医師ブログ

2021.07.12更新

新型コロナワクチンの接種が進んでいます。
茅ヶ崎でも高齢者の方の接種完了にある程度メドがつき、茅ヶ崎市のシステムでは本日から60-64歳の方のワクチン接種予約が始まりました。

当院でも先週から16~64歳の方に対するワクチン接種予約を開始しています。
全国的にはワクチン供給量の不足が報じられており、まだ見通しが不透明な部分もありますが、茅ヶ崎市はワクチン確保に頑張ってくれているようで、7月にもそれなりの量が入ってくることになったようです。
我々のような個別の医療機関にどれくらい配分されるかはまだわかりませんが、配分量、時期が決定し、配送の目安がつき次第、順次予約枠を開放していきます。


予約開始日時、予約枠などの詳しい内容は逐一下記ページでお伝えし、また当院のLINE公式アカウントでも最新情報をタイムリーにお伝えしておりますので、是非ご活用いただければと思います。

一般の64歳未満の方への新型コロナワクチン接種について

当院のLINE公式アカウント登録は以下よりどうぞ

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さて今回は、最近の外来で皆さんからよくお伺いすることについて書いてみます。

茅ケ崎市ではコロナワクチンの接種を、当院のような医院での個別接種に加え、茅ヶ崎市の施設や公民館などで行う集団接種、それに企業内で行う職域接種でも行っています。
今後変更のある可能性はありますが、現在のところ当院のような医院での個別接種はファイザー社のワクチン集団接種はモデルナ社のワクチンを使用することが多くなっています。

では、このファイザーとモデルナのワクチン、何が違うのでしょうか。このことについて書いてみようと思います。

まず、ファイザー、モデルナのワクチンは、いずれもmRNAを使用したワクチンとなります(mRNAワクチンとはなんぞやという方はこちらへ → 2021.2.21 いよいよ新型コロナワクチン接種開始! ~ところでコロナワクチンってどんなもの?~
ファイザー社のワクチンは、実はドイツのベンチャー会社であるビオンテック社が開発した技術をベースに開発されています(ファイザー社がビオンテック社に開発協力をした形です)。
ビオンテック社は以前よりRNAをがん治療に用いることを目指し医薬品開発をしていた企業です。

一方モデルナ社もmRNAを用いるワクチンなどの医薬品開発を目指して設立されたアメリカのベンチャー企業です。

ということで、どちらも実は大企業が財力に任せて何もない所から新たに開発したというわけではなく、これらのノウハウをすでに持っていた企業の技術が、今回の事態になり初めて活かせるようになったという経緯のようです(こんなに早く開発できるのはおかしいという人もいますが、もともとのベースはコロナ前からすでにあったわけですね。その他にも理由はあると思いますが、それらはこちらに)。

同じシステムを用いている両社のワクチンですが、全く同じものというわけではありません。

内部に含まれるmRNAの量が違ったり(モデルナの方がファイザーより大きいmRNAを使用します)、mRNAを包む脂質の膜に使われている脂質の違いがあったりします。

また両者には、保存方法の違いファイザーは-90~-60℃、モデルナは-20℃で保管)があります。
ただこの違いの根拠は実は明らかにはなっておらず、おそらく双方のワクチンの安定性に大きな違いはないだろうと考えられていますファイザー社はやや安全圏を広くとって考えているようです。実際ファイザーのワクチンは新しいデータが出たことにより、保管条件がここ1か月ほどで緩和されてきています)。International Journal of Pharmaceutics Volume 601, 15 May 2021, 120586

また使用間隔にも違いがありますファイザーは3週、モデルナは4週空けて2回)。
これも、治験のやり方の違いがそのまま使用方法の違いになったためです。
動物実験や少数の人への治験(第1相試験といいます)で得られた結果は、さらに大人数での試験を行う(第2相、第3相試験といいます)時の基礎になります。
この得られた基礎データを活かすときに、ファイザーのワクチンでは3週間、モデルナのワクチンでは4週間空けて治験をするという判断の違いが出たわけです。
これは基礎データに対する解釈の違いであり、現時点では両者が異なるということを必ずしも示すものではありません。

次に効果ですが、これも両者ほぼ同様で、ファイザーが95%、モデルナが94.1%の発症予防効果が示されています(発症予防効果とは?という点についてはこちらからどうぞ)。
両者に大きな差はないと言っていいでしょう。

ただほんのわずかだけ違いを見つけるならば、治験では両方ともほぼ全ての人に抗体ができたものの、モデルナの方がほんの少しだけ(数日程度)早く抗体ができる可能性があるかもという報告がありました。
これはモデルナのワクチンはファイザーに比べて、使用するmRNAの量が多いためではないかとされています。https://www.news-medical.net/news/20210622/Do-the-Moderna-and-Pfizer-COVID-19-vaccines-elicit-different-antibody-responses.aspx(not peer-reviewed)
まあこれも判断材料になるほどの差ではないように思います。

副反応についても両者は近い結果になっていますが、全体的にはモデルナのほうがファイザーよりも副反応の頻度は高い傾向があることが報告されています。Eur Rev Med Pharmacol Sci 2021; 25(3):1663-1669
特にモデルナでは、いわゆる「モデルナアーム」と言われる、ワクチン接種の後にやや遅れて(4~11日後)腕がかゆみを伴って赤く腫れる現象が0.8~3.5%に起こるようです。N Engl J Med 2021; 384:403-416、厚生労働省研究班
これはファイザーではあまり見ない副反応です。
とはいえ基本的には自然に改善し、症状が強い場合は痛み止めや抗アレルギー薬でだいたい対処できます。後はこれが起こっても特に2回目の接種の可否には影響はありませんので、あまり気にすべきことでもないかもしれません。

 

アナフィラキシーは一見ファイザーの方が多く見えます(報告ではファイザーは100万回に4.7回、モデルナは100万回に2.5回)。
しかしアナフィラキシーの頻度は非常に少ないため、1件の差でも数字が大きく変わる数字のマジックも考える必要があります。
また同じ条件で比較した数字ではないので本来は直接比較をすべきではなく双方とも大きな差はない(つまり、どちらも非常にまれ)と考えていいと思います。

そして変異株についての効果ですが、これも双方の違いを直接比較する報告はありません。
これらのmRNAワクチンは、多少発症予防効果が低下する可能性は言われているものの、未接種時と比べた発症予防効果は十分に保たれているとの報告が多いです。
今一番蔓延が危惧されているデルタ株(いわゆる「インド型」)に対しての最新のデータは以下の通りです。

両者とも十分な効果はあると考えてよいでしょう。

 英国の研究
ファイザー:1回接種で33%、2回接種で88%の感染予防効果。
アストラゼネカ:1回接種で33%、2回接種で60%の感染予防効果。

 カナダの研究
ファイザー: 初回接種後14日以降に56%、2回接種後87%の感染予防効果。
モデルナ:初回接種後14日以降に72%の感染予防効果。
アストラゼネカ: 初回接種後14日以降に67%の感染予防効果。
(モデルナ、アストラゼネカでは2回目の投与については十分なデータなし)

 イスラエルの研究
ファイザー: 2回接種で64%の感染予防効果。
(調査期間中に感染した人数が少なく、無症状の感染も含まれている可能性あり)

 スコットランドの研究
ファイザー:2回目接種後14日以降に79%の感染予防効果。
アストラゼネカ社:2回目接種後14日以降に60%の感染予防効果。

これらはまだ生データの段階のものも多く、より統計学的にデータを処理する必要があるものも多く残っていますので、はっきりとしたことはもう少し待たないと言えないかもしれませんが、大きく覆ることもないでしょう。

いずれにせよ、何とか違いを見つけようと頑張りましたが、違いはやはり小さいものでした。

ここで最後に、東京都の感染者数の推移を見てみましょう。

こちらが全体の感染者数の推移です。


東京都感染者数


一方こちらが65歳以上の感染者の推移です。

65歳以上東京都感染者数

いずれも東京都ホームページ

 


