医師ブログ

2020.04.16更新

当院には喘息の患者さんが多数お見えになります。

喘息の患者さんが今心配されていることは、喘息で新型コロナウイルスにかかりやすくなるのか?重症化するのか?といったことだと思います。
現時点(2020年4月16日時点)では、喘息があることで、または喘息の治療をしていることで新型コロナウイルスにかかりやすくなるというデータはありません。また感染した場合に重症な新型コロナウイルス肺炎になりやすくなるということに関しては否定的な論文が1本出ており、それ以外にはデータがありません。(Clinical characteristics of 140 patients infected with SARS-CoV-2 in Wuhan, ChinaAllergy. 2020 Feb 19.)
つまり現時点では、通常の喘息が新型コロナウイルスの感染や増悪に関与するとは言えないとは言えると思います。

ただし喘息の調子が悪くなる原因として一番に挙げられるのは風邪を始めとする感染症です。
そして喘息の増悪は治療が不十分だとより起こりやすくなり、その増悪もより重症となりやすいことは以前からわかっています。新型コロナウイルスに感染し呼吸状態が悪化した時、同時に喘息発作を起こしてしまうと更なる呼吸状態の悪化につながるリスクはあり得ると思います。
ですので、喘息の方にとって、今回のことで一番のリスクになりうることは、治療が不十分であったり、中断されていたりで(一見症状がないとしても)しっかりとコントロールされていないこと、ということになります。

 では「喘息がコントロールされている」、とはどのような状態をいうのでしょうか。

よく「時々咳が出たりヒューヒューしたりすることがあるけど、我慢できるから大丈夫」とか、「苦しくなることがあるけど発作止めを使えば治まるから大丈夫」などという方がいらっしゃいます。
また「吸入薬を使ったら治ったから吸入を止めた」というようにお話しになる方も実に多くいらっしゃいます(喘息は基本的に治る病気ではなく、見えなくても気道の炎症は常に起きており、常に炎症を抑え続ける必要がある病気です)

これらはすべて治療が不十分な状態であり、今回の新型コロナ禍でも十分ハイリスクになりうる状態です。

喘息のコントロールを簡単に把握する質問票として「喘息コントロールテスト(ACT)」というものがあります。これは普段の症状や生活状況に関する5項目の質問票に答えることで判断できるものです。
25点満点で評価しますが、基本は一年中25点であることが必要です(1点でも減点があると完全なコントロールとは言えず、増悪のリスクは高まります)。

 喘息コントロールテスト(ACT:アクト)

喘息コントロールテスト(ACT)

こちらから環境再生保全機構のACTチェックのページに飛ぶことができます

また喘息の治療の基本薬は吸入ステロイド薬です。
これに関しても時々「ステロイド」との響きで怖がる方がいらっしゃいますが、ステロイド薬の副作用は主に体内のホルモンバランスを崩すことで起こるものであり、これは全身投与(内服や注射)を長期に(約2週間以上)続けることで出てくるものです。
吸入薬ではステロイドの量が内服に比べて非常に少ない上に、薬剤は肺でとどまりほとんど血中には届かないため、通常の使用でまず問題になることはありません。指示通りにしっかりと吸入治療を続けましょう。

なお、吸入ステロイドの中で、シクレソニド(商品名:オルベスコ)という薬剤が新型コロナ肺炎3例に対して有効であったという報告が日本から出されており、これを確認する臨床試験が日本と韓国で始まっております。

ただこの薬剤に予防の効果は検討も検証もされていません。
この薬剤は粒子径が非常に小さく、肺の末梢に喘息の炎症が強い方や声枯れの出やすい方に非常に有用な選択肢として使用されています。
しかしもともとそれほど流通量のある薬剤ではなく、需要が高まると容易に供給不足に陥り、本来必要とされる患者さんに届かなくなる危険性が高くなると考えられるため、医療側も患者側も安易な薬剤選択は厳に慎むべきです。

 

他に注意すべき点としては、現在ネブライザー治療はエアロゾルを広げるリスクがあるため、感染が蔓延している現在ではやや感染の危険度が上がります。
ご自宅でネブライザーを使用されており多少でも感染が否定できない場合は、可能なら薬剤を変更するか、どうしても症状をコントロールするために使用しなければならないときは窓を開け換気をよくしてなるべく空気の流れを作り、使用する方以外はできるだけ離れていたほうがいいでしょう。

また重症な喘息の方で、内服のステロイドを連日使用している方は免疫力の低下を来すので、感染を起こすリスクは高くなるかもしれません(数日など短期の使用はそこまでリスクにはならないと思います)。
吸入など通常の治療を「正しく」治療を行っていても症状がコントロールできていない場合は、生物学的製剤や気管支鏡を用いた治療もあるので、ステロイド連日内服の前に検討すべきかもしれません。専門医に相談しましょう。

喘息の治療はここ数年も常に進化を続けており、新しい治療も多く出ております。また他の疾患と違い、薬の使用法のコツをつかむことが治療結果に大きく影響します。
ACTが常に25点でない方は、現状の治療のままでも、何かしらの改善点を知り実行することで状態が良くなることが少なくありません。

少しでも気になる方は主治医の先生や、より喘息に詳しい呼吸器、アレルギー専門医に相談してみましょう。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

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