前回はCOPDという病気とはなんぞやということについてお話ししました。
若いときに吸っていたたばこの影響は、数十年経過してから病気となって現れます。
現在日本の喫煙率は年々低下していますが、COPDが原因で亡くなった人の数は2017年には過去最高を記録しています。
COPDになると息切れで運動できなくなったり、肺炎などの他の病気になりやすくなったりするために、年齢とともに体力が低下するスピードが速くなります。
また「急性増悪(きゅうせい ぞうあく)」といって、風邪や肺炎にかかることなどをきっかけに、急激にCOPDの症状が悪くなって、病態がすすんでしまうこともあります。
これらにより体の機能が一段と弱まり、それによりさらにいろんな病気にかかりやすくなったりする悪循環を経て、命にかかわってしまうことが多いのです。
そのため、COPDの治療では、まずは息切れの改善、急性増悪を減らし、今まで出来ていた生活をなるべく長く維持することを一番の目標として行うことが多いです。
当然まず禁煙ですが、薬に関しては喘息と同様、吸入薬が一番大事とされています。
ただCOPDでは喘息とは薬の種類や使用方法が異なる点が多く、また薬剤の選び方もここ数年で二転三転しており、なかなか難しい分野です。
(ここからはしばらく勝手につぶやきます。興味がなければ飛ばしてください。)
吸入薬ではいわゆる気管支拡張剤である抗コリン薬、β2刺激薬と、主に喘息の治療では主役になる吸入ステロイド薬があります。抗コリン薬、β2刺激薬に関しては有効性が確立されていますが、どっちを優先的に使うか、いつから2剤同時に使用すべきかは色々な見解があります。また純粋なCOPDに対する吸入ステロイド薬に関しては声枯れや口内炎、肺炎を増やすなどの副作用もあることから、使用の是非に関して否定的な見解が少なくありません(喘息を合併する場合にはもちろん有効とはなります)。COPDに対する薬剤に関しては、いままでは抗コリン薬、β2刺激薬、それにこれらの合剤が発売されていましたが、今年になり、この2種類に加え吸入ステロイド薬を併せて配合した、3種類が1つにまとまった合剤が複数登場しました。喘息も重症化すると最終的にはこの3種類を使用するため、強い呼吸困難の症状に対しては、喘息かCOPDか鑑別せずにとりあえず処方してみるという形が増えてしまうのかもしれません。ただ私はその有効性を示した3つの研究に関しては、喘息の要素の入った患者が多く紛れ込んでいるなど患者の集め方が日本のCOPDの実情と合っていないのでは、という見解です。必要な方には躊躇なく使うべきでしょうが、これから本来では吸入ステロイドが必要ではなかったはずの方にこれらの3剤合剤が多く使われてしまうと、副作用が増えたり、余計な医療費がかかったり、やみくもに使われることでかえって正しい診断にたどり着けなかったりする方が増えてしまうのではということを危惧しており、やはり新製品だからとすぐには飛びつかず、少し様子を見て、新しい報告を待ったほうがいいのではという気がしています・・・
(つぶやき終了。)
いずれにせよ、COPDは、病気を知っていただくこと、しっかり診断できること、正しい治療ができることによってはじめて助かる可能性が出てくる病気です。
まずはCOPDという病気をよく知っていただき、その上で心配なことがあれば遠慮なく相談していただきたいのです。
また吸入治療は喘息の回でもお話ししたように、吸入のやり方がとても大事となり、やり方が間違っていると全く効きません。
しっかり吸入薬の使い方を教えてもらうことが大事ですので、ぜひ気軽に医師や看護師、薬局の薬剤師にご相談いただければと思います。