医師ブログ

2022.07.18更新

いやあ、ヤバいっす・・・

2週間前から発熱・感染症外来の受診を希望される方が突然急増しました。

1月の時のデジャブを感じますが、今回はワクチン接種や特定検診の方もいらっしゃること、1か月後に控えた改装工事のための受診調整も重なっていることから、当院は第6波の頃よりもそのヤバさが際立っています。

間もなく改装工事が始まり、クリニックの中は待合スペースの拡張、受付エリアの拡張、発熱・感染症専用診察室の新設など、今よりも多くの患者さんに対応できるようになる予定ですが、それまではご不便をおかけするかもしれません。

できるだけ一人でも多くの、症状に困っていらっしゃる患者さんに対応したいとの思いで診察をつづけておりますので、ご理解、ご協力の程、よろしくお願い致します。

 


さて今回はそんなコロナのオミクロン株、今わかっていることと、これからやるべきことをまとめてみようと思います。

 

おそらく今回の第7波の中心となるのは、オミクロン株の中でもBA.4BA.5という変異型(その中でもBA.5が主役になるでしょう)になるだろうと言われています。
東京都のデータによると、このうちのBA.5は、感染力がBA.2(第7波の前の主流)の27%増しとされており、今まで以上に広がりやすい可能性が考えられています。

またこのBA.4、BA.5は、「感染阻止」の面では、既存のワクチンの効果が出にくいとも言われ、さらには第6波以前に感染した人も感染する可能性が十分にあることが示唆されています。
これは、以前ワクチンの仕組みでお話しした、ワクチンによって産生できる抗体(中和抗体と言います)が、ウイルスにくっつきにくくなるようなウイルス側の構造の変化がおきたため(つまりそれを引き起こす変異があるため)と考えられています。

今回のBA.4、BA.5に関するデータは、5月に流行した南アフリカから(査読前ですが)報告されています。https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2022.06.28.22276983v2.full.pdf

これによると、BA.4、BA.5が流行した期間に感染した人の割合は、1回が12.9%、2回が36.1%、3回以上が6.7%とされています。
さらには再感染と判断された人が19%にものぼります。
南アフリカのワクチン接種率は40%前後とのことであり、2回目接種の人の割合がこれだけ多いとなると、少なくとも2回接種程度ではワクチンの感染予防効果は多くなさそうと考えられます。

それではワクチンが全く意味がなくなったのかと言うと、そうではなさそうです。

重症化・死亡率は、2回ワクチンを打った人は全く打っていない人に比べて63%3回以上打った人は全く打っていない人に比べて83%も下がったともされており、(後遺症のリスクは別にすると)しっかりとワクチンを打っていれば従来の風邪にかなり近い存在になってきたとも言えるようになっているのかもしれません(逆から見るとワクチン未接種だと重症化・死亡リスクが約3~6倍に上がってしまうとも言い換えられます。動物実験ではこの変異株は従来のオミクロン株よりも肺で増殖しやすく重症化につながる可能性が指摘されており、ワクチンが全く未接種の人はまだまだ注意する必要がありそうです)。

ワクチンを接種してからの期間も、重症化率と関連があるデータが多く出ているので、2回目からの接種から時間の経っている方は3回目の接種を考えていただいたほうが良さそうです。
また高齢者の方や重症化リスクの高い方は以前のブログでお示しした通り4回目の接種を済ませておくメリットは大きいかと思います。

 


次は感染リスクをなるべく下げるために、私たちはどうしたらいいのか、このことについても色々と新しい知見が出てきています。

 

まず、コロナの感染は飛沫、エアロゾルを介して感染するのが主流であることがわかっておりClin Infect Dis. 2022 Mar 10;ciac202マスクを着用することで感染リスクが下げられることが分かっていますBMJ. 2021 Nov 17;375:e068302
そして、そのエアロゾルや飛沫が床やテーブルに落下するとウイルスは比較的短時間で死滅するため、環境から感染する確率は飛沫、エアロゾルからの感染の1万分の1以下でありEnviron Sci Technol Lett. 2021 Feb 9;8(2):168-175環境を消毒することによる感染予防効果は低いことがわかっています。Am J Infect Control. 2021 Jun;49(6):846-848. Nat Hum Behav. 2020 Dec;4(12):1303-1312.
手洗いの感染予防効果は50%程度BMJ. 2021 Nov 17;375:e068302ソーシャルディスタンスを取ることによる感染予防効果は25%程度とのことでした。BMJ. 2021 Nov 17;375:e068302
そして感染予防に効果的なのは換気であることが示されています。Clin Infect Dis. 2021 Oct 30;ciab933.J Hosp Infect. 2022 Jan;119:163-169.


という訳で、これを踏まえたうえで、今後のコロナに対する私たちのあり方について、僭越ながら私見を話してみたいと思います。

軽症の範疇でもコロナの場合、普通の風邪よりも症状が重い方もいらっしゃいます。
後遺症をきたす方もいらっしゃいます。

それでもワクチンをしっかり打っている人で肺炎や酸素化の悪化等、重症化した方を見る機会は非常に稀になりました。

そして今後今の状態が収まることはもう当分はないのかもしれません。
これがいわゆるウィズコロナ、アフターコロナの状態なのだと思います。

もちろんウィズコロナ、アフターコロナの世界では、常にコロナの感染と隣り合わせの状態になるので、なるべく感染しないような、そして一人でも重症化を少なくする対策は必要です。
リスクの高い場所でのマスクはまだ致し方ないと思います。

一方、屋外など、空気の流れている場所でのマスクの必要性は低いと言って差し支えないと思います。


費用対効果の高い対策(手洗いや換気、換気の悪い場所での適度な距離など)は行っていきつつ、費用対効果の低い対策(屋外や他者と十分な距離の取れる場所でのマスクや環境消毒、空間除菌など)はどんどん止めていくことが必要かもしれません。

これを行ったうえで、規定通りワクチンを打っている人は普通の生活を、ワクチンを打っていない人や重症化リスクの高い人はもう一歩踏み込んだ感染対策を行いながら生活をすることがニューノーマルとなるでしょう。
そして感染はだれにでも起きうることですし、上記の対策をした上で、感染リスクはある程度は受け入れていく必要があるのかもしれません(それはインフルエンザなど、他の感染症とも似た形と考えます)。

感染をした際の隔離期間や濃厚接触者の対処も、最新の知見をもとに柔軟に、より最適化された形に変えていくことが必要なのだと思います(それを迅速に決められる行政の力が試されます)。

 

秋にはオミクロン株に対応したワクチンができる見込みではあるようですが、その間にも新しい変異が生じて効果が下がってしまうことも十分に考えられます。
ですのでこの状態は当分は変わらないでしょうし、緩くても長い期間続けられる対策が、長い目で見たら一番有効なのかもしれません。

 

現場は非常にヤバいのですが、それでも私達医療者は精いっぱい、力の限り頑張ります。
是非政治、行政の方々、少しでも早く、みんなが少しでも過ごしやすい世の中にしていただけるように、今こそ知恵をいっぱい絞ってください!心から応援しています!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2022.05.29更新

前回お伝えした入り口のプチ改装、GW明けより稼働しております。

おかげ様で新たに設置した待合席は、ちょっとした読書や作業などをしていただけるとご好評の声をいただいております。
まだまだ混雑でご迷惑をお掛けしておりますが、少しでも新しい席がお役に立てれば幸いです。


そしていよいよ、当院は今回、大改装を行うこととなりました!

今回は当院のレイアウトそのものが大きく変わります。

具体的には①受付エリアの刷新、②レントゲン室の移動・新設、③第2診察室の移動・新設、④検査室の拡充、⑤新たな発熱外来診察室の設置⑥発熱外来待合室の拡充、⑦内視鏡・エコー室の新設を行います。

これだけの内容を行いますので、今回は数回に分けて工事を行うことになりました。

まずは第1期工事をこの8月に行います。

今回の工事がメインで、①~③を行う予定です。
これらのレイアウト変更に伴い、お待ちいただけるエリアも今までより少し広くなる予定です。

という訳で、今回当院は夏季休暇を長めに頂きます。
8月7日(日)~25日(木)まで、19日間のお休みをいただきます。

これに伴い、今年の8月の特定検診の受け入れ枠が少なくなります。

茅ヶ崎市の特定検診は例年6~8月に行われておりますので、当院で検診をご希望の方は、できるだけ7月までにお早めにご予約、ご受診を頂けると大変助かります。

例年8月は駆け込み受診が多くなりますが、今年は十分なお受け入れができないと思いますので、是非ご協力頂ければと思います。


さて、ようやくコロナワクチンの3回目もピークを過ぎ、当院もひとまず6月4日で一度終了することにしておりますが、そうこうしているうちに4回目のワクチン接種開始の通達が出されました。

