医師ブログ

2021.04.01更新

今日から4月、新しい年度の始まりです。

私も本日で加藤医院に赴任し、丸2年が経ちました。
下の図はこの2年間での、1日に当院にご来院頂いた患者さんの数ですが、おかげさまでこの2年間で多くの方々に新しい加藤医院を知っていただき、呼吸器、アレルギー症状にお困りの方をはじめとした多くの患者さんにご来院いただきました。

患者数


と同時に、ご来院いただく方の増加に伴い、混雑でご迷惑をお掛けしております。
昨年12月から新予約システムが始まり、徐々に混雑状況は改善していますがまだまだ改善の余地があります。
いろいろとデータも集まり傾向も見えてきましたので、このデータを活かし更なるサービスの改善に努め、一人でも多くの患者さんにご満足いただけるよう、3年目も職員一同精進したいと思います。
2021年度の加藤医院も引き続きよろしくお願い致します。

さて、前回は花粉症の市販薬についてお話ししてみました。
鼻水、鼻づまり、咳などの症状が出た場合、ご本人が花粉症と認識している場合は、前回の花粉症薬を使われるケースが多いですが、本来これらの症状は風邪と見極めることが簡単ではありません。
患者さんとお話しをしていると、かなりの割合で風邪薬を多用されている患者さんもいらっしゃることが分かりました。

そこで今回は、風邪薬、その中でもよく利用される総合感冒薬について、その特徴、注意点についてまとめてみようと思います。

風邪には実に様々な症状が現れますが、総合感冒薬は、その中でも頻度の高い症状に対し、だいたい対応できるようにしたものです。
そこで今回はその総合感冒薬を考えるにあたり、Google検索で「風邪薬」と検索し、1番目にヒットした第一三共ヘルスケア社の「新ルルAゴールドDX」を例にしてみましょう。
この薬剤は解熱鎮痛薬としてのアセトアミノフェン去痰薬としてブロムヘキシンアレルギー性鼻炎症状を抑える抗ヒスタミン薬抗コリン薬、抗ヒスタミン薬の副作用による眠気を抑えたり疲労感を回復させるための無水カフェイン咳を抑えるための中枢性鎮咳薬気管支拡張薬喉の腫れを抑えるためのトラネキサム酸など、実に多くの薬剤が配合されています。

これらは、正しい使い方をしていれば、典型的な風邪症状に対して効果を期待できます

ただ、やはり注意しなければならない点もあるのです。

まずは含まれる薬剤が多いことのデメリットです。
上に書いた薬剤は、あくまで症状を和らげるための「対症療法」薬です。一つ目はつまり、その症状がなければ、その薬剤は「ムダ」ということになってしまいます。
また似たような症状でもこれらの薬を使わない方がいい場合もあります。
例えば咳に対して中枢性鎮咳薬が含まれていますが、これはどんな原因の咳も、脳の咳中枢に働きかけて止めてしまう効果があります。
咳には痰の少ない乾いた咳と痰の多い湿った咳がありますが、痰の多い湿った咳は、その痰を出すために咳反射が起きています。
この咳を無理やり止めてしまうと、出すべき痰が出なくなり、かえって苦しくなってしまうことも起き得たりするのです。

二つ目はこれらの薬に含まれている薬剤の量です。
「新ルルAゴールドDX」で見てみると、抗ヒスタミン薬は通常処方で出される量の半分トラネキサム酸は20~60%程度のようで、やや抑えめに入っていることがあります(とは言っても「新ルルAゴールドDX」は比較的それぞれの薬剤がしっかり配合されている印象を受けました)。
もちろん各社しっかり計算したうえで配合していると思いますが、やはり診察なしで買えることもあり、安全域を広めにとっているのではと思います。

三つめは、これらの薬剤にやや古いタイプの薬剤が配合されていることがあることです。
例えばアレルギー性症状を抑える、ここに入っている抗ヒスタミン薬であるクレマスチンという薬剤は、「第1世代抗ヒスタミン薬」というカテゴリーに入り、眠気が強く出やすいといわれています。
そのためにわざわざ眠気を抑える「カフェイン」が入っている訳です。
一方処方薬では、そもそも眠気の少ない「第2世代抗ヒスタミン薬」が主流となっています(アレルギーに特化したOTC薬にも第2世代の薬剤はあります)。
第1世代はキレの良さがあるため、あえて選ばれているのかもしれませんが、長く使うにはやはり適していませんし、運転をする方にも使用できません。

最後に、これだけ多くの薬剤を含んでいることは、使ってはいけない人がそれだけ増えることも意味します。
例えばアレルギー症状を抑えるために配合されている抗コリン薬の影響で、前立腺肥大症や高齢の方に尿が出せなくなる症状(尿閉)や、自覚のない緑内障をお持ちの方に急性発作を起こすリスクはあります(眼科医にしっかり診断、治療されていれば大丈夫です)。
また「ルル」ではないのですが、解熱鎮痛薬として「イブプロフェン」を含んでいる薬剤は、一部の喘息の方(アスピリン喘息)では、大きな発作を起こす可能性があるので注意が必要です。

 

これらのように、総合感冒薬は、それなりに押さえておかないといけないことも多い薬剤です。
ただ通常短期間で使用するのであれば大きな問題にならないことも多いと思います。なにより医療機関を受診することなく、薬局ですぐに手に入るのは大きなメリットです。
(漢方は別として)風邪を治すことは医師でもできません。あくまで症状を和らげることです。そのような意味では総合感冒薬は十分その代替になります。

ただ、風邪として非典型的である場合(咳がやたらと強い、頭痛が激しい、症状の経過が1週間以上などと長いなど)の場合は、もちろん原因検索のため、そしてその症状によりピンポイントで対応できる処方薬を服用するために、医療機関の受診を検討していただきたいこともあります。
そのためには、気軽に受診できる、かかりつけ医にすぐ相談できることが、症状の重症化を防ぐ大事な対策になるのです。


ましてやこのコロナ禍、いろいろと体のことで不安になることも多いものです。
今こそ、ささいなことでも気軽に相談できる、信頼できるかかりつけ医を是非持っておいてください。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.03.21更新

ようやく本日で緊急事態宣言が終了します。
しかしここ茅ヶ崎でも、まだ散発的にコロナ陽性患者さんは出ております。
やはり毎日診察していて感じるのが、他人と接触しやすい環境にいる方が陽性になるケースが多いということです。
当院では接触歴が思い当たらない方はほぼ陰性になっています。
やはり距離をとる、長時間の密室空間を避けるなどの基本的な対策が有効であると思いますし、それさえできていれば過剰な心配をする状況でもないと思います。
茅ヶ崎の高齢者ワクチンの開始は5月になりそうですが、徐々に出口もぼんやりながら見えてきていると思っています。

一方やはり事前の予想通り、花粉のほうはデータを見てみても昨年よりは飛散量が多いようで、昨年よりも症状が強くなってしまった方が多いようです。
今年は当院にも例年より多くの方がアレルギー症状でいらっしゃっています。


花粉飛散量

環境省HP「神奈川県環境科学センター(平塚市)の花粉飛散量」より

 

ただ昨今、ドラッグストアなどに出ている花粉症の薬剤もだいぶ種類が増えてきました。「スイッチOTC医薬品」と呼ばれる、処方箋で出していた薬と同成分の薬剤も店頭に並ぶケースが増えてきています。

そこで今回は花粉症に対し使用するお薬について、市販薬と処方薬の違い、市販薬を使用する際の注意点をお話ししようと思います。

 