現在(7月8日時点)東京では65歳以上の方の中で、1回目接種完了が約75%、2回目接種完了が約50%とのことです。
65歳以上のワクチン接種が進んだ5月以降、明らかに全体の感染者数と65歳以上の感染者数の動きに違いが出ています。

これが、「ワクチンの効果」、なのでしょう。

というわけで、両者には確かに副作用の種類や頻度など、細かい所に違いはあります。

でもワクチンを打つのなら、その細かな違いに特に深いこだわりがない限り、両者の選択よりもまずは「射てる時に射てるものを射つ」、という姿勢でいいんじゃないかな、って思います。

 

最後に。おかげさまで当院のホームページが月100万PVを達成しました。
100万PV
特にアフィリエイトをやっているわけでもないので、1円の収益にもなるわけではありませんが(笑)、良くも悪くもさまざまな情報が飛び交うこのご時世、なるべく少しでも正確な情報を広めていきたいと、診療終了後や休みの日に眠い目こすって書いています。
この「医師ブログ」も、小難しい医学の内容を、なるべく多くの方に理解していただけるように「翻訳」をしながら書いているつもりです。

これをお読み頂く皆さんが、医学や病気、ご自身のカラダに興味を持って、正しく理解を深めていただくことを心より願っています。

そのお役に、このホームページが少しでも立っていられるよう、今後も気合いを入れて書いていきます!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.05.20更新

前回の1回目のワクチン接種後レポートはこちら
2020.5.4 ワクチン打ってどうなった?? ~コロナワクチン接種レポートその1~

全国の自治体で、コロナワクチンの接種が始まろうとしています。

そしてここ茅ヶ崎でも、コロナワクチンの接種がいよいよ本格化します。
集団接種は6月に入ってからですが、ワクチン配送が今週後半から開始され、クリニックで行う個別接種は来週から始まる医療機関が多いようです。

当院も来週から高齢者のワクチン、それに医療従事者のワクチンの接種を開始します。

高齢者ワクチンに関しては、当院に2020年7月以降におかかりの方(今後新規で受診される方も含みます)を対象に、窓口予約のみで接種を受け付けています(市の予約システムは使用しませんので、当院接種ご希望の方は使用なさらないようによろしくお願い致します)。詳しくは以下のページをご覧ください。

当院の一般高齢者へのワクチン接種について

また医療従事者の接種に関しては告知が十分でなく大変申し訳ありませんでしたが、当院では1回目の接種をご予約の方は全て当院で3週間後に2回目を接種いただくこととしております(1回目の接種の反応を我々が把握している方が、2回目のリスクマネジメントを行いやすいという理由からです)。
当院で接種希望の際は、県の予約システムより、1回目の分のみのご予約をお願い致します。
該当の方は以下のページをご覧いただきますようよろしくお願い致します。

当院の医療従事者へのワクチン接種について

というわけで、当院スタッフもこの度2回目の接種を迎えました。
今回は前回の1回目の接種後の様子に引き続き、2回目の接種後の様子をレポートしたいと思います。

今回のワクチンは、海外の統計や、本邦の今までに接種した医療従事者の報告から、2回目の副反応が比較的強い傾向があることが分かっています。
前回の接種時には、接種し割とすぐに症状が出た人と、やや遅れてから症状が出た人がいました。今回はそのことを勘案し、14日の金曜組と15日の土曜組に分かれて接種することとしました。

みんな揃って日曜日に苦しんでほしいという、院長の親心です(笑)

私は前回のブログでお伝えした通り、軽かったものの接種翌日に症状が出ていたので、土曜日を選択しました。
1回目の接種では、かなり奥まで針を刺されたものの、ほとんど痛くなかったとレポートしました。
今回ももちろん同様の針を、同様の打ち方で接種します。
まずは他の医療スタッフを私が接種していきます(基本的には副反応の頻度として筋肉痛が多く出現し、動かしづらくなるため、1回目と同様に利き手ではない方の上腕へ接種しています)。

「いたっ!」

今回は何人かのスタッフが多少痛がります。俺、調子悪い?
一方、前回同様ほとんど痛くないというスタッフもいました。

最後に私の番が回ってきました。手技に熟練した当院看護師に接種してもらいます。プスッ

あれ、痛っ・・・!

注入時の痛みはあまりないのですが、針を入れた後の痛みが前回よりはやや強い印象でした。

そして、私の場合は、針を抜いた後もなんか結構チクっとした痛みが続く印象でした。
感覚的には腕に点滴針がずっと入っている感じ?なんかものがずっと刺さっている感じです(当然実際針はとっくに抜いているのですが)。とはいえ、我慢できないほどの痛みではありません。インフルエンザワクチンの皮下接種と同じくらいでしょうか。

他のスタッフの反応を見ても、刺されるときに1回目よりは痛いと感じる頻度は上がるのかもしれませんうちの看護師が打っても痛かったんだから、決して私が下手だったから、ではない、はずです・・・

というわけで、強いと言われる2回目接種後の副反応、覚悟して帰宅し、待ち構えることとしました。

まずは接種後の夜です。
チクっとした痛みがそのまま鈍い痛みとなり、筋肉痛になってきました。
筋肉痛はほぼ前回と一緒です。
腕から肩、首にかけての多少のだるさも出ています。
しかしまだ全身のだるさ、発熱などは出ません。とりあえず覚悟しながら床に入ります。翌日寝込んだ時に備え、本や飲み物を取り揃えて・・・


2日目起床、覚悟しましたがそこまでではありません。
朝はいつもだるいので・・・それとほぼ同じような感じです。一方腕の痛みは昨日よりはやや強いようです。

2日目は完全ダウンの覚悟でしたが、思いのほか大丈夫だったので子供の遊び相手、勉強の面倒、部屋の片づけなどを行いました。
さすがに昼頃はややだるくなりましたが、調子に乗って動きすぎたせいかもしれません。(またこの週は過去にないくらいの多くの患者さんにお越しいただいていたので、正直相当疲れており、接種後の副反応なのか、ただの疲れなのかはよくわかりませんでした)。
午後は動きをセーブしたところ体調は回復、夕にはほぼ普段通りの状態に戻り、腕の痛みもこの頃にはだいぶ良くなってきました。

そして月曜日出勤。
体調はほぼいつも通り。
腕の痛みもほぼ気にならない状態となり、私の場合2回目の接種後の経過中は一度も37.0℃を超えることはありませんでした。

結局私の場合は接種後の副反応としては1回目と比べて極端に強かったという印象はありませんでした。

職員も大多数は体調に問題なく、当初用心して減らした受付枠を通常運用とし、当日は診療することができました。
しかし、みんなに前日までの調子を聞いてみると、38℃以上の発熱をきたした人接種後2日間寝込んだ人、一部には月曜日までだるさを持ち越した人など、やはり1回目よりは強い副反応に苦しんだ人もいました。
そしてその人たちは解熱鎮痛薬(カロナールやロキソニンなど)を飲むと落ち着いたようです。

一方、1回目とあまり変わりないというスタッフも数人はいました。
また副反応の出る時期も、打ったその日から出て次の日には落ち着いた人、打ったその日には何もなく、翌日昼から悪化した人などさまざまでしたが、月曜日に通常業務ができたことを考えると、やはり1回目の副反応の出方は2回目の副反応のピークの予測に使えるのかもしれません。

今回の当院スタッフの副作用をグラフにして比較すると、やはり発熱、だるさは2回目の方が比較的強そうです。
とはいえ、1回目と変わりなかったり、2回目もあまり出なかったりしたスタッフも何人かはいたようで、全員が必ず2回目にキツくなるというわけではなさそうでした。
たぶんこれはもう運です・・・

腕の痛みについては、針刺入直後は2回目の方が痛そうですが、その後は1回目とあまり変わりはなさそうでした。

1回目接種後副作用

1回目接種後

 

2回目接種後副反応

2回目接種後
(振られた番号は1回目の番号と同一者ではありません)


というわけで、今後接種される皆さんの参考になるかはわかりませんが、2回の接種を通じて得られた当院のレポートを報告してみました。

接種が不安となっている方の、多少の一助となれれば幸いです。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.05.04更新