いったいいつまで続くのやら・・・と思いますが、4回目のワクチン接種について、今回もやはり客観的データでその妥当性を判断していこうと思います。

現時点で一番大きなデータは、ニューイングランドジャーナル・オブ・メディシン(医学界では一番信用度の高い雑誌です)に4月に発表された、イスラエルのデータ(N Engl J Med 2022; 386:1712-1720)だと思います。
まずはこのデータを見てみましょう。

このデータではイスラエルでオミクロン株が流行していた今年1月~3月に、4回目をファイザーのワクチンで接種した60歳以上の方、120万人を対象としています。

4回目のワクチンの効果

N Engl J Med 2022; 386:1712-1720より改変

まず感染予防効果ですが、3回目接種の方と比べ、4回目を接種した方は、接種後3~4週間で効果が最大になり、感染予防効果3回目接種の方と比べて約2.1倍(つまり53%リスクを減らす)となりました。しかし接種後8週が経過するとその効果は約1.1倍(つまり10%もリスクを減らせない)となり、2カ月で感染予防効果はほとんどなくなってしまいました。

一方重症化予防効果ですが、こちらは接種後徐々に効果が高まり、接種後6週間で4.3倍(つまり70~80%予防できる:3回目しか接種しない場合を100とすると、4回目を接種すると20~30くらいまで減らせる)ことがわかりました。

 

ただオミクロンはそもそもが重症化しにくいウイルスです。
割合が大きく減ったとしても、その実際の重症化を起こす人の数がもともと少なければ、重症化を予防できる実際の人数はたかがしれている、というのもあながち間違いの主張ではありません。

そして若い方については4回目接種についてのデータはほとんどありません。

またイギリスからの報告では、3回目接種についてのより長い期間の情報が出ており、18~64歳の方では、3回目の接種による効果接種後15週(約3か月半)を経過しても、入院リスクを67.4%、重症化リスクを75.9%減らせるデータが出ておりCOVID-19 vaccine surveillance report Week 16 UK Health Security Agency 2022/4/21、3回だけで十分との考え方もあろうかと思います。

一方、現時点では4回目の接種による副反応は3回目とそれほど大きな差はなく、一部で懸念されているADE:抗体依存性免疫増強(ワクチンの影響でかえって病気が重症化しやすくなる現象)も、現在のところは客観的データとしては認められません。

というわけで、わが国ではリスクの高い方のみ、すなわち

60歳以上の方
18~59歳の、基礎疾患を持っている方

を対象に、3回目接種後5カ月を経過したら接種ができるという運用をされることとなりました。

※基礎疾患とは以下の病態です(頻度の高いものを太字にしました)

1.慢性の呼吸器の病気(喘息、COPDを含む)
2.慢性の心臓病 (高血圧を含む)
3.慢性の腎臓病
4.慢性の肝臓病(肝硬変等)
5.インスリンや飲み薬で治療中の糖尿病、他の病気を併発している糖尿病
6.血液の病気(鉄欠乏性貧血を除く)
7.免疫の機能が低下する病気(治療中の悪性腫瘍を含む)
8.内服や注射のステロイドなど、免疫の機能を低下させる治療を受けている
9.免疫の異常に伴う神経疾患や神経筋疾患
10.神経疾患や神経筋疾患が原因で身体の機能が衰えた状態 (呼吸障害等)
11.染色体異常
12.重症心身障害(重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態)
13.睡眠時無呼吸症候群
14.重い精神疾患

 

私は、まあ妥当かなと思っています。

 

正直このオミクロン株によるコロナをここ5カ月ほど診療していますが、ほとんどの方が普通の風邪症状です。

確かに肺炎の方もいらっしゃいました(それは普通の風邪にはまずない兆候でしょう。インフルエンザウイルスの肺炎も、出会うのはもっと稀です)。
そして後遺症として様々な症状をきたす方も少なからず当院にはいらっしゃっています(よく診察をしたら、実は後遺症ではなく喘息やアレルギーだったという例も少なくないのですが)。

ですので、まだまだ「普通の風邪」ではありません。

ただ、デルタのころと比べれば、確実にその性質は風邪に「近づいて」います。
そして、高齢者や基礎疾患をお持ちの方にとっては、まだ少し「普通の風邪」から距離があり、一方若い方にとっては、「普通の風邪」との距離が非常に短くなっている。そのように考えれば、よりリスクの高い方にしぼって、「普通の風邪」に近づけるツールとしての4回目のワクチンを行うことは、理にかなっていると思います。

オミクロン株のその後

そして、この「普通の風邪」との距離を、みんなが受け入れるようになれば、この「コロナパンデミック」は終了する、そのように私は解釈しています。

オミクロン株のその後
その距離がどれくらいなら受け入れられるのか、あとどれくらい近づけばいいのか、あとどれくらいの人がその許容される距離内に収まればいいのか。それが人それぞれなのでこの議論はもつれます。
しかし「普通の風邪」との距離が0になるまで待つのはおそらく現実的ではないので、どこかで妥協する必要は必ず出てくると思います。

 

それが「今」であるべきかどうかは私にはわかりませんが、どこかのタイミングで「決断」をしなければならない時がくるでしょう。そしてそれが、より多くの人が納得する形での「決断」の形にして、社会に分断を残さないようにしないといけないのです。

今後の我が国の経済や教育、その他のことも総合的に考えて、しかるべき時に、しかるべき方法で「決断」をする覚悟、それが我が国にとって今一番大事なのかもしれません。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2022.02.01更新

いやあ、オミクロン、すごいです。


連日感染者数の最高値を更新するニュースで世の中は持ちきりですが、当院でも今までに見たことがない数の陽性患者さんが出ております(もちろんすべて隔離エリアでの診察です)。

またちょっとした症状でも陽性となるケースが見られており、診察には非常に気を遣う日々が続いています(ちょっとでも風邪を疑った方、必ず受付で申し出てくださいね!)。


そして、やはりというか、「オミクロン株はやっぱりまだ風邪じゃなかった・・・」ということを実感しています。

特にワクチン未接種の方、高齢や基礎疾患のある方に、呼吸がしづらくなったり、様々なつらい症状が長く続いたりするケースがぼちぼち見られる印象です。一方もちろん伝えられているように風邪症状、もしくはそれ以下で済んでしまう方も実際多いです。
インフルエンザとも似ていると言われていますが、インフルエンザよりも重い方向、軽い方向双方に大きくぶれる印象ですね(このブログ記事の通りの印象です)。

今の私のオミクロン株に対する印象は、「もしかかったら“ガチャ”で外れが出ないことを祈る病気」、そして「やっぱりまだまだ広まってもいい病気じゃあない」といったところです。

そのオミクロン株に対する大きな武器となるワクチンの3回目ブースター接種が2月から始まります。

このごろ最近、よく3回目接種の接種率が低調とのニュースが時々みられ、その中には「副作用を怖がり避けている人が多い」との論調をしばしば目にします。
しかし現場から言わせてもらうと、その原因の大部分は、単純に1月にはワクチンが現場に届かず接種が開始できていない、それに2回目からの接種間隔が長すぎる(本格的な前倒しの開始が3月にされてしまっており、1月に接種できる高齢者はごく少数です)ことです。

少なくとも当院の患者さんの声は「はやく接種したい」というのがほとんどです。
「副作用を怖がって打ちたくない」というお声は非常に少なく、そのような理由で接種が進んでいないと論評する一部マスコミの言説やSNSが、かなーりミスリードを誘っている印象です。
ワクチンについての意見、考え方はいろいろあるでしょうが、一個人の考えを社会記事に反映させてしまう(もしくは意図がなくてもそう取られてしまう)のはやはりいただけません。
このような社会を大きく動かしかねない、センシティブな問題は、是非憶測ではなく現場の声を聴いてから伝えてもらいたいものです・・・

当院では1月12日、15日に職員の3回目接種を行いました。
当院は市からの配送に従い、3回ともファイザー接種となっております(当院に選択権はありませんでした)

今回もそのレポートをしようと思います。

私は3回目接種を1月12日18時頃に、今回も当院自慢の熟練ナースに、優しく接種してもらいました。チクッ。


えーん、やっぱりいたーい( ノД`)


1回目の痛くなかった筋肉注射は何だったのか・・・2回目同様、私は痛かったです。

でもまあ注射だし、痛いのはしょうがない。
私は2回目までもそこまで全身的な症状は出なかったので、その後は期待して待つことにしました。

しかし接種してすぐ、刺したところの痛みはそのまま早くも筋肉痛に移行しました。
前回よりもやや早く、そして強い感じです。

しかし全身の症状は出ずにそのまま就寝しました。



翌日は休診日です。

やや筋肉痛は強くなって、やはり2回目よりいくぶん強くなったかなという印象です。ただ腕は何とか上まで上がります。


一方、全身症状ですが、こちらは皆無でした。
本当に何もなく休みを満喫し、子供と自転車でサイクリングにも出かけました。

3日目も元気いっぱい、通常診療を行いました(元気いっぱい過ぎて、110人も診させていただきましたので、さすがに終了後は全身倦怠感に襲われました・・・)。
腕の痛みは多少残っていたものの、3日目夜にはほぼなくなっている状態でした。