まずは内服薬です。
アレルギーの薬として、基本薬となるのが「抗ヒスタミン薬」です。
これは、アレルギーの症状のもとになる「ヒスタミン」がくっつく細胞のヒスタミン受容体をブロックする薬剤です。

ただこの「ヒスタミン受容体」は脳にもあり、脳の覚醒や判断力、集中力にかかわってもいます。
このヒスタミン受容体が脳に作用してしまうと、脳の覚醒、判断力、集中力が妨げられてしまい、「眠気」の副作用として出現することとなってしまいます。「第1世代」の抗ヒスタミン薬はここが問題でした。

そこで、これらの副作用を改善させるべく、脳になるべく届かないようにした「第2世代」の抗ヒスタミン薬が開発され、現在ではこちらが主流となっています。

OTC医薬品でも、抗アレルギー薬として販売されている薬剤は「第2世代」が中心となっています。
現在は「アレグラ」「アレジオン」「エバステル」「クラリチン」「タリオン」「ジルテック」に相当するOTC医薬品が出ています。

この第2世代の中でも眠気が非常に出にくい薬剤と、やや出やすい薬剤がありますが、OTC医薬品では比較的眠気が出にくい薬剤が多いです(OTCの中では「ジルテック」のみが運転禁止「アレジオン」「エバステル」「タリオン」運転注意で、「アレグラ」「クラリチン」運転に支障がありません)。
なお総合感冒薬は別です!これはまた次回お話しします。

一方、やはりその分、やや効きがややマイルドな薬剤がOTCには選ばれているように思います(これは私の主観も伴いますが)。
対して処方薬は眠気や内服方法など、多少の注意点がある一方、効果がより期待できる薬もあります(なお抗ヒスタミン薬の効果の強さは一律で語れるものではなく、強いと言われるものよりマイルドと言われるものの方が効くこともあります。抗ヒスタミン薬にも系統がいくつかあり、その系統の合う合わないが人によって変わる面があるからです)

またこれらの一般的な抗ヒスタミン薬は「サラサラした鼻水」に効果を示しやすいですが、「鼻づまり」には別の対処が必要になります。
鼻粘膜の血管を収縮させて浮腫をとる成分を配合した「ディレグラ」や、抗ヒスタミン作用とはまた別の作用をもたせた「ルパフィン」が有効ですし、喘息にも使用される「オノン」「キプレス、シングレア」などの「ロイコトリエン受容体拮抗薬」は、鼻づまりに対して効果が高いことが示されており、これらの薬剤にはOTCはありません。

 

次に点鼻薬についてです。
点鼻薬は大きく分けて「血管収縮薬」「ステロイド」「抗ヒスタミン」「ケミカルメディエータ抑制薬の4種類があります。
この中で現在の主力は「血管収縮薬」「ステロイド」ですので、今回はこの2つに対して述べてみます。

「血管収縮薬」は、鼻の粘膜の中に流れる血管を収縮させることで、粘膜のむくみをとる薬です。鼻づまりに即効性がある薬剤で、つらいときには重宝されます。

ただこの薬剤の問題点は2点あります。

一つ目は、徐々に効きにくくなってしまう問題です。
どうもこの薬は、使用を続けているとこの薬剤が作用する受容体が減ってしまうこと(ダウンレギュレーション)があるのではとされています。
そのため、継続して使用していると徐々に薬剤が作用できる受容体がなくなり、効果が落ちてしまうのです。

もう一つが、この薬の連用による「薬剤性鼻炎」です。
長い間この薬剤を使うと、むしろ粘膜の組織が増殖してしまい、むしろ鼻づまりが悪化するケースがあるのです。
この薬は当初は「キレ」がいいものなので、ついつい反復して使用してしまうケースが多く、その結果より治りづらい鼻炎となって来院されるケースがあるのです。

そしてこのような諸刃の剣である血管収縮薬の点鼻ですが、実は結構気軽に店頭で手に入ってしまいます。
ですのでこのタイプの点鼻薬を使用する際は、しっかりと注意事項を守って使う必要があります。

次に「ステロイド」の点鼻についてです。
こちらは血管収縮薬の点鼻よりはずっと安全に使えますが、即効性がありません(吸入薬と同じですね)。
この薬剤は血管収縮薬とは違い、症状があるときに使用するという使い方ではなく、むしろ症状を出させないように比較的続けて使う必要のある薬剤になります(これも吸入薬と一緒ですね)。
局所治療薬ですので、全身性の副作用を心配する必要もあまりありません(またまた吸入薬と同じですね)。

診察していると、市販の点鼻を使用している方で、自分がどのタイプを使用しているかを把握している方は少ない印象です。

この点、処方の場合なら薬剤の特徴や使用方法を直接お伝えすることができますし、点鼻ステロイド薬にしても薬の成分や噴霧様式など、市販薬よりも工夫が凝らされ効果を高められる点鼻薬もあり、選択肢も広がります。
この点でも医療機関にかかり、処方薬を使用できることのメリットはありそうです。

 

以上、花粉症などのアレルギー性疾患に対するOTC医薬品使用のポイントをお話ししてみました。

市販薬は気軽に治療を開始できるという面で非常に有用性はあると思います。

ですがやはり症状がコントロールできなかったり、より効果の高い治療を行いたい場合内科や耳鼻科のアレルギー専門医にお尋ねになることも検討してみるといいかもしれません。
また今は重症花粉症に対する注射治療(ゾレア)、アレルギー反応を根本から弱める舌下免疫療法もありますので、花粉症などのアレルギー症状で困った場合は当院にも是非お気軽にご相談ください。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.03.01更新

この土日を使って、改装工事第3弾、中待合から呼吸機能検査エリアにかけての床張り替え工事を行いました。
約30年にわたり皆さんの足元を支えていた床に別れを告げ、受付エリアと同じ、木目の床で統一しました。
また廊下の棚も撤去し、新たなラックに置き換えたことで通路の拡張も行いました。
まだまだ院内の混雑で皆さんにはご迷惑をおかけしておりますが、また少し若返った加藤医院をご堪能いただければ幸いです。

床工事後
また3月中には懲りずに早くも第4弾を予定しております。
工事の影響で、3月22日(月)は臨時休診とさせていただきます。ご迷惑をお掛けしますが、この頃に受診をご予定の方はお気をつけくださいますようよろしくお願い致します。

 

さて前回は、今回日本で接種が予定されているファイザー社のmRNAワクチン「コミナティ」を念頭に、新型コロナウイルスワクチンの仕組み、特徴についてお話ししました。
今回は、いざ皆さんが接種するとなったときの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします(報道にもあるようにワクチンは当分は数に限りがあり、国や県、市などが運用方法を工夫せざるを得なくなることも出てくる可能性があります。今後変更があり得ることは予めご承知おきください)。

まずはこのワクチン、対象は16歳以上です。15歳以下の子供は今回対象にはなっていません。

今回は費用は全額国持ちとなり接種者はタダで受けることができます。

またこのワクチンは基本的には2回打っていただくこととなります。1回目のワクチンを接種してから3週間後に2回目のワクチンを接種するのが基本スケジュールになります。
しかしファイザー社は42日(6週間)間隔が空いても効果があるとの見解を出しており、どうしても3週間間隔で打てない場合もできるだけ早く2回目を打っていただくことで対応します。

