前回のブログで、喘息の「生物学的製剤」の治療を理解するうえで、どうしても必要となる「体の中で起こっている喘息の反応」を説明してみました。
前回ブログより再掲
極力理解しやすいように工夫したつもりでしたが、案の定内容が難しいとのご指摘も頂きました。
図をもう少し盛り込んで、もう少しわかりやすいように内容を改良してみましたので、一度お読み頂き、ゲンナリされた方ももう一度トライいただければ幸いです・・・
前回ブログはこちらから!
という訳で今回はその続編、いよいよ各薬剤についての説明に入ろうかと思います。
まず、基本として、これらの薬剤は、「喘息を完治させるもの」ではございません。
また「吸入薬の代わりとなるもの」、でもございません。
生物学的製剤は、あくまで、喘息治療の基本となる、吸入薬と、それに付随する様々な内服などの治療、それに喘息に合併する喘息以外の治療を適切に行ったうえで、それでも症状がコントロールできない場合に追加で使用する薬剤となります。
そのため、基本的には定期的に続けていくことを前提に使っていく薬となるので、まずはこの点をご理解ください。
さて、前回もお話しした通り、喘息の生物学的製剤は現在、5種類が使用できることになっています。
その5種類は、それぞれ前回お示しした体の中で起こる喘息の反応の一部を止める薬となっています。
その5種類は、発売された順に、以下の通りとなっています
(カッコ内は “ 一般名:喘息への使用が認められた年 ” です)。
・ゾレア(オマリツマブ:2009年)
・ヌーカラ(メポリツマブ:2016年)
・ファセンラ(ベンラリツマブ:2018年)
・デュピクセント(デュピルマブ:2019年)
・テゼスパイア(テゼペルマブ:2022年)
その特徴を一覧にまとめてみました。
(2024.10.3)2024年10月現在の情報に更新しました
まず最初に使用されるようになったのが「ゾレア」です。
この薬剤に関しては、一度、9月のこちらの記事「テレビで出ていた「ゾレア(オマリズマブ)」って、いったいどんな薬?」で触れておりますので、今回は簡単に。
「ゾレア」は、おバカ抗体である「IgE」を邪魔する薬です。
「IgE」はマスト細胞にくっつき、その後アレルゲンと結合することでマスト細胞から強いアレルギー症状を起こす「ヒスタミン」「ロイコトリエン」を放出させてしまう抗体でした。
この働きを抑えることで、「ヒスタミン」「ロイコトリエン」の放出が抑えられ、気管支の炎症や収縮を抑えることができるという訳です。
この薬剤の特徴は、その「IgE」の値と体の大きさ(体重)によって、量が細かく決められているということです。
量は上の図の通りとなります。
1か月おきに1本から2週間おきに4本までとかなり幅があります。
これはメリットにもデメリットにもなります。
もし本数が少なく済む場合は、他の生物学的製剤に比べ、かなり安く使うことができます。
一方本数が多くなってしまう場合は、他の生物学的製剤と比べてそれほど安くはならない上に、打たなければならない注射の本数がかなり多くなり、肉体的にも精神的にも負担になってしまう可能性があります。
自己注射も一応できるのですが、薬剤に粘り気があり、入れるのにかなり力が必要なため、実際はほとんどのケースが医療機関で医師や看護師により注射されています。
次は「ヌーカラ」と「ファセンラ」です。
ここは、比較的近いところに作用する薬なので、まずはまとめて説明します。
前の図で見てみたように、刺激を受けたヘルパーT細胞と自然リンパ球は、それぞれ「IL-5」という「お知らせ物質」(=サイトカイン)を出して、それを「好酸球」は、表面にある「IL-5受容体」という受け皿で受け取ります。
すると「好酸球」が刺激されて、活性化してしまいます。
「好酸球」は刺激されると炎症を引き起こしてしまいます。
炎症は気管支にもおよび、気管支の壁がむくんで気管支が狭くなったり、敏感になったり、痰が増えたりして、いわゆる喘息の症状を引き起こします。
「ヌーカラ」は、IL-5を直接妨害する薬剤、「ファセンラ」はIL-5の受け皿である「IL-5受容体」を妨害する薬剤です。
いずれも「好酸球」の働きを抑える力を発揮して、好酸球による炎症を食い止めることができます。
また、「受け皿」にくっついてIL-5がくっつかないようにする「ファセンラ」は、逆に好酸球にファセンラがくっついていることで、好酸球が免疫細胞(ナチュラルキラー細胞といいます)から逆に攻撃されてしまい、好酸球をほとんどなくしてしまうという作用もあります(でもこの、本来は体に通常備わっている好酸球を完全になくしてしまうことが、体にとって本当にいいことなのかどうかというのは、まだ議論があるところです。)
「ヌーカラ」は4週間おき、「ファセンラ」は最初の3回は4週間おき、その後は8週間おきの注射となり、「ヌーカラ」は、ご自宅で自分でできるペンタイプの注射キットがあります。
いずれも「好酸球」の働きを抑えるための薬ですので、「好酸球」の数がもともと少ない方は効果を期待しにくくなります。
そのため採血検査であらかじめ好酸球の数を調べて、この薬が向いているかどうかを見ておくことが大事になります。
それではあと2つ、「デュピクセント」と「テゼスパイア」ですが、話が難しい上に、いっぺんにまとめて長くなりすぎると、皆さんが読むのも、私が書くのも、多分挫折すると思いますので、また次回にしておきましょう。
さて、お知らせです。
コロナワクチンの接種受付期間を延長、拡大致しました。
12月4日~22日の分を、茅ヶ崎市ワクチン予約システム、当院予約システムより新たにご用意しています(茅ヶ崎市外の方は当院予約システムよりご予約下さい)。
主にファイザーのご用意ですが、当院予約システムに若干量のモデルナ枠をご用意しています。
また当院接種の際は、インフルエンザワクチンの同時接種が事前のご予約なく可能です。
インフルエンザが猛威を振るっており、現在コロナは比較的落ちついています。
ただ今までの傾向から、年明けからはおそらくまた広まり始めるでしょう。
当院ではおそらく多くの枠をご用意して行う追加接種は、今回で最後となる見込みです。
ご希望の方はお早めにどうぞ!