医師ブログ

2019.07.09更新

昨日は、とある製薬会社様の社内講演会の講師にお招きいただき、1時間近く講演をしてきました。テーマは「COPDのキホンと実践」。人間、人に教えるときが一番勉強するときともいわれています。やはり壇上で恥はかきたくないので(笑)、国内外の最新のガイドラインや論文も読み直しました。勉強をし直すいい機会を頂けたかなと思っております。

「COPD(シー・オー・ピー・ディー)」は、日本語に訳すと「慢性閉塞性肺疾患(まんせい へいそくせい はいしっかん)」といいます。

わかりやすく言い換えると「タバコ肺」とも言われる病気です。
この病気の人は現在国内では500万人以上もいるといわれているのに、実際に診断され、治療されている人は26万人程度しかいません。たった数%です。
それは他の有名な病気と比べて、この病気の知名度が低いからと言われています。仕方がないことかもしれないのですが、一般の方がこの名前からだと、病気のことをイメージしづらいからなんじゃないか、と私は思っております。

この病気はほとんどがたばこによって起こります(たばこを吸っていた人だけではなく、その副流煙を長期間吸う環境にいた方にも起こり得ます)。たばこの煙の中の有害物質(ニコチン、タールだけじゃありません)が気管支に入ると気管支、肺に炎症を起こし、痰を増やしたり肺を壊したりします。
肺はスポンジみたいな構造ですが、肺が壊れると、そのスポンジの目が粗くなり、スカスカな肺になってしまいます。これを「肺気腫(はいきしゅ)」と呼びます。

肺気腫

中には「私は長年たばこをずっと吸っていたが何ともなくピンピンしておる!」といった方も確かにおられます。一方、周りの人より多く吸っていたわけではないのに、著しく症状が強くて困っている人もいます。
その違いは、人によってこの炎症の起きやすさがそれぞれ異なったり、もともとの肺の大きさが人によって違ったり(つまり予備能力が人によって違ったり)するからだと考えられています。

で、このような変化が起こると、気管支を支える力が弱くなり、息を吐くときに気管支がつぶれて、つまり「慢性的」に「閉塞」して空気の通りがわるくなるのです。「慢性閉塞性肺疾患=COPD」という病名の由来です。
こうなると息を吐いた時に肺が十分にしぼまないため、新たな空気を十分に吸うことができず息切れが生じます。

加えて痰も増えて空気の出入りを邪魔し、その痰を出そうと咳も増えるので、咳、痰、呼吸困難という不快な症状が続いてしまうのです。

COPD

この病気は、全身の炎症も起こすので、放っておくとどんどん進み、いろんな臓器の機能を落としてしまう怖い病気です。
しかしこの病気の知名度が低いうえに、ゆっくりと症状が進むため、ほとんどの方が症状を「年のせい」にしてしまい、気づいた時にはかなり進んでいるという状態を引き起こしやすいのです。
糖尿病、高血圧などに並ぶ「サイレントキラー」の称号にふさわしい病気です。

次回はその治療についてお話ししたいと思います。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

SEARCH

ARCHIVE