2回目のワクチンは1回目のワクチンと同じものでなければならず、別の種類のワクチンを使用してはいけません。

接種する際は発熱していたり、他の急性の病気にかかっていたりしていないことが接種できる条件となります。

妊婦、授乳婦は利益がリスクを上回るときには接種可能とされ、除外はされていません。産科婦人科学会などは感染リスクが高い医療従事者、肥満、糖尿病など新型コロナ感染症が重症化しやすい妊婦は接種を検討するよう提言しています。

また現時点では既感染者といえど再感染しないとは限らず、おそらく既感染の方も接種対象になると思われます(ただWHOは感染後6か月以内の再感染は少ないことから、接種を感染後6か月以降に遅らせることはできるとのスタンスをとっています)。

異なるワクチン(肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチンなど)とは、アメリカでは14日(2週間)の間隔を空けるよう勧告しています。おそらく日本でもこれに近い方向で勧告されるものと思われます。

さて、いざ接種です。

このワクチンはインフルエンザワクチンと異なり、肩への筋肉注射を行います(実はインフルエンザなど、日本で皮下注射で行われているワクチンも、他の多くの国では筋肉注射で行われているのが実情です。実は皮下注射より筋肉注射の方が、効果、痛み、副作用の出現で有利とも言われているのですが、日本では過去に抗菌薬や鎮痛薬の筋肉注射で筋肉が萎縮する後遺症が多発したことがあり、歴史的に筋肉注射に慎重となっていることが原因とされています。ワクチンではこれらの問題は起きていないことから、本来は改めるべきことかもしれません)。

接種後に注意すべきはアナフィラキシーです。
インフルエンザワクチンと比べると5~10倍の頻度と言われており、そのためワクチン接種後は医療者の目の届く範囲に15~30分アナフィラキシーを起こしたことのある人は最低30分待機することが定められています(とはいえ、前回ブログにも書いたように、よく使われる他の薬剤の方がよっぽど高い確率で起こしうるということを知っておくことも大事です)。
アレルギーがあること、アナフィラキシーの既往があることそのこと自体だけで即接種不適当者になるわけではないようです。

前回のブログでも副反応が1~2日経って出やすくなることを記載しました。ほとんどの場合、様子を見るだけでその後は症状も軽くなるようです。
ただどうしても副作用の症状が強く出たり長引いたりしたときは、まずは接種した医療機関やかかりつけに相談となりました。また副反応のための相談窓口が作られるようであり、こちらのチャネルを利用していただくことが想定されているようです。

というわけで、現在のコロナワクチンの注意点を、わかっている範囲でお話ししてみました。

それでは、当院ではどのようにして接種するか、なのですが、残念ながらまだ何も決められません( ノД`)・・・
現在茅ヶ崎市からは4か所の集団接種会場に加え、当院のような診療所や病院で接種できるようにする方向で調整しています。
当院も当然ワクチン接種には手上げをしており、接種会場となる予定ですが、接種開始時期はもちろん、当院にどれくらいワクチンが入ってくるのか(今回はすべて国が取り仕切るようになっており、当院になんら権限がありません)、予約は市が行うようですがそれがどのように行われるのかなど、細かいことの通知がなく、外来での皆さんの疑問にお答えできない状況です。

決まったことがあれば随時このホームページや院内でお知らせしますので、お待ちいただければ幸いです。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.02.21更新

ようやく待ちに待った新型コロナのワクチン接種が日本でも開始されました。
現在は第一線で奮闘されている医療従事者から接種が開始され、今後その他の医療従事者を経て一般の方への接種が始まる予定です。
それに合わせ、昨日厚生労働省からの医療機関向け説明会がウェブで開催されました。
私たちも断片的な情報しか知り得ませんでしたが、この説明会で少しずつアウトラインが見えてきました。
そこで今回はこのワクチンについて、現在わかる範囲でこちらでも解説してみようと思います。

当院でのコロナワクチン接種について
→一般高齢者の方向けページ
→医療従事者の方向けページ

まず今回接種が開始されるワクチンは、アメリカのファイザー社が製造したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンというタイプのものです(商品名は「コミナティ」というそうです)。

ワクチンの原理ですが、ワクチンとは基本的に体に疑似的に感染した状態を引き起こし、それに対する免疫を人工的に引き起こすことができるようにする手段です。

いままでのワクチンは生ワクチン(症状が出ないように限りなく弱くした病原菌そのものを入れる)や、不活化ワクチン(病原菌にいろいろな処理をして病原性をなくしたものを入れる)などの手段がありました。

人類はこれら生ワクチンや不活化ワクチンを作った多くの経験を持っています。
が、このワクチンをつくるためにはウイルスそのものが必要です。
今回のように全世界で短期間にワクチンを作らなければならない場合、大量にウイルスを培養、複製しなければなりませんが、それには専用施設が必要だったり、培養の時間がかかったりと、すぐにそんなに多くのウイルスを作ることはできないのです。

そこで今回のワクチンではコロナウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)というものを使用することにしました。mRNAはコロナウイルスのいわゆる「設計図」です。

今回のワクチンの目的は、ひとつにはコロナウイルスの表面にある突起物(=スパイクたんぱく質)を攻撃するための抗体を作り出すことです。
そしてコロナウイルスのmRNAの一部分に、このスパイクたんぱく質の設計図が含まれています。
この設計図部分を取り出して、脂質の殻でコーティングしてあげます(RNAはとても壊れやすいので殻で保護するのと同時に、この殻のおかげで人体の細胞にmRNAを送り込むことができるようになります)。
これを注射すると、人体の細胞の中にmRNAが取り込まれて、設計図の情報をもとに細胞の中でスパイクたんぱく質をつくります(取り込まれたmRNA分解されますし、人間のDNAが存在する細胞核の中には原理的に入ってこないので、人の細胞に取り込まれることはまずありません。Twitterなどでそのようなデマも見ることがありますが、皆さん決して惑わされないようにしましょう)。
スパイクたんぱく質が体内で作られると、体の中で免疫が発動し、すみやかに抗体を作ることで、いざコロナウイルスが入ってきたときに速やかに攻撃態勢を作れるようにすることができるようになります(液性免疫)
また攻撃の仕方をキラーT細胞に指示して覚えこませて、免疫細胞が直接ウイルスを撃退できるようにもなります(細胞性免疫)

ワクチン

今回これだけ早くワクチンが完成したのは、遺伝子解析の技術が以前と比較にならないほど早くなったことが理由の一つです。今回の新型コロナでは武漢で流行の始まった昨年1月にはすでに遺伝子解析が終わっていたため、すぐにワクチンの研究に取り掛かれました。昔じゃ考えられなかったことです。
また先ほども述べたように、mRNAワクチンを作るのにはウイルスそのものは必要ない(設計図であるmRNAだけあればよい)ので、培養するのに時間を要する必要がないのも要因の一つです。
その他にも多くの資金がかけられたこと、全世界で急速に広がったため、それがかえって臨床試験の被検者を集めたり、結果を判定することが容易になったことも重要です。

そしてこのワクチンの効果ですが、全世界で行われた、約4万人を対象に行われた臨床試験では、接種後約2~3か月の期間において、全体で95%の発症抑制効果があったとのことでした。
具体的にはこのワクチンを接種してでその後発症した人が18559人中9人プラセボ(本人も接種者も見た目ではわからない偽物)を接種してその後発症した人が18708人中169人だったとのことです。
これは接種しない時に発症する割合を100としたときに、接種をした人の発症割合がおおよそ5程度になったということです(決してワクチンを打つと100人中95人効くという意味ではないのでご注意を)。