遅ればせながら、茅ヶ崎でも一般高齢者の方への新形コロナワクチン接種の準備が進んでおり、今月末ごろから当院でも接種が開始できる予定です。

当院では現在、通院中の方にワクチン接種のご希望をお取りしています。
当院での接種をご希望の方から、リスクや年齢を考慮しながら当院の責任で接種順を決定させていただいております。

→当院の新型コロナワクチン接種ついて

今回のファイザー社の新型コロナワクチンはインフルエンザワクチンとは違い、1バイアルから6人分採取(インフルエンザワクチンは2人分程度)との人数的制約一般冷凍庫で2週間、解凍後5日間、分注後6時間などとの時間的制約がとにかくキツいので、接種体制が複雑にならざるを得ません。
加えて並行して行う通常診療と、6月からは特定健診事業も始まるなど、とにかくファンキーな未来しか想像できません。
それでも今からアタマとカラダと財布を精いっぱい使って、少しでも来院される皆さんがスムーズに診療、接種を受けていただけるような運用を目指していきたいと思います。

これに先立ち、ようやく我々医療従事者のワクチン接種も開始されました。
当院スタッフにも先日1回目の接種を実施しました。


加藤先生も
加藤先生ワクチン接種


私も
浅井院長ワクチン接種

というわけで今回は、今後接種される皆さんの参考になればと、我々のコロナワクチンの接種レポート第1弾をお送りしたいと思います。

私たちは4月23日午後6時ごろに接種を行いました。

ご存知の通り、このワクチンは筋肉注射で行います。
イメージとしては痛そうな筋肉注射ですが、実は理論上は筋肉注射の方が痛くないとされています。
垂直な分、知覚神経が多く分布する皮膚に近いエリアを最短距離で突っ切ること、筋肉には痛みを感じる知覚神経が少ないことが理由とされています。

でも、実のところ、私たちの多くは、筋肉注射をされた経験がありません。
そして・・・今回使用する(ワクチンと同時に配られる)針、結構長いんです。
針の長さは25mmあり、これを垂直に差すわけです。結構インパクトあるなあ・・・

ワクチンシリンジ針

まあしかし、これにもしっかりと根拠はあるわけです。

統計上ほとんどの場合、BMI18-19以上の方では25mmの針をしっかり垂直に刺すと、しっかりと三角筋の中に到達し、かつ骨には届かないとのことだそうですNakajima Y,et al.Hum Vaccines Immunother.2020;16(1):189-196 
ちなみにこれ以上やせている方の場合は16mm程度の深さとし、男性118kg、女性90kg以上の方では38mmの針を用いることを検討するそうです。

というわけで、私たちも推奨されているように25mmの針をしっかりと垂直に、奥まで刺しました。ブスッ。

あれっ、痛くない・・・

そう、感想としてはホントに痛くなかったんです。
当院スタッフの間でも、刺されたときにチクッと感じたスタッフが数名、中には少し痛いという人もいましたが、刺されたことに気づかなかったという人も複数いました。
あと、皮下注で行うインフルエンザワクチンの時は、薬を注入するときに痛みを感じますが、筋注のコロナワクチンでは、確かに注入時の痛みはほとんど感じませんでした。
やはり理論通りです。

さて、これからは打った後の経過です。
以前のブログでもお話しした通り、このワクチンは打った後の副反応が比較的多いと言われています。
ですので、まずは私のその後の経過です。

打った直後は特に変化はありませんでした(スタッフも全員アレルギー反応などは起きず、いつもと変わらない様子でした)。
が、帰宅して2-3時間経つと、軽度の接種部位の違和感を覚えるようになりました。
インフルエンザでも打った後には接種部位の痛みを感じますが、この時は腫れた感じの痛さを感じます。一方新型コロナワクチンではやはり薬剤の到達部位の違いでしょう、外から見た脹れはないものの、筋肉が重い感じで違和感を覚えます。
で、当日はこれ以上の悪化はなくそのまま就寝しました。

翌日(2日目)朝、やや痛みが強くなりました。
起きた時に接種した腕を下にすると、あっ、痛いって感じるくらいです。
また少し重いものを持つと痛みはありましたが、腕は上まで挙げられる程度です。

昼になり、多少のだるさを感じました。
とはいっても全身のだるさではなく、私の場合は首から肩にかけてのだるさといった感じで、日常生活には問題あるレベルではありませんでした。
夜には腕の痛みはやや引いてきて、翌朝(3日目)にはだるさは消失、筋肉の違和感は多少残っていたものの、昼にはほぼ消失し、いつも通りになりました。

ただ経過はやはり人によりいろいろなようでした。
下のグラフは当院スタッフの接種後の経過を記録してもらったものをグラフ化したものですが(わかりにくくてすみません・・・)、やはり人によってさまざまでピークがその日の夜に来た人もいれば、24~36時間経過してからピークが来る方もいました。
今回の当院の接種者は20~60代で、今回の接種ではあまり年齢と副反応の強さは関連がない印象でした。

ワクチン副反応1回目
というわけで、翌月曜の診療は通常通りに行えました。
しかし、3週間後に2回目の接種が待っています。
このワクチンの副反応はご存知の通り、2回目に強く出るケースが多いと言われています。
今回の副反応の出方を見て、診療になるべく影響がないようにスケジュールをするつもりなのですが、果たしてうまくいくのか・・・?

次回は2回目接種後のレポートをしてみたいと思います。

というわけで、念のため、5月17日(月)の外来予約は、申し訳ありませんが上記の理由によりあらかじめ通常より枠を減らさせて頂きました。
ただ私自身はどんなにしんどくても医院は開けるつもりでいます。


もし診察室で私が、そして医院内でスタッフがしんどそうにしていたら・・・お察しいただけますと幸いです(笑)

追記:5月14日、15日に当院スタッフは2回目のワクチン接種を行いました。
そのレポートはこちら!

2021.5.20 ワクチン打ってどうなった??完結編 ~コロナワクチン接種レポートその2~

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.04.18更新

トップページにも掲載しておりますが、当院は新型コロナワクチンの接種開始に向けて動き始めています。
当院は一般高齢者の方と、近隣の医療従事者の方へのワクチン接種を行います。
ワクチン供給数、接種体制を考え、一般高齢者向けは、当面の間は当院かかりつけの方のみに限定させていただくこととしました(詳しくはこちらをどうぞ)。
医療従事者の方はこの限りではありませんので、今後開始される神奈川県の予約システム稼働開始をお待ちください(詳しくはこちらをどうぞ)。

というわけで、いよいよ接種開始間近のワクチンですが、いざ始まるとなると不安になる方も多いようです。

特に「私は打っていいの?」という質問が多く寄せられています。

とりあえず接種開始に向け、今回は「私は打っていいの?」という疑問にお答えしてみようと思います。
ややこしくなるので、今回は「私は打った方がいいの?」「ワクチンって大丈夫なの」という議論はしません。ワクチンそのものについての情報については以下をどうぞ。

2021.2.11 いよいよ新型コロナワクチン接種開始! ~ところでコロナワクチンってどんなもの?~

もちろんまだわからないことも多く、また医学に絶対はありませんが、ひとまず現時点でわかっていることがここにまとめられていますので、この中から疑問の解消になりそうな部分をいくつか抜粋して紹介しましょう(なおThe New England Journal of Medicine(NEJM):「ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」は、医学系雑誌の中で最も歴史が長く、最も有名な雑誌です。ここに掲載されている情報の信ぴょう性は医学界では一般的に非常に高いと言われており、我々もコロナに限らず普段から多くの最新情報をこの雑誌から学んでいます)。あくまで今回の内容はこのNEJMに記載されている情報が基本となります。