そして、こちらが当院職員の副作用一覧となります(以前より職員が増えました)。

3回目接種副反応

↑3回目接種の副反応↑

 

2回目接種副反応

↑2回目接種の副反応↑

 


グラフを見ると、腕の痛みはやはり私と同様、2回目より強く感じた人が多かったようです。
一方、発熱、だるさは全体的に減っている印象です。
というか今回は出る人は2回目同様にしっかり出たのですが、全く何も出なかった人が2回目と比べてだいぶ多かったようでした。

全体的には3回目接種、副反応という面では、当院のデータから見た限りではそれほど恐れなくてもいいのではという印象は持っていいものかと思います。

 

さて、今回の我が国の3回目接種では、モデルナワクチン(昨年12月にようやく商品名がつき、「スパイクバックス」という名前がつきました)も使用する予定となっています
そして2回目までと異なるワクチンの接種「交互接種」が全世界的に認められております。

ですので2回目までがファイザー製のワクチンであった方もモデルナは接種可能となりました。

モデルナのワクチンはファイザーのワクチンよりも副反応が多い傾向があるとされていました(その原因としては、こちらにも書いた通り、モデルナワクチンの方がファイザーより使用するメッセンジャーRNAの量が多かったためではないかと推測されています)。

そこで今回の3回目接種で、モデルナワクチンを今までの半分にして、それによってできる抗体量を調べてみたところ、十分な抗体量を作ることができることがわかりFDA, 2021.Vaccines and Related Biological Products Advisory Committee October 14-15, 2021 Meeting Briefing モデルナを使用する場合は半分量の投与と決まりました(ファイザーは2回目までと変わりない量となります)。

またファイザー → ファイザー → モデルナの方が、ファイザー → ファイザー → ファイザーよりも抗体量が多くできる可能性が指摘されておりmedRxiv. 2021 Oct 15;2021.10.10.21264827未査読、実際オミクロン株に対する感染予防効果はファイザーをわずかに上回る可能性を示すデータも出ていましたよね。

副反応に関しては、十分な検討はこれからとされていますが、モデルナの半量投与では副作用の出現が少ない傾向が見られており、総合的に見てファイザー → ファイザー → モデルナは、個人的にはあまり悪くない選択肢だと思います。

国は頑張って交差接種のススメをしていますが、確かに客観的に見ても、3回目はモデルナも一つの選択肢として考えて頂くのもいいかもしれませんね。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2022.01.04更新

あけましておめでとうございます!

前回のブログでもお書きしたように、当院は今年も大きな変化の年になりそうです。
一方コロナもまだすぐに収束という訳には行かなそうで、もう少し落ち着くまでに時間がかかりそうです。
職員一同へこたれずに今年も頑張りますので、何卒よろしくお願い致します。

で、そのコロナです。

またかと言うべきか、やはりと言うべきか、感染者の数がここ数日じわじわと増えてきていますね。
そして世界に目を向けると、オミクロン株がここ1か月であっという間に世界に広がり、多くの国で感染者も過去最高を記録しているようです。

ただ重症化が少ないという情報もあり、その見解については世の中を二分している印象です。

では、我々はこのオミクロン株について、どのように対峙したらいいのでしょうか?

今回は、先日最新の大規模なデータがイギリスの国家機関である英国保健安全保障庁から出てきました。SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529) 31 December 2021
イギリスではご存知のように、かなりの勢いでオミクロン株に置き換わっており、今回のデータは昨年11月末からの1か月間で判明したデルタ株約57万例オミクロン株約53万例(!)を比較したデータになっています。

(明日から診療開始ですので、時間と余裕がある今日のうちに)こちらのデータをご紹介しながら、少しこのことについて考えてみたいと思います。

この中で、検査後14日以内に救急搬送、入院した症例数は、デルタ株13,579例オミクロン株3,019例と、やはりかなり減っているようです。
背景の様々な因子を処理してリスクを計算したところ、おおよそ入院率はオミクロン株はデルタ株の1/3となるようです。
そして診断から28日以内に死亡したオミクロン株陽性症例は57人だったとのことで、今までよりもかなり少ない傾向はありそうです(観察期間が短いのは少し気になりますが)。

この原因の一つとして、オミクロン株は今までの株と比べて、気管支でより早く増殖する一方、肺ではあまり増殖しないことが示唆されておりhttps://www.med.hku.hk/en/news/press/20211215-omicron-sars-cov-2-infection?utm_medium=social&utm_source=twitter&utm_campaign=press_release(未査読)肺で悪さをするケースが減っているためかもしれませんいままでのコロナは肺で悪さをしやすいことが大きな問題でした)。

つまり、確実にオミクロン株は旧型コロナ(つまり旧来の風邪)に「近づきつつある」可能性はあるとはいえると思います。

ただ一方、風邪と「同じになった」かどうかは、まだはっきりとはわかりません。

ここで報告されているデータで私が気になるのは、入院した人の中で69.2%が69歳以下、39.1%が39歳以下であるということです。
通常のインフルエンザや風邪なら、若い人が入院する事はほとんどないはずなのですが、その視点から考えるとやはりこれだけ若い世代の割合が高いのは不安材料です(もちろん若者中心に流行しているため、その分若者の母数も多いだろうということは頭に入れるべきですが)。

また新型コロナの怖さは、致死率の高さだけでなく、Long COVIDと呼ばれる後遺症の頻度の高さにもあります。
まだこのLong COVIDがオミクロン株でどうなるかということがほとんど分かっていないのも、また不安材料であるといえると思います。

また、今回のレポートにはオミクロン株に対するワクチンの効果もレポートされていました。

症状のある検査陽性者を(つまり感染しているけど無症状だった人は除外されています)、ワクチン接種パターン別に分けて、ワクチンの効果を計算したデータです。

ここでは日本で接種されているファイザー、モデルナワクチンでのデータを取り上げます(アストラゼネカワクチンのデータもありましたが、ここでは割愛します)。

「症状をきたす感染を阻止する」という側面から見ると、接種後20-24週(5-6カ月)後、デルタ株に対しては50%程度予防するものの、オミクロン株の場合は10%程度しか予防していませんでした。
ただ3回目のブースター接種を行うと、デルタ株は90%オミクロン株は70%の予防効果まで回復します。その後10週経過すると、デルタ株は90%の予防効果を維持する一方、オミクロン株に対する予防効果は50%程度となるとのことでした。

ブースター接種後のオミクロン、デルタ感染予防効果

SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529) 31 December2021より改変

「症状をきたす感染を阻止する」という側面で見ると、やはり今までよりはワクチンの効果が低下傾向にあることは否めません(とはいえど、今までの効果が出来すぎていただけで、まだ接種の意味がないとまでは到底言えないだけの効果はあると思います)。

一方、「入院を阻止する効果」(つまり重症化予防効果に近い指標)を見ると少し変わります。

オミクロン株の入院予防効果に対しては、デルタ株よりは数字は劇的ではないものの、1回の接種でも35%の予防効果(ただし95%信頼区間が0.30~1.42と1.00をまたいでおり「有意差がある」=「効果がある」とは言い切れない)、2回目接種後6カ月までは67%(こちらは有意差あり)、6カ月以上たつと51%(こちらも有意差あり)の予防効果が見られました。
そして3回目接種2週間後ではその入院予防効果は68%(有意差あり)まで回復し、重症化の予防効果はある程度しっかりはありそうなデータでした。

 ワクチン接種後のオミクロン入院予防効果

SARS-CoV-2 variants of concern and variants under investigation in England Technical briefing: Update on hospitalisation and vaccine effectiveness for Omicron VOC-21NOV-01 (B.1.1.529) 31 December 2021より改変

ただ、ここでまだ足りないデータもあります。

まずは「ワクチン接種により周囲へのオミクロン株感染を予防できるようになるか」ということです。
今まではみんながワクチンを接種することによって、集団免疫が成り立つことが分かっていました。今までの感染者数の減っていた日本がその状態でしたが、オミクロン株でもこれが成り立つかがわかりません。
また「症候性感染の予防効果」「重症化阻止効果」がどれくらい長期に続くのかどうか、という事がまだよくわかっていません。すると今後4回目、5回目と、何度も接種する必要が出るのか、頻繁に接種を繰り返した場合にトラブルは出ないのか、そこは問題にはなり得ます(3回目までは安全性に大きな変化は出ていないデータが出ています)。

