医師ブログ

2025.01.25更新

なんか今年は、花粉症が始まるのが早いみたいです・・・

当院にお越しの方でも、今週から「なんだか目がかゆい・・・」「鼻がムズムズする・・・」「くしゃみが・・・」という人が増えてきているようです。


神奈川県の観測によると、今年は昨年の猛暑の影響スギの木の花の数(着花点数と言います)が、平均67.3点で、昨年の46.1点、平年の46.6点大幅に上回っているとのことです。
花粉飛散量

神奈川県HPより


これは、今年の花粉飛散量が多くなるという予想の強い根拠となります・・・

実際、すでに花粉は観測され始めていて、データ上も1月上旬にしては花粉の飛散が多くなっているようです。


以前こちらのブログ(2023.1.21 2023年春、スギ花粉 大飛散だってよ・・・ 治療はいつ開始したらいい?)でもお話しした通り、花粉症の治療は「初期療法」といって、症状が本格的に始まる「少し前」から始めたほうが有効なことが多いです。
すでに花粉が飛び始めている今年は、もうそろそろ対策をした方がいい時期になっています。


とはいえど、まだまだ感染症など、医療機関の受診を希望される方も多く、簡単に病院にかかれない昨今です・・・

2年前もそんな私たちのせめてもの罪滅ぼしに、このような記事を書いています。

2021.3.21 市販薬で花粉症を治すときに、知っておきたいこと
薬局で買える、花粉症などアレルギー症状に対する薬の選ぶコツや注意点を、内服薬、点鼻薬にわけて記載しています。

2023.2.10 薬だけじゃない!自分でできる、シーズン中に実践したい花粉症対策
薬以外の花粉症対策、マスクやメガネ・サングラスの活用、花粉のつきにくい服装、空気清浄機や顔の周りに塗るワセリンなどについてお話ししています。

まずはこちらの記事を参考にしていただきたいのですが、今回は、この情報をさらに補完する、自力でもできる、より踏み込んだ対策として、2年ぶりの続編!を書いてみようかと思います。


まずは空気をきれいにしよう

アレルギー症状を起こすのは花粉だけではありません。
家の中にあるほこりなどのハウスダストも症状の原因になります。

そのため換気は必要ですが、窓を開けると室内に花粉が入り込みやすくなります。
換気をしたいときは、花粉の飛散量の少ない早朝や夜にしておきましょう。

HEPAフィルターのついている空気清浄機を使用すれば、花粉をある程度除去することができるので、部屋の中の空気の流れの良いところに空気清浄機を置きましょう。
空気清浄機

また家の中で一番花粉にさらされやすいのが玄関です。

玄関にも空気清浄機を置ければより万全です!

空気清浄機やエアコンのフィルターをこまめに掃除・交換しておかないと、せっかくひっかけた花粉がまた部屋の中にまき散らされてしまいます。
忘れずに掃除しておきましょう。


掃除機のかけ方も大事

掃除マッチョ
花粉がついたホコリが床に落ちていると、舞い上がって症状の原因となってしまいます。

時々掃除機をかけるようにしましょう。

掃除機をかける際は、ホコリを舞い上げないように、低速モードやゆっくり動かすことを意識して、必要以上にほこりが舞い上がらないようにしましょう。
また掃除は決して楽な仕事ではありませんが、毎日でなくとも、週に2~3回程度こまめに掃除するだけでも効果的です。


掃除の順番を意識してみる

掃除の順番も、余計なアレルゲンを吸わないためには案外大事な点です。

まずは高い位置(棚の上など)からほこりをはたき落とし、その後床の掃除機がけをするなど、“上→下”の順で掃除すると花粉・ほこりの再浮遊を減らせます。


加湿も大事、でもしすぎは注意

粘膜は乾燥すると、その機能を落としてしまいます。

花粉シーズンは空気が乾燥しやすいこともあり、鼻や喉の粘膜が敏感になりがちです。
適度に加湿すると粘膜の乾燥を防ぎ、花粉による刺激をやわらげることができます。


ただあまり湿度が高くなるとカビや雑菌が生えてしまいます。
下手するとこれらによって余計ひどいアレルギー症状や咳の症状が出てしまうことにもなりかねません。

湿度が高くなりすぎないよう、50~60%程度までで管理しましょう。

また定期的な水の交換機械の洗浄も、余計なカビや雑菌を空気中にまき散らさないために大事なポイントです。


鼻うがいにもトライしてみよう!

