医師ブログ

2020.07.24更新

新型コロナ感染者増加の勢いがさらに加速しています。
東京での増加に続き、隣接する川崎横浜、そしてここ茅ヶ崎へと、日に日に東海道線を下るように感染の輪が広がっています。

そしてこのコロナ禍は、我々内科医に大きな挑戦状を突き付けています。

コロナ感染が蔓延する状態となると、いわゆる「風邪」症状の中に新型コロナ感染症が隠れているという現実に向き合わなくてはならなくなります。
withコロナのこの時代、我々内科医は「風邪」に対して、持っている能力を最大限用い、全力で取り組む技量が求められるようになりました。

そこで、我々が普段どのように「風邪」と対峙しているか、少し手の内をお見せしつつ、そして自戒を込めながら、withコロナ下における今後の診療の課題を考えてみます。
今回はちょっと長くなる気がしますが、それでもスペース上到底すべてを書き切れるわけはなく、お示しする内容は診察時の私の思考のごく一部でしかないこと、それにあくまでこれは私個人の方法、見解であることはご了解ください。

さて、以前もお書きしたように、「風邪」とは、鼻腔からのどまで、つまり上気道に、病原体による急性の炎症を引き起こす病態を言います。
この病原体の大半がウイルスとされており、基本的には「ウイルス性急性上気道炎」を「風邪」として考えてよいと思います。

では診察をはじめましょう。

まず「風邪を引いた」という方がいらっしゃった時には、まず診察室に入るその方の様子を見て、何か局所の症状がないかどうかを気にかけます。そして顔色や歩き方を見ながら、何となくその重症度を測っていきます(例えば上気道炎にとどまらず気管支や肺に炎症が及んでいる場合は、咳の程度が強くなったり、息遣いが荒くなったりしているので、そのサインを見逃さないようにします)。
「風邪」は重症になることはまれなので、重症感が漂う場合は何か別の病気がないかどうか、考え直す必要が出てきます。

次にお話をお伺いします。症状が「風邪」として矛盾しないかどうかを考えていきます。
「風邪」=「ウイルス性急性上気道炎」は、その感染部位から、起こりやすい症状としては鼻の症状、のどの症状、軽い咳、そして軽い発熱があります(もちろんすべてが揃わないこともあります)。
これらのうち、何か一つの症状が突出している場合は、その部分の細菌感染症も可能性として考えなければなりません細菌感染症は、原則として感染した部位のみに強い炎症を引き起こすため、一つの症状が強い代わりに症状のバラエティさに欠ける傾向があります。その場合は抗菌薬が必要となる場合があり、抗菌薬治療の適応のない一般的な風邪の治療法とは異なってきます)。

そしてその症状の出方も鑑別には重要です。

基本的には「風邪」=「ウイルス性急性上気道炎」の場合、これらの症状はそれほど大きなタイムラグがなく現れる場合が多いですが、感染症の種類によっては特徴的なパターンを示す場合があり、これにあてはまるものがあるかどうかを考えます。
またその症状が想定よりも長く続いている場合は、感染以外の原因も考えなければいけません(一例として咳を考えたとき、風邪の咳は長くてもせいぜい1~2週間です。これ以上続く場合や、良く繰り返している場合は、結核などを含めた様々な病原体の、気管支や肺への炎症の波及や、喘息、COPD、それに癌などの可能性も考えなければいけません)。
これを鑑別するために、その症状が続いている期間や出やすいシチュエーション、今までの既往歴や、何か他に特徴的な他の症状が伴っていないかなど、いろいろ推測しながら当たりを付けていきます。

一方、患者さん自身は「風邪」とおっしゃいながらも、「急性上気道炎」の症状が伴わないケース(例えば熱はあるがのど、鼻、咳の症状がないなど)も少なくなく、この場合はより全身に目を向けながら、何か他に見逃している病気がないか、質問を重ねていくことなります。

次に診察を行っていきます。
まず口の中を見て、のどを見ていきます。
例えば周りの人に極めて移しやすいはしかは、口の中に特徴的な発疹ができるので見逃してはいけません。のどの奥に白い膿がついていたら溶連菌感染症やウイルスによる伝染性単核球症の可能性が考えられるので、これらで治療法も変わってきます。

次に胸の音で呼吸の音、心臓の音を聞きますが、呼吸の音で肺炎、喘息などが見つかることは少なくありません。
また熱の原因が心臓の弁の感染症のことがあり、これは見逃してはいけない疾患ですがこれも音でわかることがあります。
またこの時に皮膚も一緒に見て、訴えられている症状と結び付く特徴的な所見がないかどうかも考えながら見ていきます。

そしてここまでの診察で、何かピンと来た場合はリンパ節を探ったり、おなかを触ったり、背中をたたいてみたり、手や足を見るなどしていき、疑っている病気を肯定、もしくは否定しながら、検査をすべきかどうか、するならどんな検査を出すかということを決めていき、そして最後に治療法を決めるという手順になります。

ただ、正直に告白すると、全ての「風邪」患者さんにこの手順を完璧に踏んでいたかというと、私の場合は必ずしもそうではなかったというのが現実でした。

やはり他の患者さんのお待ち時間ともにらめっこしながら、ある程度は妥協せざるを得なかったという事情はありました。
現実的な落としどころとしては、患者さんの入室時の様子が大丈夫そうで、お話になる症状が風邪として典型的なケースでは、万が一他の病気だったとしてもほぼ手遅れになることはないので、その時点で風邪として対処をするというところでした(もちろん「風邪」ではないかもと考えた場合は深く追求していきますが)。

ところが新型コロナは、皆さんご存知の通り症状のバリエーションが非常に広いこと、そして「典型的な風邪の症状」をきたすことも少なくないことから、他の「風邪」と見分けることが簡単ではありません。
であるにも関わらず見逃すと患者さん本人だけでなくその周囲や社会全体にも大きな影響を与えてしまう病気であり、しっかりと他の「風邪」と見極めなければなりません。
これからのwithコロナの時代、我々はしばらくの間、すべての「風邪」患者さんにもれなくこの手順を確実に踏まなくてはならなくなったと言えるのです。

やはり本来「風邪」の診断、治療というのは、上にお話ししたように他の病気と見極めるための知っておくべき知識が非常に多く、多くの判断も求められるので奥が深く、私は内科医の本当の力量が試される領域だと思います。

診療に携わる我々医師はwithコロナの時代、医師としての基本に立ち返り、今まで培った知識、技量を最大限使い、改めて心して病気と真剣に向き合う姿勢が求められているのでしょう。

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

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