これに加えて、オミクロン株の重症度の低下、だるさや発熱などのワクチンの副反応重症な副反応は前にも書いたようにやはり非常に稀です。これまで当院で3000回もの接種を行なった経験からも、その印象は変わりません)を考えると、特に若い人では今までよりワクチン接種の意義は見えづらくなっているかもしれません。

ただ、おそらくオミクロン株は一度流行すると、他国のようにあっという間に今までにない増え方をすることが予想されます。

データからは、その勢いをある程度は削げる、そして入院予防効果により少しでもコロナ診療を担う病院の負担を和らげること(これは巡り巡って全ての医療負担を軽減することにつながります)は出来ると言っていいと思います。

そのような意味では、やはり今回のブースター接種は意義があると思います。

人によってワクチンのメリットとデメリットのバランスは様々ですし、万人がワクチンを打つべきとまでは思いません。
しかし上記を考えると、リスクの高い方高齢者、基礎疾患を持っている方)接種できる方はやはりしっかりとブースター接種をしていただく事が、自分と社会を守っていただけることにつながるのではと思います。

というわけで最後に、現時点でのオミクロン株に対する私の考えをまとめてみます。

ちなみに私は政治評論家でも経済学者でもなく、どのような政策を打つべきかということを言及する知識も持ち合わせていないので、政策、経済対策については触れません(そのことに関するご意見はご遠慮ください)。

ただ、客観的にデータから状況を眺めると、オミクロン株を「風邪」と同じものとして何も対処せずにノーガードで臨むには、まだまだ不確定要素が多すぎるような気はしています。

ですので、今はまだ屋内や人混みでのマスク、手洗い、三密回避などの正しい基本的感染対策を取りながら、ワクチンを打てる方はブースターワクチンをしっかりと接種するなど、打てる手を打って備えたほうが賢明かなと思います。

もう少し色々と分かり、「やっぱりオミクロンは風邪と同等に扱っていい!」と自信を持って言える日が、1日でも早く来てほしい、心からそのように願っております。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.12.09更新

ああ、いそがしい・・・

世界はオミクロン株で大騒ぎですが、わが国では今のところ蔓延にはいたっておらず、新型コロナの患者さんもしばらく当院にはお見えになっておりません(オミクロン株についてはまだわからないことが多く、私も現時点ではほとんど情報を持ち合わせておりません。情報が増えてきたら、もしニーズがあればまたブログ内でまとめてみようかなと思います、余力があれば・・・)。

しかし、昨年の冬に比べて、発熱、風邪症状をきたして来院される方は、明らかに多くなっている印象です。
当院では発熱患者さん用の待合を4席準備しておりますが、ここ最近混雑時には満席となってしまうことも珍しくありません。

新型コロナ、インフルエンザの検査をしても陽性の方は今のところほとんど出てはいませんが、発熱の方が増えているということは、やはり何かしらの病原体(おそらくその多くはウイルスです)感染が広まりつつあるのでしょう。

日本の方々は他国よりも、現在でもより徹底した感染対策を行ってはいるとは思いますが、やはり昨年の今頃よりは社会に多少の余裕を感じます。
その他にもいろんな環境が昨年と異なり、今年の状況になっているのかもしれません。
病原体は、常に世の中に潜んでおり、そしていつでも拡がる可能性を秘めています。

そして、インフルエンザワクチンの接種も佳境を迎えています。
12月に入りワクチンの入荷が見られるようになり、だんだんとニーズにお応えできるようになりました。

ただワクチンの在庫も少なくなってきており、接種できる期間も残り少なくなっています。希望される方はワクチンの残っている今、早めの接種をお願い致します。

で、そのインフルエンザ、今後はどうなるのでしょうか。

以前のブログでインフルエンザの流行の可能性について書いてみました。

そこから時間が経過した今の状況を眺めてみましょう(図はWHOのページからです)

まずは国内。

日本インフル
ご覧のようにインフルエンザ、国内では全く流行っておりません。

通常この時期はインフルエンザの患者さんがちらほらと見つかる時期ですが、国内からの報告でも直近1週間(11月22日~28日)の、定点からの国内患者数報告は46人、神奈川は2人です(定点とは、全国から人口比率に応じて無作為に選ばれた医療機関で、茅ヶ崎には11医療機関があるそうです。それでも全くいないわけではないんですね)。

ところが海外に目を転じてみると、昨年とは様相が異なるようです。

まずはアメリカ
アメリカインフル

1年前のこの時期と比較し、明らかにインフルエンザの患者数の動きが異なります。
例年よりはまだ少なめのようですが、昨年よりは明らかに増加しているようです。
アメリカで検出されているインフルエンザの大部分がA型(H3N2)だそうですhttps://www.cdc.gov/flu/weekly/

つづいてヨーロッパ。

フランスインフル
ロシアインフル

フランスやロシアでも、昨年とは違う動きが見えており、インフルエンザの患者数の増加傾向が見られます。


他にもクロアチアやインドでは、秋ごろに季節外れのインフルエンザ流行が見られ、特にクロアチアではコロナ前の例年を超える流行だったそうです。

 

またアジアでは中国の増加傾向がみえるようです(こちらはB型ですね)

中国インフル

こちらはコロナが流行っていないためにわが国よりは感染対策も厳密ではないことが影響しているかもしれません。

またこちらはネット記事からですが、ブラジルのリオデジャネイロでは現在、夏に差し掛かる時期にもかかわらず、急激なA型インフルエンザの流行が起こっているようです。

《リオ市》インフルエンザの患者急増=夏前なのにH3N2型へ2万1千人感染

もちろん今の日本と同様、全く流行が見られない地域も多くあります。
しかしコロナ前の状態とまでは言えないものの、昨年と比べるとインフルエンザの流行の兆しがみられる地域は確実に増えているようです。

またこれらのうち、中国を除く各国では今でもコロナの流行が収まっていません。

つまり、コロナとインフルの同時流行、ツインデミックは起こり得ると考えなければいけないかもしれません。

加えてブラジル、クロアチア、インドの例に代表されるように、必ずしも決まった時期にインフルエンザが流行るとも言い切れません(実際2009年の新型インフルエンザ騒ぎの時は、夏から流行が始まり、秋にピークを迎えています)。

ウイルスの動きは以前もお話しした通りわかっていないこともまだまだたくさんあります。

ましてや昨年からウイルスの秩序が変わってしまっています。
「いつもがこうだからこうなるはず」「去年がこうだったからこうなるはず」が、必ず通用するとは限らないのです。

そこでインフルエンザワクチンの効果を考えてみます。

複数の臨床試験データをまとめた報告では、成人でのインフルエンザワクチンの効果は、発病を69%低下させるとされています。Lancet Infect Dis. 2012 Jan;12(1):36-44
ファイザー、モデルナの新型コロナワクチンの、発病を95%抑える効果には及びませんが、それでもその有効性は十分客観的データに裏付けられています。

またこちらはアメリカのデータにはなりますが、人口の最大67%がワクチンを打つと、インフルエンザの社会的流行を抑えられるという試算が出ていますJ Res Health Sci. 2018 Fall; 18(4): e00427.
当然、家族内や学校内、会社内など、小さい単位での流行阻止にも大きく役立つわけです。

インフルエンザワクチンは大きな副反応の頻度も経験上少なく、個人的にも社会的にも、やはり接種するメリットは、そのリスクを大きく上回ると思います。
ワクチンを打てる機会が終わるまでに一人でも多くの方に接種をしていただき、少しでも皆さんが安心材料を増やしてこの冬を乗り越えて頂ければと思います。

なおインフルエンザの状況に関しては、大きな変化があればまたこちらでご紹介しようと思っています、余力があれば・・・

 

最後にお知らせです。

現在の院内の混雑を少しでも改善するために、今週末から呼び出しシステムの試験導入を開始します。
受付でお渡しする専用端末をお持ちいただければ、受付後に院外に出て頂いても順番が近づいたらお呼び出しすることが可能となります。
まだ試験導入の段階であり、運用も試験的なものとなりますが、ご希望の方は受付にてお申し頂ければと思います(可能でしたら今後の運用の参考にさせて頂きますので、アンケートにご協力頂けるとありがたいです!)。

その他にも混雑緩和、待合室の環境改善、予約状況の改善などの対策を現在全力で行っております。

ここ最近の混雑で患者様には多々ご迷惑をお掛けしておりますが、今しばらくお時間を頂ければと思います。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.09.26更新

9月末になり一旦コロナの感染者数は落ち着いてきたようですが、まだまだ世間への影響は大きく、残念ながら日常の話題の中心です。

いいのか悪いのかわかりませんが、当院のブログも私の想定以上の方に読んでいただいているようです。
先日、ある患者さんに教えていただいたのですが、Similarwebという、全世界のサイトの閲覧数を順位付けしてくれる集計サイトがあり、そこには・・・

