医師ブログ

2022.01.19更新

いよいよ第6波が本格的に始まりました。

当院でも発熱・感染症外来にお見えになる方がどーんと増えています。

感染力の非常に強いオミクロン株が中心となっていることもあり、当院は陰圧パーティションを導入してみました(HEPAフィルターのついたパーティションに空気を吸い込み、汚染された空気をほぼ完全に除去できます)。

発熱・感染症外来はもちろん、

発熱診察室

呼吸検査ブースにも陰圧パーティションを備え

呼気NO・モストグラフ感染対策

スパイロ感染対策

オミクロン株に備えた体制を整えてがんばっています。

とはいえ、最近の圧倒的な患者さんの増加を前に、当院のキャパも風前の灯火・・・
できるだけ皆さんも普段の感染対策を今一度ご確認いただき、一人ひとりが感染リスクを減らして頂ければ、我々も非常に助かります!


で、今回は、それでも今コロナにかかってしまった場合、どのような治療がありえるのかを見てきたいと思います。
今回は我々のクリニックのようなプライマリケアからの目線で、主に軽症の方に対し外来で行える治療のおおまかな概要を見てみたいと思います(人工呼吸やECMOなど、入院して行う治療、重症患者さんへの治療は、今回は割愛します)。

まずこちらが、現在行われている治療法のまとめになります(私は入院治療は行ってないので、もし間違いがあったら教えてください、エラい人)。

コロナ治療薬一覧

大前提として、絶対数で言えば、新型コロナ、特にオミクロン株では肺炎、呼吸不全などを起こさない「軽症」の方が多いです(とはいっても中には高熱や激しい頭痛・筋肉痛・喉の痛み、それにだるさがつよく食事がとれないなどという、「分類上は軽症」だけど「なった人にとっては人生で一番ひどい症状」といった方は少なくありません)。
そして、軽症で重症化のリスクが低い方の場合は、特別な治療は行わずに、解熱鎮痛薬や咳止めなど、症状を和らげる治療のみで対処することがほとんどです。


ここからがコロナの治療薬となります。

まずはこの冬に登場した、「コロナの飲み薬」の紹介です。

モルヌピラビル(一発じゃなかなか読めない・・・)、商品名「ラゲブリオ」がその薬となります。

これはウイルスRNAをコピーする装置(RNAポリメラーゼ)に作用し、ウイルスがRNAをコピーする際にエラー情報を書き込み、ウイルスを複製できなくしてしまう薬です(もともとはコロナ禍の前から研究されていた薬のようで、そのころからインフルエンザウイルスなど、RNAウイルス全般への効果が期待されていたようです)。

この薬は発症5日以内の投与で、重症化のリスクをおおよそ30%下げることができたとの結果が出たため、12月に日本でも適応が取れ、使えるようになりました。

これはカプセル剤で、1回4カプセル1日2回5日間内服します(カプセルは直径2cmほどで、1回に4カプセル飲むのはちょっと大変かも・・・)。

ラゲブリオ

© 2009-2021 Merck Sharp & Dohme Corp., a subsidiary of Merck & Co., Inc., Kenilworth, N.J., U.S.A. All rights reserved.

この薬は、現時点ではだれでも投与できるわけではありません。重症化のリスクが高い方のみが投与の対象となっています。

重症化リスク因子
▽61歳以上
▽活動性のがん
▽慢性腎臓病
▽COPD
▽肥満(BMI 30以上)
▽重篤な心疾患
▽糖尿病
▽ダウン症
▽脳神経疾患(多発性硬化症、ハンチントン病、重症筋無力症等)
▽重度の肝臓疾患
▽臓器移植、骨髄移植、幹細胞移植後

【COVID-19に対する薬物治療の考え方 第11報】より

一方妊婦の方には投与できないこととなっています(動物実験で催奇形性が否定できなかったためで、人間でのデータはありません。また投与された場合の「将来の」催奇形性を高めるデータはありません)。
また発症6日以上経ってしまった場合や、重症度が高い場合は投与対象外となっています。

ラゲブリオはアメリカのメルク社が開発したものですが、もうひとつ似たような作用を持つ薬が同じくアメリカのファイザー社から開発されており(商品名:バクスロピド)、こちらは重症化予防率が90%前後と、ラゲブリオよりかなり高くなっています。
日本ではつい先日申請されており、承認されれば使えるようになるでしょう。

次は「抗体カクテル療法」に使用する薬です(ここからは注射剤となります)。

まずは商品名「ロナプリーブ」(カシリビマブ/イムデビマブ)です。

これは、コロナウイルス表面の突起(スパイクタンパク質)に取りつきます。
スパイクたんぱく質は人間の組織にある受容体(ここでは主にACE2受容体)にくっつき、そこから人の細胞と合体して入り込むことで感染、増殖がおこりますが(こちらで説明したことがあります)、この薬はこのスパイクたんぱく質にくっつき、人間側の受容体とくっつかないようにする薬です。

第5波のデルタ株流行の際は非常に活躍しました。
また濃厚接触者に対する予防投与(感染確定者ではない人が、感染、発症リスクを減らすために行う治療)も行えます。

ただ残念ながらオミクロン株に対しては効果が落ちてしまうことが分かっており、今後は活躍場面が減ってしまうのかもしれません。


一方同じ抗体カクテル療法のカテゴリーの薬で、商品名「ゼビュティ」(ソトロビマブ)という薬剤があり、こちらはオミクロン株にも有効と言われています。

こちらも重症者リスクの高い方にのみが対象で、発症1週間以内に1回だけ点滴で投与します。

こちらは妊娠中のデータは少ないものの、現時点は使用可能となっています。
一方重症度が高い方には使えません。またロナプリーブのような予防投与ができません。


また、これは本来入院して行う治療でしょうが、病床がひっ迫した第5波の時は、自宅療養でもステロイド薬であるデキサメタゾンを使用しました。
こちらは酸素の状態が悪いときのみに適応となり、酸素の取り込みが悪化していない状態では使用しません。

できれば今回の波ではこの薬を自宅で使用せざるを得なくなる事態は避けたいです・・・

その他、今回は取り上げませんでしたが、ここ最近は入院で使用できる薬剤もいろいろと増えており、確実に私たちは以前よりも武器を手にすることができるようになりました。

とはいえ、やはり後遺症の問題もありできればかかるべきでない病気であることに変わりはないでしょう。


当院でも2月7日から3回目のコロナワクチン接種を開始します。

ブースター接種によりオミクロン株にも感染、重症化は予防効果が上がることはわかっています。
スタートが第6波に間に合わなかったのは返す返すも残念ですが、希望される一人でも多くの方に、一日でも早くワクチンを接種をできるように、自分のお尻を叩いてがんばります!

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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