医師ブログ

「診察室でよく聞くあのワード」・・・それってホント? ~喘息編~

先日は季節外の台風が神奈川にも襲来しました。

ここ湘南も朝から嵐に巻き込まれました。
台風のほぼ直撃コースであり、午前中の荒れ模様は不可避の情勢でしたので、当日は診療体制を大幅に縮小、茅ヶ崎院、平塚院ともに、遠方から来ている非常勤の先生方はお休みをしていただき、職員も出勤に支障がないメンバーのみに協力を仰ぎながら、いつもの半分ほどの体制で診療をさせて頂きました。

とはいえ、よっぽどのことがない限り患者さんはいらっしゃらないだろうなと思っていたら、午前中から受診の問い合わせの電話を結構いただき、最終的には茅ヶ崎院、平塚院合わせて100人ほどの患者さんを診察させて頂きました。

すこしびっくりしましたが、お困りの時にはすぐにご相談頂ける当院の理念にご理解いただいていることを実感しました。

とはいえど、現在は比較的受診枠に余裕があります。

茅ヶ崎本院は特に火曜、水曜午後の内科・呼吸器科枠には余裕があり、土曜日も第2週には金子舞先生が来て頂いたことにより、第2週(6月は13日です)はご連絡頂ければ受診は可能です。他の曜日も、状況によってお受けできる場合もあります。

平塚院は月曜日午前の池田院長が比較的埋まりやすいですが、その他はすべて医師2人以上で診察に臨んでいること、まだ開院2ヵ月ということもあり、まだまだ当日でもお受け入れは問題ありません。

カラダのことでお困りの方は、是非ご相談ください!

さて、日々診療する中で、患者さんとお話をしていますが、最近はネットの情報だけでなくAIやYouTubeなどを見られる方が多く、患者さんはよく自分の症状について見聞きしたり、勉強されている方が多いなという印象です。

「よくご存じだな」と思うことも多いのですが、「ちょっとカン違いかもな」と思うこともたまにはあったりします。

そこで今回からは、患者さんのお話しからよく伺う、患者さんが思う「ちょっとしたカン違い」と、その実際について取り上げてみようと思います。

まず今回は、喘息がらみのところからいくつかピックアップしてみましょう。

「風邪が長引いて喘息になってしまいました・・・」

風邪は、正式な名称を「ウイルス性上気道炎」と言います。
つまり、ウイルスが上気道、例えば鼻とか、喉とかに感染して、熱や鼻炎、のどの痛みなどを引き起こす病気です。

喉に炎症が起こると咳が起こることもありますし、ウイルスは上気道から下の方に広がっていって、「ウイルス性気管支炎」となることもあり、この場合は咳が長引くこともあります。

一方、喘息とは、気管支に慢性的な炎症(主にアレルギーのことが多いです)が起こっていて敏感になることで、刺激が加わったときに咳・喘鳴・息苦しさなどが出てしまう病気です。

これはウイルスが直接咳を起こす「気管支炎」とは、そもそも別の状態です。

ですので、風邪が悪化すると喘息になることはありません。

ただ、喘息は「刺激が加わる」ことで悪化します。
ウイルスなどの感染、この「刺激」の一番の原因と言われています。

つまり「もともと喘息の体質を持っていた人が、風邪によって喘息が悪化した」は正解です。
このような状態を起こさないためにも、喘息の治療は症状がなくなっても続けて頂きたいというわけなのです。

「ゼーゼー、ヒューヒューしてないから喘息じゃないですよね?」

喘息は、気管支が炎症がおこることで「気管支が狭くなる」ことと「気管支が過敏になる」ことが起こる病気です。
そして、気管支が狭くなると、狭いところを空気が通る時に「笛」や「ビル風」みたいな状態が起こり、ゼーゼー、ヒューヒューという音が起こるのです。

で、この気管支が「狭くなる」と「過敏になる」程度は、人それぞれです。
両方しっかり起こる人もいれば、片方しか起こらない人もいます。

「過敏にはなる」けど、「あまり狭くならない」人は、しつこい咳が出続ける一方、ゼーゼー、ヒューヒューと言った音はなりません。
一般的にこれを「咳喘息」ということが多いのですが、本質は喘息と同じです。

ですので、音のあるなしで、喘息の判断はできない、ということなのです。

「いままで喘息と言われたことはなかったので、喘息じゃないと思います」
「子供の時喘息ではなかったので、喘息じゃないと思います」

たしかに、喘息は子供に多い病気です。
今はおおよそ10人に1人の子が喘息になると言われていますが、成長すると徐々に軽くなり、治ってしまうケースも少なくありません。
そのような方の中で、大人になると再発する方がいらっしゃり、これが大人の喘息の一つ目のパターンです。

一方、子供の時に喘息と言われたことがなくても、大人になってから初めて喘息になる方も少なくありません。
海外のデータでは、大人の喘息の約60%の方は、子供の時に喘息と言われたことがなかったというデータもありますRespiratory Medicine Volume 154, July–August 2019, Pages 56-62。

