医師ブログ

2023.04.17更新

今年の花粉はやはり飛散量が多く、喘息やアレルギーをお持ちの方にはつらい春でした。
現在もまだヒノキの花粉の影響が見られますが、しかしこれもそろそろピークを越えて、花粉症の季節も終わりに差し掛かっています。


ところが、今年はこの季節からまたアレルギー、喘息の症状が悪化してしまう方が続出しています・・・


その原因にはいろいろあるのでしょうが、多くの方がおっしゃっていたのが、「黄砂のニュースを聞いた頃から症状が悪化した」ということでした。


ご存知の通り、4月12日から13日にかけ黄砂の大量飛散があり、普段あまり黄砂の飛散が観測されない東京でも、4月としては16年ぶりの黄砂観測となったようでした。
そういえば私の紺色の車も、今年はやけに黄色くなります。すでに23年頑張っている私の車が、より一層年季が入ってしまったように見えてしまいました・・・(どうせ黄色くなるので洗車はあきらめましたw)


今回はこの「黄砂」と、喘息やアレルギーの関係についてお話ししてみます。

 

黄砂は、中国やモンゴルの内陸部の乾燥地域で巻き上がった砂嵐が起源です。
これらが空に舞い上がり、上空の偏西風に乗って東へと運ばれ、韓国や日本に到達します。

春に多く観測されやすいのですが、これは砂漠に積もった雪が春になると溶け、その後乾燥期を迎え砂漠から砂が舞い上がりやすくなること、それにこの季節にはこの地域に強い風が吹きやすくなることが関連するようです。
またこの砂嵐を日本に運ぶ偏西風が、春になると日本上空を通過しやすくなるのも要因だそうです。

この黄砂は、数千kmを飛んでこれるように非常に細かい砂で、直径は約5μmと言われ、約30μmの花粉より小さいのが特徴です。

この直径5μmという大きさが呼吸器系には大きな問題となります。

直径3~5μmの粒子は、気管支の奥に一番沈着しやすい直径なのです。
喘息やCOPDの治療として使われるパウダー系の吸入薬は、この特性を利用して、できるだけパウダーの粉をこの直径に近づけて作っているほどです。

またこの砂は、数千kmの旅をする間、様々な物質を付着してきます。

中国の都市を飛来する間に、有機金属やタール、カビ・細菌などの微生物、PM2.5など、様々なアレルゲンを多く付着してきます。
この黄砂が気管支に入り込むと、その奥深くまでたどり着き、そこで付着物質が悪さをすることで喘息を悪化させてしまうのです(またこれらの物質が皮膚に付着しても皮膚アレルギーをきたすことがあります)。

また最近、「花粉爆発」という現象が注目されていますね。
黄砂などの微小粒子が花粉に付着すると花粉の表面を傷つけ、ひびが入ります。そこから水分が花粉粒子内部に入り花粉が膨張、最後には爆発するんだそうです(これは私も今回初めて知りました)。
花粉の直径は先ほど30μmとお話ししました。
この大きさなら容易には気管支の奥には届きませんが、花粉爆発を起こすと、これよりはるかに直径が小さい「花粉の破片」となり、気管支の奥に届くようになってしまい、喘息が悪化すると考えられています。(ちなみに雷雨がおこると同様にイネ科花粉が膨張、破裂し気管支の奥に吸い込まれて喘息が悪化する「雷雨喘息」という現象もあり、原理は同じのもののようです)。

それでは、黄砂による喘息、アレルギー症状の悪化を防ぐためにはどうしたらいいでしょうか?

まず、一番大事なのが、普段の治療をしっかりと継続するということです。

アレルギー反応は、一度起こるとなかなか抑えられなくなるもの、そして抑えるとそこから悪化はしづらくなるものです。

「しっかりと抑え続ける」、これがとにかく大事となります。

次に、アレルゲンを体内に入れないことです。
以前、花粉の体内への侵入を防ぐ方法をお伝えしました(2023.2.10 「薬だけじゃない!自分でできる、シーズン中に実践したい花粉症対策」)が、これとだいたい同様です(ただ花粉よりはより小さい粒子なので、マスクやメガネの対策だけでは防ぎきれない部分も出てきます)。

服はなるべく粒子の付着しにくいツルツルした生地とし、家の中に粒子を持ち込まないことを心がけ、空気清浄機どもうまく活用しましょう。

黄砂(それとPM2.5も)は5月まで飛散しやすい時期とされています。もうしばらく注意する期間が続きます。
花粉が落ち着いたという情報があっても、油断をしないでしっかりと対策を取っていきましょう!


P.S. このブログ記事が、私が書いた100本目の記事となりました。
私がこのクリニックに来て4年、当初とは比べもののならないくらい当院には多くの患者さんにご来院頂くようになり、またこのブログがきっかけで当院にご来院頂いた方も数多くいらっしゃいます。
このブログも多少は皆様のお役に立てているのかなと思っています。
なかなか時間は取れない中ですが、何とか今までは最低月1本の執筆を守り続けています。
次は200本を目指し引き続き頑張っていこうと思いますので、引き続き当ブログをお読みいただけますと幸いです!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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