医師ブログ

2021.08.11更新

本当は楽しい夏休みの真っ最中ですが、残念ながら新型コロナの蔓延が続いています。
茅ヶ崎でも連日1日数十人程度の陽性者が報告され、当院でも8月に入り、PCRで陽性となる方が増えてきております。
喜んでいいのかどうかはわかりませんが、前回の記事公開後さらに当院のホームページをご覧いただく方が数倍に増え、あっという間に月200万PVに達してしまいました。
世の中の関心事が本当にコロナ一色であることをまざまざと実感します・・・

一方ワクチン接種も進んでおりますが、こちらのページにも記載した通り、残念ながら国や自治体からのワクチンの納入が8月に入り極端に減ってきてしまいました・・・
当院では何とか8月中の接種枠は作りましたが、現時点では9月以降、なかなか十分なワクチン接種の枠を作ることができそうにありません。
うちのような零細医療機関には何ともし難い現実なのですが、その中でも何とか少しでもワクチンを確保し、希望される方に1日でも早く接種したいと思います。
最新情報はこちらのページや、当院のLINE公式アカウントにてお伝えいたしますのでご確認ください。

さて今、世の中に大きく意見が割れていることがあります。

若者にとって「コロナは風邪」なのかどうか。
そして「コロナワクチンを打つ必要はない」のかどうか、です。


まずは「コロナは風邪」なのか、考えてみます。

確かに、新型コロナ全体でみると、死亡者は高齢者に偏っており、若い方に死亡者が少ないのは事実です。
しかし、コロナの怖いところは、やはり肺炎や血栓症などで呼吸状態の悪化を起こしうること、それに後遺症を残してしまいやすいところです。

アメリカのテキサス州の医療施設で新型コロナと診断された18~29歳の1853人を、診断から30日間追跡したデータがあります。
これは2020年3~12月までのデータで、アメリカでもまだワクチン接種が始まってない状態でした。

結果ですが、17%の若者が肺炎を発症し、4.6%の若者が呼吸不全になったとのことでした。
その一方、無症状の若者も41%いたとのことでした。Sandoval M, Nguyen DT, Vahidy FS, Graviss EA (2021) Risk factors for severity of COVID-19 in hospital patients age 18–29 years. PLOS ONE 16(7): e0255544.
日本との医療アクセスの違いもあるため、そのままは当てはまらないかもしれませんが、若年者のワクチン接種が完了していない今の日本の現状の参考にはなるのかと思います。

このデータから言えるのは、この新型コロナの症状の幅の広さです。
通常今のインフルエンザでは、ウイルス性肺炎をきたすことはめったにありませんし(高齢者のインフルエンザ感染をきっかけにした2次性の細菌性肺炎は少なくないですが)、ウイルス感染そのもので呼吸不全になるような症例にもほとんど出会いません(前述の肺炎のほか、基礎疾患となる喘息、COPD、心不全などがインフルエンザ感染後に悪化して呼吸不全になることは少なからずあります)。

あくまでイメージ図ですが、インフルエンザと新型コロナの患者分布のイメージ図を作ってみました(実データによるものではありません)。


コロナとインフルエンザの重症度分布

ポイントは先ほどもお話しした、インフルエンザに比べての新型コロナの症状の分布の広さです。


コロナの場合、若い人ではインフルエンザより軽く済んだり、無症状感染者と診断される人が格段に多い一方インフルエンザよりは症状が重くなる人もいらっしゃいます。
これが年齢層が上がってくるとコロナで中等症、重症になる人の割合が増えてきますが、一方微熱程度で済んでしまい、インフルエンザより症状が軽い人もいます。
高齢者になるとコロナ同様、インフルエンザでも重症になりやすくなります(ただこの場合は先ほどもお話しした、インフルエンザ感染をきっかけとした肺炎や基礎疾患の悪化が多く、ウイルスそのものの影響による新型コロナの重症化とは様相が違う印象です)。

コロナに自分がかかったとき、この点のどこに自分が位置するのかということは、なってみるまでわかりません(若くて基礎疾患がなくても、必ずしも無症状、軽症で済むとは限りません。命には関わらないとしても・・・)。
たまたま左側の点に位置した人だけの「コロナは楽勝だったよ」の体験談だけで、自分も同じ体験ができるかはわからないのです。