1位:EPARKさん、2位:日本医師会さん、3位:エムスリーさん、4位:MSDマニュアルさん。
そして・・・

similarweb

いやいや、明らかに場違いでしょ、katoiin.info(笑)

まあこの夏はコロナ第5波で皆さん心配になり、当ブログに行きつかれた方が一時的にでも大きく増えたのが原因というわけですが、こんなにも多くの方にご覧頂いていたとは知らずにのほほんと情報発信をしていたこのブログ、さすがにちょっとビビりましたので、ほとぼりが冷めるまでは(?)しばらく気を引き締めて書いていこうと思います。

 

さて、コロナワクチン接種もそろそろ佳境に入り、若年者の接種もだいぶ進んできました。
茅ヶ崎市も10月にはほぼ接種が行き渡るとみているようで、第6波の山が小さくなることが期待されます。

しかし、ここ最近はブレイクスルー感染(ワクチン接種後にもかかわらず感染してしまうこと)の事例も報告されはじめ、外来でも3回目の接種:ブースター接種についてお問い合わせを頂く機会が増えています。
そろそろブースター接種について調べてみなきゃなと思っていたところ、ちょうど9月15日に2つの新しいデータが発表されました。

今回はブースター接種について、今わかっていることをお伝えしてみたいと思います。

今回のデータはいずれも、世界で一番早くファイザー社製のワクチン接種を行ったイスラエルからのデータです。
一つはまだ査読をされていないものですが、時間経過によるワクチンの効果の推移を示すデータ、もう一つがかのThe New England Journal of Medicineからの、3回目のブースター接種の効果をみたデータです。


まずは一つ目から。Waning immunity of the BNT162b2 vaccine: A nationwide study from Israel. medRxiv. 2021
イスラエルで2021年3月にワクチンを2回打ち終えた人と、その2カ月前の1月に2回打ち終えた人が、7月11日~31日までにどれくらい感染、重症化したかのデータです(この時期のイスラエルはほぼ全てデルタ株だったようです)。

この期間、60歳以上の高齢者では、3月に打った人、つまり接種後4カ月経過した人は1000人当たり1.6人感染したのに対し、1月に打った人、つまり接種後6カ月経過した人は1000人当たり3.2人と、約2倍に増えていたようです。
また重症化率も同じく約2倍の差があったようです(ちなみに重症者に占める未接種者の割合は、2回以上接種した人に比べ10倍以上もいるため、2回(接種済み)vs0回(未接種)の違いは3回vs2回の違いに比べてずっと大きいです)。

これに伴い、ワクチンを打たない時と比べた、打った時の重症化予防効果も、接種後4カ月の91%に対し、接種後6カ月は86%に、わずかですが低下したようです。(若い人のデータに関しては、日本同様イスラエルも高齢者から接種が始まり、若い人は接種が遅れたため、まだ十分なデータとは判断できないため、ここでは割愛します)


ここでいったん補足。
8月に藤田医科大学がファイザー社のコロナワクチンで接種3か月後に抗体が1/4まで低下すると報告をしました。https://www.fujita-hu.ac.jp/news/j93sdv000000b3zd.html

ただこれを効果が1/4になってしまっていると勘違いされる方が多いようです。
抗体の量と予防効果は必ずしも比例関係にはなりません(1/4の抗体量でも、十分予防には足りる量である場合もあるわけです)。
また抗体だけが仕事をするわけなく、T細胞の働きなども予防には重要な効果を示します(T細胞がどのように効果を示しているかはこちらから)。

あえてミスリードを狙ったようなデマっぽい情報もあったようなので、一度確認していただきたいと思い補足しました。

 

そして二つ目です。Protection of BNT162b2 Vaccine Booster against Covid-19 in Israel;N Engl J Med. 2021 Sep 15. doi: 10.1056/NEJMoa2114255.
2回接種を終えた60歳以上の1,137,804人が、2回目から5か月以上空けてブースター接種を行った際に、ブースター接種を行っていない人とどれくらいの差が出たかというデータが示されました。

まずブースター接種12日後以降のデータを見ると、感染率はブースター接種で91.2%、重症化率は94.9%減らすことができたとのことです。
またファイザー社からの報告を見る限り、3回目の接種での副反応は、高齢者、若者いずれも2回目と比べそこまで大きな差はないようです。VACCINES AND RELATED BIOLOGICAL PRODUCTS ADVISORY COMMITTEE BRIEFING DOCUMENT MEETING DATE: 17 September 2021

ブースター接種副反応

 

ブースター接種副反応

 

これらの報告から言えることとしては、やはり多少ではありますが、時間の経過とともに徐々にワクチンの効果は落ちていくだろうということ、それと少なくとも高齢者にはやはりブースター接種は効果がありそうだということです。

ただ今回の報告の問題点としては、まずは観察期間が非常に短いことです(2つ目の報告はブースター接種後最大1か月程度しか追っていません)。
そのためブースター接種の効果がどれくらい続くのかはわかっていません。
またブースター接種を行うことによる長期的な安全性もまだわからないと言わざるを得ません。

加えて接種が遅れた若者のデータはまだ少なく、ブースター接種の有効性もまだはっきりとしていないこと、そもそも若者ではもともと重症化率は低いので、ブースター接種のコスト(お金だけではなく、安全性などのリスクも含めてです)に見合う利益が得られるかどうかがわからないという点もあります(若者に関しては、周りへの感染の頻度を減らすことができるか、それとコロナの後遺症であるLong COVIDを減らすことができるかどうかということが、ブースター接種の必要性を決めるのには大事になるんじゃないかなと思いますが、これらの点は調べた限り、まだ結論が出ていません)。



国からは、今年の年末から3回目のワクチンブースター接種開始のお達しが出ているようですが、高齢者だけを対象とするのか、基礎疾患を持つ人を含めるのか、それとも若者を含めた全員に行うのか、これらをよーく考える必要がありそうですし、またもう少し時間が経ってからわかってくることも見てみる必要がありそうです。今後まだまだいろんな検討が必要そうです。

また新しい情報が出てきたら、(日常業務の支障のない範囲で・・・)書いてみようと思います。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.09.07更新

首都圏は一旦コロナのピークを越えつつあるようです。

ここ茅ヶ崎でもやや落ち着いてきたのか、当院でもPCRが陽性になる方が減ってきている印象です。
もちろん全体でみると検査数が少ない(=発熱でも受診する患者が少ないor受診できない)事情もあるかもしれませんが、8月中旬の当院でも繰り広げられた「PCR出せば陽性」という壮絶な状況でなくなったところを見ると、やはり実際に落ち着いてきているというのが私の肌感覚です。

とはいえ、まだ一昔前の患者数とはけた違いの患者数ですし、まだまだ先は長そうです。

コロナのワクチンも茅ケ崎市からの通達では10月までにほぼすべての希望者にワクチンが行きわたるとのことで、9月をもって個別医療機関へのワクチン配送を終了するとの通達がありました。
しかし、当院で先週60人分の予約枠を開放したところ、5分かからず埋まってしまい・・・実際は接種したくても枠を待っている方が非常に多いのが実情です。
集団接種の枠もなかなか取れず、当院で打ちたいとおっしゃる患者さんも多く、正直もっとうちにワクチンを打たせてくれよ!というのが本音です。
ですが、一零細医療機関にはいかんともしようがありません。
市の言う通りなら10月には集団接種も予約が取りやすくなることと思います。ぜひ焦らず行動をしていただきたいと思います。

そうこうしているうちに、来月ごろからはインフルエンザワクチンの接種が始まります。
昨年はワクチンの接種希望者が非常に多く、10月はややパニックになったにも関わらず、結局インフルエンザは全く流行せずに終わったのはご存じのとおりです。

それでは今年のインフルエンザワクチンはどうしようか、迷っておられる方も多いと思います。

インフルエンザワクチン、やっぱり今年も打つべきなのでしょうか?

