医師ブログ

2019.12.16更新

今週土曜日、院長はお休みをいただき、横浜で行われた日本アレルギー学会総合アレルギー講習会に出席させていただきました。
今まで何度も出席している会でしたが、プライマリケア医となってからは初めての出席であり、あえて主に内科以外の分野(耳鼻科、皮膚科、小児科など)を勉強して参りました。とは言ってもどれも内科診療ともいろんな面でつながってくる分野です(アレルギーは体全体に起こる反応なので)。アレルギー専門医としての診療の幅を広げるいい機会となりました。

ところで今回は当院で行っている自由診療についてお話ししようと思います。
当院では自由診療として、点滴療法を数種類行っています。
具体的には高濃度ビタミンC療法、グルタチオン点滴、マイヤーズカクテル、ニンニク注射などです。
これらは体力改善、美容目的の他に、病気による症状の改善などの効果も謳われているとされています。例えばグルタチオン点滴には、パーキンソン病患者さんの症状改善が期待できるとされており、実際に当院でも症状の改善を認めた方がいらっしゃいます(点滴治療については、詳しくは自費診療のページをご覧ください)。

しかし、これらの治療には、質の高い臨床試験による効果の証明がされていないというのも事実です。臨床試験が行われないのにはいろいろ理由もあるようなのですが、私は医療者として、客観的なデータを基にした治療法の選択をしなければならないと思っています。そのような点からは、やはりこれらの治療法の根拠は少し物足りないと言わざるを得ないとも考えています。
ただ、データがない=効果がない、とも言えないのかもしれません。
まず、疲労回復や美容効果というものは、その効果が客観的な尺度で測れないのでそもそも評価が難しいです(疲労度合いや肌の状態を、数値で表すことは難しいのです)。それに症状の改善効果にしてもデータが少なく、必ずしも信用には足らないのかもしれませんが、例えば一部の患者さんにしかその治療が効かなかったとしても、その効いた一部の患者さんにとってはとてもありがたい治療となるわけです。
クリニックとして患者さんにとってのベストを考えるのであれば、自由診療を治療法の選択肢の一つとしてご提示できることも必要なことなのかな、って考えています。

とはいっても根拠の少ない治療法を行うからには、その治療を行う妥当性を少しでも高めないといけません(これを怠ると、昨今マスコミやネットで騒がれるトンデモ医療に近づいてしまうと思いますし、それは患者さん側のデメリットになるだけでなく、我々提供者側の信頼を失うという意味で医療者側の大きなデメリットにもなってしまいます)。

ということで、この数か月間は自由診療についての当院の新たなスタンスを考えていました。
そして以下の結論に至りましたので、ここでお話しさせていただきます。

自由診療による治療効果は、ご本人がその効果に納得されるかどうかで続けるかどうかを決めていただくべきと考えます。ですので、
① いくつかの治療では、まず数回、ほぼ当院には利益の出ない料金でお試しいただくこととしました。そこで治療効果を実感したり、続けてみたいと思われた方に、通常料金での治療の継続をさせて頂くこととします。
② そのため、治療効果がなさそうだとこちらから判断させていただいた方は、中止を含めたご提案をさせて頂くこととしました。
③ 大変申し訳ありませんが、現時点では、がんに関しての新規の自由診療受付は終了させていただくことといたしました。

③ に関してですが、やはりがんというのは治療の方法、タイミングを誤ると、そのまま命に係わってしまう病気です。がんには標準治療というものが存在し、基本的には標準治療が最適な治療法です。ですのでがんの患者さんにはまず適切な時期に標準治療を受けていただきたいと思うこと、そしてがんに関する自由診療の存在は、標準治療を選ぶことに対するノイズになりえることという、2つの理由からです。

というわけで、2020年1月から料金体系、診療体系を見直させていただくことと致しました。保険診療による治療を主体としつつも、その効果が十分でない場合は、日常生活の質を上げる道具として、病気の治療に対する選択肢の一つとして、自由診療による治療もご検討ください。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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