医師ブログ

2020.12.31更新

今年も1年間加藤医院をご愛顧いただき、誠にありがとうございました。
さて、今回は激動の2020年の加藤医院を、この場で少し振り返りたいと思います。


2020年は1月の診察室の模様替えから始まりました。これに伴い私と加藤医師の診察室が入れ替わりました。またX線透視装置を撤去し、内視鏡室を移動しました。

そして春に数名の新しい事務スタッフを迎えたところでコロナの流行が始まりました・・・

当然この時期はまだまだ風邪が流行る時期でもあり、多くの発熱した患者さん、咳や痰の止まらない患者さんがいらっしゃいました。
我々もコロナのことがまだよくわからない時期であったため、かかりつけの患者さんやスタッフのことを考えた時に、発熱患者さんを受け入れるかどうかの決断を迫られました。
しかし、このころにはかかりつけの方にとどまらず、周りから医療機関を受診できなくなった発熱患者さんの相談を多く受けるようになっていました。この頃は総合病院の発熱外来くらいしか受け皿がない状態でした。
一方、私自身がつい1年前まで市立病院での感染対策チームで活動していたその経験から、いわゆる飛沫、接触感染であるコロナは、しっかりした対策を取れれば患者さん、スタッフへのリスクをある程度しっかり抑えることはできるだろうという見込みを持っていました

最終的には、自分たちがしっかりと発熱患者さんに対応することで、当院が発熱して困っている方の受け皿になり、さらにそれによって総合病院の負担を少しでも減らせればとの結論に至り、発熱患者さんの受け入れの継続、院内の大改造へと舵を切ることとしました。



まずは受付のパーティションを設置し、待合の椅子をすべて交換し、個別の椅子にした上ですべての椅子の間にアクリルパーティションを自作しました。
待合椅子パーテーション

 

そして、移動した内視鏡室を、検査のない日は発熱診察室としても使えるようにし、いままで点滴室として使用していたエリアを発熱外来専用待合室に改造しました。

第3診察室

発熱待合室

 

幸い昨年1年間、当院では院内感染、クラスターの発生はなく、私を含めスタッフへの感染も生じておりません。

6月には加藤医院が加藤浩平先生から正式に私浅井偉信が加藤医院を継承し、新体制での船出となりましたが、加藤医師の診察は週2回継続しており、特に患者さんの当院の使い勝手にはお変わりはないものと思います。


7月からは1か月遅れで特定健診、9月からは予定通り高齢者検診が始まり、お受けいただいた患者さんからは幸い病気の早期発見につながった方が何名もいらっしゃいました。

9月には新しい体制のもと、念願であったトイレの改装をはじめ、

トイレ

 

診察室のドア変更などの工事を施行、

診察室

 

続いて11月には受付、待合エリアの壁や床の張替え、荷物置き台の設置などを実施し、より過ごしていただきやすいクリニックを目指し歩を進めています。
受付

 

また新しい看護師が新たに仲間に入り、より充実した診療体制になりました。

10月からはインフルエンザの予防接種が開始し、コロナ禍の中少しでも密を回避しながら一人でも多くの方に接種いただけるように致しましたが、それでもご希望にお応えすることができないケースもありました。この場を通じてお詫び申し上げます。
12月には新たにネット、電話、窓口で受付可能な即時予約システムが稼働し、我々もまだ手探りな状態でありつつも徐々に慣れつつあるところで2020年を終えました。

というわけで、この一年間は世の中がコロナ禍で激変する中、当院は加えて院長交代、呼吸器アレルギー専門診療2年目、ハード、ソフトの変更、スタッフの入れ替わりなどで、加藤医院史上かつてないほどの変化があった1年だったように思います。
度重なる変更で患者さんにも少なからずご負担、ご迷惑をお掛けしている面があろうかとは存じますが、今後も安心して快適にご受診いただけるクリニックを目指す過渡期とご理解いただけると幸いです。
どうぞ皆様2021年も加藤医院をよろしくお願い致します。