まず昨年の状況から振り返ってみます。
昨年は1月にコロナが出現、その後4月までには世界中に広がっていき、世界中でロックダウンなどが行われました。
その結果でしょうか、通常3~5月から流行が始まり、6月にピークを迎える南半球のインフルエンザは、まったくと言っていいほど流行しませんでした。

そしてその後日本を含む北半球も全く流行しなかったのはご存じのとおりです。

もちろんコロナによるソーシャルディスタンスマスクや手洗いの徹底という要素や、国際的な人の移動の減少という要素は大きかったと推測されています(ウイルス干渉説もあるようですが、昨年のコロナの患者数は、例年のインフルエンザの患者数と比べてけた違いに少ないため、あったとしてもあまり大きなファクターではなかったかもしれないと私は考えています)。

そして今年ですが、やはり南半球ではインフルエンザは流行していないようです(オーストラリアやニュージーランドでは今でも大都市でロックダウンが行われているようです)。
そしてわが国でも緊急事態宣言で相変わらず人との接触機会が減っている状態です。

この状態を考えると、やはり今年もインフルエンザは流行しないのでは、そんな風に考えることは自然なことだと思います。

ただ本当にそうなるのか、それはまだ誰にもわかりません。

今年の6~7月、突如子供たちの間でRSウイルスが大流行をきたしました。
当院にも子供たちからうつってしまい、発熱したり咳が止まらなくなったお母さんお父さんが非常に多く来院されました。
本来RSウイルスは9月ごろに流行を起こすウイルスです。
ところが今年は例年よりも2か月も早く流行し、その規模は例年以上でした。

その原因としては、RSに罹ったことのない子が今年は多かった可能性が指摘されています。本来RSウイルスは2歳までにほぼ全員が感染するといわれていますが、昨年は感染対策をした結果、RSウイルスにかからなかった子が多くいて、その子たちが初感染を起こしたためではないかともいわれています。
つまり集団免疫が弱かったことが示唆されています。

ただ、ウイルスの挙動は、必ずしもすべてが簡潔に説明できるとは限りません。


このRSウイルスの流行も、ピークを迎えてから約1か月でほぼ完全に収束してしまいました。
減り始めたのは7月中旬からであり、夏休みはまだ始まっておらず、極端な人流の変化もなかったはずです。
外的要因だけでは説明できないように思えます。

ひるがえってインフルエンザですが、こちらも毎年1月下旬ごろをピークに減少していきます。
今までは気候の影響と言われて我々もそれを信じていましたが、よく考えてみると2月はまだまだ寒さ、乾燥のピークです。
なのに2月下旬には急激な減少傾向になっている年が多いのです。
しかも気温だけの要素なら北国のほうが大流行するはずですが、実際は全国でそれほど差はありません。
気候だけでも説明できないように思います。

と考えると、ウイルスの流行のメカニズムって、やはりそう単純なものではないもののようです。
確かに感染対策や人の移動に影響をされることは確かですが、集団が持つ抵抗力や、もしかしたらウイルスそのものの特性も関与しているのかもしれません(今回のコロナ第5波の急激な減少にしたって、人流や感染対策は8月になり急に大きく変化をしたわけでもないですよね。やはり別のファクターを考える余地はあります・・・)。

ウイルスの挙動は、まだまだ分からないことが数多くあります。

 

そして昨年インフルエンザが流行しなかったことが懸念点に挙げられる考え方もあります。
昨年はほぼすべての方がインフルエンザに罹患していません。
実はその前のシーズン(2年前)も流行は小さいものでした。
そのため2年間にわたって感染によって免疫をつけるという機会は奪われていました。これはインフルエンザが流行する世の中になってからは初めてのことです。

集団免疫という点では不利になる可能性は否定できません。

つまり、今年のインフルエンザに関しては、流行しない可能性も低くはないとは思いますが、流行する可能性もないわけではないのです。

昨年が大丈夫だったからといって、今年は流行しないとの決め打ちはやはり危険であるように思います。

そして社会的には、まだまだ発熱をすることに非常に気を使わなければならない状況は続くと思われます。
もしインフルエンザが流行してしまったときに、それをもらってしまうと大変面倒です。
もちろん発熱患者診療を受け入れる医療機関は頑張るでしょうし、当院でも今まで通りできる限り受け入れます。
でも数少ない発熱診療医療機関に非常に多くの方が押し寄せると、さすがにパンクしてしまうでしょう。再度の医療崩壊の悪夢もよぎります・・・

そのような状況を考えると、ワクチンを打つことでそのリスクを減らせるチャンスがあるのであれば、是非インフルエンザワクチンは打っておいていただきたいと考えています。
コロナワクチンほどではないにせよ、インフルエンザワクチンも一定の発症、重症予防効果はしっかりと示されています。
重篤な副反応も非常にまれであることは、皆さんが実感されていると思います。

そしてそれがたとえ空振りになったとしても、春まで皆さんが無事なら良いわけです。

ぜひ、今年も皆さんにはインフルエンザワクチンを接種していただき、そのワクチン接種が本当に空振りに終わってしまうことを、切に願っています!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.07.12更新

新型コロナワクチンの接種が進んでいます。
茅ヶ崎でも高齢者の方の接種完了にある程度メドがつき、茅ヶ崎市のシステムでは本日から60-64歳の方のワクチン接種予約が始まりました。

当院でも先週から16~64歳の方に対するワクチン接種予約を開始しています。
全国的にはワクチン供給量の不足が報じられており、まだ見通しが不透明な部分もありますが、茅ヶ崎市はワクチン確保に頑張ってくれているようで、7月にもそれなりの量が入ってくることになったようです。
我々のような個別の医療機関にどれくらい配分されるかはまだわかりませんが、配分量、時期が決定し、配送の目安がつき次第、順次予約枠を開放していきます。


予約開始日時、予約枠などの詳しい内容は逐一下記ページでお伝えし、また当院のLINE公式アカウントでも最新情報をタイムリーにお伝えしておりますので、是非ご活用いただければと思います。

一般の64歳未満の方への新型コロナワクチン接種について

当院のLINE公式アカウント登録は以下よりどうぞ

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さて今回は、最近の外来で皆さんからよくお伺いすることについて書いてみます。

茅ケ崎市ではコロナワクチンの接種を、当院のような医院での個別接種に加え、茅ヶ崎市の施設や公民館などで行う集団接種、それに企業内で行う職域接種でも行っています。
今後変更のある可能性はありますが、現在のところ当院のような医院での個別接種はファイザー社のワクチン集団接種はモデルナ社のワクチンを使用することが多くなっています。

では、このファイザーとモデルナのワクチン、何が違うのでしょうか。このことについて書いてみようと思います。

まず、ファイザー、モデルナのワクチンは、いずれもmRNAを使用したワクチンとなります(mRNAワクチンとはなんぞやという方はこちらへ → 2021.2.21 いよいよ新型コロナワクチン接種開始! ~ところでコロナワクチンってどんなもの?~
ファイザー社のワクチンは、実はドイツのベンチャー会社であるビオンテック社が開発した技術をベースに開発されています(ファイザー社がビオンテック社に開発協力をした形です)。
ビオンテック社は以前よりRNAをがん治療に用いることを目指し医薬品開発をしていた企業です。

一方モデルナ社もmRNAを用いるワクチンなどの医薬品開発を目指して設立されたアメリカのベンチャー企業です。

ということで、どちらも実は大企業が財力に任せて何もない所から新たに開発したというわけではなく、これらのノウハウをすでに持っていた企業の技術が、今回の事態になり初めて活かせるようになったという経緯のようです(こんなに早く開発できるのはおかしいという人もいますが、もともとのベースはコロナ前からすでにあったわけですね。その他にも理由はあると思いますが、それらはこちらに)。

同じシステムを用いている両社のワクチンですが、全く同じものというわけではありません。

内部に含まれるmRNAの量が違ったり(モデルナの方がファイザーより大きいmRNAを使用します)、mRNAを包む脂質の膜に使われている脂質の違いがあったりします。

また両者には、保存方法の違いファイザーは-90~-60℃、モデルナは-20℃で保管)があります。
ただこの違いの根拠は実は明らかにはなっておらず、おそらく双方のワクチンの安定性に大きな違いはないだろうと考えられていますファイザー社はやや安全圏を広くとって考えているようです。実際ファイザーのワクチンは新しいデータが出たことにより、保管条件がここ1か月ほどで緩和されてきています)。International Journal of Pharmaceutics Volume 601, 15 May 2021, 120586

また使用間隔にも違いがありますファイザーは3週、モデルナは4週空けて2回)。
これも、治験のやり方の違いがそのまま使用方法の違いになったためです。
動物実験や少数の人への治験(第1相試験といいます)で得られた結果は、さらに大人数での試験を行う(第2相、第3相試験といいます)時の基礎になります。
この得られた基礎データを活かすときに、ファイザーのワクチンでは3週間、モデルナのワクチンでは4週間空けて治験をするという判断の違いが出たわけです。
これは基礎データに対する解釈の違いであり、現時点では両者が異なるということを必ずしも示すものではありません。

次に効果ですが、これも両者ほぼ同様で、ファイザーが95%、モデルナが94.1%の発症予防効果が示されています(発症予防効果とは?という点についてはこちらからどうぞ)。
両者に大きな差はないと言っていいでしょう。

