医師ブログ

2020.12.09更新

2020年も12月に入り、間もなく悪夢の1年が終わろうとしていますが、相変わらず年の瀬までコロナ、コロナの世の中です。ここ茅ヶ崎でも、都会ほどではないですが連日陽性者の報告が上がっています。

海外ではワクチンの接種が始まり、わが国でも来年には始まるでしょう。ワクチン接種がどのような結果を生むのかは誰にもわかりませんが、1日も早く通常の世界に戻ることを切に願っています(あー、忘年会、やりたかったなあ・・・)

さてまだまだ落ち着かないコロナ禍の中、市中では自由診療におけるPCR検査が注目されているようです。安価で提供できるPCRセンターが街中にでき、予約が殺到しているとの報道もありました。

検査に関しての結果の確からしさという点では、以前にもこちらのブログで触れています。
まずはPCR検査の結果は絶対ではありません。とはいえ、現時点でコロナの診断のゴールドスタンダードはやはりPCRですあくまで医療機関、検査機関で正しく検体を扱い、精度の高い検査機関で行ったものに限ります。安くてもこの部分がいい加減な検査は論外です)。

では自費でのPCR、これってやはり「あり」、なのでしょうか。
テレビや雑誌では相変わらずPCRの議論が喧しいですが、ここらでもう一度冷静に検査の原理を復習しながら、その意義と問題点を考えてみたいと思います。

以前の記事で感度、特異度の説明をした際、特異度を90%と仮定し、偽陽性が多く出る可能性があると書きましたが、実際PCR検査の特異度(=病気でない人を正しく陰性と判断できる確率)はもっと高いようです(つまり病気がないのに陽性となる確率が低い=陽性と出たら病気である可能性が高いということ)。
基本的に微量の遺伝子を増幅して検出するので、ごくごく少量のウイルス遺伝子でもしっかりと拾い上げることができるためです。

それでも100%ということはあり得ないと思います(特異度が100%なら偽陽性は存在しないことになりますが、実際に体操の内村選手など、偽陽性のケースが実際に報告されていることがその証拠です)。これは検体の中に他の検体のウイルスが混入する可能性もあるためと言われています(クロスコンタミネーションと呼ばれ、他の感染症検査でも珍しくない要素です。今の検査の現場はおそらく検査数も多く非常に忙しいため、どんなに対策をしていたとしても混入を完全に防ぎきれない可能性はありえるでしょう)。

とはいえ、特異度は99%かそれ以上はあるとのことですので、ひとまず偽陽性のケースは(ありえることではありますが多くはないと考え)、ここでは置いておきましょう。

自費PCRを受ける方の受診動機は何でしょうか。
おそらく出社や会合に出るために必要である、出社や会合に出るために必要である帰省するために確認したい、高齢者や病気の方と会うときにリスクを排除しておきたい、などではないでしょうか。
となるとやはり自費PCRを受ける方の目的は、多くの場合「自分が陽性であったらどうしよう」ではなく、「自分が陰性であることを確認しよう」というのがほとんどなんだと思います(もちろん例外はあるでしょう)。

検査の動機

しかし、この検査は陽性に出ることに意味がある検査なんだと思っています。

その理由をご説明します。

この検査は特異度が高い一方、感度はそれほど高くありません。

特異度が極めて高ければ、前に書いた通り、陽性と出れば、その人がコロナである可能性はかなり高いといえるわけです(本当にそう言い切れるかどうかはまだ議論の余地があります。さきほどのクロスコンタミネーションの可能性もありますし)

一方感度(=病気の人を正しく陽性と判断できる確率)はそれほど高くない検査でもあります。
例えば感度が70%とすると、病気の人を陽性と出せる確率が70%ということです。つまりコロナの人のうち、30%は見逃すということです。

図で表しましたが、この場合、検査前の確率が高い場合、「陰性だけどコロナである可能性」は上がります一方検査前の確率が低い場合は「陰性だけどコロナである可能性」は非常に少なくなります。

検査前確率

ということは、その人の検査前の感染確率によって解釈を変えなければならないわけです。

ところが検査前の確率はその人その人によって大きく変わります。
例えば濃厚接触者は当然検査前確率が上がります(が、このケースではそもそも「行政検査」となり、費用は公費負担になります)が、毎日飲み屋で感染対策をせずに飲み歩いている人も検査前の確率は高くなるでしょう。
一方買い物以外では出歩かず、常に感染対策を怠らず、周りに風邪をひいた人がいない場合は検査前の確率は低くなるはずです。
当然その中間の人も多くいるでしょう。

これらの人は、それぞれ検査結果の解釈に違いが生まれるはずなのです。
検査前確率が高い人は、結果が陰性でも結構な確率で偽陰性があり得るということです。この状態で陰性だからと安心してしまうのは危険です。
一方検査前確率が低い人は、結果が陰性がでればまあ確からしいのですが、それは検査をしなくても大きな変化はないともいえるのです(検査前確率が低い人が検査でひっくり返る可能性は極めて低いわけですから)。

となると、やはりPCR検査は、「陽性がでてなんぼ」の検査というわけです。
陰性はコロナじゃないことの証明にはならないわけです。ただ陰性の結果を欲しい人にはあまり向いていない検査なのです。

あまり出歩かない検査前確率が低い人は、そもそも検査を受ける必要性が低いわけですし、検査前確率が高い人は、陰性でもコロナである可能性が他の人より高くなるので、その解釈に気を付けなければならないわけです(検査前確率を自ら高める行動をとっている人が、この原理を理解せずに陰性で喜んでしまう事態が一番怖いとも言えます。厳しいこと言うようですが、このような行動をとってしまっている人は自費PCRを受けるべきではないといってもいいのかもしれません・・・)。

この検査前確率はやはり第三者である我々医療機関が保険診療で問診、診察で判断して、陽性の可能性を高めたうえで行うべきだと考えます(検査を絞ろうという意味ではないです。もちろん必要な検査はどんどん出しますよ)。
やっぱり一般の方が自由に受けられてしまう自費PCR検査は、このような面から何かと問題がある気がして、もやもやしている今日この頃です。

というわけで、当院では現在保険診療でPCRを行えるように準備を行っています。従来通り抗原検査もコロナ、インフルエンザ双方とも準備をしており、状況に応じて使い分けるように計画しています。困ったらお気軽にお電話にてご相談ください。

あと、上記の理由にて当分自費PCRは行わない予定ですが、医学は一昔前の常識が非常識となる分野です。今後も柔軟に、その時のベストを考えられる加藤医院でありたいなと思っています。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信