なお新年は5日より診療を開始します(県の要請により29日、30日と発熱患者さんの対応をさせていただいた影響で、1日開始を遅らせていただきました)。
報道の通り、茅ヶ崎も例外ではなくコロナ陽性例は大幅に増えており、当院でも複数の陽性例が出ています。
しかし私の印象では、少なくとも当院で確認した陽性者の多くはやはり接触者で、自身の不注意ではなく、避けられないシチュエーションだった方がほとんどな印象です。

報道では人々のモラルの低下を嘆く声も多いですし、あたかもモラルが低いから感染すると言った論調も聞こえてきますが、私がここ茅ヶ崎で見た限り、ここではそのような方は少なくとも多数派ではなく、大多数の方はしっかりと感染対策を理解し、対応をされているように思います。

そもそも冬は風邪(=ウイルス性急性上気道炎)が流行りやすい季節なのです。
24時間365日引きこもっていない限り、誰だっていつ感染するかわかりません。


どうか感染した方を責めることなく、周りや社会で温かくサポートしてほしいと思います。

そして感染を隠す空気を決して作ることなく、皆さんが体調のトラブルについて気軽に相談できる世の中の雰囲気であり続けることを切に願っています。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.12.09更新

2020年も12月に入り、間もなく悪夢の1年が終わろうとしていますが、相変わらず年の瀬までコロナ、コロナの世の中です。ここ茅ヶ崎でも、都会ほどではないですが連日陽性者の報告が上がっています。

海外ではワクチンの接種が始まり、わが国でも来年には始まるでしょう。ワクチン接種がどのような結果を生むのかは誰にもわかりませんが、1日も早く通常の世界に戻ることを切に願っています(あー、忘年会、やりたかったなあ・・・)

さてまだまだ落ち着かないコロナ禍の中、市中では自由診療におけるPCR検査が注目されているようです。安価で提供できるPCRセンターが街中にでき、予約が殺到しているとの報道もありました。

検査に関しての結果の確からしさという点では、以前にもこちらのブログで触れています。
まずはPCR検査の結果は絶対ではありません。とはいえ、現時点でコロナの診断のゴールドスタンダードはやはりPCRですあくまで医療機関、検査機関で正しく検体を扱い、精度の高い検査機関で行ったものに限ります。安くてもこの部分がいい加減な検査は論外です)。

では自費でのPCR、これってやはり「あり」、なのでしょうか。
テレビや雑誌では相変わらずPCRの議論が喧しいですが、ここらでもう一度冷静に検査の原理を復習しながら、その意義と問題点を考えてみたいと思います。

以前の記事で感度、特異度の説明をした際、特異度を90%と仮定し、偽陽性が多く出る可能性があると書きましたが、実際PCR検査の特異度(=病気でない人を正しく陰性と判断できる確率)はもっと高いようです(つまり病気がないのに陽性となる確率が低い=陽性と出たら病気である可能性が高いということ)。
基本的に微量の遺伝子を増幅して検出するので、ごくごく少量のウイルス遺伝子でもしっかりと拾い上げることができるためです。

それでも100%ということはあり得ないと思います(特異度が100%なら偽陽性は存在しないことになりますが、実際に体操の内村選手など、偽陽性のケースが実際に報告されていることがその証拠です)。これは検体の中に他の検体のウイルスが混入する可能性もあるためと言われています(クロスコンタミネーションと呼ばれ、他の感染症検査でも珍しくない要素です。今の検査の現場はおそらく検査数も多く非常に忙しいため、どんなに対策をしていたとしても混入を完全に防ぎきれない可能性はありえるでしょう)。