Q1:「私は打っていいの?」
A1:このワクチンを絶対打ってはいけない人(「禁忌」といいます)は、過去にこのワクチンでアナフィラキシーなどの重度のアレルギーを起こした人(今回は誰もがはじめてこのワクチンを打つので、つまり1回目で反応を起こしてしまった人)、またこのワクチンに含まれている添加物である「ポリエチレングリコール」、またこれと交差反応を起こしうる「ポリソルベート」に重度のアレルギーを起こしたことのある人だけです。
「ポリエチレングリコール」は他にも軟膏剤や化粧品、食品(乳化剤として)など、日常的に多く使われています。また大腸内視鏡検査で用いる下剤(ニフレック®)はまんまこれです。
また「ポリソルベート」様々な薬の添加物に加え、インフルエンザワクチンや13価肺炎球菌ワクチン(プレベナー)、ロタウイルスワクチン、ポリオワクチンなど様々なワクチンに含まれていますワクチン接種後に熱が出た、だるくなった、強く腫れた程度の症状は重度のアレルギーには該当しません)。

つまりこれらに対しアナフィラキシーなどの重度アレルギーが起こったことがある人以外は、すべて「打っていけない」人ではないということが言えます。

Q2:「っていっても、私アレルギーあるんだけど、本当に大丈夫?」
A2:アレルギーを持っているだけではワクチンを打てない理由にはなりません。
上記の添加物以外のアレルギーは問題視されません。つまり食物アレルギー、花粉症、喘息などのあるなしには関わらないということです。
ただしアレルギーを持っている方は接種後15分ではなく、念のため30分の経過観察が勧められます。

Q3:「私は癌にかかったことあるんだけど・・・本当に大丈夫?」
A3:癌を持っていたり、免疫を抑制する薬を飲んでいたりする方は新型コロナの重症化リスクが高いため、できれば接種したほうがいいです。
ただし、これらの人のデータが少なく、安全性や効果のデータは少ないのが現状です。
また免疫機能が低い方では、理論上有効性が低くなる可能性があります(あくまで推定です。データはありません)。

Q4:「何か症状があったらワクチンは打てないの?」
A4:基本的に急性疾患にかかっている方は接種を延期する必要があります。
つまり風邪をひいたり、37.5℃以上の発熱をきたしている方などです。
ただし、この症状が慢性的にある方はこの限りではありません。例えばCOPDの方の咳や呼吸困難、炎症性腸疾患の方の慢性胃腸症状などです。

Q5:「コロナにかかったことあるんだけど、打った方がいいの?」
A5:結論から言えば打った方がいいです。
新型コロナにかかっても、3か月以降は再感染するリスクがあります。かかってから3か月以上経過してから、ワクチンを接種することが推奨されています。

以上、今回はコロナワクチンの疑問の中から、「私は打っていいの?」という部分にフォーカスを当てて情報を載せてみました。
あくまでも任意接種ですし、強制されるべきものではないと思いますが、やはり客観的なデータや分子生物学的な原理から考えると、それほど危険なものとは思えないという印象は持っています。
現時点では、ファイザーのワクチンに関しては、他のワクチンで騒がれている「血栓症」の目立った報告もないようです(因果関係不明の死亡例は某週刊誌が大騒ぎしていますが・・・)。

ワクチン接種も近くなり、ワクチンの情報量も増えてきました。
中には信用性の低いデータや、個人の主張にとどまる情報も少なくないようです。
接種するにせよ、しないにせよ、とにかく信用度の高い情報を正しく理解することで、皆さんが十分納得して判断をしていただければと思います。

私どもも、もうそろそろワクチンが回ってくるようです。私は接種しようと思っていますので、接種したらそのレポートをまたこちらで行いたいなと思います。

あとご報告。
懲りずに行った院内改装工事第4弾が終わりました。
今回はレントゲン室の前、呼吸機能検査エリアから第3診察室入口、処置室(現発熱外来連絡口)入口エリアまでの壁塗装です。
以前はあまり患者さんが入るエリアでなかったため、だいぶ年季が入ったままの状態でしたが、今回ツートンカラーに塗りなおし、だいぶ明るい印象になりました。

 壁塗り替え

壁塗り替え

壁塗り替え


ひとまず予定していた今回の改装工事は一旦完成です。が、古くなっている部分もまだ多く残っており、そのうち続きをやるかもと考えています。改装マニアの方、次回まで今しばらくお待ちください(笑)

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.03.01更新

この土日を使って、改装工事第3弾、中待合から呼吸機能検査エリアにかけての床張り替え工事を行いました。
約30年にわたり皆さんの足元を支えていた床に別れを告げ、受付エリアと同じ、木目の床で統一しました。
また廊下の棚も撤去し、新たなラックに置き換えたことで通路の拡張も行いました。
まだまだ院内の混雑で皆さんにはご迷惑をおかけしておりますが、また少し若返った加藤医院をご堪能いただければ幸いです。

床工事後
また3月中には懲りずに早くも第4弾を予定しております。
工事の影響で、3月22日(月)は臨時休診とさせていただきます。ご迷惑をお掛けしますが、この頃に受診をご予定の方はお気をつけくださいますようよろしくお願い致します。

 

さて前回は、今回日本で接種が予定されているファイザー社のmRNAワクチン「コミナティ」を念頭に、新型コロナウイルスワクチンの仕組み、特徴についてお話ししました。
今回は、いざ皆さんが接種するとなったときの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします(報道にもあるようにワクチンは当分は数に限りがあり、国や県、市などが運用方法を工夫せざるを得なくなることも出てくる可能性があります。今後変更があり得ることは予めご承知おきください)。

まずはこのワクチン、対象は16歳以上です。15歳以下の子供は今回対象にはなっていません。

今回は費用は全額国持ちとなり接種者はタダで受けることができます。

またこのワクチンは基本的には2回打っていただくこととなります。1回目のワクチンを接種してから3週間後に2回目のワクチンを接種するのが基本スケジュールになります。
しかしファイザー社は42日(6週間)間隔が空いても効果があるとの見解を出しており、どうしても3週間間隔で打てない場合もできるだけ早く2回目を打っていただくことで対応します。

2回目のワクチンは1回目のワクチンと同じものでなければならず、別の種類のワクチンを使用してはいけません。

接種する際は発熱していたり、他の急性の病気にかかっていたりしていないことが接種できる条件となります。

妊婦、授乳婦は利益がリスクを上回るときには接種可能とされ、除外はされていません。産科婦人科学会などは感染リスクが高い医療従事者、肥満、糖尿病など新型コロナ感染症が重症化しやすい妊婦は接種を検討するよう提言しています。

また現時点では既感染者といえど再感染しないとは限らず、おそらく既感染の方も接種対象になると思われます(ただWHOは感染後6か月以内の再感染は少ないことから、接種を感染後6か月以降に遅らせることはできるとのスタンスをとっています)。

異なるワクチン(肺炎球菌ワクチンや帯状疱疹ワクチンなど)とは、アメリカでは14日(2週間)の間隔を空けるよう勧告しています。おそらく日本でもこれに近い方向で勧告されるものと思われます。

さて、いざ接種です。

このワクチンはインフルエンザワクチンと異なり、肩への筋肉注射を行います(実はインフルエンザなど、日本で皮下注射で行われているワクチンも、他の多くの国では筋肉注射で行われているのが実情です。実は皮下注射より筋肉注射の方が、効果、痛み、副作用の出現で有利とも言われているのですが、日本では過去に抗菌薬や鎮痛薬の筋肉注射で筋肉が萎縮する後遺症が多発したことがあり、歴史的に筋肉注射に慎重となっていることが原因とされています。ワクチンではこれらの問題は起きていないことから、本来は改めるべきことかもしれません)。

接種後に注意すべきはアナフィラキシーです。
インフルエンザワクチンと比べると5~10倍の頻度と言われており、そのためワクチン接種後は医療者の目の届く範囲に15~30分アナフィラキシーを起こしたことのある人は最低30分待機することが定められています(とはいえ、前回ブログにも書いたように、よく使われる他の薬剤の方がよっぽど高い確率で起こしうるということを知っておくことも大事です)。
アレルギーがあること、アナフィラキシーの既往があることそのこと自体だけで即接種不適当者になるわけではないようです。

前回のブログでも副反応が1~2日経って出やすくなることを記載しました。ほとんどの場合、様子を見るだけでその後は症状も軽くなるようです。
ただどうしても副作用の症状が強く出たり長引いたりしたときは、まずは接種した医療機関やかかりつけに相談となりました。また副反応のための相談窓口が作られるようであり、こちらのチャネルを利用していただくことが想定されているようです。

