医師ブログ

2020.07.02更新

当院には引き続き、茅ヶ崎市内から近隣市町村、遠方の方々まで、長引く咳でお困りの多くの患者さんにご受診いただいております。
やはりコロナのこともあり、感染を心配されてご相談に見える方が多くいらっしゃいますが、咳が3週間以上続く場合や、咳が繰り返して出る場合は、その原因がウイルスや細菌などの感染よりも、他のものによる咳の可能性が増えます。

当院にお見えになる、これらの長引く咳、繰り返す咳の方のうち(正確に統計を取ったわけではありませんが私の感覚的には)5~6割が喘息によるという印象です(その他多いものとしては後鼻漏、喉頭アレルギーやアトピー咳嗽、逆流性食道炎が比較的多いように思われます)。

長引く咳は、その原因を明確な見極めることが難しい症状なのですが、喘息は基本的に気道の炎症を鎮める吸入ステロイドがよく効きます(効果がない場合は診断が間違ってたり他の疾患が合併したりする他に、吸い方が正しくない、環境が悪い、それに重症例でさらに強い治療が必要などの理由があります)。
問診や診察、検査によって喘息を強く疑った場合は吸入ステロイド薬を使用し、これの効果があればほぼ診断が確定できるというわけです。

ということで正しく診断、治療ができると症状は劇的によくなることも少なくありません。

よかったよかった・・・と言いたいところなのですが、実は喘息の治療の難しさがここに隠されています。

喘息は、慢性的な気道の炎症を吸入ステロイドで抑え続ける事が大事です。
この治療を続けていかないと気道には慢性的な炎症が残ってしまい、長期的にはますます症状のコントロールが難しくなってしまいます。

これは高血圧の方が薬を飲み続けて血圧を下げることを続けたり、コレステロールの高い方が薬を飲み続けて数値を下げることを続けたりすることにより、将来の脳梗塞、心筋梗塞などが起こるリスクを下げることと本質的には変わりがありません。

ところが喘息はしばしば症状がよくなると治療をご自身でやめてしまうことが多い代表的な疾患と言われています。

ある報告によると、喘息の患者さんで吸入ステロイド薬をしっかりと正しく継続できている方は全体の4割程度しかいなかったとされています。Tamura G, et al : Respir Med 101(9);1895-1902 
また高血圧、高脂血症の患者さんは薬を10日に平均6~7日程度は飲んでおられるのに対し、喘息の方は10日に平均2~3日程度しか使ってもらえていないという、我々からしたら何とも恐ろしいデータもあります。lnternational Review of Asthma&COPD vol13 No4 2011

なんでこうなってしまうのでしょうか。

一つには喘息の患者さんはご自身の状態を過剰評価してしまう傾向があるからとされています。
日本で行われたある電話調査では、喘息治療状態に満足している患者のうち、医師も十分に喘息症状がコントロールできていると判断した人は30%程度しかいなかったという報告がされています。アレルギー59(6)676-687.2010

一番悪かった状態よりも少し良くなると、それで満足してしまうことが多いようなのです。

また高血圧、高脂血症などのように、数字による治療目安が一般的でないことも自己管理を難しくしてしまうようです(喘息の数値による自己管理としてはピークフローという器具もあるにはあり、必要な方には当院でも導入、使用しております)。

やはり大事なのは症状が落ち着いているときにいかにしっかりと治療が続けられるか、に尽きると思います。

ただ残念ながら呼吸器科の非専門である医師の中にも、この治療の継続が重要であるという考えが浸透しているとは言えないのが現状です。
是非皆さんにはこのブログで正しい情報を知って頂ければと思います。

治療をいつまで続けるべきか、明確なお答えは現時点ではないのが現状ですが、当院では喘息の場合、吸入薬を最小限まで減らしてから1年間(すべての季節)無症状で乗り越えられたら、吸入薬の中止にトライしてみましょうとお話ししています。
また軽度の喘息の方は、シムビコートを症状のあるときだけ使用するという治療が従来の治療に遜色ないことが海外よりここ1-2年で相次いで報告されており、月に1-2回程度しか症状の生じない喘息の方にはこの治療をおすすめすることもあります(ただし、しっかりした根拠なく安易に軽症と判断しないよう、気を付けなければなりません)。

 

いずれにしてもご自身の判断で治療を止めてしまうことは避けて頂きたいと思います。

 

そしてご自身の判断で治療を止めてしまって症状が出てしまった方、遠慮なくいつでも当院にご相談ください。決して叱ったりはしませんのでご安心を(笑)

投稿者: 加藤医院 院長 浅井偉信

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