医師ブログ

2025.02.25更新

※本題はこのブログの真ん中以下です!!


この連休、皆さんはどうお過ごしでしたでしょうか?

当院の、小学校を卒業するinstagram動画作成スタッフ(=私の息子)は、卒業記念には
「どーしても雪を見たいっ!!」
と、ずっと言っていました。

藤沢生まれ、茅ヶ崎育ちの息子は、数年に1回の、それもみぞれ交じりの雪しか体験できていません。

ちょうど先週から、日本列島には強烈な寒気が入り、日本海側で大雪に見舞われているタイミングでした。

せっかく雪を見に行くなら、豪雪のパウダースノーを体験できる今しかないっ!!というわけで、この連休を使って私たち親子2人で越後湯沢に行ってきました(妻と娘は寒いのがニガテなので留守番です)。

そして雪遊びをしたいという息子に、本格的な雪遊びをさせようということで、人生初のスキーを体験させました。


スキー場に行ったこともなければ、スキー板を履いたこともない息子ですので、半日のスキーレッスンを受けさせることにしました。

マンツーマンレッスンだったので私は離れていたのですが、終了時にインストラクターの方が

「お父さんお医者さんなんですってね」
「はい、そうですが・・・」
「実は私も医師なんですよ」
「!?、整形外科とかやられているんですか?(スポーツ好きは整形外科という院長独自調べおよび偏見)」
「呼吸器、アレルギーが専門なんです」
「!!??」
「品川で呼吸器クリニックを開業していて、週末に越後湯沢まで来てインストラクターをしてるんです」

なんと、インストラクターの方は、同業者でした!
先生のお名前は「林 永信 先生」とおっしゃり、大井町で「はやしクリニック」という、呼吸器、アレルギーを専門とし、CTまで併設するクリニックを経営されている先生でした(記事への掲載の許可は頂きました)。

「皆さんには医師とインストラクターの二足のわらじを履くのがすごいと言われるのですが、私は好きでやっているので、何もすごくないんですよ」と。

いや、すごいですよ、先生・・・


さらにお伺いすると、すでに医師を50年以上されている先生とのこと・・・!

もう、開いた口がふさがりません。

大学で20年、総合病院で20年、研究、診療を精力的に行われ、総合病院副院長まで務められた後にクリニックをご開業されたことの事で、コロナの際も医療機関を受診できない患者さんのためにCTを駆使して診察を続けられたとのことです。

これに加えてスキー指導員の資格をお持ちになりながら、週末にスキーを教えに越後湯沢に新幹線に通ってらっしゃるとのことで・・・


私が到底過ごすことのできないであろう生き方をされている、まさに羨望の眼差しで見ざるを得ない、輝かしい後光が差す偉大な先生でした。

 スキー


息子へのレッスンは午前で終了し、初心者だった息子は午後にはリフトに乗って1本滑り降りてきました。
丁寧にレッスン頂いたことに感謝し、最後には「今日はすごい雪でしたが、明日からは暖かくなるようで、私たちも花粉症の診療で忙しくなりますが、お互い頑張りましょう」と、私にまで激励いただきお別れをしました。

「ん?忙しくなる・・・?」
そうだった!休み明けの仕事を思い出しました!

寒気が去って暖かくなる今週、多分、花粉、飛ぶんだった Σ(゚д゚lll)


そんなわけで、今回も花粉症についての記事を書いてみたいと思います。


※ここからが本題です!

 

今年の花粉はこ・れ・か・ら ♪

今年は1月に多少花粉が飛びましたが、その後は比較的落ち着いていました。
今時点で「今年はあまり症状が出ないかも」とおっしゃる方も少なくありません。

しかし、データを見てみると、ここ神奈川では、まだ本格的な花粉の飛散は起きていないようです。
さらに、今年の花粉の飛散量は、昨年を超える可能性が考えられています。

下の図で昨年と比較をしてみましたが、これを見ると、花粉の飛散はまだまだ、これからだ、ということがよーくわかります。

神奈川花粉飛散量

神奈川県自然環境保全センター 研究企画部HPより

ですので、今週以降、花粉症の方は、心してかかる必要があります。



花粉症は目と鼻だけではない!