というわけで、現在のコロナワクチンの注意点を、わかっている範囲でお話ししてみました。

それでは、当院ではどのようにして接種するか、なのですが、残念ながらまだ何も決められません( ノД`)・・・
現在茅ヶ崎市からは4か所の集団接種会場に加え、当院のような診療所や病院で接種できるようにする方向で調整しています。
当院も当然ワクチン接種には手上げをしており、接種会場となる予定ですが、接種開始時期はもちろん、当院にどれくらいワクチンが入ってくるのか(今回はすべて国が取り仕切るようになっており、当院になんら権限がありません)、予約は市が行うようですがそれがどのように行われるのかなど、細かいことの通知がなく、外来での皆さんの疑問にお答えできない状況です。

決まったことがあれば随時このホームページや院内でお知らせしますので、お待ちいただければ幸いです。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.02.21更新

ようやく待ちに待った新型コロナのワクチン接種が日本でも開始されました。
現在は第一線で奮闘されている医療従事者から接種が開始され、今後その他の医療従事者を経て一般の方への接種が始まる予定です。
それに合わせ、昨日厚生労働省からの医療機関向け説明会がウェブで開催されました。
私たちも断片的な情報しか知り得ませんでしたが、この説明会で少しずつアウトラインが見えてきました。
そこで今回はこのワクチンについて、現在わかる範囲でこちらでも解説してみようと思います。

当院でのコロナワクチン接種について
→一般高齢者の方向けページ
→医療従事者の方向けページ

まず今回接種が開始されるワクチンは、アメリカのファイザー社が製造したメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンというタイプのものです(商品名は「コミナティ」というそうです)。

ワクチンの原理ですが、ワクチンとは基本的に体に疑似的に感染した状態を引き起こし、それに対する免疫を人工的に引き起こすことができるようにする手段です。

いままでのワクチンは生ワクチン(症状が出ないように限りなく弱くした病原菌そのものを入れる)や、不活化ワクチン(病原菌にいろいろな処理をして病原性をなくしたものを入れる)などの手段がありました。

人類はこれら生ワクチンや不活化ワクチンを作った多くの経験を持っています。
が、このワクチンをつくるためにはウイルスそのものが必要です。
今回のように全世界で短期間にワクチンを作らなければならない場合、大量にウイルスを培養、複製しなければなりませんが、それには専用施設が必要だったり、培養の時間がかかったりと、すぐにそんなに多くのウイルスを作ることはできないのです。

そこで今回のワクチンではコロナウイルスのメッセンジャーRNA(mRNA)というものを使用することにしました。mRNAはコロナウイルスのいわゆる「設計図」です。

今回のワクチンの目的は、ひとつにはコロナウイルスの表面にある突起物(=スパイクたんぱく質)を攻撃するための抗体を作り出すことです。
そしてコロナウイルスのmRNAの一部分に、このスパイクたんぱく質の設計図が含まれています。
この設計図部分を取り出して、脂質の殻でコーティングしてあげます(RNAはとても壊れやすいので殻で保護するのと同時に、この殻のおかげで人体の細胞にmRNAを送り込むことができるようになります)。
これを注射すると、人体の細胞の中にmRNAが取り込まれて、設計図の情報をもとに細胞の中でスパイクたんぱく質をつくります(取り込まれたmRNA分解されますし、人間のDNAが存在する細胞核の中には原理的に入ってこないので、人の細胞に取り込まれることはまずありません。Twitterなどでそのようなデマも見ることがありますが、皆さん決して惑わされないようにしましょう)。
スパイクたんぱく質が体内で作られると、体の中で免疫が発動し、すみやかに抗体を作ることで、いざコロナウイルスが入ってきたときに速やかに攻撃態勢を作れるようにすることができるようになります(液性免疫)
また攻撃の仕方をキラーT細胞に指示して覚えこませて、免疫細胞が直接ウイルスを撃退できるようにもなります(細胞性免疫)

ワクチン

今回これだけ早くワクチンが完成したのは、遺伝子解析の技術が以前と比較にならないほど早くなったことが理由の一つです。今回の新型コロナでは武漢で流行の始まった昨年1月にはすでに遺伝子解析が終わっていたため、すぐにワクチンの研究に取り掛かれました。昔じゃ考えられなかったことです。
また先ほども述べたように、mRNAワクチンを作るのにはウイルスそのものは必要ない(設計図であるmRNAだけあればよい)ので、培養するのに時間を要する必要がないのも要因の一つです。
その他にも多くの資金がかけられたこと、全世界で急速に広がったため、それがかえって臨床試験の被検者を集めたり、結果を判定することが容易になったことも重要です。

そしてこのワクチンの効果ですが、全世界で行われた、約4万人を対象に行われた臨床試験では、接種後約2~3か月の期間において、全体で95%の発症抑制効果があったとのことでした。
具体的にはこのワクチンを接種してでその後発症した人が18559人中9人プラセボ(本人も接種者も見た目ではわからない偽物)を接種してその後発症した人が18708人中169人だったとのことです。
これは接種しない時に発症する割合を100としたときに、接種をした人の発症割合がおおよそ5程度になったということです(決してワクチンを打つと100人中95人効くという意味ではないのでご注意を)。

ワクチン

インフルエンザワクチンも抑制効果は50~60%程度と決して悪くはないのですが、現在のところ正直「段違い」の効果、ともいえると思います。

そしてこの効果は性別、年齢、人種、肥満やその他のリスク因子のあるなしにかかわらず大きな効果が変わらず認められていることも重要な点です。
現時点では(少なくても短期的には)効果の期待できない人はあまりいないという結果がでています。

副作用ですが、頻度の多いものとしては打った後の痛み、疲労感、頭痛、筋肉痛、38℃程度までの発熱が多いようです。
発現割合としては高齢者よりは比較的若い方に多そうで、また接種後1~2日経って出ることが多いようです。
またアメリカの市販後調査では、約10万人に0.5人の割合でアナフィラキシーが起き、死者はいなかったとのことです(ちなみに抗生物質であるペニシリンのアナフィラキシーは10万人中10-50人と言われ、ケタが違います。比較的ワクチンは安全なようです。と言うより、アナフィラキシーに関してはワクチン投与より不適切な抗生物質投与の方がよっぽど危ないとも言えるでしょう)。

ということで、まだまだ長期データがなくわからないことも多いワクチンですが、現時点ではかなり有望なのは間違いないようです。私も接種することにしました。

次回はこのワクチンの具体的な接種方法、注意点について、現時点でわかっていることをお知らせします。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.01.17更新

年が明け、1月7日からまたここ神奈川にも緊急事態宣言が発令されました。
当院でも発熱外来を行っていますが、年が明けてからはやはり発熱や咳症状の患者さんが増えてきている実感があります。新型コロナの診断となる方の数も増えてきており、茅ヶ崎でも拡がっていることをひしひしと感じます。

しかし、病気はコロナだけではありません。このようなご時世でも、治療を続けなければならない多くの病気の治療を止めてしまうことは好ましくありません。

それは当院が治療に力を入れている喘息でも同じです。
喘息は油断して治療を止めてしまうと、いずれまた悪化してしまいます。そのため平時でも、症状がよくなったからといってもやめないで、適切に治療を続けてもらうことが必要な病気です。

 

それをふまえた上で、今回は喘息と新型コロナについて、前回の記事からいろいろとわかってきたことも増えたので、そこについて触れてみたいと思います。

 

喘息と新型コロナについては、昨年4月にブログに記事を書きましたが、その後いろいろと新しいデータ、知見が出てきています。

その中でも、やはり喘息を患っていることと新型コロナが重症化してしまうことにはあまり関連がなさそうなデータがいくつも出ているようです。Chhiba KD et al. J Allergy Clin Immunol. 2020; 146: 307-14.

それ以上に、どうも新型コロナに感染した人の中には、喘息を持っている人が割合少なく、喘息の方はむしろ新型コロナにかかりにくい(もしくはかかっても重症化しないために見つけられない率が高い)可能性も考えられています。Matsumoto K et al. J Allergy Clin Immunol 2020; 146: 55–57.

