ここ1か月ほどブログがご無沙汰になってしまいました。
理由は2つ。一つはインフルエンザワクチン接種で多くの方にご来院いただき、非常に多忙となってしまったためです。
今年はワクチンの入荷が早く、また早期から接種を希望される方が非常に多かったため、10月のワクチンの接種数が例年よりもかなり多くなりました(当院でも10月は、昨年の約5倍の方にワクチン接種を行いました)。
大変申し訳ありませんが、当院のワクチン在庫も例年とは傾向が異なっているため皆様のご希望に沿えない場合もあるかもしれませんが、最新情報は逐一こちらのページで発信致しますのでご参照ください。
もう一つが講演会の準備でした。10月30日に茅ヶ崎寒川薬剤師会とコラボをして、吸入指導連携セミナーの講演をしてまいりました。少数の医師、薬剤師の先生方に現地でご来場いただいた上で、その他の多くの先生にはオンラインでご視聴いただきました。
今回は新しい試みとして、いろんな種類の吸入器具を大量に現地に持ち込み、吸入薬の使い方のコツ、患者さんがミスしやすいところを実演し、それをオンラインで配信するという方法でやってみました。回線速度に限界がありやはりやや見にくい面はあるようでしたが、予想以上の人数の先生方にご視聴いただき、また講演後はありがたくもご評価の声を多く頂くことができました。
現地にご参加いただいた先生方、オンラインでご視聴いただいた先生方、この場を借りて御礼申し上げます。誠にありがとうございました。
さて、今回はその吸入薬の中で、ブリーズヘラーについて取り上げてみましょう。吸入薬の落とし穴シリーズ第三弾です。
ブリーズヘラーは、今までは主にCOPDの治療に用いられている「ウルティブロ」「オンブレス」「シーブリ」に用いられる器具です。ここにこの8月、喘息に用いられる薬剤として「エナジア」「アテキュラ」が加わり、全5種類となりました。
特に「エナジア」は、ステロイドと、β2刺激薬という気管支拡張薬の配合に加え、新たに抗コリン薬というタイプの気管支拡張薬も一緒に配合された、本邦初めての3種配合の喘息治療薬となります(他にも3種配合の吸入薬はすでにありますが、現時点ではCOPDのみに使える薬剤です)。
1日1回の吸入で済むこともあり、今後なかなか症状のコントロールが難しい重症喘息の方に良い選択肢になるのかなって思います。
ただ、やはり何度もこちらで触れている通り、吸入薬は使い方が大変重要です。間違って使ったらどんなにいい薬でも効きません。
さて、この吸入器具にはどんな落とし穴が待っているのでしょうか。
この薬剤は下のような器具にカプセルを入れて、横のボタンを押すと出てくる針でカプセルに穴をあけ、それを吸い口から吸うという薬剤になっています。
まずはカプセルを取り出すときの注意点です。実は上の5種類の薬剤で、「オンブレス」という薬剤だけは通常のフィルムと同様、押し出してカプセルを取り出します。そしてその他の薬剤は、フィルムを剥いて取り出します。このカプセルの取り出し方を間違うとカプセルが潰れてしまい、使えなくなってしまうので、よく説明を確認して取り出しましょう。
また器具の中にセットした後、横のボタンを押して、それによって出てくる針でカプセルに穴を開けるわけですが、穴を開けずに吸ってしまったら全く薬は出てきません。
それと、ボタンは左右ともあるので、両方とも押すことでカプセルの左右両方から針が出てきて穴を開けられます。しかしか片方しか押さないと穴も片方しか開かず、中の粉がうまく出てこなくなります。
一方吸入するときにはボタンを離さなければなりませんが、ボタンを押したまま吸入すると、当然カプセルは串刺しのままになるので全く薬は出なくなってしまいます(実際に時々見かける落とし穴です)。
あとは、この器具は、吸うとカプセルが中でカラカラ音を立てて回りながら中の粉末が気道に吸われていくので、そのカラカラカプセルが回る音が鳴ることがうまく吸えた合図になりますが、その音が鳴らないまま吸入を終えてしまうと粉が出てきません。
うまく吸うには少しコツがいる場合がありますので、うまくいかない場合は、処方した医師や薬剤師に相談しましょう。
最後に、このカプセルは当たり前ですが飲んではいけません。他の内服薬とつい一緒に飲んでしまわないよう、間違わないようにしましょう。
いままでご紹介した他の器具に比べ、吸えていることが自分で確認できるなど、わかりやすさを追求した吸入器ですが、やはり落とし穴はいろんなところに散りばめられています。
わからないことは何でも遠慮なく聞いて使用するようにして下さい!