花粉症というと、くしゃみや鼻水、目のかゆみが一般的な症状として知られていますが、実はそれだけではありません。

花粉は全身にさまざまな影響を及ぼし、皮膚や神経、消化器、さらには睡眠にも影響を与えるのです。

しかし、その症状が花粉が原因で起こっていることに気づいていない方も、実は少なくありません。


そこで今回は、花粉症の方で意外と悩まれている方も多く、また気づかずに困っていらっしゃる方も多くいらっしゃる「花粉症が起こす、目と鼻以外の症状について触れてみたいと思います。


花粉は喉に影響します

まず、花粉が鼻や口から吸い込まれることで、喉の粘膜が刺激され、炎症を引き起こすことがあります。
その結果、喉の痛みやかゆみが現れることがあります。

これは、ヒスタミンロイコトリエンという、アレルギー反応を起こす物質が喉に作用してしまうためです。

また、喉に刺激が加わることで、長引く咳が起こることも珍しくありません(喉頭アレルギー、アトピー咳嗽などがこれにあたります)。

その上、もともと喘息を持っている方は、鼻の炎症が気管支に波及して、喘息の悪化につながることもあるので、喘息をお持ちの方は、危険なシーズンであるとも言えるのです。

こうした症状を和らげるためには、抗ヒスタミン薬やロイコトリエン拮抗薬といった内服薬を服用したり、ステロイド点鼻をしたりすることで(喉頭アレルギー、アトピー咳嗽による頑固な咳は一時的にステロイド吸入を行うことが有効です。また喘息の方は、切れ目なく吸入を継続する必要があります)対処します。

またこまめに鼻うがいをしたりすることも有効ですし、さらに咽頭スプレーのどぬーるスプレーなどですね」を使うと、喉の違和感を和らげる助けになります。


今度は肌への影響も

また、花粉は肌にも影響を与えることがあります。

特に敏感肌の方やアトピー性皮膚炎を持っている方は、花粉が皮膚に付着することでバリア機能が低下し、かゆみや肌荒れが悪化することがあります(これを「花粉皮膚炎」と呼びます)。

この時期は空気も乾燥していることが多く、皮膚の乾燥もバリア機能の低下につながります。
すると、皮膚から花粉のアレルゲンとなるたんぱく質が侵入し、皮膚でアレルギー症状を引き起こします。


症状としては皮膚のかゆみ、発赤(特に目や鼻の周囲が悪化しやすいです)、かさつき、ほてりなどがみられます。

花粉症の方のうちの約30%もの方が、皮膚のかゆみ、肌荒れを訴えているとも言われています。

これを防ぐためには、花粉症の治療薬である抗ヒスタミン薬をしっかり内服したうえで、保湿をしっかり行い、程度に応じて塗り薬を使用することが大切です。

また、外出後はすぐに顔を洗って花粉を落とすなど、花粉と皮膚が接触する時間をなるべく短くすることで、肌トラブルを軽減できます。


頭痛だって引き起こす・・・

花粉症は、頭痛を引き起こすこともあります。

まず、花粉症によって鼻が詰まってしまうと、酸素が脳に十分に届かず、頭痛が起こってしまうことがあります。

また鼻の粘膜がアレルギー反応によってむくんで鼻詰まりとなり、その影響で副鼻腔と鼻腔の間の道がふさがれてしまうことがあります。

すると出口をふさがれてしまった副鼻腔の内部の圧力が上昇し、頭痛の原因となります。
加えて副鼻腔の中で逃げ場を失った細菌が増殖してしまうと、副鼻腔炎を発症し、これが原因の頭痛をきたしてしまうこともあるのです。

こうした症状を和らげるために、抗ヒスタミン薬点鼻ステロイドを使用して鼻の炎症を改善し、シーズン中それを維持することが効果的です。



また一方、もともと片頭痛持ちの方は花粉症によるアレルギー反応がきっかけで、片頭痛発作を誘発しやすくなる場合があります。

片頭痛の場合は、ズキンズキンと脈打つような痛みが強まることが特徴です。

普段からの片頭痛治療をしっかり続けることが大事になります。



不眠の原因になることも

さらに、花粉症は睡眠にも大きな影響を与えます。

 

鼻の症状やだるさなどのせいで寝つきが悪くなったり、夜中に何度も目が覚めたりすることが増え、結果として日中の眠気や集中力の低下につながります。

 

実際に、花粉症の患者さんの多くが睡眠の質の低下を訴えており、特に深い眠りであるレム睡眠が短くなることが指摘されています。

 

これを防ぐためには、適切な治療を行いつつも、寝る前に鼻洗浄や、寝るときの寝室の湿度を適切に保つ、鼻詰まりが強いときは少し上半身を起こして寝ることも有効と考えられます。



だるさもアレルギー反応のせいのことが

また、アレルギー反応によって、体内に炎症を引き起こす「サイトカイン」という物質が分泌されます。
このサイトカインが体全体に炎症を引き起こすことで、体がだるく感じたり、集中力が落ちたりすることがあります。

