医師ブログ

2023.05.28更新

新型コロナが5類感染症になってから約3週間、世間の空気はあまりコロナを感じさせなくはなってきています(実は水面下ではかなり増えてきています。今日私は休日診療所の日直をしているのですが、今日のコロナ抗原検査の結果が15打数8安打、打率.533と、DeNA宮崎選手も真っ青の高打率となっています・・・)。

しかしそれでもやはり人前で咳が続くことを気にされる方は少なくなく、咳が長く続くことでお困りの方が今でも多く当院にいらっしゃいます。

なかなか当日の新患枠が空いていることが少なく、診察まで数日お待ちいただいている状況で、患者様にご不便をお掛けして心苦しい状態です・・・

今年の4月から横浜市立大学病院から呼吸器専門である平田萌々先生を水曜日にお迎えしており、現時点では水曜日は他の曜日に比べて、呼吸器系の症状の方のご予約が比較的お取り頂きやすくなっています(この状況もいつまで続くのかわかりませんが・・・)
もし咳でお困りの場合、近日中のご予約がお取りいただけない場合は、水曜日の平田先生の診察もご利用ください!


さて、そのような「長引く咳」で受診されている方は、以前「咳喘息」と言われたことがあるという方や、こちらの診察で新たに「咳喘息」と診断される方が多くいらっしゃいます。

ところが、「咳喘息」って一体何かというと、正直ほとんどの方がくわしくはご存じありません。


そこで今回は「咳喘息」について少し詳しくお話をしてみたいと思います。


では、そもそも「喘息」って何でしょうか?

医師が治療をするときに参考とする、喘息のガイドラインを見てみると、「気管支喘息は、気道の慢性炎症を本態とし、変動性を持った気道狭窄による喘鳴、呼吸困難、胸苦しさや咳などの臨床症状で特徴づけられる疾患」と書いてます。

ムズい。なんのこっちゃ??

これをわかりやすく言い換えると、「喘息とは、気管支が狭くなって息苦しくなったり、咳が出たりするという症状が、悪化したり治まったりを繰り返す病気で、気管支が炎症を起こしていることがその原因ですよ」ということになります。

 

つまりアバウトにいうと、喘息の時には、主に「2つのことが起きている」、ということができます。


まずは「気管支の空気の通り道が狭くなる」という状態です。

気管支に炎症が起こることで、気管支を構成する筋肉(気道平滑筋と言います)が収縮したり、気管支の壁がむくんだりして気管支の空気の通り道が細くなります。
また気管支の中に分泌液が出ることで、分泌液(つまり「痰」です)が空気の通り道をジャマしたりすることで、気管支の中の空気が通りにくくなります。
狭い所を空気が通り抜けると笛のように音が鳴るため(空気の流れのあるところでドアを少しだけ開けていると「ピューピュー」いうことありますよね。それと同じ原理です)、喘息が悪化したときは「ゼーゼー」「ヒューヒュー」言ったりすることがあるわけです。


次に、「気管支が敏感になる」ということです。

気管支に炎症が起きると、その粘膜がはがれてしまい、知覚神経がむき出しになってしまいます。
そこに刺激が加わると知覚神経がビビッと刺激され、咳が出てしまいます。

また先ほど挙げた気管支平滑筋の収縮によって、その中にある神経が、筋肉の収縮を刺激と感じ取り、咳が出てしまいます。

ほかにも気管支に炎症が起こると、その筋肉の収縮を起こりやすくさせるような色々な化学物質が気管支で作られてしまい、ますます気管支の収縮、それによる咳が起こりやすくなってしまうというわけです。


一方「咳喘息」とは何でしょうか?