ワクチン

インフルエンザワクチンも抑制効果は50~60%程度と決して悪くはないのですが、現在のところ正直「段違い」の効果、ともいえると思います。

そしてこの効果は性別、年齢、人種、肥満やその他のリスク因子のあるなしにかかわらず大きな効果が変わらず認められていることも重要な点です。
現時点では(少なくても短期的には)効果の期待できない人はあまりいないという結果がでています。

副作用ですが、頻度の多いものとしては打った後の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛、38℃程度までの発熱が多いようです。
発現割合としては高齢者よりは比較的若い方に多そうで、また接種後1~2日経って出ることが多いようです。
またアメリカの市販後調査では、約10万人に0.5人の割合でアナフィラキシーが起き、死者はいなかったとのことです(ちなみに抗生物質であるペニシリンのアナフィラキシーは10万人中10-50人と言われ、ケタが違います。比較的ワクチンは安全なようです。と言うより、アナフィラキシーに関してはワクチン投与より不適切な抗生物質投与の方がよっぽど危ないとも言えるでしょう)。

ということで、まだまだ長期データがなくわからないことも多いワクチンですが、現時点ではかなり有望なのは間違いないようです。私も接種することにしました。

次回はこのワクチンの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.02.07更新

結局緊急事態宣言が延長された2月、当院ではここしばらくコロナ陽性例はいらっしゃいません。
が、減ったとはいえまだ茅ヶ崎でも1日10名程度は報告されており、まだまだ気を緩めることはできません。
私もまだまだステイホームということで、今日は息子が学校の図書に載っていた「おひさまパン」を作ろうと朝からパン生地をこねこねして焼きました。人生初の自家製パンでしたが出来上がったら直径25cmと予想外の大きさとなってしまい、4人で食べても腹パンパンです(いやダジャレのつもりじゃなかったのですが、ホントに・・・)

おひさまパン

というわけで、今回は前回の続き、パルスオキシメータについてです。今回はパルスオキシメータを扱う際の注意点について書いてみようかと思います。

今アマ〇ンや楽〇などで検索すると、本当にいろいろな価格帯のパルスオキシメータが発売されているようです。
中には1000~2000円で買えるものもあり、私もびっくりしました(コロナ前は検索しても出てこなかった価格帯です。それだけ需要も増えたのでしょう)。
ただ前回もお書きした通り、酸素飽和度(SpO2)は95%を下回ると、その数字の扱いについては慎重にならないといけなくなります。98%と96%ならその違いはあまり気になりませんが、94%と92%ならかなり意味合いは変わってきます。
またパルスオキシメータはその指先の血流をとらえます。特に寒い冬のこの時期、指先が冷えている方は少なくありません。すると指先の血流は少なくなっている状態になります。また病態が悪化し血圧が下がってしまったときも同様です。
この血流を正しく捉えられるかはそのセンサーの精度にもよります。いざというときのモニタリングですので、もし家庭に常備しておくからにはやはりここが信頼できる機器でないとあまり好ましいとは言えないかもしれません。
やはりベストは医療機器認証を受けたものだとは思いますが、やはりやや高価ではあるので、極端に安価なものに手を出さないようにすればまずはいいのかなと思います。

次にパルスオキシメータで実際に測定する際の注意点です。

まずはマニキュアなどを塗っていると当然正しい血液の色が測定できません。使用するときはマニキュアを落とします(爪が特に濁っていなければ足の指で測ることは可能です)。

そして指を差し込むときにはしっかり奥まで差し込みます。センサー部分が爪にあたっていないと正確な脈波が拾えません。

上述の通り、寒かったり血の巡りが悪く指先が冷たいときは測定が不正確になることがあります。
通常パルスオキシメータには脈波も同時に表示されますが、これの表示が弱い場合は指を温めたり、血流の良い他の指で測定するなどの工夫をしましょう。

また指を動かしていると正しい測定ができません。
その理由は、指を動かすとセンサーの発光部と受光部の間にある指が動くことで、拍動のノイズになってしまうことがあるからです。
測定するときはパルスオキシメータを装着した指を机などに固定していただくといいです(できれば心臓と同じ高さであるとベストであり、日本呼吸器学会はできれば胸の前で固定することを推奨しています)。

測定すると数秒で値が出てきますが、20-30秒間は値が安定しません。しばらく時間が経ってからの値を読み取るといいと思います。

前回の記事で、SpO2の原理を説明しました。全体のヘモグロビンのうち、酸素と結合したヘモグロビンの割合を測ることで測定しますが、もともと貧血があると、そのヘモグロビンの量が減ります。
するとそもそも酸素の乗っているヘモグロビンも少なくなるので、SpO2が保たれていても酸素が足りないということがあり得るので注意が必要です。

また一部の薬剤で測定値に影響が出ることがあります。狭心症発作で使われるニトロや、一部の不整脈の薬を内服するとSpO2が低くでることがあります。

またSpO2が正常範囲でも絶対に大丈夫とは言えません。
人間は通常、体内の酸素が少なくなると、呼吸の回数や量を増やすことで対応しようとします。この時酸素の取り入れと引き換えに二酸化炭素を外に出します。
通常、人間の体は十分な量の酸素とある程度の量の二酸化炭素を擁することでバランスを保ちますが、つまり酸素が少なくなった状態では、二酸化炭素を引き換えに酸素を得るのです。
この状態はもうひと崩れするとあっという間に酸素不足に陥る状態ですが、この時点ではSpO2には反映されません。SpO2が95%程度でも呼吸が非常に荒いときは要注意です。

このように一見手軽なパルスオキシメータですが、やはり医療機器ですのでいくつかの注意点はあります。
このことをしっかり知っておけば有用な機器ですので、お手元にある方はぜひ正しくご使用いただけると幸いです。

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.01.30更新

ややコロナも山を越えてきたのでしょうか。
日々報じられる感染者数も一時期よりは少なくなってきました。
当院でも冬なので発熱や咳で来られる患者さんは相変わらず多いのですが、コロナを強く疑う患者さんの数は減ったように思います。また当院で実際にコロナと診断される患者も、年明けに比べればだいぶ減ってきているようであり、現場の実感としても落ち着きつつあるのかなという印象はあります。

しかし、コロナはやはり重症化が怖い病気です。
新規感染者の数が減ってもまだまだ重症者の数は多いようで、感染が判明してしばらく経ってから重症化するというコロナの恐ろしい面が反映されています。

このコロナに関しては、呼吸困難の自覚のないまま呼吸状態が悪化する「幸せな低酸素血症」“happy hypoxia”という状態が起こることが知られており、感染からしばらく経った後、気づいたときにはかなり呼吸状態が悪くなっていることがあるようです。
この原因としてはまだはっきりとは解明されていませんが、コロナが悪化しやすい高齢者や糖尿病の方は、もともと呼吸調節を行う調節機能が落ちている、呼吸困難を感じる体内のセンサー(頸動脈小体)にコロナウイルスが感染しやすく、そこのセンサーの機能が落ちることで呼吸困難を感じにくくなる、などの理由が考えられているようです。Martin J Tobin, et al. Why COVID-19 Silent Hypoxemia Is Baffling to Physicians. Am J Respir Crit Care Med. 2020;202:356-60.
現在軽症感染者さんの主な療養場所も自宅やホテルとなっており、ただの風邪症状の方もコロナである可能性が否定できない以上、家でも早期に呼吸状態の悪化を見落とさないようにする必要があると思われます。