また、先ほどお話しした鼻詰まり、頭痛などの症状により、先ほどお話しした不眠が起こると、それがだるさになって表れてしまいます。

薬による治療はもちろん、さらに血流を良くするために軽い運動を取り入れたり、オメガ3脂肪酸やビタミンDを含む食品を積極的に摂るのもおすすめです。


また治療薬によってもだるさが出てくることがあります。
アレルギー薬の主役である「抗ヒスタミン薬」の中には、眠気をきたす可能性のある薬剤がありますが、これが昼まで持ち越すとだるさとしてとらえられます。

このような症状が出た際は、適切に抗ヒスタミン薬の種類や投与可否の再検討をする必要がありますので、処方医にお早めにご相談ください。


花粉症とおなかの症状!?

意外かもしれませんが、花粉症は消化器にも影響を及ぼすことがあります。

最近の研究では、腸内細菌のバランスとアレルギー症状には密接な関係があることがわかってきました。

そのため、花粉症の方の中には、腹痛や下痢、便秘などの症状を訴える人も少なくありません。
これは、腸の粘膜が炎症を起こすことで腸内環境が乱れるためだと考えられています。

また、先ほど挙げた「サイトカイン」が、腸に作用してしまうケースもあります。

対策としては、やはりアレルギー治療はしっかりと行いつつ、乳酸菌を多く含むヨーグルトや発酵食品を摂取し、腸内環境を整えることが重要です。
また、アレルギーを引き起こしやすい食材を避けることも、症状の改善につながります。

 

花粉症の治療をしっかりすれば、いろいろな悩みが解決できるかも!

このように、花粉症は単なるくしゃみや鼻水の病気ではなく、体全体に影響を及ぼすことがあるのです。

しかし、症状の原因を理解し、それに合った対策を講じることで、症状を軽減することができます。

まずは症状に応じた適切な薬の選択がいちばん大事です。
お近くのアレルギー専門医にぜひ相談してみてください。

また今回挙げた豆知識を、少しずつでもいいので毎日の生活の中で取り入れて頂けることも有効です。

これからつらい季節になりますが、これらの工夫で症状を和らげることができるよう、ぜひ一度お試しください!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2025.02.01更新

相変わらず咳が長く続く方、多くいらっしゃいますね・・・

先日、当院に2024年4~9月に当院に保険診療でいらっしゃった新患の方のデータをまとめてみました。

すると、この半年で当院にいらっしゃった新患の方全体(2340人)の2割弱の発熱、感染症外来の方を除くと、そのうちの86%の方が咳の方でした(ちなみにアレルギー症状まで含むと全体の91%でした。当院では循環器専門外来、消化器専門外来も行っていますので、この数字も含んだ上です)。
新患患者内訳

咳でお困りの方の最後の砦として当院がお役に立てているだろうことがわかり、ありがたいと思う一方、改めて身が引き締まる思いでした。


そんな「咳」という症状は、日常的によく起こる症状の一つですが、その原因は多岐にわたります。

以前こちらでもお話したように、咳はその続いている期間の長さで、原因が変わります。

長引く咳に関しては、この院長ブログでも何度も触れているように、気管支喘息、鼻炎、胃食道逆流など、感染症ではない様々な原因が考えられます。

一方、割と出てすぐ(3週間以内)の咳は、やはり、風邪や気管支炎をはじめとする感染症が原因であることが多いです。


そうすると、多くの人は咳が続くと「細菌感染が関与しているのではないか」「抗生物質を飲めば治るのではないか」と考えがちです。

そして、一般的な医療機関では、この状況に対して「抗生物質」を出されるケースが少なくありません(本来は「抗菌薬」という用語を使うべきですが、わかりやすさ重視でここでは皆さんに馴染みやすい「抗生物質」という用語で説明していきます)。


しかし、当院では「抗生物質」をお出しするケースが、他の医療機関と比べて非常に少ないというのが一つの特徴です。

中には「抗生物質が欲しいです」とお話をされる患者さんもいらっしゃるのですが、当院では抗生物質の処方について、ある考えをもって行っており、必ずしも期待にお応えしているわけではありません。

もちろん呼吸器が専門でない医療機関の治療方針をディスる訳ではないのですが(私たち呼吸器専門医も、一旦専門から離れると他の科の専門医ほど専門的には診察は出来ないわけで・・・)、我々呼吸器専門医は共通して、咳と抗生物質との適切な関係を常に考えています呼吸器を前面に出しているのに抗生物質をやたら出す医療機関は、少し受診を考えたほうがいいかもしれません)。


そこで今回は、専門医の視点から考える「咳と抗生物質の関係」という論点で、「咳が出た時に、本当に抗生物質って必要なの」という点をお話してみようと思います。


「長引く咳」とは?