鼻うがい

薬を使った治療の他にも、鼻うがいなどを行うことで症状が改善できるケースも少なくありません。

鼻うがいは、鼻から人間の体液と同じ食塩濃度(生理食塩水といいます)の食塩水を流し込み、鼻の奥やのどの奥を洗い流す方法です。

鼻の粘膜に付着したアレルゲンを洗い流すことができるのと同時に、鼻をかんでも出てきづらい、粘っこい鼻水も洗い流すことができます。

またこの粘っこい鼻水は細菌繁殖の素地になりやすいので、これを洗い流すことで、副鼻腔炎などの感染症に進展することを予防できるというメリットもあります。

鼻うがいをするときは、できれば200ml以上の、比較的大量の水で洗い流すタイプの商品を選んだ方がいいでしょう。
また体温と同じ37℃の生理食塩水にしておくと、刺激もほとんどありません(子どもでも簡単に続けられちゃいます)

塩分濃度が合わなかったり、冷たすぎたりすると鼻の奥がツーンとしてしまいますので注意。

当院でもニールメッド社さんの「サイナスリンス」を受付で販売しています。
付属のボトルの線まで水をいれて、個包装になっている塩を溶かすと簡単に生理食塩水が作れる優れモノです。


花粉が付いちゃったときは・・・

それでも外出していると、花粉を完全に避けることは難しいです。

もしも花粉を浴びてしまったなと感じた場合、コンビニや近くのトイレで顔を洗ったり、濡れティッシュで目の周りや鼻周辺をやさしく拭いてあげるだけでも症状が軽くなることがあります。

乾いたティッシュで擦るより、濡れたものでやさしく拭くほうが粘膜の刺激が少なく済みます。


睡眠も大事です

睡眠

睡眠不足は免疫バランスを崩し、花粉症の症状を悪化させる原因のひとつと考えられています。
特に忙しくて病院に行けないような方は、まずは睡眠時間の確保から意識しましょう(と書いている今の時間が午前3時なのですが・・・)


過度なストレスには注意

ストレス
ストレス
も免疫機能に影響を与え、花粉症が悪化する要因になる
ことがあります。

(なかなか難しい話ではありますが)ストレスをためすぎずに、定期的に心身をリフレッシュさせる時間を設けましょう。


鼻づまりや目のかゆみに効くツボ

ツボ

迎香(げいこう)
という、小鼻の両脇(ほうれい線のあたり)にあるツボを押すと、鼻周りの血流が改善し、鼻づまりがやわらぐといわれています。
指の腹でやさしく押し、5~10秒キープして離すと、血行がよくなり、呼吸がしやすくなる場合があります。

また、目の症状に関しては、目頭付近にある清明(せいめい)というツボは、目の疲れやかゆみに効果的とされます。
指の腹でゆっくりと刺激することで、目の周りがすっきりする場合があります。


食事でもできる花粉症対策

最後に食事、栄養面にも触れておきましょう。

乳製品

ヨーグルト、チーズ
などに含まれる乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌は、腸内環境を整える効果が期待できるかもしれません。
また野菜や海藻、きのこ類などに含まれる食物繊維も、腸内環境の改善に役立ちます。

腸内環境が整うことで、免疫機能のバランスもとりやすくなると考えられています。
ただし、すぐに効果が出るわけではないので、毎日少しずつ継続して摂ることがポイントです。

ポリフェノールの一種であるケルセチン抗酸化作用をもち、アレルギー反応を抑える可能性が指摘されています。
玉ねぎリンゴを日常的に食べることで、少しずつ摂取できます。
また、お茶にもポリフェノールが含まれるので、水分を取る際にお茶を中心にするといいかもしれません。

粘膜を健康に保つビタミンA(にんじん、かぼちゃ、ほうれん草)、抗酸化作用や免疫機能の維持に役立つビタミンC(柑橘類、イチゴ、ブロッコリー)ビタミンE(ナッツ類、アボカド、ウナギ)などもアレルギー症状を抑えてくれるといわれています。

バランスのいい食事で、日ごろからいろいろな栄養素を取るようにしましょう。


もちろん当院は治療をがんばります!

今年もいよいよ迫ってきた、本格的な花粉症の季節。

花粉症の方はうんざりする数カ月ですが、対処方法を知っているだけでも、幾分かは心強く思えるかと思います。
そして、気温は今後底を打って、寒さも徐々に緩んでくる、ある意味過ごしやすい時期になるともいえます。

ここでお話ししたことのいくつかでも取り入れてもらって、是非これからの季節、快適でハッピーな春にしていただきたいと思います。

そしてもちろん、花粉症の治療のメインはやはり適切な治療薬です。

当院でもできるだけ枠をご用意して皆様をお迎えして、アレルギー専門医としてガチンコで治療に取り組んでいます。
症状に困っている方、今後症状が出そうで不安になられている方は、お気軽にご相談下さい!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.01.01更新

あけましておめでとうございます!

