このブログの更新を私が開始し、約1年が経過しました。
徐々にこのブログをお読みになられている方が増えており、茅ヶ崎界隈のみならず、全国から反響を頂くことも少なくなくなりました。皆様に興味をお持ちいただいて大変うれしい限りです。ありがとうございます。
そのおかげか、先日講談社さんの週刊誌「週刊現代」の取材を受ける機会がありました。テーマは「コロナで再確認したい、高齢者が気を付けたい肺の病気」ということでお話しをさせて頂きました。
お話しした内容がこれだけセンセーショナルな文体になるのはさすが週刊誌・・・(笑)まあでも呼吸器疾患のことが分かりやすく書いてあります。
よろしければ下の画像をクリックして記事をご覧いただき、よろしければ書店、コンビニでもお手に取ってみて下さい。
というわけで今回は私の担当した、高齢者の肺炎について書いてみます。
肺は直接外の世界とつながっている臓器であり、また雑菌が非常に多い口の中ともつながっており、常にあらゆる微生物にさらされています。ですので肺は、鼻腔とともに全身で最も感染症にかかりやすい臓器と言われています。
しかし肺には、異物を包み込む粘液の分泌(=痰)や、痰を外に送り出す気管支の線毛運動、それにこれらのような異物を外に飛ばす咳反射など、自浄を促す作用があります。
そしてこの咳反射は異物が入った刺激を、脳にある咳中枢が感知することで起こります。
ですので、通常の元気な肺は感染を起こす前に微生物を排除します。
しかし、高齢になるとこれらの能力が低下し、肺に微生物が到達しやすくなります。
また高齢者では誤嚥をすることが増えてきます。
ものを飲み込むという行為は、咀嚼を行いながら食べ物を口の奥へと送り込み、飲み込むときには喉頭蓋(こうとうがい)というドアが絶妙のタイミングで気道にふたをして、その瞬間のどにある筋肉が瞬時に連携をとりながら食べ物を喉から食道に送り込むことでおこります。これは意識的に行っているものではなく、脳の嚥下中枢という部分がつかさどる反射により起こります。
ところがこれが年を取ると、この連携のタイミングが微妙にずれてきます。また脳梗塞(症状の目立たない、いわゆるかくれ脳梗塞を含みます)などがおこると、この反射がうまく行かなくなり、嚥下の機能が低下します。すると気管に食物や唾液などの異物が入り込んでも排除できなくなってしまい、微生物が肺に到達しやすくなってしまうわけです。
加えて上でお話しした咳中枢の機能も落ちています。すると肺に到達した微生物は、肺から排除されることなく肺の中で増殖してしまいます。
そのため高齢になると肺炎を引き起こす頻度が増加します。
また抵抗力が弱りなかなか異物を追い出せない状況で、しばしば重症化し治るのに時間がかかってしまいます。
しかも高齢者はもともと筋力も加齢によって低下しており、肺炎をひとたび起こしてベッド上での療養が長くなると、全身の筋力が容易に低下します。嚥下に要する筋力も低下してしまうため、肺炎を治療できたとしても体力の低下や嚥下機能の低下が元の状態までには戻らなくなり、次の肺炎を引き起こしやすくなってしまいます。
これを繰り返すことで最終的に命にかかわってしまうことが少なくないのです。
ではこれを防止するにはどのようにしたらいいのでしょうか。長くなりそうなので、また近々続きをお話ししましょう。