早いもので4月もそろそろ終わり・・・
平塚内科と呼吸のクリニックも開院1か月を迎えました。
おかげさまで4月は連日1日当たり30~40人ほどの患者さんにご来院いただきました。
その中で、やはり当院の「検査の切り札」であるCTスキャンも、開院当初から大活躍しています。
前回のブログでもお話をしましたが、胸部レントゲンはとても簡単に検査ができる一方、どうしても迷うところやレントゲンでは見えないところが出てくるのが避けられません。
そのような場合に肺をくまなく抜けなく見ることができるCTは、やはり正しい診断のとても強い味方です。
ただ、やはりCT検査には「放射線被ばくの不安」という問題が必ずついてまわります。
当院でも診察室でCT検査やレントゲン検査をご提案すると、時折「先生、被ばくは大丈夫でしょうか?」と不安そうな表情を浮かべられる患者様がいらっしゃいます。
もちろんそのようなご不安は真摯に受け止めなければならないものですが、同時に、これらの検査の放射線の「ホントのところ」を知っていただくと、だいぶ安心していただけるのも事実です。
今日はそんな「CTやレントゲンの被ばく」についてお話をしてみましょう。
レントゲン検査の被ばく量
まず最初に、一番メジャーである「レントゲン検査」の数字を挙げてみましょう。
放射線の量を表すには「ミリシーベルト(mSv)」という単位が使われます。
1枚のレントゲン写真を撮影するのに浴びる放射線量は、おおよそ0.06ミリシーベルトです。
まずはこの数字を覚えていてください。
私たちの日常に溢れる「天然の放射線」
実は、私たちは病院に行かなくても、この地球で生きているだけで毎日放射線を浴びています。
これを「自然放射線」と呼びます。
私たちはただただ普通に生活しているだけで、年間で約2.4ミリシーベルトの放射線を浴びているのです。
そう、レントゲン1回分の放射線量って、私たちが「ただ地球上で普段どおりの生活をしている」ときに浴びる、たった9日分の放射線量なのです。
NYに行くだけで放射線を浴びる!?
次に、「空の旅」にでかけてみましょう。
高度が上がれば上がるほど、宇宙から降り注ぐ「宇宙線」を遮る空気が薄くなるため、被ばく量は増えます。
たとえば、東京とニューヨークを飛行機で往復したとしましょう。
飛行機の上で浴びる放射線量は、往復で約0.11〜0.16ミリシーベルトです。
先ほどレントゲン検査では0.06ミリシーベルト浴びるといいました。
ニューヨークに旅行するということは、1枚のレントゲン撮影の2倍もの量を浴びてしまうということなんですね(といってももちろん全く問題ない量ですが)
エベレストでも・・・
今度はエベレストに登ります。
エベレストの山頂は、下界の約10倍近い宇宙線を浴びることになります。
1日エベレストにいれば、レントゲン写真1枚分の0.06ミリシーベルトを浴びるという計算になります。
ちなみに将来のがんのリスクが上がるとされている放射線量は、短期間に100ミリシーベルト以上を浴びたときからとされています。
桁が全然違います。
CT検査の被ばく量
さて次に、本題のCT検査、いってみましょう。
CT検査はレントゲンよりも詳細な情報が得られる分、被ばく量も多くなります。
従来のクリニックレベルで主体だった、「16列CT」を用いて、胸部のCT検査を行うと、約7.0~10.0ミリシーベルト前後です。
さすがに多く見えますが、先ほどもお話をしたように、がんのリスクが上がるのは短期間で100ミリシーベルト以上を浴びた時なので、7~10ミリシーベルトという数字でも、ほとんど心配のいらない量です。
80列CTなら被ばく量を「節約」
一方、当院で導入している「80列CT」は、「16列CT」と違いがあります。
前回のブログでお話ししましたが、CTの「列」とは、一度に撮影できる断面の数のことです。
16列CTが一度に16枚の画像を撮るのに対し、80列CTはその5倍の80枚を同時に撮影できます。
ではこれがなぜ被ばく低減につながるのでしょうか。
それは「無駄な被ばく(オーバービーム)」を減らせるからです。
16列CTで撮影しようとすると、検出器は何度も回転を繰り返しながら、撮影部位を繋ぎ合わせていく必要があります。
この「繋ぎ目」の部分で、どうしても放射線が重複して当たってしまう領域が生じます。
対して、80列CTは一度に広い範囲をカバーできるため、この重複部分が少なくて済み、被ばく量を節約できるというわけです。
さらに重要なのが、画像処理技術の進化です。
CTは、検出器が回って得た画像を、コンピューターの力で再構成して見やすい画像にするという機能が備わっています。
放射線の量を減らすと画像にはノイズが乗りやすくなりますが、画像処理技術の進化で、このような画像を「非常に鮮明な画像」に作り替えることができるようになりました。
これらの要因により、新しい80列CTでは約1.5~2.0ミリシーベルト、すなわち日常的に生活しているだけで浴びる「自然被ばく量」1年分にも満たない量ということになります。
この量は、従来の16列CTの70~80%も少ない量です。
つまり、80列CTで撮影するということは、以前よりもずっと「薄い光」で、それ以上に「鮮明な結果」を得ているというようにも言えるのですね。
検査の被ばく量ってめちゃ少ない!