そこで最近注目されているのがパルスオキシメータです(当院も今後の診療能力向上のために、今年からちょっとイイやつを新たに導入しました)。


これは日本語で「経皮的動脈血酸素飽和度測定器」といって、皮膚の上から光を当て、動脈血の「赤み」を測定する機械です(ちなみにこの機械が開発されたのは日本なんです!)。


使い方は、クリップになっている部分を開き、指を挟み、爪の部分が発光部にあたるように奥まで差し込むだけです。

パルスオキシメータの使用方法

血液が赤いのは、赤血球に含まれている「ヘモグロビン」という色素のためです。このヘモグロビンは酸素とくっつく性質を持っています。

肺で取り込んだ酸素は、肺に流れこんでくる血液の中のヘモグロビンとくっついて心臓に戻り、そして全身へと運ばれます(血液の液体の中にも溶け込みますが、溶け込んだ酸素はほぼ組織には運ばれず、液体の中にただよったままです)。
このヘモグロビン、酸素とくっつくと赤くなり酸素から離れると黒くなるという性質を持っています。
すると、肺で酸素をため込み心臓から飛び出したばかりの新鮮な血液(つまり動脈血)は色が赤々としていますが全身に酸素を配り終えた後の血液(つまり静脈血)は黒めの色となります
皆さんが血液検査で血を採られると、意外に血が黒いと思われる人が多いですが、これはすでに全身に血液を配り終えた静脈血を採取しているからです。

そして、パルスオキシメータは先ほどお話ししたように動脈血の赤みを測定するため、肺から酸素をしっかり取り込めているかを測ることができるというわけです。
パルスオキシメータで測る数値を、動脈血酸素飽和度(SpO2)と呼びます。
これは血中のヘモグロビンのうち、何%のヘモグロビンが酸素と結合しているかを示しています。ですので最大値は100%になります。

パルスオキシメータの原理
そして血液中に含まれている酸素(これを酸素分圧と呼びます)と、酸素飽和度(SpO2)の関係は以下のグラフのようになります(これを酸素解離曲線と呼びます)。

酸素解離曲線

上の表でもわかる通り、通常若い方の血液中の酸素分圧は95mmHg程度で、これは酸素飽和度(SpO2)でいうと98%に相当します。
また高齢者では酸素分圧80mmHg程度で、これはSpO2 95%に相当します。
機械の誤差を含め、95~99%であればあまり大きな問題はありません(100%だと時によっては過呼吸など、呼吸が多すぎることを疑います)。
そして、我々医師は通常、肺や心臓に慢性的な病気がない方の場合、SpO2が93%程度になると焦り始め90%を切ると慌てます。これは酸素分圧60mmHgに相当し、これを下回ると呼吸不全とされます。
グラフもここを下回ると急になり、急激にSpO2が低下していき、いろんな臓器が十分な酸素を受け取れなくなってくるため危険な状態へとなっていきます。通常の場合では呼吸不全、つまり酸素分圧60mmHg、つまりSpO2 90%を下回る場合には、酸素療法や、場合によっては人工呼吸器療法によって酸素分圧を上げる必要がでてきます。
この治療の目安が指に機械を挟むだけでわかってしまうのです。

というわけで、痛みなく簡単に体内の酸素の状態が分かってしまうスゴい機械、パルスオキシメータですが、使うには実はいろいろな注意点があり、使用を安易に考えると、時に問題を生じることが出てきます。長くなりそうなのでこの続きはまた次回。

 

追記:続編はいつ出すんだ!?というご指摘を受け・・・
続編はこちらになります

→2021.2.7 パルスオキシメータについて ~使用する際の注意点~  

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.01.17更新

年が明け、1月7日からまたここ神奈川にも緊急事態宣言が発令されました。
当院でも発熱外来を行っていますが、年が明けてからはやはり発熱や咳症状の患者さんが増えてきている実感があります。新型コロナの診断となる方の数も増えてきており、茅ヶ崎でも拡がっていることをひしひしと感じます。

しかし、病気はコロナだけではありません。このようなご時世でも、治療を続けなければならない多くの病気の治療を止めてしまうことは好ましくありません。

それは当院が治療に力を入れている喘息でも同じです。
喘息は油断して治療を止めてしまうと、いずれまた悪化してしまいます。そのため平時でも、症状がよくなったからといってもやめないで、適切に治療を続けてもらうことが必要な病気です。

 

それをふまえた上で、今回は喘息と新型コロナについて、前回の記事からいろいろとわかってきたことも増えたので、そこについて触れてみたいと思います。

 

喘息と新型コロナについては、昨年4月にブログに記事を書きましたが、その後いろいろと新しいデータ、知見が出てきています。

その中でも、やはり喘息を患っていることと新型コロナが重症化してしまうことにはあまり関連がなさそうなデータがいくつも出ているようです。Chhiba KD et al. J Allergy Clin Immunol. 2020; 146: 307-14.

それ以上に、どうも新型コロナに感染した人の中には、喘息を持っている人が割合少なく、喘息の方はむしろ新型コロナにかかりにくい(もしくはかかっても重症化しないために見つけられない率が高い)可能性も考えられています。Matsumoto K et al. J Allergy Clin Immunol 2020; 146: 55–57.

 

それにはどうもいくつかの理由があるようです。

一つは喘息の方が起こすアレルギー反応がむしろ役に立っているという仮説です。
新型コロナウイルスはACE2という受容体を足掛かりに体内に入ってきますが(こちらの記事をご参照ください →2020.5.21 コロナと喫煙、そしてCOPD)、このACE2受容体がどうも喘息などのアレルギー反応を起こしやすい人だと減っているようなのです。Jackson DJ, et al.J Allergy Clin Immunol. 2020 Jul; 146(1):203-206.e3
そのためウイルスの足掛かりが少なくなり、ウイルスが体内に入ってきにくくなるのではといわれています。
ちなみに喫煙は逆にこのACE2受容体を大きく増やす作用を持っているとされており、喫煙はやはり新型コロナの重症化の大きな要因になるだろうと考えられます。
コロナが怖ければタバコは止めましょう。 

→COPDについて
→禁煙外来について

 

またいくつかのデータでは、喘息でちゃんと治療を行っている人の方が、そうでない人よりも重症化しにくいことも示唆されています。Eur Respir J. 2020 Dec 17;2003142. doi: 10.1183/13993003.03142-2020.

喘息治療で用いる吸入ステロイドは、気管支の炎症を抑え、空気の通り道を広げる作用を持ちます。
新型コロナに感染し重症化すると、肺へ空気が入りにくくなってしまいます。一度潰れた肺胞は再度膨らむことが難しくなり(一度完全にしぼんだ風船をがんばって膨らます状態と一緒ですね)、このことがより肺の状態を悪くしてしまいますが、吸入ステロイドはこれに対し効果を示すのかもしれません。

また吸入ステロイドは気道のACE2受容体(さきほど出た、新型コロナウイルス侵入の足掛かりでしたよね)を減らしてくれるという研究も示されており、ウイルスの侵入経路を減らす効果があるかもしれません。

具体的なデータはまだ出てはいませんが、普段から吸入ステロイドをしっかり使っていることで、新型コロナに感染しづらくなったり、感染したときに重症化を抑えたりできる可能性があります(ただ以前話題になったオルベスコという吸入ステロイドは、すでになってしまった新型コロナにかかってしまった後の治療という面では、現時点では有効性を示せなかったというデータが出ています。とはいえ死亡率や重症化率も上げることはなかったとのことであり、この結果の解釈はまだ難しいところです。いずれにせよ安易な自己判断での治療開始、治療中止は避けるべきでしょう

 

また内服薬に関しても、モンテルカスト(キプレス®やシングレア®という商品名です)が高齢者において、内服していた人の方がそうでない人より新型コロナ感染率、重症化率が低かったというデータもでているようです。Khan A, et al. Montelukast in hospitalized patients diagnosed with COVID-19. 2020. doi:10.21203/rs.3.rs-52430/v1.

