります。

 

花粉症の治療をしっかりすれば、いろいろな悩みが解決できるかも!

このように、花粉症は単なるくしゃみや鼻水の病気ではなく、体全体に影響を及ぼすことがあるのです。

しかし、症状の原因を理解し、それに合った対策を講じることで、症状を軽減することができます。

治療

まずは症状に応じた適切な薬の選択がいちばん大事です。
お近くのアレルギー専門医にぜひ相談してみてください。

また今回挙げた豆知識を、少しずつでもいいので毎日の生活の中で取り入れて頂けることも有効です。

これからつらい季節になりますが、これらの工夫で症状を和らげることができるよう、ぜひ一度お試しください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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