 

それにはどうもいくつかの理由があるようです。

一つは喘息の方が起こすアレルギー反応がむしろ役に立っているという仮説です。
新型コロナウイルスはACE2という受容体を足掛かりに体内に入ってきますが(こちらの記事をご参照ください →2020.5.21 コロナと喫煙、そしてCOPD)、このACE2受容体がどうも喘息などのアレルギー反応を起こしやすい人だと減っているようなのです。Jackson DJ, et al.J Allergy Clin Immunol. 2020 Jul; 146(1):203-206.e3
そのためウイルスの足掛かりが少なくなり、ウイルスが体内に入ってきにくくなるのではといわれています。
ちなみに喫煙は逆にこのACE2受容体を大きく増やす作用を持っているとされており、喫煙はやはり新型コロナの重症化の大きな要因になるだろうと考えられます。
コロナが怖ければタバコは止めましょう。 

→COPDについて
→禁煙外来について

 

またいくつかのデータでは、喘息でちゃんと治療を行っている人の方が、そうでない人よりも重症化しにくいことも示唆されています。Eur Respir J. 2020 Dec 17;2003142. doi: 10.1183/13993003.03142-2020.

喘息治療で用いる吸入ステロイドは、気管支の炎症を抑え、空気の通り道を広げる作用を持ちます。
新型コロナに感染し重症化すると、肺へ空気が入りにくくなってしまいます。一度潰れた肺胞は再度膨らむことが難しくなり(一度完全にしぼんだ風船をがんばって膨らます状態と一緒ですね)、このことがより肺の状態を悪くしてしまいますが、吸入ステロイドはこれに対し効果を示すのかもしれません。

また吸入ステロイドは気道のACE2受容体(さきほど出た、新型コロナウイルス侵入の足掛かりでしたよね)を減らしてくれるという研究も示されており、ウイルスの侵入経路を減らす効果があるかもしれません。

具体的なデータはまだ出てはいませんが、普段から吸入ステロイドをしっかり使っていることで、新型コロナに感染しづらくなったり、感染したときに重症化を抑えたりできる可能性があります(ただ以前話題になったオルベスコという吸入ステロイドは、すでになってしまった新型コロナにかかってしまった後の治療という面では、現時点では有効性を示せなかったというデータが出ています。とはいえ死亡率や重症化率も上げることはなかったとのことであり、この結果の解釈はまだ難しいところです。いずれにせよ安易な自己判断での治療開始、治療中止は避けるべきでしょう

 

また内服薬に関しても、モンテルカスト(キプレス®やシングレア®という商品名です)が高齢者において、内服していた人の方がそうでない人より新型コロナ感染率、重症化率が低かったというデータもでているようです。Khan A, et al. Montelukast in hospitalized patients diagnosed with COVID-19. 2020. doi:10.21203/rs.3.rs-52430/v1.

 

これらから、喘息の人はやはり必要以上に新型コロナを恐れる必要はなく、今まで通りしっかりと治療を続けるのが一番だということが言えそうです。
そしてしっかりと通院を続けて薬を正しく使い続けることが、結局は新型コロナから自分の身を守ることになるということが言えると思います。 

→喘息の治療について

 

またこれからは春に向けてスギ花粉のシーズンが始まります。喘息の症状が悪化しやすい時期にも入ってきます。

なにより喘息の悪化による咳と新型コロナによる咳は、私たち専門医でもすぐには簡単に見極めることができません。
この時期、咳が続くとなにより患者さん自身が不安になり、日常生活を送る上での妨げとなってしまいます。 

→2020.3.1 花粉症と咳のただならぬカンケイ

 

せっかくいい治療法がある現在、喘息患者さんには、感染対策がしっかりとられている信頼できる主治医のもとで、しっかりと吸入、内服治療を続けていただきたいと切に願っております。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.12.09更新

2020年も12月に入り、間もなく悪夢の1年が終わろうとしていますが、相変わらず年の瀬までコロナ、コロナの世の中です。ここ茅ヶ崎でも、都会ほどではないですが連日陽性者の報告が上がっています。

海外ではワクチンの接種が始まり、わが国でも来年には始まるでしょう。ワクチン接種がどのような結果を生むのかは誰にもわかりませんが、1日も早く通常の世界に戻ることを切に願っています(あー、忘年会、やりたかったなあ・・・)

さてまだまだ落ち着かないコロナ禍の中、市中では自由診療におけるPCR検査が注目されているようです。安価で提供できるPCRセンターが街中にでき、予約が殺到しているとの報道もありました。

検査に関しての結果の確からしさという点では、以前にもこちらのブログで触れています。
まずはPCR検査の結果は絶対ではありません。とはいえ、現時点でコロナの診断のゴールドスタンダードはやはりPCRですあくまで医療機関、検査機関で正しく検体を扱い、精度の高い検査機関で行ったものに限ります。安くてもこの部分がいい加減な検査は論外です)。

では自費でのPCR、これってやはり「あり」、なのでしょうか。
テレビや雑誌では相変わらずPCRの議論が喧しいですが、ここらでもう一度冷静に検査の原理を復習しながら、その意義と問題点を考えてみたいと思います。

以前の記事で感度、特異度の説明をした際、特異度を90%と仮定し、偽陽性が多く出る可能性があると書きましたが、実際PCR検査の特異度(=病気でない人を正しく陰性と判断できる確率)はもっと高いようです(つまり病気がないのに陽性となる確率が低い=陽性と出たら病気である可能性が高いということ)。
基本的に微量の遺伝子を増幅して検出するので、ごくごく少量のウイルス遺伝子でもしっかりと拾い上げることができるためです。

それでも100%ということはあり得ないと思います(特異度が100%なら偽陽性は存在しないことになりますが、実際に体操の内村選手など、偽陽性のケースが実際に報告されていることがその証拠です)。これは検体の中に他の検体のウイルスが混入する可能性もあるためと言われています(クロスコンタミネーションと呼ばれ、他の感染症検査でも珍しくない要素です。今の検査の現場はおそらく検査数も多く非常に忙しいため、どんなに対策をしていたとしても混入を完全に防ぎきれない可能性はありえるでしょう)。

とはいえ、特異度は99%かそれ以上はあるとのことですので、ひとまず偽陽性のケースは(ありえることではありますが多くはないと考え)、ここでは置いておきましょう。

自費PCRを受ける方の受診動機は何でしょうか。
おそらく出社や会合に出るために必要である、出社や会合に出るために必要である帰省するために確認したい、高齢者や病気の方と会うときにリスクを排除しておきたい、などではないでしょうか。
となるとやはり自費PCRを受ける方の目的は、多くの場合「自分が陽性であったらどうしよう」ではなく、「自分が陰性であることを確認しよう」というのがほとんどなんだと思います(もちろん例外はあるでしょう)。

検査の動機

しかし、この検査は陽性に出ることに意味がある検査なんだと思っています。

その理由をご説明します。

この検査は特異度が高い一方、感度はそれほど高くありません。

特異度が極めて高ければ、前に書いた通り、陽性と出れば、その人がコロナである可能性はかなり高いといえるわけです(本当にそう言い切れるかどうかはまだ議論の余地があります。さきほどのクロスコンタミネーションの可能性もありますし)

一方感度(=病気の人を正しく陽性と判断できる確率)はそれほど高くない検査でもあります。
例えば感度が70%とすると、病気の人を陽性と出せる確率が70%ということです。つまりコロナの人のうち、30%は見逃すということです。

図で表しましたが、この場合、検査前の確率が高い場合、「陰性だけどコロナである可能性」は上がります一方検査前の確率が低い場合は「陰性だけどコロナである可能性」は非常に少なくなります。

検査前確率

ということは、その人の検査前の感染確率によって解釈を変えなければならないわけです。

ところが検査前の確率はその人その人によって大きく変わります。
例えば濃厚接触者は当然検査前確率が上がります(が、このケースではそもそも「行政検査」となり、費用は公費負担になります)が、毎日飲み屋で感染対策をせずに飲み歩いている人も検査前の確率は高くなるでしょう。
一方買い物以外では出歩かず、常に感染対策を怠らず、周りに風邪をひいた人がいない場合は検査前の確率は低くなるはずです。
当然その中間の人も多くいるでしょう。