ただほんのわずかだけ違いを見つけるならば、治験では両方ともほぼ全ての人に抗体ができたものの、モデルナの方がほんの少しだけ(数日程度)早く抗体ができる可能性があるかもという報告がありました。
これはモデルナのワクチンはファイザーに比べて、使用するmRNAの量が多いためではないかとされています。https://www.news-medical.net/news/20210622/Do-the-Moderna-and-Pfizer-COVID-19-vaccines-elicit-different-antibody-responses.aspx(not peer-reviewed)
まあこれも判断材料になるほどの差ではないように思います。

副反応についても両者は近い結果になっていますが、全体的にはモデルナのほうがファイザーよりも副反応の頻度は高い傾向があることが報告されています。Eur Rev Med Pharmacol Sci 2021; 25(3):1663-1669
特にモデルナでは、いわゆる「モデルナアーム」と言われる、ワクチン接種の後にやや遅れて(4~11日後)腕がかゆみを伴って赤く腫れる現象が0.8~3.5%に起こるようです。N Engl J Med 2021; 384:403-416、厚生労働省研究班
これはファイザーではあまり見ない副反応です。
とはいえ基本的には自然に改善し、症状が強い場合は痛み止めや抗アレルギー薬でだいたい対処できます。後はこれが起こっても特に2回目の接種の可否には影響はありませんので、あまり気にすべきことでもないかもしれません。

 

アナフィラキシーは一見ファイザーの方が多く見えます(報告ではファイザーは100万回に4.7回、モデルナは100万回に2.5回)。
しかしアナフィラキシーの頻度は非常に少ないため、1件の差でも数字が大きく変わる数字のマジックも考える必要があります。
また同じ条件で比較した数字ではないので本来は直接比較をすべきではなく双方とも大きな差はない(つまり、どちらも非常にまれ)と考えていいと思います。

そして変異株についての効果ですが、これも双方の違いを直接比較する報告はありません。
これらのmRNAワクチンは、多少発症予防効果が低下する可能性は言われているものの、未接種時と比べた発症予防効果は十分に保たれているとの報告が多いです。
今一番蔓延が危惧されているデルタ株(いわゆる「インド型」)に対しての最新のデータは以下の通りです。

両者とも十分な効果はあると考えてよいでしょう。

 英国の研究
ファイザー:1回接種で33%、2回接種で88%の感染予防効果。
アストラゼネカ:1回接種で33%、2回接種で60%の感染予防効果。

 カナダの研究
ファイザー: 初回接種後14日以降に56%、2回接種後87%の感染予防効果。
モデルナ:初回接種後14日以降に72%の感染予防効果。
アストラゼネカ: 初回接種後14日以降に67%の感染予防効果。
(モデルナ、アストラゼネカでは2回目の投与については十分なデータなし)

 イスラエルの研究
ファイザー: 2回接種で64%の感染予防効果。
(調査期間中に感染した人数が少なく、無症状の感染も含まれている可能性あり)

 スコットランドの研究
ファイザー:2回目接種後14日以降に79%の感染予防効果。
アストラゼネカ社:2回目接種後14日以降に60%の感染予防効果。

これらはまだ生データの段階のものも多く、より統計学的にデータを処理する必要があるものも多く残っていますので、はっきりとしたことはもう少し待たないと言えないかもしれませんが、大きく覆ることもないでしょう。

いずれにせよ、何とか違いを見つけようと頑張りましたが、違いはやはり小さいものでした。

ここで最後に、東京都の感染者数の推移を見てみましょう。

こちらが全体の感染者数の推移です。


東京都感染者数


一方こちらが65歳以上の感染者の推移です。

65歳以上東京都感染者数

いずれも東京都ホームページ

 


現在(7月8日時点)東京では65歳以上の方の中で、1回目接種完了が約75%、2回目接種完了が約50%とのことです。
65歳以上のワクチン接種が進んだ5月以降、明らかに全体の感染者数と65歳以上の感染者数の動きに違いが出ています。

これが、「ワクチンの効果」、なのでしょう。

というわけで、両者には確かに副作用の種類や頻度など、細かい所に違いはあります。

でもワクチンを打つのなら、その細かな違いに特に深いこだわりがない限り、両者の選択よりもまずは「射てる時に射てるものを射つ」、という姿勢でいいんじゃないかな、って思います。

 

最後に。おかげさまで当院のホームページが月100万PVを達成しました。
100万PV
特にアフィリエイトをやっているわけでもないので、1円の収益にもなるわけではありませんが(笑)、良くも悪くもさまざまな情報が飛び交うこのご時世、なるべく少しでも正確な情報を広めていきたいと、診療終了後や休みの日に眠い目こすって書いています。
この「医師ブログ」も、小難しい医学の内容を、なるべく多くの方に理解していただけるように「翻訳」をしながら書いているつもりです。

これをお読み頂く皆さんが、医学や病気、ご自身のカラダに興味を持って、正しく理解を深めていただくことを心より願っています。

そのお役に、このホームページが少しでも立っていられるよう、今後も気合いを入れて書いていきます!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.05.20更新

前回の1回目のワクチン接種後レポートはこちら
2020.5.4 ワクチン打ってどうなった?? ~コロナワクチン接種レポートその1~

全国の自治体で、コロナワクチンの接種が始まろうとしています。

そしてここ茅ヶ崎でも、コロナワクチンの接種がいよいよ本格化します。
集団接種は6月に入ってからですが、ワクチン配送が今週後半から開始され、クリニックで行う個別接種は来週から始まる医療機関が多いようです。

当院も来週から高齢者のワクチン、それに医療従事者のワクチンの接種を開始します。

高齢者ワクチンに関しては、当院に2020年7月以降におかかりの方(今後新規で受診される方も含みます)を対象に、窓口予約のみで接種を受け付けています(市の予約システムは使用しませんので、当院接種ご希望の方は使用なさらないようによろしくお願い致します)。詳しくは以下のページをご覧ください。

当院の一般高齢者へのワクチン接種について

また医療従事者の接種に関しては告知が十分でなく大変申し訳ありませんでしたが、当院では1回目の接種をご予約の方は全て当院で3週間後に2回目を接種いただくこととしております(1回目の接種の反応を我々が把握している方が、2回目のリスクマネジメントを行いやすいという理由からです)。
当院で接種希望の際は、県の予約システムより、1回目の分のみのご予約をお願い致します。
該当の方は以下のページをご覧いただきますようよろしくお願い致します。

当院の医療従事者へのワクチン接種について

というわけで、当院スタッフもこの度2回目の接種を迎えました。
今回は前回の1回目の接種後の様子に引き続き、2回目の接種後の様子をレポートしたいと思います。

今回のワクチンは、海外の統計や、本邦の今までに接種した医療従事者の報告から、2回目の副反応が比較的強い傾向があることが分かっています。
前回の接種時には、接種し割とすぐに症状が出た人と、やや遅れてから症状が出た人がいました。今回はそのことを勘案し、14日の金曜組と15日の土曜組に分かれて接種することとしました。

みんな揃って日曜日に苦しんでほしいという、院長の親心です(笑)

私は前回のブログでお伝えした通り、軽かったものの接種翌日に症状が出ていたので、土曜日を選択しました。
1回目の接種では、かなり奥まで針を刺されたものの、ほとんど痛くなかったとレポートしました。
今回ももちろん同様の針を、同様の打ち方で接種します。
まずは他の医療スタッフを私が接種していきます(基本的には副反応の頻度として筋肉痛が多く出現し、動かしづらくなるため、1回目と同様に利き手ではない方の上腕へ接種しています)。

「いたっ!」

今回は何人かのスタッフが多少痛がります。俺、調子悪い?
一方、前回同様ほとんど痛くないというスタッフもいました。

最後に私の番が回ってきました。手技に熟練した当院看護師に接種してもらいます。プスッ

あれ、痛っ・・・!