昨年は、4月から呼吸器科医師を2人→5人と大増員し、より皆様のお悩みにお応えできるような体制づくりを致しました。

その結果、当初はかなり予約枠にも余裕が出てきましたが、その余裕も月を経るごとに徐々に減っていき・・・

調べてみたら、4月から12月にかけ、1日平均でご来院いただく患者様が30人ほど増えていました。

当院をご愛顧いただき、大変ありがたいと思うと同時に、受診される皆さまには、混雑や予約の取りづらさで再びご迷惑をお掛けしていることをお詫びいたします・・・

それでも、「他院でなかなか良くならなかった咳がようやく良くなった」「何年も苦しんでいた症状から解放された」「こんな重要な治療ポイント、今まで聞いたことがなかった」などと、皆さまからのありがたいお言葉を無数に頂いておりますので、できれば患者様の受診制限は行いたくなく、一人でも多くの困っている方の力になりたいとの思いは今年も変わりありません。

そのため、今年もさらに皆様が受診しやすくなるようにすべく、現在鋭意対策を行っております。
公表できる状態になりましたら順次発表いたしますので、それまでお待ちください!!


インフルエンザ、いよいよピークへ・・・

さて、インフルエンザ、前回ブログよりさらに大変なことになっています・・・

インフル202452

やはり今シーズンは接種率が例年より低かったことに加え、流行開始が早く、多くの方が接種未完了の状態で流行が開始してしまったことから、流行が大規模になり、茅ヶ崎の週当たりの定点インフルエンザ感染者数が76.5に達しました。

10を超えると注意報、30を超えると警報となる基準で70越え・・・

案の定、年末の発熱・感染症外来は、Web予約が連日1分以内に埋まり、電話もなかなか繋がらない状況になってしまいました。


それでもワクチン忌避は少なくない・・・


それでも、インフルエンザのワクチンについて、懐疑的な見方をされる方は少なくありません。

例えば「今までインフルエンザに罹ったことがないから必要ないと思っている」とか、「インフルエンザワクチンを打った時にインフルエンザに罹ったので信用していない」とかというご意見です(陰謀論についてはここでは触れません)。

インフルエンザワクチンについて打つ、打たないはその人の自由ではあるのですが、やはり科学的に正しく考えて頂いたうえで、判断はしていただきたいのです。


そこで、今回は、「インフルエンザワクチン」は、本当に有効なのか、そしてそれはどのような根拠から言えるのかということについてお話してみたいと思います。


色んなところで見る「論文」の危なさ

さて今、週刊誌やYoutube、SNSを見ると、玉石混合の様々な情報が載っています。
それらの情報は、どれも一見すると、筋が通っているように見えます。

しかし、それらの情報もよく見てみると、いわゆる「落とし穴」が多く潜んでいることがわかります。

そして、論文に読み慣れていなければ、それには気づかないようにうまーく隠されていることが多いのです。


つまりこれは、「結論ありき」でデータの「見せ方」を変えて、自分の言いたい結論にもっていこうとしている人が書いているケースがあるということなのです。


まさに(ちょっと言葉はキツいですが・・・)「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」ということです。


ですので、これらのワナに引っかからないようにするには、まず「論文」をどうやって解釈していくか、その基本を知っていなければならないのです(専門的に詳しく知る必要はありませんが、昔と比にならない情報量が日々飛び交って、色んな意見がすぐに耳に入ってくるこの時代、自分を守るためにも最低限の知識は世の中のすべての方が持っておかなければならない時代になってしまったと感じています)。

研究の方法によって信頼度は変わってくる!

さて、論文というのは、以下の順で信頼度が上がっていくというルールがあります。

エビデンスレベル
※なお、これは「エビデンスピラミッド」と呼ばれる図を、私がごくごく簡便にまとめ直したものです。
本来はもう少し細かく分類されますし、その研究の性格によってはあえて信頼度の低い手法の方が結果に近づきやすいことも少なくなく、信頼度が低い=間違った研究であるというわけではないということに留意する必要はあります。

この図について、ピラミッドの下から一つずつ、簡単に説明してみようと思います。

信頼度論外:個人の感想

例:「ワクチンは意味がない、なぜならそんな気がするからだ!」

これはそもそも論文ではありません。ガン無視してOK!