これらの人は、それぞれ検査結果の解釈に違いが生まれるはずなのです。
検査前確率が高い人は、結果が陰性でも結構な確率で偽陰性があり得るということです。この状態で陰性だからと安心してしまうのは危険です。
一方検査前確率が低い人は、結果が陰性がでればまあ確からしいのですが、それは検査をしなくても大きな変化はないともいえるのです(検査前確率が低い人が検査でひっくり返る可能性は極めて低いわけですから)。

となると、やはりPCR検査は、「陽性がでてなんぼ」の検査というわけです。
陰性はコロナじゃないことの証明にはならないわけです。ただ陰性の結果を欲しい人にはあまり向いていない検査なのです。

あまり出歩かない検査前確率が低い人は、そもそも検査を受ける必要性が低いわけですし、検査前確率が高い人は、陰性でもコロナである可能性が他の人より高くなるので、その解釈に気を付けなければならないわけです(検査前確率を自ら高める行動をとっている人が、この原理を理解せずに陰性で喜んでしまう事態が一番怖いとも言えます。厳しいこと言うようですが、このような行動をとってしまっている人は自費PCRを受けるべきではないといってもいいのかもしれません・・・)。

この検査前確率はやはり第三者である我々医療機関が保険診療で問診、診察で判断して、陽性の可能性を高めたうえで行うべきだと考えます(検査を絞ろうという意味ではないです。もちろん必要な検査はどんどん出しますよ)。
やっぱり一般の方が自由に受けられてしまう自費PCR検査は、このような面から何かと問題がある気がして、もやもやしている今日この頃です。

というわけで、当院では現在保険診療でPCRを行えるように準備を行っています。従来通り抗原検査もコロナ、インフルエンザ双方とも準備をしており、状況に応じて使い分けるように計画しています。困ったらお気軽にお電話にてご相談ください。

あと、上記の理由にて当分自費PCRは行わない予定ですが、医学は一昔前の常識が非常識となる分野です。今後も柔軟に、その時のベストを考えられる加藤医院でありたいなと思っています。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.11.20更新

新型コロナの患者数が最高記録を更新するという報道が毎日流れており、何だか気が滅入る毎日です。
ここ最近の医療機関の検査体制の充実(当院でも10月からは積極的に自院での抗原検査、茅ヶ崎市検査センターへのPCR検査依頼を行っています)による検査の敷居の低下は陽性者数増加の要因の一つとしてあるとは思います。
ただ当然ながら気候の問題、人の流れの問題など、増える要素はあるわけであり、ここが気の引き締めどころでしょう。
適切なマスク装着、密の回避、手指の清潔など、改めて感染(させないように意識する)予防の基本に立ち返って頂き、メリハリのある対策を行っていきましょう。

なお当院では12月から新しい予約システムを導入します。
詳しくはまた別途お知らせしますが、今までの新患のみならず、再診の方も24時間ネット予約が可能になります。もちろん窓口予約もできます。
そして今後はある程度の診察開始時間目安を来院後にお伝えすることができるようになり、時間がかかりそうな場合は院外でお買い物をしながら時間までお待ちいただくこともできるようになります。今まで通り予約なしで直接来ていただくことも可能なシステムにしておりますが、予約によりお待ち時間が減らせますので、是非新しい予約システムを一度ご利用ください。

もう一つ、明日診療後から月曜のお休み日までの期間を使い、懲りずにまた工事します。今回は受付エリアが変わりますのでお楽しみに。

さて、このブログを始めて以来、雑誌やメディアなどの取材をいくつかお受けしましたが、今までとは趣の異なる方からインタビューのご依頼を受けました。
今回、早稲田大学法学部社会保障法ゼミ様からのご依頼で、新型コロナ感染症対応策についての政策を提言するという課題に対して取り組まれている中で、医療現場の現状をお知りになることで政策提言に生かしたいとの趣旨でした。
このブログをご覧になって、場末の当院にたどり着いたとのことです。
このブログをこのような方々まで読んでいらっしゃるんだなと、少し驚きつつ、若い世代の方々の将来のためならと思い、協力させていただくことにしました。

私もまだまだ(この開業医の世界の中では)若いと勘違いしておりましたが、やはりもうすでに40代(今日もまた1歳余計な年を取りました・・・)、zoomの画面越しでも、年代の果てしない距離をひしひしと感じたことをここに記しておきます。

今回は実際の医療現場において我々が直面していることについてのご質問でしたが、このことをブログで発信し、皆さんに知っていただくことも一つの意義になるのではと思い、その一部をここにも載せてみることにしました(以下の記載はあくまで私個人の経験、意見です)

① 現場で困難だったことは何でしょうか?
A.3-4月当初のマスクやガウンなどの消耗品の入荷不足、値段の高騰は大きな影響がありました。今後いつ品薄が再燃するか、常に気がかりです。
またクラスターが発生した場合に施設名を名指しで発表されてしまうと、当然クリニック運営に対しては致命的な打撃となります(ほかの業種ももちろん同じでしょう)。このことにより医療施設が萎縮したことも、軒並み発熱患者を受け入れなくなった一因かと思います。そのため一部の発熱患者を診療する医療機関に殺到して、職員、患者に更なる不安を与えてしまったように思います。クラスターつぶしは必要なことですが、私個人としては、マスコミで施設名まで殊更大きく発表しなくても十分可能なのではと思います。

② 貴院がもし政府の手を借りることができるとしたら、どのような施策を希望しますか?
A.一番は仮に院内感染がおこった場合の行政のサポート(職員の雇用維持や家賃の補償など)です。実際の収入減に対するサポートはありましたが、何か今後起こる困難に対するサポートが不十分です。これがしっかりしていると診療に対する危機感は薄まり、おそらく発熱診療に手を挙げる施設も増えるように思います。また前述の通り頑張って発熱患者を受け入れているところをさらし者にしないでほしい。とにかく発熱患者を診ることに対するネガティブな要素を取り除いてもらうことが一番大事です。

③ 初期に感染者の出た地域に物資や人手を集約するという施策を考えるとして懸念等はあるでしょうか?
A.通常医師、看護師には、勤務地のテリトリーがあります。医師が持ち場を離れると、担当患者を診る医師がいなくなり、そこに対する手当が必要になります。自然災害のようにある程度援助すべき場所と期間がはっきりわかっていれば、そこを何とかやりくりすることもできるが、今回のような場合はいつまで続くか、どこに集約すべきかというのが見通せないため、現実的には難しいのではないでしょうか。物資に関しても、現在流行地でないところには感染対策器具が必要ないわけではない(むしろ世間からの圧力により、新たな流行元になってはならないと考えるでしょうから、それらの需要はむしろ高まるかもしれません)ので、集約させることは難しいのではないでしょうか。

④ マスコミや政府の発表と現場での体感で乖離している事柄があればお聞きしたいです。
A.PCR検査は(少なくとも現在の当地では)それほど敷居の高い検査ではなく、我々が必要あると考えれば受けることはそれほど難しくありません。おそらく敷居が高いといわれている一つの要因としては、検査が必要なのにできないということでなく(もちろんそういうケースもあったのでしょうが)、そもそも検査が必要ないと医療者が考えて検査を出さないというケースも少なくないからかもしれません。一般的な検査の感度、特異度を考えた場合、臨床的判断がない状態で検査を行ってもこちらを参考に)、その検査の結果が診断の確からしさを上げることには寄与しにくく、むしろ偽陽性、偽陰性を生み出すリスクが出てきます(無症状の選手たちに連日検査を行い偽陽性となった体操の内村選手がよい例です)。また現在でもコロナPCR検査におけるはっきりとした感度、特異度は未だ明確ではなく、検査結果の確からしさを推測することさえ難しいのが現状です。