注入時の痛みはあまりないのですが、針を入れた後の痛みが前回よりはやや強い印象でした。

そして、私の場合は、針を抜いた後もなんか結構チクっとした痛みが続く印象でした。
感覚的には腕に点滴針がずっと入っている感じ?なんかものがずっと刺さっている感じです(当然実際針はとっくに抜いているのですが)。とはいえ、我慢できないほどの痛みではありません。インフルエンザワクチンの皮下接種と同じくらいでしょうか。

他のスタッフの反応を見ても、刺されるときに1回目よりは痛いと感じる頻度は上がるのかもしれませんうちの看護師が打っても痛かったんだから、決して私が下手だったから、ではない、はずです・・・

というわけで、強いと言われる2回目接種後の副反応、覚悟して帰宅し、待ち構えることとしました。

まずは接種後の夜です。
チクっとした痛みがそのまま鈍い痛みとなり、筋肉痛になってきました。
筋肉痛はほぼ前回と一緒です。
腕から肩、首にかけての多少のだるさも出ています。
しかしまだ全身のだるさ、発熱などは出ません。とりあえず覚悟しながら床に入ります。翌日寝込んだ時に備え、本や飲み物を取り揃えて・・・


2日目起床、覚悟しましたがそこまでではありません。
朝はいつもだるいので・・・それとほぼ同じような感じです。一方腕の痛みは昨日よりはやや強いようです。

2日目は完全ダウンの覚悟でしたが、思いのほか大丈夫だったので子供の遊び相手、勉強の面倒、部屋の片づけなどを行いました。
さすがに昼頃はややだるくなりましたが、調子に乗って動きすぎたせいかもしれません。(またこの週は過去にないくらいの多くの患者さんにお越しいただいていたので、正直相当疲れており、接種後の副反応なのか、ただの疲れなのかはよくわかりませんでした)。
午後は動きをセーブしたところ体調は回復、夕にはほぼ普段通りの状態に戻り、腕の痛みもこの頃にはだいぶ良くなってきました。

そして月曜日出勤。
体調はほぼいつも通り。
腕の痛みもほぼ気にならない状態となり、私の場合2回目の接種後の経過中は一度も37.0℃を超えることはありませんでした。

結局私の場合は接種後の副反応としては1回目と比べて極端に強かったという印象はありませんでした。

職員も大多数は体調に問題なく、当初用心して減らした受付枠を通常運用とし、当日は診療することができました。
しかし、みんなに前日までの調子を聞いてみると、38℃以上の発熱をきたした人接種後2日間寝込んだ人、一部には月曜日までだるさを持ち越した人など、やはり1回目よりは強い副反応に苦しんだ人もいました。
そしてその人たちは解熱鎮痛薬(カロナールやロキソニンなど)を飲むと落ち着いたようです。

一方、1回目とあまり変わりないというスタッフも数人はいました。
また副反応の出る時期も、打ったその日から出て次の日には落ち着いた人、打ったその日には何もなく、翌日昼から悪化した人などさまざまでしたが、月曜日に通常業務ができたことを考えると、やはり1回目の副反応の出方は2回目の副反応のピークの予測に使えるのかもしれません。

今回の当院スタッフの副作用をグラフにして比較すると、やはり発熱、だるさは2回目の方が比較的強そうです。
とはいえ、1回目と変わりなかったり、2回目もあまり出なかったりしたスタッフも何人かはいたようで、全員が必ず2回目にキツくなるというわけではなさそうでした。
たぶんこれはもう運です・・・

腕の痛みについては、針刺入直後は2回目の方が痛そうですが、その後は1回目とあまり変わりはなさそうでした。

1回目接種後副作用

1回目接種後

 

2回目接種後副反応

2回目接種後
(振られた番号は1回目の番号と同一者ではありません)


というわけで、今後接種される皆さんの参考になるかはわかりませんが、2回の接種を通じて得られた当院のレポートを報告してみました。

接種が不安となっている方の、多少の一助となれれば幸いです。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2021.05.04更新

遅ればせながら、茅ヶ崎でも一般高齢者の方への新形コロナワクチン接種の準備が進んでおり、今月末ごろから当院でも接種が開始できる予定です。

当院では現在、通院中の方にワクチン接種のご希望をお取りしています。
当院での接種をご希望の方から、リスクや年齢を考慮しながら当院の責任で接種順を決定させていただいております。

→当院の新型コロナワクチン接種ついて

今回のファイザー社の新型コロナワクチンはインフルエンザワクチンとは違い、1バイアルから6人分採取(インフルエンザワクチンは2人分程度)との人数的制約一般冷凍庫で2週間、解凍後5日間、分注後6時間などとの時間的制約がとにかくキツいので、接種体制が複雑にならざるを得ません。
加えて並行して行う通常診療と、6月からは特定健診事業も始まるなど、とにかくファンキーな未来しか想像できません。
それでも今からアタマとカラダと財布を精いっぱい使って、少しでも来院される皆さんがスムーズに診療、接種を受けていただけるような運用を目指していきたいと思います。

これに先立ち、ようやく我々医療従事者のワクチン接種も開始されました。
当院スタッフにも先日1回目の接種を実施しました。


加藤先生も
加藤先生ワクチン接種


私も
浅井院長ワクチン接種

というわけで今回は、今後接種される皆さんの参考になればと、我々のコロナワクチンの接種レポート第1弾をお送りしたいと思います。

私たちは4月23日午後6時ごろに接種を行いました。

ご存知の通り、このワクチンは筋肉注射で行います。
イメージとしては痛そうな筋肉注射ですが、実は理論上は筋肉注射の方が痛くないとされています。
垂直な分、知覚神経が多く分布する皮膚に近いエリアを最短距離で突っ切ること、筋肉には痛みを感じる知覚神経が少ないことが理由とされています。

でも、実のところ、私たちの多くは、筋肉注射をされた経験がありません。
そして・・・今回使用する(ワクチンと同時に配られる)針、結構長いんです。
針の長さは25mmあり、これを垂直に差すわけです。結構インパクトあるなあ・・・

ワクチンシリンジ針

まあしかし、これにもしっかりと根拠はあるわけです。

統計上ほとんどの場合、BMI18-19以上の方では25mmの針をしっかり垂直に刺すと、しっかりと三角筋の中に到達し、かつ骨には届かないとのことだそうですNakajima Y,et al.Hum Vaccines Immunother.2020;16(1):189-196 
ちなみにこれ以上やせている方の場合は16mm程度の深さとし、男性118kg、女性90kg以上の方では38mmの針を用いることを検討するそうです。

というわけで、私たちも推奨されているように25mmの針をしっかりと垂直に、奥まで刺しました。ブスッ。

あれっ、痛くない・・・

そう、感想としてはホントに痛くなかったんです。
当院スタッフの間でも、刺されたときにチクッと感じたスタッフが数名、中には少し痛いという人もいましたが、刺されたことに気づかなかったという人も複数いました。
あと、皮下注で行うインフルエンザワクチンの時は、薬を注入するときに痛みを感じますが、筋注のコロナワクチンでは、確かに注入時の痛みはほとんど感じませんでした。
やはり理論通りです。

さて、これからは打った後の経過です。
以前のブログでもお話しした通り、このワクチンは打った後の副反応が比較的多いと言われています。
ですので、まずは私のその後の経過です。

打った直後は特に変化はありませんでした(スタッフも全員アレルギー反応などは起きず、いつもと変わらない様子でした)。
が、帰宅して2-3時間経つと、軽度の接種部位の違和感を覚えるようになりました。
インフルエンザでも打った後には接種部位の痛みを感じますが、この時は腫れた感じの痛さを感じます。一方新型コロナワクチンではやはり薬剤の到達部位の違いでしょう、外から見た脹れはないものの、筋肉が重い感じで違和感を覚えます。
で、当日はこれ以上の悪化はなくそのまま就寝しました。

翌日(2日目)朝、やや痛みが強くなりました。
起きた時に接種した腕を下にすると、あっ、痛いって感じるくらいです。
また少し重いものを持つと痛みはありましたが、腕は上まで挙げられる程度です。

昼になり、多少のだるさを感じました。
とはいっても全身のだるさではなく、私の場合は首から肩にかけてのだるさといった感じで、日常生活には問題あるレベルではありませんでした。
夜には腕の痛みはやや引いてきて、翌朝(3日目)にはだるさは消失、筋肉の違和感は多少残っていたものの、昼にはほぼ消失し、いつも通りになりました。

ただ経過はやはり人によりいろいろなようでした。
下のグラフは当院スタッフの接種後の経過を記録してもらったものをグラフ化したものですが(わかりにくくてすみません・・・)、やはり人によってさまざまでピークがその日の夜に来た人もいれば、24~36時間経過してからピークが来る方もいました。
今回の当院の接種者は20~60代で、今回の接種ではあまり年齢と副反応の強さは関連がない印象でした。

ワクチン副反応1回目
というわけで、翌月曜の診療は通常通りに行えました。
しかし、3週間後に2回目の接種が待っています。
このワクチンの副反応はご存知の通り、2回目に強く出るケースが多いと言われています。
今回の副反応の出方を見て、診療になるべく影響がないようにスケジュールをするつもりなのですが、果たしてうまくいくのか・・・?

次回は2回目接種後のレポートをしてみたいと思います。

というわけで、念のため、5月17日(月)の外来予約は、申し訳ありませんが上記の理由によりあらかじめ通常より枠を減らさせて頂きました。
ただ私自身はどんなにしんどくても医院は開けるつもりでいます。


もし診察室で私が、そして医院内でスタッフがしんどそうにしていたら・・・お察しいただけますと幸いです(笑)

追記:5月14日、15日に当院スタッフは2回目のワクチン接種を行いました。
そのレポートはこちら!

2021.5.20 ワクチン打ってどうなった??完結編 ~コロナワクチン接種レポートその2~

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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