医師ブログ

2022.09.11更新

私、院長は9月1日にコロナ感染が判明し、院長外来はこの10日間、休診期間を頂きました。
この間は加藤医師の診療で対応させていただきました。


この間に受診予定だった方には受診日時の変更や、担当医師の変更など、多大なるご協力を頂きました。
ご協力いただいた方々にはこの場を借りて深くお詫びを申し上げるとともに厚く御礼申し上げます。


なお、9月12日からは通常の診療体制となりますが、16日、17日の院長診療に変更がありますので、詳しくはHPの最新情報をご確認ください。

 

そこで今回は自らがコロナ感染をしたその記録、そしてその立場から考えた雑感を書いてみようかと思います。


私は9月1日に抗原検査で感染が判明したわけですが、発症は前日の就寝中でした。
改装による19日間の休診を経て8月26日から診療が再開し、来院いただく患者さんが非常に多い状態で多忙を極めており、私自身は診察に集中していたこともあって、まったくと言っていいほど体調の変化は感じていませんでした。

特に31日は忙しく、家に帰ってきた時には0時を回っていました。

帰ってきて風呂に入った後に布団に入りましたが、首と腰が張る感じがあったもののいつものことと思い就寝しました。
ところが2時間ほどたち、その首、腰の張りがいつもよりもかなり強い感じを自覚しました。


「相当疲れてるな」と思いながらも、「万が一そうだったら」と思い、寝室から出て自主的に隔離を始めました。


翌日朝にはその張りはさらに強くなり、いよいよこれは通常とは違うなと感じる程度となりました。
この時点で抗原検査を行ったところ陽性の反応が出ました。


まずこの首、腰の張りは陽性後3日目がピークでした。
ピークのころは横になってなるのもしんどいくらいの首、腰の痛みを自覚し、一時は頭痛にもなりましたが、カロナールやロキソニンを内服するとその痛みは半分程度に紛れる感じでした。

発熱は2日目の夜のみ37.6℃を記録しましたが、その後はずっと平熱で推移しました。
食欲などはほぼ落ちることはありませんでした。

2日目ごろからは喉の痛みが出現、その翌日には多少の空咳がでてきました。
のどの痛みは3-4日目がピークでしたが、食事をとるのに支障があるほどではありませんでした。
空咳もこのころがやはりピークで、徐々にのどの後ろに流れ落ちる鼻汁(後鼻漏といいます)が痰となる咳に変化しつつ咳は減少、現在は0ではないものの1日2-3回程度まで減少しています(これは一般的に「風邪」の典型的な経過となります)。

幸い味覚障害や倦怠感などの、いわゆる「後遺症」と呼ばれるような症状は今のところ残っていません。
これは本当に人によりけりなのでしょう。


この自らの療養期間の最中に、療養期間の変更というニュースが飛び込んできました。
(発症日を0日目として)有症状者は10日→7日、無症状者は7日→5日というものです。

私の療養7日目にこの方針が実施されると発表されたこと、その規定で解除となる9月9日にはほぼ症状が残っていなかったことから、この日から診療を再開することは不可能ではなかったのですが、立場上皆様に少しでも感染リスクが否定できない状態での診療再開は好ましくないとの判断で、かつての規定通りの10日間の療養とさせていただくこととしました。


そこで、この7日間への療養期間短縮が妥当だったのか、今一度考えてみます。

以前のブログにも書いたように、オミクロン株の場合、PCR陽性からウイルスが検出されなくなるまでの期間は平均5日程度とされています。N Engl J Med 2022; 387:275-277
ただそれにもばらつきがあり、軽症患者であっても約25%の人が発症後8日を経過後にウイルスのRNAが他者に感染できるレベルの量で検出できる状態であったとの研究もあり、これはオミクロン株とデルタ株で、そしてワクチン接種と未接種でその割合に差はなかったとまとめられていますTownsley, H.et al.Preprint at medRxivhttps://doi.org/10.1101/2022.07.07.22277367
そして、様々な今までの研究から、感染性が10日以上継続することは非常に珍しいことがわかっていますhttps://www.nature.com/articles/d41586-022-02026-x


では、現時点での隔離期間はどれくらいが適切なのでしょうか。

結論から話すと、絶対的な正答はありません。

しかし今回の経験を経て、私の私見では7日間の隔離は妥当ではないかと考えています。


確かに8~10日目は約1/4の人に感染の可能性が残るのは事実です。
しかし10日間という期間は、社会的には非常に負担に感じる期間でもあります。
私は10日間を守りましたが、10日間何も行動ができないというプレッシャーによって、検査や診察に行かなかったり、自主検査で陽性が出てもそれを報告しない人が出てくる可能性は十分ありえますし、そうしたくなる人の気持ちも手に取るようにわかりました。


この期間が長くなればなるほど、正しく診断されない人は増えるでしょうし(極端な話、隔離が1年だったら、検査を受ける人はほとんどいないでしょう)、短くなればなるほど、そのプレッシャーは軽くなります。


もちろん短くすればするほど、社会の中に感染性を有する人は増えます。
しかし長くしても(正直に申告する人が減るので)やはり社会の中に感染性を有する人が増えるというジレンマが生じます。


これは白黒で決められるものではなく、お互いの変数の掛け算で決まるものなのです。


その中でバランスが取れる期間を設定する必要があるのですが、私個人としては少なくても現時点では、7日間はそのバランスをとれた適切な期間設定ではないかと思います。

確かに8日目の時点で感染性のある人が25%は残りますが、その人たちも一般的には感染性のピークは過ぎているのは事実です。

それにより発生するリスクが。隔離期間を短くすることで得られるメリットを下回ればいい
わけです。

もちろんトータルでなるべくリスクの少ない状態を作り出すことが必要ですから、療養期間が明けて数日は、リスクの高い行動を控える、つまり室内や三密状態でのマスクを外す、会食や会合は避けるなどの、通常よりも徹底した感染予防が必要だと思います。


しかし、隔離期間の短縮は世界の趨勢です(アメリカやフランスは通常5日、韓国でも7日だそうです)。
どの国もそれぞれの方法でバランスを取り始めているわけです。

コロナは普通の風邪と一緒だというつもりもないですし(この時期にこれだけ流行って、様々な症状が残る風邪はいまだに見たことがありません)、一方ゼロコロナを目指すような政策もデメリットが大きすぎてすべきではないでしょう。

みんながうまくバランスを取りつつ、お互いの考え方も理解して、落ち着いて行動できる、「平和な」社会になってほしいと強く感じる次第です。


今回の経験を通じて、恥ずかしながら実際に感染をした場合の状況を実感できました。
皆様にご迷惑をおかけした分、今後の診療に少しでも活かしていきたいと思います。

明日からしっかり頑張ります!また皆様宜しくお願い致します!!

 

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信