信頼度レベル6:専門家の意見、症例報告

例:「〇〇大学の△△教授は、この治療法が一番効果があると言っている」
例:「△△という治療を行ったら〇〇病の症状が改善した」

この「専門家」が、その分野の一般的な「エキスパート」でなければ、信頼度は「論外」に落ちます(SNSや週刊誌では、「その分野のエキスパート」ではなく、「何か意図を持った別の分野の人」が、ただ自分の言いたい意見を述べている「インフルエンサー」にしか過ぎないケースをよく見かけます。つまりこういうのも、ガン無視でOK!)。

また、症例報告は、偶然性や他のバイアスが関わっている可能性も大いに残ります。
ただ同じような症例報告が複数集まってくると、信頼度レベルが4~5まで上がります。


信頼度レベル5:ケースコントロール


病気のある人とない人で、病気になる前には、どんな要因が異なっていたかを後ろ向きに調べる

例:「〇〇病のある人は若いころたばこを吸っていた→だからタバコは〇〇病のリスクになる」

その要因の他にも、「別の要因があるかもしれない」というバイアスがかかることがあり得ます
またこの研究は、あくまで病気になった方へのインタビューで成り立つ研究ですので、その人の記憶力があいまいになったり、思い込みが出たりするケースもあり、これが大きなバイアスにつながることがあります。

信頼度レベル4:コホート研究

ある一定の(似たような)属性の人を前向きに追って、一定期間後に病気になったかどうかをみる
例:「□□市の成人を10年追跡して、その中のたばこを吸わなかった人は、吸った人に比べて〇〇病になる確率が△%下がった」

ケースコントロールは後ろ向きだがコホート研究は前向き。実際にその過程を研究側が追っていける分、ケースコントロールよりはバイアスがかかりにくいのが特徴です。
ただし希少疾患には不向き(長期間追っても、本当に知りたい「病気になる人」はほとんど出てこないから)。


信頼度レベル3:非ランダム化比較試験

治療をする群(治療群)治療をしない群(対照群)に分けて、その差を見ることで治療の効果を調べる。
ただし、その分け方をランダムに行わず、他の基準で分ける。
例:「ある地域でワクチンを打った学校とそうでない学校で、〇〇病の発症率を比べてワクチンの効果を調べる」

※分け方がランダム化されていないので、背景要因(年齢性別、健康状態、生活習慣、病気に対する姿勢など)の影響を受ける可能性がありそこで生じるバイアスを正しく処理するしないと間違った結論を導き出してしまう可能性があります。

信頼度レベル2:ランダム化比較試験

ある集団を集めて、それぞれをランダムに治療をする群(治療群)治療をしない群(対照群)に分けて、その差を見ることで治療の効果を調べる。
例:「ワクチンを打つ群と打たない群に分けて、その感染率や重症化率を調べる」

※患者が自分が治療群と対照群どっちかに入っているのかがわからないのが盲検、医療者もわからないのが二重盲検。
この順番にバイアスは入りづらくなるので、より信頼度は上がります。


信頼度レベル1:システマティックレビュー、メタ解析


質の高い研究を世界中から集めて、データを大きくして解析しなおしたもの。
「システマティックレビュー」は全体の傾向を出し、「メタ解析」はそれを数値化します。
例:「ある抗がん剤〇〇薬が効くかどうか、世界中の研究から質の高い研究10本を選んで、その結論を割り出す」

この研究方法が問答無用、一番信頼度の高い研究
となるわけです。



「ゴールポスト」は動かさない!

そして、ここがデータを読むのに一番重要なところです。

研究はあくまで、最初にルール(何を調べる予定か、こうなったら感染、こうなったら重症化という定義)をあらかじめ決めておくことが超大事です。
そして、そのルール通りに研究を行って、はじめに設定した結論に達したか否かを判定するようにするのです。

調査が終了した後に、最初に決めた結論と別の結論を出そうとさかのぼってデータを解釈しなおす行為は、基本ダメです。

(上での落とし穴の件でお話したように)意図した結果を出したいがために、出された数字に都合の良い解釈を入れてしまうことができるからです。

もちろん調査の結果から、何か別の結論が見えてきそうになることもありますが、その場合はその結論が出るかどうかでデザインし直した、再度の調査が必要です。

 


インフルワクチンは、質の高い情報で感染予防のデータあり!

さて、インフルエンザワクチンの結果では、「ランダム化比較試験を主体にメタ解析」した、信頼度レベル1の(つまり信頼度最高の)論文があります。Efficacy and effectiveness of influenza vaccines: a systematic review and meta-analysis: Lancet Infect Dis. 2012 Jan;12(1):36-44.

