呼吸器・アレルギー疾患
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDは気づかないうちに徐々に進行してしまいます。
タバコを吸ったことのある40歳以上の方は
是非一度呼吸機能検査を受けましょう!
どんな病気?
COPDは、日本語で「慢性閉塞性肺疾患:まんせい へいそくせい はいしっかん」と呼ばれます。
別名「タバコ肺」とも呼ばれているように、9割以上の方がたばこによって起こります(たばこを吸っていた人だけではなく、その副流煙を長期間吸う環境にいた方にも起こり得ます)。
たばこの煙の中の有害物質(ニコチン、タールだけじゃありません)が気管支に入ると、気管支、肺に炎症を起こします。
肺はスポンジみたいな構造ですが、肺の慢性的な炎症が起こると壊れていきます。壊れると、そのスポンジの目が粗くなり、スカスカな肺になってしまいます。これを「肺気腫(はいきしゅ)」と呼びます。
このような変化が起こると、気管支を支える力が弱くなり、息を吐くときに気管支がつぶれて、つまり「慢性的」に「閉塞」して空気の通りがわるくなるのです。「慢性閉塞性肺疾患=COPD」という病名の由来です。
こうなると息を吐いた時に肺が十分にしぼまないため、新たな空気を十分に吸うことができず息切れが生じます。
加えて気管支でも炎症が続き、痰が増えて空気の出入りを邪魔し、その痰を出そうと咳も増えるので、咳、痰、呼吸困難という不快な症状が続いてしまうのです。
どんな人がなってしまうの?
上でもお話ししたように、わかりやすく言い換えると「タバコ肺」とも言われる病気です。
この病気の人は現在国内では500万人以上もいるといわれているのに、実際に診断され、治療されている人は26万人程度しかいません。たった数%です。
若いときに吸っていたたばこの影響は、数十年経過してから病気となって現れるため、現在日本の喫煙率は年々低下しているものの、COPDの方はまだまだ増えており、今後もしばらくその傾向は続くと見込まれています。
中には「私は長年たばこをずっと吸っていたが何ともなくピンピンしておる!」といった方も確かにおられます。一方、周りの人より多く吸っていたわけではないのに(中にはたばこを吸ったことがないにもかかわらず、家族が家の中で吸うたばこの副流煙を長年吸ってしまったという程度で)、著しく症状が強くて困っている人もいます。
その違いは、人によってこの炎症の起きやすさがそれぞれ異なったり、もともとの肺の成長度合い、肺の機能が人によって違ったり(つまり予備能力が人によって違ったり)するからだと考えられています。
どんな症状が出るの?
上でもお話ししたように、まずは咳が長引くこと、階段や坂道で息切れが出てくることから始まります。しかしこれらの症状はしばしば「年のせい」と片付けられしまうことが多く、だいぶ進んでから見つかってしまう方も少なくありません。
またCOPDになると息切れで運動できなくなったり、肺炎などの他の病気になりやすくなったりするために、年齢とともに体力が低下するスピードが速くなります。
また「急性増悪(きゅうせい ぞうあく)」といって、風邪や肺炎にかかることなどをきっかけに、急激にCOPDの症状が悪くなって、病態がすすんでしまうこともあります。
これらにより体の機能が一段と弱まり、それによりさらにいろんな病気にかかりやすくなったりする悪循環を経て、命にかかわってしまうことが少なくありません。
どうやって治療するの?