ガイドラインには「喘鳴や呼吸困難を伴わず、咳嗽を唯一の症状として気管支拡張薬が有効である」病気と書いてあります。

つまりこれも言い換えてみると、「気管支が狭くなってゼーゼーしたり、息苦しくなったりすることはないんだけど、咳が続くという症状だけはあり、その症状は気管支を広げる薬で落ち着いちゃう」ということになります。

気管支喘息との「違い」は、「ゼーゼーしたり、息苦しくなったり」するか、しないかということです。

でも、「気管支を広げる薬で症状が治まる」という点は変わりません。時期や環境によって症状がよくなったり悪くなったりするという点も変わりがありません。


じゃあ、「喘息」と「咳喘息」って、違う病気なのでしょうか?


私は、基本的には同じ病気だと考えています。
ただ症状の出方が異なるだけと考えています。

先ほどもお話をしたように、喘息とは「気管支が狭くなり」、「咳がでる」病気ですが、私は「喘息」と「咳喘息」は、その出かたの程度の差だというように考えています。

言い換えると、「咳喘息」は「喘息の一種」、「喘息の亜型」であるともいえるわけです。


例えば、咳喘息の方の検査を行うと、モストグラフィー検査で気管支がある程度狭くなっている方が少なくありません。
また呼吸機能検査を行っても、異常の範疇とまでは言えない程度の息の吐きづらさ(閉塞性呼吸障害といいます)を示すデータが出る方が非常に多いです。

つまり、咳喘息は「ヒューヒュー」「ゼーゼー」なったりするほどには気管支が狭くはならない(全く気管支が狭くならないとは言ってない)けど、咳を引き起こすような気道の炎症や知覚神経の過敏、それに軽い気管支の筋肉の収縮は起きているということです。
狭さの程度が強ければ「喘息」弱ければ「咳喘息」で、そこには明確な線引きがある訳ではなく、あくまで程度問題だということなのです。

 

よく外来で「『咳喘息だけど、喘息ではない』」と言われたことがある」とおっしゃられる方が少なくないのですが、上記の理由で、この表現は必ずしも正確とは言えないのかなって思います。

また、「咳喘息は喘息の軽いもの」という表現もよく聞くことがありますが、これも必ずしも正確ではなさそうで、咳の強さ、咳の出やすさはいわゆる喘息とそこまで変わりがない方も少なくない印象ですし、薬の効き方もそれなりに強い薬でないと効かない方も多くいらっしゃいます。
単純にあくまで、「咳喘息は気管支の狭さというファクターのみが軽く済んでいるだけに過ぎないと解釈した方がいいかと思います(ただ確かに全体的に咳喘息のほうが症状が軽く済んでいるが多い傾向はあるかなとは思います)。

あとよく聞かれるのが、「咳喘息を放っておくと喘息に移行してしまう」という文言です。

これはある意味正しいのですが、正確に表現すると、「咳喘息を放っておくと、そのうち気管支の狭くなる度合いがまして「ゼーゼー」「ヒューヒュー」いうくらいに進んでしまうという表現がより正確なのかなって思います。
咳喘息を放っておくと「喘息という別の病気になる」訳ではないということです。


つまり言いたいことは、「咳喘息」という診断がされたら、それは「喘息」という診断と同じと考えたほうがいいということです。


ですので、咳喘息の治療法の考え方は、基本的には喘息と一緒です。

すなわち、喘息と同じように吸入のステロイド薬や、必要に応じて気管支拡張薬やアレルギー薬を使用し、症状がよくなっても急にはやめないということが大事だということです(よくなってからすぐにやめてまた再発するということを繰り返すと、徐々に治りづらくなったってしまったり、それこそヒューヒュー、ゼーゼーという、「気管支が狭くなる喘息」に移行しやすくなってしまうためです)。


「喘息は治療を続けなきゃいけないが、咳喘息はすぐに治療をやめていい」ということはありません。
薬の減らし方、止め方は、喘息治療をしっかりと理解している医師と相談しながら慎重に決めていってほしいと思います。


繰り返す咳の不安から解放され、咳のない快適な生活を、是非手に入れてください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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