また、以前は今よりも検査の機器が少なく、また喘息という病気や治療そのものが医師によく理解されていなかった時代でもあり、実は子供の時に喘息の症状があったものの、診断はされていなかったという例も少なくないようです。

そのため、大人になってから初めて喘息と診断されることは、決して珍しくないのです。

「吸入ステロイドは、ステロイドだから続けない方がいいんですよね?」

喘息治療の主役は、吸入薬のステロイド薬です。
ステロイド薬が気道に直接沈着することで、気道に起こっている慢性炎症を止めることができるからです。

一方ステロイドを長期に続けることの危険性はよく知られています。
ステロイドは、体の中で作られている「コルチゾール」というホルモンに似た物質で、長く「飲み」続けていると、体は「コルチゾール」を作ることをサボってしまいます。
また、全身にステロイド薬が巡ると全身の抵抗力が落ちて感染症にかかりやすくなったり、血糖値が上がったりしてしまいます。

ただこれは、長く「飲み」続けて、全身にステロイドが巡ったときの話です。

吸入ステロイドは、ほとんど血液中に入ることはなく、肺でとどまって作用します。
ですのでこのような副作用は基本的にはあまりおこらないと考えて差し支えないのです。

確かに、局所的に口の粘膜の周りにステロイド薬がつくことによって粘膜の抵抗力が下がって、カビがつきやすくなってしまうという、「局所の副作用」はありえます。

そのため吸入薬を使った後はしっかりとうがいをしてもらいたいと思います。

ただ先ほどもお話をしたように、気管支の炎症は常に抑えることが大事なわけですから、むしろしっかりと使い続けて炎症を抑え続けていくことの方がメリットが大きいわけです。

吸入と内服のステロイドの違いについては、以下のブログに詳しく書いていますので、ご興味ある方は是非お読みください!

吸入ステロイドは医師の指示通り、しっかりと続けていきましょう。

「発作止めの吸入は、いつも使う吸入より強い薬だから、ぎりぎりまで使っちゃだめですよね?

喘息の治療の基本は先ほどもお話しした「吸入ステロイド」です。
この薬は気管支を広げる気道の炎症を抑え続ける役割があるのですが残念ながら即効性がありません。

またこの吸入ステロイドに気管支拡張薬がされている事もありますが、やはりこちらも即効性がないことが多いです(即効性があるタイプのものもありますが)

一方発作止めの吸入薬とは、即効性のある気管支拡張薬のことです。

つまりこれは、普段使っている吸入ステロイドより強いというわけではなく早く効くということです。
一方効き目も早く消えてしまうためそもそも普段使う吸入ステロイドとは全く別の運用をする薬ということになります。

つまり発作止めとは、あくまで普段の吸入薬を使っていただいた上で急に状態が崩れたときに使うもので、普段の吸入薬の上位互換ではないということなのです。

「以前喘息と言われたけど、治療したらすぐに治りました」
「吸入薬って、苦しい時だけ使えばいいんじゃないんですか?」

喘息は、血圧は血糖値などと異なり、症状を反映する「数値」というものがありません。
ですので喘息の治療をやって良くなってしまうと、あたかもすっかり喘息が無くなって治ってしまったように感じてしまいます。
またここが難しいところなのですが、一度症状が良くなった気管支喘息は、治療をやめても刺激がない状態では、すぐに症状が悪化しないことも少なからずあります。

しかし先ほどもお話をしたように、喘息は慢性的に気道に炎症が起こる状態です。
ですので私はこれを「病気」というよりは「体質」というようにお話をしています(花粉症で薬を飲んだら「治った」という人は少ないと思います。あくまで「薬で抑えた」状態です。これと一緒と考えて頂ければと思います)。

そして、喘息を再び悪化させる「刺激」、つまり風邪や温度変化、アレルギーなどの悪化因子は、いつ襲ってくるかわかりません。

そしてそれらの悪化因子が襲ってきた時から慌てて吸入薬を再開しても、炎症が起きてしまってからでは間に合わないことが多いのです。

また、困ったことに、このように炎症を繰り返していると、気管支の炎症が慢性化してしまい、徐々に吸入ステロイドを使っても治りにくくなってしまうということが起きます。

つまりステロイド吸入薬を使って症状が良くなっても、その炎症を抑えるステロイド吸入薬は使い続け、ベースとなる炎症が起きない状態を続けてキープする必要があるということです。

喘息とは、あくまで「体質」なので、「治る」というよりは「抑え込む」という表現が正しいです。
そして、その喘息を抑え込むことを続けないと、いずれ喘息が重くなってしまう可能性がある、というように理解をしていただきたいと思います。

と、いろいろ書いてみましたが、一度考えてみると、他にも色々なフレーズが私の頭の中に思い浮かんできました(笑)

長くなりそうなのでまた次の機会に。

茅ヶ崎・平塚内科と呼吸のクリニック
理事長 浅井偉信(医師紹介はこちら