そもそも「長引く咳」ってどれくらい続いたら言うのでしょうか?

先ほどもお話をしたように、定義上は3週間以内の咳を「急性咳嗽」というので、それ以上であれば一般的には「長引く咳」です。

でも、3週間って、それだけでも正直かなり長く感じますよね・・・

でも実は一般的に、感染症による気管支炎では、咳が2週間以上続くことは珍しくありません。
ある研究では、急性気管支炎における咳嗽の持続期間の平均は17.8日とされています。

なので、1~2週間程度の咳は、実は「長引いている」の範疇には入らないものなのです(ここら辺、学問としての定義と、患者として感じる感覚に、乖離は出てしまうなとは感じています)。


急に起きた咳の原因の多くはウイルス感染

では、いわゆる「急性咳嗽」の原因である感染症、そこに抗生物質は必ず必要なのでしょうか?

風邪や気管支炎など、急性気道感染症の原因の約90%は「ウイルス」によるものであり、細菌感染の関与はごく一部に限られます。


ところで時々誤解をされるのですが、「細菌」と「ウイルス」はまったく違う生き物です。

そして、抗生物質は「細菌」に対して効果を示すものであり、「ウイルス」が原因であれば、抗生物質はまったく効果がありません(コロナウイルスには抗生物質が効かなかったので、これだけ大パニックになったわけですよね・・・)。


細菌性の気道感染症は限られる

一方、肺炎の原因は通常細菌であることが多く、比較的元気な方なら、有名どころでは肺炎球菌、肺炎マイコプラズマ、インフルエンザ桿菌(インフルエンザウイルスとは全くの別物です、紛らわしいですが・・・)、肺炎クラミジアなどが多くを占めています。

確かにこれらは抗生物質が効果を示す病原体ですが、レントゲンを撮ると、肺炎なら当然影が映るので見分けることができますし、採血検査も大きなヒントとなることは多いです。


ただ、確かにレントゲンで影が映らない「気管支炎」が細菌(特に肺炎マイコプラズマや肺炎クラミジアなど)で起きている可能性もないとは言えません。

が、そのような場合でも、症状の特徴(細菌性なら通常38℃以上の熱が出たり、脈拍や呼吸が速くなるという症状が伴います)や周りの状況(肺炎などの細菌感染症の方が周りにいたか)、その時の流行状況などから判断できる場合も少なくありません。


とはいえ、現実は100%見極められるわけはありません。

専門医でないと見極めが簡単でない上、我々専門医でも100%の精度で見極めるのが不可能ですので、結局は「念のため抗生物質を使いましょう」という戦略になってしまいがちなのです。


「念のため抗生物質」って正しいの?

では、「念のための抗生物質」という作戦には、問題はないのでしょうか。

最初にお話した通り、急に出てきた咳の90~95%は、抗生物質は必要な状態ではありません。

残りの5~10%のうち、しっかりと診察をすれば、相当数の抗生物質が必要な病気を見極めることができます。

そうすると本当に抗生物質が必要か迷うのは2~3%程度の確率となるでしょう。


「抗生物質」には副作用が・・・

一方で、こんなデータもあります。

風邪で抗生物質を使用した際、下痢や吐き気、嘔吐、皮疹など、副作用による症状が起きる確率が、他の症状を緩和する薬のみを使用した際と比べるとおおよそ2.6倍に増えてしまったというデータですCorey GR. et al. Short-course therapy for bloodstream infections in immunocompetent adults. Int J Antimicrob Agents. 2009;34(4):S47-51

特に下痢は、腸の中の腸内細菌のバランスを崩して起こってしまうケースが少なくなく(腸の中の善玉菌が抗生物質で殺されちゃうわけです)、そうすると体の他の部位にも長く悪影響を及ぼしたり、免疫力がかえって下がってしまったりするリスクもあるわけです(今話題の「腸活」と逆のことをしてしまっているわけですね)。


「抗生物質」と「耐性菌」

また、このブログでもお書きした通り、抗生物質は、頻繁に使うことでそれに効かなくなる「耐性菌」を生み出してしまうという側面もあります。

そしてこれは、いわゆる「なんでも効く抗生物質」でより顕著におきやすくなります(つまり裏返しである「何にも効かない耐性菌」を生み出しやすくなるのです)。


お金もかかっちゃう

もちろん抗生物質もタダではありません。
もし診断を外したら(皆さんの財布にも、そして国にも)余計なお金もかかってしまいます。


細菌性だって自然治癒はありえる

そして実は、細菌感染が関与する場合でも、抗生物質を使用しなくても自然治癒することは少なくないのです。

急性気管支炎で抗生物質を使用しても、咳の持続期間を大幅に短縮する効果はないとする研究報告が実は多いのです。


すぐに抗生物質に飛びつかない「延期処方」とは?

