医師ブログ

2019.11.18更新

厚労省による集計で、各医療機関からのインフルエンザ患者の報告が平均1週間に1人を超えると、全国的にインフルエンザの流行が始まったと判断されます。
この数字がいよいよ先週1.03人と1人を上回ったため、全国的な流行開始が宣言されました(神奈川県は1.11人/1医療機関)。
今年はやはり例年より早く、おそらく12月には本格的な流行になると思われます。ワクチンはできるだけ今月中の接種をおすすめします。

さて今日はインフルエンザの治療薬の話です。
おととしまで、抗インフルエンザ薬としては5日間内服する「タミフル」、5日間吸入する「リレンザ」、1回だけ吸入する「イナビル」、それに注射薬である「ラピアクタ」の4種類の薬剤が出ていました。そこに昨年、1回内服するだけで今までの抗インフルエンザ薬に劣らない効果を示すという新薬である「ゾフルーザ」が発売され、マスコミに取り上げられたこともあり、多く処方されました。


で、まずそもそもが「本当に抗インフルエンザ薬って必要なの?」って話です。


インフルエンザは最近現れた病気ではなく、以前からあった病気です。一方、抗インフルエンザ薬はまだ出てから20年しか経っていません。
では20年以上前は社会に深刻な影響を与えていた病気かというとそういうわけではなく、おそらくは「熱が高い風邪」として扱われていただけでした。

つまり人類にとって絶対に欠かせない薬、というわけではないのです。しかも風邪薬よりははるかに高価です。なので欧米では抗インフルエンザ薬が処方されるケースはそう多くないそうです(日本と異なる医療保険制度も大きく影響していると思われます)。

ただ、10年前の新型インフルエンザ騒ぎの時、他国では多くの重症患者、死者を出したにも関わらず、日本では他国より重症化率、死亡率は著しく低かったと報告されています(いつものインフルエンザと同じくらいの状態だった)。
実はこれは、抗インフルエンザ薬を他の国よりも積極的に使う国内事情も影響したのではないかとも言われています。

そういう意味では、抗インフルエンザ薬というのもまったく意味がないわけではなさそうで、私はここにこの薬を使う一番の意義があると考えています(もちろん症状を早く良くしてさしあげる、ということも確かに大事なのではありますが)。
一見似ているような、それでいて何種類もある抗インフルエンザ薬ですが、私はやはりプロである医師が、根拠をもってしっかりと使い分けなければいけないんじゃないかと考えています。それにはこの視点がブレないことが大事だと思っています。

では当院ではどのように考えているか、どの点に注意しているか。それはまた次回ご紹介したいと思います(長くなりそうだし、もう眠いんで・・・)。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

SEARCH

ARCHIVE