また、今のインフルエンザは通常ほとんど後遺症なく回復しますが、新型コロナは後遺症をしばしば残すとされています。
これらはLong COVIDと呼ばれている現象ですが、最近の報告だと、Long COVIDが起こる頻度は、コロナの感染したときの症状の強さにはあまり影響せず(つまり先ほどの図で左よりの点だったとしても後遺症は出うるということです)、しかも一番生じやすい年齢層は30~40代であるというデータも報告されていますDennis A, Wamil M, Kapur S, et al. Multi-organ impairment in low-risk individuals with long COVID. MedRxiv 2020;10.14.20212555
イギリスの国家機関からの報告では、発症から5週間たった後でも息切れが4.6%残っていたとされており、別の調査によっては40%以上も残ると報告されている論文もあります。
この中には肺炎がなくても息切れの後遺症が残る人が数多くおり、肺の血管内に非常に小さい血栓が作られることが原因となりうることが示唆されていますHarry Crook, Sanara Raza, Joseph Nowell, Megan Young, Paul Edison Long covid-mechanisms, risk factors, and managementNEW BMJ. 2021 Jul 26;374:n1648. doi: 10.1136/bmj.n1648.
これを証明するように、罹患から60日経った人の21%で胸痛がみられこれらの中には心筋がダメージを受けることで上昇する「トロポニン値」が上昇している例が少なからず見られ、こちらも小さな血栓症による心筋炎が原因の一つではないかと考えられています。
若いスポーツ選手など、極めて健常な人も例外にはなっていないとのことで、新型コロナ後遺症の怖さを示しています。

先ほどのイギリスの報告では、その他にも感染5週後に残る慢性疲労が11.9%、頭痛が10.1%、味覚嗅覚障害が8.2%などと報告されています。
また頭に霧がかかったようになり思考力、意欲が低下する「ブレインフォグ:脳の霧」や、うつ状態、認知機能低下など、認知面でもさまざまな後遺症が問題となっており、海外では現在これらの治療の治験が行われているところです。

このようなことは、今のインフルエンザや他の風邪には決して起こらないことです。

私は現在、中等症以上の患者さんの治療はしていませんが、定期的に総合病院の呼吸器内科に勤務されている先生方から逐一現況をお伺いしています。
また、呼吸器科を主としたプライマリケア医として発熱、呼吸器外来は積極的に行い、新型コロナ診断の入り口は担っています。

そのため、おぼろげながらも新型コロナ診療の全体像は見ているつもりですが、やはりその立場から見ても、とてもとても「コロナは風邪!」とは言えないかな、というのが私の実感です。

そしてここで、ワクチンの意義について考えてみます。

ワクチンはこの点を左よりにすることができるツールです。
そして、95%の発症抑制効果により、Long COVIDのリスクも減らせる可能性があります。

一方、新しいワクチンであり、長期的な安全性については確かにまだわからない点も多いです。
それを恐れてワクチンを避けるのは、それも選択の一つとして否定されるべきものではありません。

ただ、コロナにかかった場合の長期的な経過もわかりませんし、コロナにかかると上に挙げたようないろいろな不都合が起こることは、もうすでにわかっています。
ワクチンによる血栓症も確かにありうることですし恐れるべきですが、コロナにかかることによる血栓症の発症の方がはるかに可能性としては高いわけです。

また今後外来で使える治療薬が出たとしても、その有効性、安全性はワクチンと同様、これから検討されるものになります(ワクチンだけが危なくて、治療薬が絶対安全ということはないのです)。
治療薬はコロナ制圧の大事なツールになり得ますが、まだその威力は未知数です。

世界で2億人以上が感染してしまい、まだまだ収まらない現状を考えると、おそらく少なくとも今後数年は、コロナがなくなることはないと思われます。
ワクチンを接種しない場合、その数年の間に一度はコロナにかかる可能性は非常に高いと思われます。

すると、ワクチンを打つべきがどうかという問いは、「ワクチンを打った時のデメリット」「ワクチンを打たなかったときのデメリット=ワクチンなしでコロナにかかることのデメリットという視点で考えると、答えが出やすくなるのかもしれません。
私は個人的にはこの比較でワクチンを打った方がいいと思っている側の人間ですが、この比較をした結果、ワクチンを打たないと決めたのであればそれも間違いではないとは思います。
が、ただしその場合は正しい感染対策を今後しっかりと継続する必要があることは知っておいていただきたいと思います。

そして、ワクチンを打つ!と決めたら、この前のブログでもお話しした通り、「打てる時に打てる物を打つ」という姿勢で接種に臨んでいただければと思います。

そのためにも当院は一人でも多くの希望される方のワクチン接種を行いたいと思っています。
ワクチンが入ってくれば、いつでも準備はできています!
1日も早く、1本でも多くワクチンが届くことを、切に願っています。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信