 

これらから、喘息の人はやはり必要以上に新型コロナを恐れる必要はなく、今まで通りしっかりと治療を続けるのが一番だということが言えそうです。
そしてしっかりと通院を続けて薬を正しく使い続けることが、結局は新型コロナから自分の身を守ることになるということが言えると思います。 

→喘息の治療について

 

またこれからは春に向けてスギ花粉のシーズンが始まります。喘息の症状が悪化しやすい時期にも入ってきます。

なにより喘息の悪化による咳と新型コロナによる咳は、私たち専門医でもすぐには簡単に見極めることができません。
この時期、咳が続くとなにより患者さん自身が不安になり、日常生活を送る上での妨げとなってしまいます。 

→2020.3.1 花粉症と咳のただならぬカンケイ

 

せっかくいい治療法がある現在、喘息患者さんには、感染対策がしっかりとられている信頼できる主治医のもとで、しっかりと吸入、内服治療を続けていただきたいと切に願っております。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.12.31更新

今年も1年間加藤医院をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
さて、今回は激動の2020年の加藤医院を、この場で少し振り返りたいと思います。


2020年は1月の診察室の模様替えから始まりました。これに伴い私と加藤医師の診察室が入れ替わりました。またX線透視装置を撤去し、内視鏡室を移動しました。

そして春に数名の新しい事務スタッフを迎えたところでコロナの流行が始まりました・・・

当然この時期はまだまだ風邪が流行る時期でもあり、多くの発熱した患者さん、咳や痰の止まらない患者さんがいらっしゃいました。
我々もコロナのことがまだよくわからない時期であったため、かかりつけの患者さんやスタッフのことを考えた時に、発熱患者さんを受け入れるかどうかの決断を迫られました。
しかし、このころにはかかりつけの方にとどまらず、周りから医療機関を受診できなくなった発熱患者さんの相談を多く受けるようになっていました。この頃は総合病院の発熱外来くらいしか受け皿がない状態でした。
一方、私自身がつい1年前まで市立病院での感染対策チームで活動していたその経験から、いわゆる飛沫、接触感染であるコロナは、しっかりした対策を取れれば患者さん、スタッフへのリスクをある程度しっかり抑えることはできるだろうという見込みを持っていました

最終的には、自分たちがしっかりと発熱患者さんに対応することで、当院が発熱して困っている方の受け皿になり、さらにそれによって総合病院の負担を少しでも減らせればとの結論に至り、発熱患者さんの受け入れの継続、院内の大改造へと舵を切ることとしました。



まずは受付のパーティションを設置し、待合の椅子をすべて交換し、個別の椅子にした上ですべての椅子の間にアクリルパーティションを自作しました。
待合椅子パーテーション

 

そして、移動した内視鏡室を、検査のない日は発熱診察室としても使えるようにし、いままで点滴室として使用していたエリアを発熱外来専用待合室に改造しました。

第3診察室

発熱待合室

 

幸い昨年1年間、当院では院内感染、クラスターの発生はなく、私を含めスタッフへの感染も生じておりません。

6月には加藤医院が加藤浩平先生から正式に私浅井偉信が加藤医院を継承し、新体制での船出となりましたが、加藤医師の診察は週2回継続しており、特に患者さんの当院の使い勝手にはお変わりはないものと思います。


7月からは1か月遅れで特定健診、9月からは予定通り高齢者検診が始まり、お受けいただいた患者さんからは幸い病気の早期発見につながった方が何名もいらっしゃいました。

9月には新しい体制のもと、念願であったトイレの改装をはじめ、

トイレ

 

診察室のドア変更などの工事を施行、

診察室

 

続いて11月には受付、待合エリアの壁や床の張替え、荷物置き台の設置などを実施し、より過ごしていただきやすいクリニックを目指し歩を進めています。
受付

 

また新しい看護師が新たに仲間に入り、より充実した診療体制になりました。

10月からはインフルエンザの予防接種が開始し、コロナ禍の中少しでも密を回避しながら一人でも多くの方に接種いただけるように致しましたが、それでもご希望にお応えすることができないケースもありました。この場を通じてお詫び申し上げます。
12月には新たにネット、電話、窓口で受付可能な即時予約システムが稼働し、我々もまだ手探りな状態でありつつも徐々に慣れつつあるところで2020年を終えました。

というわけで、この一年間は世の中がコロナ禍で激変する中、当院は加えて院長交代、呼吸器アレルギー専門診療2年目、ハード、ソフトの変更、スタッフの入れ替わりなどで、加藤医院史上かつてないほどの変化があった1年だったように思います。
度重なる変更で患者さんにも少なからずご負担、ご迷惑をお掛けしている面があろうかとは存じますが、今後も安心して快適にご受診いただけるクリニックを目指す過渡期とご理解いただけると幸いです。
どうぞ皆様2021年も加藤医院をよろしくお願い致します。


なお新年は5日より診療を開始します(県の要請により29日、30日と発熱患者さんの対応をさせていただいた影響で、1日開始を遅らせていただきました)。
報道の通り、茅ヶ崎も例外ではなくコロナ陽性例は大幅に増えており、当院でも複数の陽性例が出ています。
しかし私の印象では、少なくとも当院で確認した陽性者の多くはやはり接触者で、自身の不注意ではなく、避けられないシチュエーションだった方がほとんどな印象です。

報道では人々のモラルの低下を嘆く声も多いですし、あたかもモラルが低いから感染すると言った論調も聞こえてきますが、私がここ茅ヶ崎で見た限り、ここではそのような方は少なくとも多数派ではなく、大多数の方はしっかりと感染対策を理解し、対応をされているように思います。

そもそも冬は風邪(=ウイルス性急性上気道炎)が流行りやすい季節なのです。
24時間365日引きこもっていない限り、誰だっていつ感染するかわかりません。


どうか感染した方を責めることなく、周りや社会で温かくサポートしてほしいと思います。

そして感染を隠す空気を決して作ることなく、皆さんが体調のトラブルについて気軽に相談できる世の中の雰囲気であり続けることを切に願っています。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.12.09更新

2020年も12月に入り、間もなく悪夢の1年が終わろうとしていますが、相変わらず年の瀬までコロナ、コロナの世の中です。ここ茅ヶ崎でも、都会ほどではないですが連日陽性者の報告が上がっています。

海外ではワクチンの接種が始まり、わが国でも来年には始まるでしょう。ワクチン接種がどのような結果を生むのかは誰にもわかりませんが、1日も早く通常の世界に戻ることを切に願っています(あー、忘年会、やりたかったなあ・・・)

さてまだまだ落ち着かないコロナ禍の中、市中では自由診療におけるPCR検査が注目されているようです。安価で提供できるPCRセンターが街中にでき、予約が殺到しているとの報道もありました。