ここでは、過去の5700本以上の論文から31本の論文を厳選して、そのデータをまとめて解析し直したもので、「成人ではワクチンを作った株(つまりシーズン前に流行ると予想した株)と、実際の流行株が一致しているシーズンでは、ワクチンを接種することで感染リスクが59%下がることがわかりました。


高齢者では、主にコホート研究の「メタ解析」になり(こちらも「メタ解析」をしているので、信頼度レベルは1~2相当まで上がります)、こちらは60%以上の感染予防効果がありましたが、ランダム化比較試験ではないので、解釈に多少幅はあるかもしれません。

一方、ケースコントロールの「メタ解析」にはなりますが、(おおよそ信頼度レベル3に相当します)重症化予防効果(入院を予防する効果)について、18~65歳の方の予防率は51%、65歳以上の方で37%とのデータが出ていますEffectiveness of influenza vaccines in preventing severe influenza illness among adults: A systematic review and meta-analysis of test-negative design case-control stud18~65歳の方の予防率は51%ies: J Infect. 2017 Nov;75(5):381-394.

そして、これらの結果は、ワクチンの株と流行株が一致しているかどうかで大きく変わる、とのことでした。



今年のワクチンは、今のところ「当たり」!

さて、今年流行っている株はH1N1 pdm09という株で、2009年の新型インフルパンデミックの時に初登場した株です。
この株は感染力が強く、症状も比較的強めにでるといわれています。

今年のインフルエンザワクチンは、しっかりこの株に対応したワクチンになっています。

ということで、インフルエンザワクチンの効果は、信頼できるデータでしっかりと示すことができるのです!(決して陰謀論でも、都市伝説でもありません・・・)


もちろんワクチンは「100%防ぐ訳」ではないけれど・・・

もちろん、ワクチンは、インフルエンザ感染のすべてを予防するわけではありません。

数字上は半分弱の感染リスクは残るわけですし、今年流行っているH1N1 pdm09は、より感染力が高いと言われていますので、ご家族や親しい友達、同僚などが近くにいれば、防ぎきれないこともあるでしょう。

ただ、特に、喘息やCOPDなど、呼吸器系の病気を持っている方は、かかった時の被害の大きさが変わる可能性が高いです(これを具体的に示すデータはありませんが、感染予防効果、重症化予防効果の確かなデータから予想は立てられること、また私の長年の実感からそう考えています。確かに「信頼度レベル6」のエビデンスにはなるのですが・・・それも皆さんが私を「専門家」に入れて頂ければですが・・・

ワクチンは、感染そのものを防ぐ事より、感染後の症状悪化(特に喘息などの悪化)の効果の方が大事と考えて頂きたいのです。

実際当院でも、感染したものの10〜11月に接種を完了しており、助かった」とおっしゃっている患者さんが非常に多くいらっしゃいます。


呼吸器疾患の方は1月でもまだ間に合う!ぜひ接種を!

11月までは接種ご希望がなかった方でも、流行が始まった12月以降、改めてご希望いただく方が増えてきました。

当院ではなるべく皆様に接種機会を提供すべく、入荷があるうちは接種を受け付けようと思っております。

かかりつけの方に関しては、受診当日の接種はご予約なしで可能です。
また比較的ワクチン在庫数、予約枠ともにまだ余裕がありますので、特にかかりつけの方でなくても、当日お越し頂ければ接種は可能です(希望の方が急激に増えたら変更があるかもしれません)。


今からでもまだ意味はあります!
呼吸器疾患をお持ちの方は、ぜひお早目の接種をご検討ください!


(さいごに。ワクチンを打った自治体と打っていない自治体で感染率が変わらなかったためにワクチンの効果が乏しいとの結論を導き出した、本邦の30年位以上前の非ランダム化比較試験(信頼度レベル3)の論文がありますが、こちらはそもそもインフルエンザを診断できなかった時代の論文で、休んだり熱を出したりしたことをインフルエンザ発症とみなさざるを得ず、結果の正確性に乏しかったこと(時代的にしょうがないですけどね)、それにデータの抽出方法に恣意的な点が否定できずに適切とは言えなかったこと(こっちは問題です)など、様々な問題点を指摘され、現在ではその信頼度はかなり低いと見なされるようになりました(実はこの論文の生データを読み込むと、むしろワクチンの有効性が言えちゃいそうですらいます・・・)。にもかかわらず週刊誌やSNSでは、恣意的な結論を導き出したい論者によって、未だに多く引用されているようですので、くれぐれもご注意ください。)

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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