⑤ 院内感染の予防策をいくつか教えていただきたいです。
A.当院では来院時の手指消毒、飛沫感染予防のための受付のアクリルパーティション、患者さん同士の感染を避けるためのパーティション、定期的な院内アルコール消毒、発熱患者さんと一般患者さんの動線分離、予約システム導入による待ち時間減少、屋外での検体採取、診察時のマスク、手袋、ガウン装着、診療開始時間の目安の提示(一旦外出させることが可能)などを行っています(今後実施予定のものを含む)。

⑥ 医療従事者目線から、新型コロナウイルスの感染拡大対策はどこで何をすべきであったと考えますか?
A.一般的にはコロナ感染症は飛沫接触感染と考えられます。通常特殊な環境でない限り空気感染は起きないといわれています(いろいろ説は出ていますが、もし空気感染がおこりやすい感染症であれば感染者数はこんなものではないはずです)。また症状発症前や無症状患者からの感染を示唆されています。つまり大事なのは適切なフィジカル、ソーシャルディスタンスであり、やはり密の形成を避けることは理にかなっています。また感染可能性のある場面での正しいマスク装着は非常に大事だと思いますが、逆に屋外で街を歩く程度ではマスクの必要性は低いかもしれません。

⑦ オンライン診療等あれば院内感染を防げたと考えているのですが、オンライン診療の障壁等あれば教えていただきたいです。
A.私個人の考えとしては、今の回線品質では、顔色なども十分に反映せず、もちろん触ったり音を聞いたりの診察、各種検査はできません、画面上で本人の顔を見ても、得られるのは多少の安心感だけで、その画面からはほとんど有益な情報は得られないように思います。現状のオンライン診療から得られる情報はあくまでも問診の情報のみにとどまるので、受診を迷う患者の相談窓口としては機能するかもしれませんが、処方もいわゆる対症療法しかできません(風邪診療の方法についてはこちらから)。つまり現時点では使い道はないわけではないものの、対面診療の代わりにはなりえないと思います。

⑧ 病床数が不足していた際に、例えば政府がより多くのホテルを病床として確保するという施策は解決になりえるでしょうか?
A.ホテルを病院の代替として利用することは難しいのではないでしょうか。医療器具などが揃っていないので患者の十分なケアを行うことができません。また急変があった場合、患者からの直接の申し出がないと医療者も気づかないので、見逃してしまうリスクもあります(病院なら看護師が定期的に巡回して、状態悪化があればバイタルモニターを装着します)。あくまで隔離施設としての活用に留まるのではないかと思います。


正直今私は発熱患者さんの入り口の役割を演じており、現在コロナ治療の最前線に立っているわけではありません。ですので最前線の実情を見られているわけではありませんが、1年半前までは呼吸器専門医として各種呼吸不全の病態に対峙し、またインフェクションコントロールドクター、院内感染対策部門担当として何度もアウトブレイクに対応した経験、それを今でも戦っている先輩方、我々から受け継いだ後輩たちから伺う現況から、今最前線で起きていることを推測してお話ししました。
とにかく私個人もこの立場でできることを精一杯頑張るので、最前線の皆様たちも是非頑張ってこの難局を乗り越えていってほしいと思っています。

そして、今回インタビューを申し込んでいただいた早稲田大学法学部の皆さん、ありがとうございました。答えのない課題だとは思いますが、頑張って皆さんなりの最適解を導いてください。そしていっぱい考えることで成長し、私たちの次の世代として社会を支える人材となれることを期待しています!

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2020.08.24更新

まだまだ新型コロナ禍は終わりを見せませんが、全国的には発表される陽性患者数はピークを過ぎつつあるという見方もあるようです。
ただまだこの状況がこのまま落ち着くかはまだわかりません(実際ここ茅ヶ崎でも本日は過去最高の1日9例の陽性患者を確認したようです)
またこのまま仮に落ち着いたとしても、冬にかけてはまた新たな波がやってくる可能性も決して小さくはありません。

当院でも発熱、咳、だるさなど、いわゆる「風邪」の症状にお困りの方がこの時期でも1日数人はお見えになります(感染症についての現在の院内感染対策はこちらをご覧ください)。
既往歴や症状の経過など、いろいろな情報からその症状の原因を見極めていきますが、やはり新型コロナ感染症の見極めは困難を極めます。

新型コロナ感染症はその症状の程度の幅広さが特徴です(ほぼ無症状の方から、命に係わる最重症の方まで様々です)。
感染症にはその症状の強さによって病原体が見極められるケースも少なくないのですが、そのため新型コロナに関しては症状の強弱による見極めがあまりできません。
特に軽症の場合は、味覚嗅覚障害以外には特徴となる症状があまりないため、他の病気の可能性が高いと言えない限り、新型コロナ感染を否定することが難しいというのが実情です。

そこでやはり心配になるのがインフルエンザシーズンに入った時の対応です。
かつて新型コロナがいない頃のインフルエンザ感染症は、流行期に症状から強く疑われる場合はインフルエンザ抗原の検査をせずとも治療を開始することが許されていました。これは検査前確率がすでに高く見積もられる上に、例え診断を外した場合でもその後重症化するリスクが極めて低いためです。
ですので、典型的な症状でないときがインフルエンザ抗原検査の一番の出番でした。

ただ今年は状況が違います。

新型コロナはインフルエンザと比べて、重症化率が高い可能性があり、その治療法もまだ確立されていないという大きな課題があります。
また新型コロナのその性質から、隔離期間もインフルエンザより長く設定する必要があり、その間も重症化の兆候を見逃さないように注意深く観察する必要があります。

ですのでもし新型コロナをインフルエンザと誤認すると、隔離が不十分となり他者への感染リスクとなったり、その後悪化するタイミングを見逃したりする問題が出てきます。逆にインフルエンザを新型コロナと誤認すると、隔離期間が長くなったり、必要のない対応をしなければならなくなったりと、本人の生活への無用な影響や医療資源の浪費につながってしまうという面が出てきてしまいます。

以上を考えると、今年は発熱患者さんには今まで以上に積極的にインフルエンザ抗原検査を行う必要があると思われます。もちろん新型コロナ検査も、見極めが難しいときは積極的に検査しなければならないものと思われます。

そしてご存知の通り、インフルエンザ抗原検査鼻腔粘膜から採取する検体で行います。
この検査法は咳やくしゃみを誘発するため、万全の感染対策が必要であり(本来今までもこのようにするべきでしたが、新型コロナがいない時代はここまでしていませんでした。それは万が一感染しても重症化率が低いため、労力や費用対効果に合わなったためとご理解ください)なかなか診療所レベルでは鼻腔検査は難しかったのが実情ですが、今冬にむけてそんなことも言ってられない状況になりそうです。

当院でも今、知恵と財布をフルに絞って、通常診療を行いながら、通常診療を妨げずに何とか冬の発熱患者さんに適切な検査、治療ができる体制が整えられないか、鋭意検討中です。体制が決まりましたらHPでお知らせしたいと思います。

 

 

また今冬は発熱するだけでご本人やその周囲の方の負担はかなりのものになってしまうと思われます。

ですので今冬はどちらの感染症にもできればなるべきではないと思います。

残念ながら新型コロナを予防するワクチンはまだありませんが、できる限りの対策を取る必要がある今冬は、インフルエンザワクチン接種の重要性が非常に高いと考えられます。
おそらくマスコミでも同様の情報が今後流れることが予想され、ワクチンの需要が非常に高まると思われます。
まずは65歳以上の高齢者の方は打ちそびれないように、今年はなるべく早くに打っておいた方がいいかもしれません(来春にインフルエンザの流行が続いていた場合に作用切れで効果が低下するリスクはありますが、結果接種できなかった場合と比べればかなりマシでしょう)。
もちろんワクチンが潤沢にあれば、今年は接種可能なすべての方が接種を強く推奨されます。毎年接種をされている方のみならず、いつもは接種していない方も今年は接種をご検討ください。

当院では現時点では例年通り10月頃から接種を開始する予定です(流行状況や入荷状況などにより調整する場合があります)。

予防接種を行うにあたっての院内感染対策も今後策定する予定ですので、接種方法、感染対策などは引き続き当院HPにてご確認いただけると幸いです。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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