検査に関しての結果の確からしさという点では、以前にもこちらのブログで触れています。
まずはPCR検査の結果は絶対ではありません。とはいえ、現時点でコロナの診断のゴールドスタンダードはやはりPCRですあくまで医療機関、検査機関で正しく検体を扱い、精度の高い検査機関で行ったものに限ります。安くてもこの部分がいい加減な検査は論外です)。

では自費でのPCR、これってやはり「あり」、なのでしょうか。
テレビや雑誌では相変わらずPCRの議論が喧しいですが、ここらでもう一度冷静に検査の原理を復習しながら、その意義と問題点を考えてみたいと思います。

以前の記事で感度、特異度の説明をした際、特異度を90%と仮定し、偽陽性が多く出る可能性があると書きましたが、実際PCR検査の特異度(=病気でない人を正しく陰性と判断できる確率)はもっと高いようです(つまり病気がないのに陽性となる確率が低い=陽性と出たら病気である可能性が高いということ)。
基本的に微量の遺伝子を増幅して検出するので、ごくごく少量のウイルス遺伝子でもしっかりと拾い上げることができるためです。

それでも100%ということはあり得ないと思います(特異度が100%なら偽陽性は存在しないことになりますが、実際に体操の内村選手など、偽陽性のケースが実際に報告されていることがその証拠です)。これは検体の中に他の検体のウイルスが混入する可能性もあるためと言われています(クロスコンタミネーションと呼ばれ、他の感染症検査でも珍しくない要素です。今の検査の現場はおそらく検査数も多く非常に忙しいため、どんなに対策をしていたとしても混入を完全に防ぎきれない可能性はありえるでしょう)。

とはいえ、特異度は99%かそれ以上はあるとのことですので、ひとまず偽陽性のケースは(ありえることではありますが多くはないと考え)、ここでは置いておきましょう。

自費PCRを受ける方の受診動機は何でしょうか。
おそらく出社や会合に出るために必要である、出社や会合に出るために必要である帰省するために確認したい、高齢者や病気の方と会うときにリスクを排除しておきたい、などではないでしょうか。
となるとやはり自費PCRを受ける方の目的は、多くの場合「自分が陽性であったらどうしよう」ではなく、「自分が陰性であることを確認しよう」というのがほとんどなんだと思います(もちろん例外はあるでしょう)。

検査の動機

しかし、この検査は陽性に出ることに意味がある検査なんだと思っています。

その理由をご説明します。

この検査は特異度が高い一方、感度はそれほど高くありません。

特異度が極めて高ければ、前に書いた通り、陽性と出れば、その人がコロナである可能性はかなり高いといえるわけです(本当にそう言い切れるかどうかはまだ議論の余地があります。さきほどのクロスコンタミネーションの可能性もありますし)

一方感度(=病気の人を正しく陽性と判断できる確率)はそれほど高くない検査でもあります。
例えば感度が70%とすると、病気の人を陽性と出せる確率が70%ということです。つまりコロナの人のうち、30%は見逃すということです。

図で表しましたが、この場合、検査前の確率が高い場合、「陰性だけどコロナである可能性」は上がります一方検査前の確率が低い場合は「陰性だけどコロナである可能性」は非常に少なくなります。

検査前確率

ということは、その人の検査前の感染確率によって解釈を変えなければならないわけです。

ところが検査前の確率はその人その人によって大きく変わります。
例えば濃厚接触者は当然検査前確率が上がります(が、このケースではそもそも「行政検査」となり、費用は公費負担になります)が、毎日飲み屋で感染対策をせずに飲み歩いている人も検査前の確率は高くなるでしょう。
一方買い物以外では出歩かず、常に感染対策を怠らず、周りに風邪をひいた人がいない場合は検査前の確率は低くなるはずです。
当然その中間の人も多くいるでしょう。

これらの人は、それぞれ検査結果の解釈に違いが生まれるはずなのです。
検査前確率が高い人は、結果が陰性でも結構な確率で偽陰性があり得るということです。この状態で陰性だからと安心してしまうのは危険です。
一方検査前確率が低い人は、結果が陰性がでればまあ確からしいのですが、それは検査をしなくても大きな変化はないともいえるのです(検査前確率が低い人が検査でひっくり返る可能性は極めて低いわけですから)。

となると、やはりPCR検査は、「陽性がでてなんぼ」の検査というわけです。
陰性はコロナじゃないことの証明にはならないわけです。ただ陰性の結果を欲しい人にはあまり向いていない検査なのです。

あまり出歩かない検査前確率が低い人は、そもそも検査を受ける必要性が低いわけですし、検査前確率が高い人は、陰性でもコロナである可能性が他の人より高くなるので、その解釈に気を付けなければならないわけです(検査前確率を自ら高める行動をとっている人が、この原理を理解せずに陰性で喜んでしまう事態が一番怖いとも言えます。厳しいこと言うようですが、このような行動をとってしまっている人は自費PCRを受けるべきではないといってもいいのかもしれません・・・)。

この検査前確率はやはり第三者である我々医療機関が保険診療で問診、診察で判断して、陽性の可能性を高めたうえで行うべきだと考えます(検査を絞ろうという意味ではないです。もちろん必要な検査はどんどん出しますよ)。
やっぱり一般の方が自由に受けられてしまう自費PCR検査は、このような面から何かと問題がある気がして、もやもやしている今日この頃です。

というわけで、当院では現在保険診療でPCRを行えるように準備を行っています。従来通り抗原検査もコロナ、インフルエンザ双方とも準備をしており、状況に応じて使い分けるように計画しています。困ったらお気軽にお電話にてご相談ください。

あと、上記の理由にて当分自費PCRは行わない予定ですが、医学は一昔前の常識が非常識となる分野です。今後も柔軟に、その時のベストを考えられる加藤医院でありたいなと思っています。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.11.20更新

新型コロナの患者数が最高記録を更新するという報道が毎日流れており、何だか気が滅入る毎日です。
ここ最近の医療機関の検査体制の充実(当院でも10月からは積極的に自院での抗原検査、茅ヶ崎市検査センターへのPCR検査依頼を行っています)による検査の敷居の低下は陽性者数増加の要因の一つとしてあるとは思います。
ただ当然ながら気候の問題、人の流れの問題など、増える要素はあるわけであり、ここが気の引き締めどころでしょう。
適切なマスク装着、密の回避、手指の清潔など、改めて感染(させないように意識する)予防の基本に立ち返って頂き、メリハリのある対策を行っていきましょう。

なお当院では12月から新しい予約システムを導入します。
詳しくはまた別途お知らせしますが、今までの新患のみならず、再診の方も24時間ネット予約が可能になります。もちろん窓口予約もできます。
そして今後はある程度の診察開始時間目安を来院後にお伝えすることができるようになり、時間がかかりそうな場合は院外でお買い物をしながら時間までお待ちいただくこともできるようになります。今まで通り予約なしで直接来ていただくことも可能なシステムにしておりますが、予約によりお待ち時間が減らせますので、是非新しい予約システムを一度ご利用ください。

もう一つ、明日診療後から月曜のお休み日までの期間を使い、懲りずにまた工事します。今回は受付エリアが変わりますのでお楽しみに。

さて、このブログを始めて以来、雑誌やメディアなどの取材をいくつかお受けしましたが、今までとは趣の異なる方からインタビューのご依頼を受けました。
今回、早稲田大学法学部社会保障法ゼミ様からのご依頼で、新型コロナ感染症対応策についての政策を提言するという課題に対して取り組まれている中で、医療現場の現状をお知りになることで政策提言に生かしたいとの趣旨でした。
このブログをご覧になって、場末の当院にたどり着いたとのことです。
このブログをこのような方々まで読んでいらっしゃるんだなと、少し驚きつつ、若い世代の方々の将来のためならと思い、協力させていただくことにしました。