それでは、2~3%の可能性のために、ここまでリスクを負う必要が、果たしてあるのかということを考える必要があります・・・。

そんな中、最近では抗生物質の「延期処方」という考え方に注目が集まっています。
最初からむやみに抗生物質を使用するのではなく、その後の経過が思わしくなかったり、あとから細菌性感染と分かったらそこから抗生物質を開始するという方法です。

2023年のシステマティックレビュー(こちらのブログで紹介した、一番信頼度が高いタイプのデータですね)では、抗生物質をすぐに投与した場合と、延期処方をした場合で、発熱、痛み、咳、鼻水などの症状の改善までの期間には差が出ず、症状が悪化して1か月以内に再度受診した割合も差が出なかったとのことでした。

そして患者さんの治療満足度にも差は出なかったとのことです。Spurling GKP, Dooley L, Clark J, Askew DA: Delayed antibiotic prescriptions for respiratory tract infections

もちろん耐性菌リスクの低減やお金の面では大きなメリットはあるため、この結果から考えると、やみくもに抗生物質を使うことはあまりいい方法とは言えないということになります。


私たちが考える「抗生物質を使用すべきケース」

一方、私たちが咳で抗生物質を必要かなと考えるのは、以下のようなケースです。

・症状から細菌感染症(発熱、呼吸困難、胸痛、湿性咳嗽)を疑い、採血やレントゲンなどから、今後抗生物質がないと悪化しそうと判断した場合。

発熱をきっかけとして乾いた咳が続いており、他の原因(喘息、アレルギー、胃食道逆流などなど)の特徴がなく、周りにも同じような症状の方がいた場合(マイコプラズマ、クラミジアなどを疑います)。

百日咳が疑われる場合:夜間の激しい発作性の咳、吸気性に笛のような音を伴ったり、周りにそんな症状の方がいたりする場合。

副鼻腔炎の症状が比較的重い(膿のような鼻水、顔面痛、発熱の症状が長引く、また一度下がった熱が再度上がってくる)場合。

基礎疾患(高齢者、COPD、慢性気道感染、糖尿病など)がある場合(免疫力が弱いので、最初がウイルスでも弱ったところに細菌が襲ってくる「二次感染」というケースがあります)。


逆にこれに当てはまっていなければ、すぐに抗生物質に飛びつくのはあまり得策とは言えないかもしれません。


抗生物質は適材適所で!

咳が続くからといって安易に抗生物質で治療することは、患者さん個人にとって思ったよりもメリットはなく、デメリットも案外多いものです。

そして、無駄な抗生物質の使用は、耐性菌や医療経済の面といった社会の面からもデメリットが少なくありません。

やはり、しっかりとした医師の判断で使っていただきたい薬剤だなって思いますので、診察の時にはしっかりと医師とコミュニケーションをとって、納得した治療を受けて頂きたいなと思っています!


最後にお知らせ!

そのような咳の方に当院を是非ご利用頂きたいのですが、当院に受診希望の方のお問い合わせが非常に多く、一方そのご希望に十分お応えできていない状況です。

中でも「当院の新患予約が全く取れない」というお声を多くいただいております。


当院では、新患のご予約は数日前からしか開放しないことになっています。

以前は無制限だったのですが、そうすると1か月以上前からご予約が埋まってしまったうえに、その後症状が改善したなどで無断キャンセルとなってしまった例が相次いだための対応ですので、ご理解頂けましたら幸いです。

言い換えると、新患枠は毎日順次空いていくということでもあります。

ですので大変ご面倒をおかけしますが、受診ご希望の方は適宜予約サイトをご覧いただきますようお願いします(内科・呼吸器科医師枠であれば、2~3日後と割と直近でもお取りできることはあるようです)。

※なお、どの枠が何日前に空くかとのご質問には枠の管理上お答えいたしかねますのでご了承ください。

また4月以降は、さらに呼吸器診療枠を拡張する予定です(詳しくはまた後日お伝えします)。

加えて、当院では今年の夏以降、お隣平塚で、新しく当院と同様のコンセプトのクリニックを開設することとなりました!

当院の今の規模ではなかなか皆様の需要にお応えでできていない現状を、根本的に解決しようと、我々も今回大きなチャレンジに踏み出すことに致しました!

こちらも少し先の話になりますので、詳細が決まり次第、皆様にお知らせしたいと思っております!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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