医師ブログ

2020.04.07更新

本日にも緊急事態宣言が出される見込みであり、皆さんも不安な日々を送られていると思います。当院にも感染したかどうかのご不安でお問い合わせ、ご受診いただくケースが増えております。
まず今まで申し上げている通り、感染症が疑われる場合は帰国者接触者相談センターにご連絡いただき、指示を仰いでいただくようにお願い致します。(2021年4月追記:現在は医療機関か相談センターに連絡頂くこととなります)

→当院の発熱外来について

ただその前に,これからは皆さん一人一人がしっかりと普段からの健康管理をしていただくことが大事となってきます。

新型コロナウイルス感染症の症状として、2019月12月から2020年2月までに中国で発症した1994人のメタ解析(いろんな論文を組み入れたもの)データが出ました。
その中では以下の症状の頻度が報告されています(ただし、おそらくここには極めて軽症や無症状の人はあまり入っていないと思われるので、そこに注意して解釈する必要があります)。
 発熱:88.5%
 咳:68.6%
 筋肉痛・筋疲労:35.8%
 喀痰:28.2%
 呼吸困難:21.9%
 頭痛・めまい:12.1%
 下痢:4.8%
 吐き気・嘔吐:3.9%
COVID-19 patients' clinical characteristics, discharge rate, and fatality rate of meta-analysis. Li LQ et al. J Med Virol. (2020)


ということで、やはり発熱の頻度が多くなっていたのは以前お話しした通りです。これが現在の相談基準の一つである「4日間の37.5℃以上の発熱」の根拠にもなっていると思われます。
ですので、まずは自分の体温を把握することは体調管理上大事になってきます。


しかしこの「自分の体温を知るためには,注意しなければならない点がいくつかあります」というのが今回のテーマです。


10代~50歳前後までの日本人の健康な人の腋窩体温の平均値は36.89℃で、36.6~37.2℃に約7割の方が入るというデータがあります(日新医学44:12,1957;635-638)

また、65歳以上の高齢者においてでも、午後1時から4時までに測った体温の平均値は36.66℃で、36.2~37.1℃に約7割の人が入るとされています(日老医誌 12:3,1975;172-177)

平均体温

 

ところが患者さんにアンケートを取ると、平均36.2℃と回答したという報告があり、実際の体温より低く把握しているケースが多いことが考えられています(臨床体温23:1,2005;35-38)
外来でも「平熱が34℃台や35℃台前半だから、36℃台でも自分にとっては熱が高くて心配だ」という方が少なからず見えます。この方たちの全てが間違っているわけではないと思いますが、やはりこの機会ですので、正しく自分の体温を把握するきっかけにしていただければと思います。

 

まず体温には1日のリズムがあり午前3時から7時頃までが一番低くそこから徐々に上昇し、午後2時から6時ごろが一番高く、その変動差は最大0.8℃程度あることが報告されています(J appi physiol.65(1988),1840-1846)食事後や運動後、入浴後も体温は上昇します。
加えて女性では、月経周期で排卵が起こる前(月経が始まる2週間ほど前)からは高温期に移行し、低温期より0.3~0.5℃上昇します。

体温変動


このように体温は1日の中でも、数日の周期でも、変動するものなのです。


なので自分の体温を知っておくためには、1日数回(理想的には起床時、昼食前、夕食前、就寝前の4回)、日をおいて数回測ってみて記録してみることが役立ちます。また外気温にも影響されるので(高齢者では特に影響されやすいです)、気温や季節も考慮しておくといいでしょう。

 

次は体温の測り方についてです。

体温は基本的に腋窩で測って頂ければよいですが、体温計の先端の位置が重要です。

腋窩で一番温度が高いのが、腋窩のくぼみの真ん中です。ここに体温計をしっかり差し込むためには、斜め下30~45度くらいの角度でしっかりとくぼみに差し込むことが重要です。
真横からや、斜め上から差し込むと、センサー部はくぼみの下側に達し、体温が低く出てしまいます。
わき汗をかいていると十分密着しないので、汗は拭きとってから測りましょう。

体温の測定方法

また本来腋窩の体温は10分間密着しないと測れませんが、現在の体温計は「予測式」といって、温度の上昇するスピードから実際の体温の予測値を計算して出す機種が主流です。
このタイプは15~30秒で体温が測れるため便利なのですが、気を付けないといけないのは、2回測るときは、体温計がしっかりと冷えていること(測り始めが35℃以下になっていること)を確認しないと間違った値が出るということです。

 

以上を把握できると、より正しい自分の体温を知ることができます。
体温だけで自分の体調をすべて知ることはできませんが(食欲,だるさ,息苦しさなど全体的な視点も大事です)、体温は一番わかりやすい指標でもあるので、ご自身の体調管理の一つのツールとして活用しましょう。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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