私もまだまだ(この開業医の世界の中では)若いと勘違いしておりましたが、やはりもうすでに40代(今日もまた1歳余計な年を取りました・・・)、zoomの画面越しでも、年代の果てしない距離をひしひしと感じたことをここに記しておきます。

今回は実際の医療現場において我々が直面していることについてのご質問でしたが、このことをブログで発信し、皆さんに知っていただくことも一つの意義になるのではと思い、その一部をここにも載せてみることにしました(以下の記載はあくまで私個人の経験、意見です)

① 現場で困難だったことは何でしょうか?
A.3-4月当初のマスクやガウンなどの消耗品の入荷不足、値段の高騰は大きな影響がありました。今後いつ品薄が再燃するか、常に気がかりです。
またクラスターが発生した場合に施設名を名指しで発表されてしまうと、当然クリニック運営に対しては致命的な打撃となります(ほかの業種ももちろん同じでしょう)。このことにより医療施設が萎縮したことも、軒並み発熱患者を受け入れなくなった一因かと思います。そのため一部の発熱患者を診療する医療機関に殺到して、職員、患者に更なる不安を与えてしまったように思います。クラスターつぶしは必要なことですが、私個人としては、マスコミで施設名まで殊更大きく発表しなくても十分可能なのではと思います。

② 貴院がもし政府の手を借りることができるとしたら、どのような施策を希望しますか?
A.一番は仮に院内感染がおこった場合の行政のサポート(職員の雇用維持や家賃の補償など)です。実際の収入減に対するサポートはありましたが、何か今後起こる困難に対するサポートが不十分です。これがしっかりしていると診療に対する危機感は薄まり、おそらく発熱診療に手を挙げる施設も増えるように思います。また前述の通り頑張って発熱患者を受け入れているところをさらし者にしないでほしい。とにかく発熱患者を診ることに対するネガティブな要素を取り除いてもらうことが一番大事です。

③ 初期に感染者の出た地域に物資や人手を集約するという施策を考えるとして懸念等はあるでしょうか?
A.通常医師、看護師には、勤務地のテリトリーがあります。医師が持ち場を離れると、担当患者を診る医師がいなくなり、そこに対する手当が必要になります。自然災害のようにある程度援助すべき場所と期間がはっきりわかっていれば、そこを何とかやりくりすることもできるが、今回のような場合はいつまで続くか、どこに集約すべきかというのが見通せないため、現実的には難しいのではないでしょうか。物資に関しても、現在流行地でないところには感染対策器具が必要ないわけではない(むしろ世間からの圧力により、新たな流行元になってはならないと考えるでしょうから、それらの需要はむしろ高まるかもしれません)ので、集約させることは難しいのではないでしょうか。

④ マスコミや政府の発表と現場での体感で乖離している事柄があればお聞きしたいです。
A.PCR検査は(少なくとも現在の当地では)それほど敷居の高い検査ではなく、我々が必要あると考えれば受けることはそれほど難しくありません。おそらく敷居が高いといわれている一つの要因としては、検査が必要なのにできないということでなく(もちろんそういうケースもあったのでしょうが)、そもそも検査が必要ないと医療者が考えて検査を出さないというケースも少なくないからかもしれません。一般的な検査の感度、特異度を考えた場合、臨床的判断がない状態で検査を行ってもこちらを参考に)、その検査の結果が診断の確からしさを上げることには寄与しにくく、むしろ偽陽性、偽陰性を生み出すリスクが出てきます(無症状の選手たちに連日検査を行い偽陽性となった体操の内村選手がよい例です)。また現在でもコロナPCR検査におけるはっきりとした感度、特異度は未だ明確ではなく、検査結果の確からしさを推測することさえ難しいのが現状です。

⑤ 院内感染の予防策をいくつか教えていただきたいです。
A.当院では来院時の手指消毒、飛沫感染予防のための受付のアクリルパーティション、患者さん同士の感染を避けるためのパーティション、定期的な院内アルコール消毒、発熱患者さんと一般患者さんの動線分離、予約システム導入による待ち時間減少、屋外での検体採取、診察時のマスク、手袋、ガウン装着、診療開始時間の目安の提示(一旦外出させることが可能)などを行っています(今後実施予定のものを含む)。

⑥ 医療従事者目線から、新型コロナウイルスの感染拡大対策はどこで何をすべきであったと考えますか?
A.一般的にはコロナ感染症は飛沫接触感染と考えられます。通常特殊な環境でない限り空気感染は起きないといわれています(いろいろ説は出ていますが、もし空気感染がおこりやすい感染症であれば感染者数はこんなものではないはずです)。また症状発症前や無症状患者からの感染を示唆されています。つまり大事なのは適切なフィジカル、ソーシャルディスタンスであり、やはり密の形成を避けることは理にかなっています。また感染可能性のある場面での正しいマスク装着は非常に大事だと思いますが、逆に屋外で街を歩く程度ではマスクの必要性は低いかもしれません。

⑦ オンライン診療等あれば院内感染を防げたと考えているのですが、オンライン診療の障壁等あれば教えていただきたいです。
A.私個人の考えとしては、今の回線品質では、顔色なども十分に反映せず、もちろん触ったり音を聞いたりの診察、各種検査はできません、画面上で本人の顔を見ても、得られるのは多少の安心感だけで、その画面からはほとんど有益な情報は得られないように思います。現状のオンライン診療から得られる情報はあくまでも問診の情報のみにとどまるので、受診を迷う患者の相談窓口としては機能するかもしれませんが、処方もいわゆる対症療法しかできません(風邪診療の方法についてはこちらから)。つまり現時点では使い道はないわけではないものの、対面診療の代わりにはなりえないと思います。

⑧ 病床数が不足していた際に、例えば政府がより多くのホテルを病床として確保するという施策は解決になりえるでしょうか?
A.ホテルを病院の代替として利用することは難しいのではないでしょうか。医療器具などが揃っていないので患者の十分なケアを行うことができません。また急変があった場合、患者からの直接の申し出がないと医療者も気づかないので、見逃してしまうリスクもあります(病院なら看護師が定期的に巡回して、状態悪化があればバイタルモニターを装着します)。あくまで隔離施設としての活用に留まるのではないかと思います。


正直今私は発熱患者さんの入り口の役割を演じており、現在コロナ治療の最前線に立っているわけではありません。ですので最前線の実情を見られているわけではありませんが、1年半前までは呼吸器専門医として各種呼吸不全の病態に対峙し、またインフェクションコントロールドクター、院内感染対策部門担当として何度もアウトブレイクに対応した経験、それを今でも戦っている先輩方、我々から受け継いだ後輩たちから伺う現況から、今最前線で起きていることを推測してお話ししました。
とにかく私個人もこの立場でできることを精一杯頑張るので、最前線の皆様たちも是非頑張ってこの難局を乗り越えていってほしいと思っています。

そして、今回インタビューを申し込んでいただいた早稲田大学法学部の皆さん、ありがとうございました。答えのない課題だとは思いますが、頑張って皆さんなりの最適解を導いてください。そしていっぱい考えることで成長し、私たちの次の世代として社会を支える人材となれることを期待しています!

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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