とはいえ、特異度は99%かそれ以上はあるとのことですので、ひとまず偽陽性のケースは(ありえることではありますが多くはないと考え)、ここでは置いておきましょう。

自費PCRを受ける方の受診動機は何でしょうか。
おそらく出社や会合に出るために必要である、出社や会合に出るために必要である帰省するために確認したい、高齢者や病気の方と会うときにリスクを排除しておきたい、などではないでしょうか。
となるとやはり自費PCRを受ける方の目的は、多くの場合「自分が陽性であったらどうしよう」ではなく、「自分が陰性であることを確認しよう」というのがほとんどなんだと思います(もちろん例外はあるでしょう)。

検査の動機

しかし、この検査は陽性に出ることに意味がある検査なんだと思っています。

その理由をご説明します。

この検査は特異度が高い一方、感度はそれほど高くありません。

特異度が極めて高ければ、前に書いた通り、陽性と出れば、その人がコロナである可能性はかなり高いといえるわけです(本当にそう言い切れるかどうかはまだ議論の余地があります。さきほどのクロスコンタミネーションの可能性もありますし)

一方感度(=病気の人を正しく陽性と判断できる確率)はそれほど高くない検査でもあります。
例えば感度が70%とすると、病気の人を陽性と出せる確率が70%ということです。つまりコロナの人のうち、30%は見逃すということです。

図で表しましたが、この場合、検査前の確率が高い場合、「陰性だけどコロナである可能性」は上がります一方検査前の確率が低い場合は「陰性だけどコロナである可能性」は非常に少なくなります。

検査前確率

ということは、その人の検査前の感染確率によって解釈を変えなければならないわけです。

ところが検査前の確率はその人その人によって大きく変わります。
例えば濃厚接触者は当然検査前確率が上がります(が、このケースではそもそも「行政検査」となり、費用は公費負担になります)が、毎日飲み屋で感染対策をせずに飲み歩いている人も検査前の確率は高くなるでしょう。
一方買い物以外では出歩かず、常に感染対策を怠らず、周りに風邪をひいた人がいない場合は検査前の確率は低くなるはずです。
当然その中間の人も多くいるでしょう。

これらの人は、それぞれ検査結果の解釈に違いが生まれるはずなのです。
検査前確率が高い人は、結果が陰性でも結構な確率で偽陰性があり得るということです。この状態で陰性だからと安心してしまうのは危険です。
一方検査前確率が低い人は、結果が陰性がでればまあ確からしいのですが、それは検査をしなくても大きな変化はないともいえるのです(検査前確率が低い人が検査でひっくり返る可能性は極めて低いわけですから)。

となると、やはりPCR検査は、「陽性がでてなんぼ」の検査というわけです。
陰性はコロナじゃないことの証明にはならないわけです。ただ陰性の結果を欲しい人にはあまり向いていない検査なのです。

あまり出歩かない検査前確率が低い人は、そもそも検査を受ける必要性が低いわけですし、検査前確率が高い人は、陰性でもコロナである可能性が他の人より高くなるので、その解釈に気を付けなければならないわけです(検査前確率を自ら高める行動をとっている人が、この原理を理解せずに陰性で喜んでしまう事態が一番怖いとも言えます。厳しいこと言うようですが、このような行動をとってしまっている人は自費PCRを受けるべきではないといってもいいのかもしれません・・・)。

この検査前確率はやはり第三者である我々医療機関が保険診療で問診、診察で判断して、陽性の可能性を高めたうえで行うべきだと考えます(検査を絞ろうという意味ではないです。もちろん必要な検査はどんどん出しますよ)。
やっぱり一般の方が自由に受けられてしまう自費PCR検査は、このような面から何かと問題がある気がして、もやもやしている今日この頃です。

というわけで、当院では現在保険診療でPCRを行えるように準備を行っています。従来通り抗原検査もコロナ、インフルエンザ双方とも準備をしており、状況に応じて使い分けるように計画しています。困ったらお気軽にお電話にてご相談ください。

あと、上記の理由にて当分自費PCRは行わない予定ですが、医学は一昔前の常識が非常識となる分野です。今後も柔軟に、その時のベストを考えられる加藤医院でありたいなと思っています。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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