COPDの治療では、まずは息切れの改善、急性増悪を減らし、今まで出来ていた生活をなるべく長く維持することを一番の目標として行います。
薬に関しては喘息と同様、吸入薬が一番大事とされています。
ただ、COPDでは喘息とは薬の種類や使用方法が異なる点が少なくありません。
まず吸入薬ではいわゆる気管支拡張剤である抗コリン薬、β2刺激薬が重要な薬剤となります。これらを症状に合わせて単独、もしくは併用して使用します。
また症状が強く何度も状態が悪化してしまうような方や、喘息の合併が疑われる方は、(喘息の基本治療薬である)吸入ステロイド薬を併用することもあります。
これらの薬剤で、中には息切れの症状が大きく改善する方も少なくありません。しかし治療を続けられないとCOPDは徐々に進行し、年々症状は強くなってしまいます。
昨今はこれらの薬剤を組み合わせて、一日1回の使用で治療が完結できる薬も多く出てきており、患者さんにとっても非常に治療がしやすい時代となってきました。
それでもどうしても生活の場面で息切れが残ってしまう場合があります。その場合には喘息の発作治療薬でもある吸入β2刺激薬を使用しますが、COPDの方では、心臓などに負担がかからない限り、積極的に使用してもいいとされています。これは体を動かすときに気管支を拡張し、しっかりと運動をできれば、その分筋肉や心肺機能の強化ができるので、体力の低下を抑えられるためです(COPDの一番の敵は体力の低下です)。
また食事も大事であり、筋肉を保てるようなたんぱく質、効率の良いエネルギー源としての脂肪の適切な摂取が推奨されています(ただしこれらの食事の仕方に関しては、他の病気の兼ね合いもあるので必ず主治医と相談してください)。
茅ヶ崎内科と呼吸のクリニックでは何ができるの?
COPDは、まず見つけることが最大のハードルだと言われています。
喘息と違い、症状は中年以降ゆっくりと進んでいくものなので、その症状を年のせいだと片付けられたり、風邪をひきやすくなったと勘違いされたりと、ご本人が気づくことが大変難しいのです。
まず当院ではこれらの症状が本当にないか、詳細な聞き取りを行っております。またもしお心当たりの際には、是非当院にお気軽にご相談いただければと思います。
COPDの診断は呼吸機能検査(スパイロメトリー)で行います。当院では訓練されたスタッフにより適切な検査を行うことができます(検査が難しい場合は院長自らが検査の補助をさせて頂いております)。この呼吸機能検査を、できればタバコを吸った経験のある40歳以上の方は是非一度受けていただきたいと思っております。
言わずもがな、COPDを治療するにあたり禁煙は欠かせません。
当院ではチャンピックス、ニコチンパッチなどを使用した禁煙治療も保険で行うことができますので、禁煙にお困りの際はぜひ当院に一度ご相談ください。
薬剤も現在は多くの種類が発売されておりますが、それぞれに長所、短所があります。これらは患者さんの症状、生活スタイルや吸入の得手不得手などで変わってきます。これらによる薬剤の使い分けは、呼吸器疾患の専門診療を長く行っている当院が自信をもって行います。
また吸入薬は薬の内容もさることながら、その使用方法が非常に大事になります。
いくらいい薬でも肺に届かなければ全く効果がありません。
当院では新規に吸入薬を処方するすべての方に、原則院長による「吸入方法のレクチャー」を実施しております。
これにより吸入薬の正しい使用法をお伝えするとともに、より治療効果を上げるコツ、副作用をできるだけ軽減する方法などをお伝えしております。
これらの吸入指導、吸入支援の中で薬がうまく使用できていないと判断される場合は、補助器具の提供や吸入薬の変更の提案も行います。
基本的には院長より吸入支援をさせて頂いておりますが、必要に応じて各薬局とも細やかに連携をとれる体制を整えています(当院院長は2018年に「茅ヶ崎寒川吸入支援ネットワーク」を立ち上げて、総合病院の呼吸器内科や、病院・町の薬局の薬剤師と連携をとるシステムを構築し、現在も積極的に活動を行っています)。
吸入薬を始めとする治療法や病気に関する疑問点、不安点がございましたら、なんでも結構ですのでお気軽にお聞きください!
2019.7.9 COPD(タバコ肺)について その1
2019.7.16 COPD(タバコ肺)について その2 少々つぶやき
2020.1.12 吸入薬をもらったときには・・・
2020.5.21 コロナと喫煙、そしてCOPD
2020.7.14 人にも自分にも気づかれにくい病、COPD
2020.9.11 吸入薬の落とし穴 <エリプタ編>
2020.10.7 吸入薬の落とし穴 <タービュヘイラー編>
2020.11.3 吸入薬の落とし穴 <ブリーズヘラー編>
2021.6.27 吸入薬の落とし穴 <エアゾール編>
2024.6.16 喘息って、本当に死んでしまうの?
本頁の画像の一部は環境再生保全機構より許可を得て引用しています.