もちろん不必要な被ばくは避ける必要があることは当たり前のことなのですが、「リスクが上がる被ばく量」と「検査で受ける被ばく量」には、実はかなりの隔たりがあるというのが事実です。
例えば80列CTなら、連続で最低でも50回以上CTを受け続けないと、がんのリスクが上がる100ミリシーベルトには達しません(もちろんそんな検査はありえません)。
レントゲンに至っては、1600回レントゲンを連射して初めて達する数値です(非現実的です)。
そもそも健康被害を出すことの方が難しいわけです。
診察室での「よくある質問」
ではこの知識を踏まえて、診察室でよく聞かれるご不安にお答えしたいと思います。
「先生、もし100ミリシーベルトを超えたら、すぐにがんになるんですか?」
放射線の影響というのは、ある点で突然「0」から「100」になるものではありません。
100ミリシーベルトを超えたからといって、必ずがんになるわけでもありません。
例えるなら、車のスピードと事故のリスクのようなものです。
時速100キロを超えると事故の際の危険性は増しますが、必ず事故を起こすわけではありません。
「短期間に2回CTを撮ることになったけれど大丈夫でしょうか?」
治療の経過を見るために、短期間でCT撮影が必要なケースは少なからずあります。
まず前提として、CT検査を数回繰り返す程度では、健康被害が懸念される100ミリシーベルトには達しません。
また放射線というのは、一度に大量に浴びるのと、期間を空けて浴びるのでは、体への負担は全く違います。
私たちの体に備わっている遺伝子は、いろんな要因で常に傷つきながらも、それを修復しながら生活しています。
例え放射線で多少遺伝子が傷ついても、修復する時間が十分にあれば大きな問題はありません。
「検査による放射線で不妊になってしまうのでは・・・」
不妊症を引き起こすような放射線量は、数千ミリシーベルトという、医療検査ではまず到達し得ないレベルです。
例え卵子が入っている卵巣が含まれる腹部や骨盤のCTであっても、通常の検査の範囲内では将来のお子様への影響を心配するレベルに達することはありません。
CT検査の役立ちドコロ
さて、CT検査は様々な場面で行うことができます。
例えば咳の症状が出ている際に、レントゲンでは見えない肺炎をCTで見つけられれば、適切な薬をすぐに選ぶことができます。
また、レントゲンではわかりにくい肺のできものをCT画像で見てみると、それががんの可能性が高いか、そうでないかということも推測できます。
すると適切な対応が速やかに取れるため、がんの早期発見、早期治療や、余計な心配からの解放などのメリットを享受することができます。
そのほかにもCTの役立ちドコロを挙げていったら、枚挙にいとまはありません。
一方、CT検査の「リスク」とは被ばくでしょう(多少お金がかかるデメリットも「リスク」ともいえますね)。
さて、CTを行うかどうかというのは、この「リスク」と「メリット」を天秤に乗せて決めるという行為です。
これを皆さんが「どっちを選ぶか」ということを決めるのが往々にして難しいものなのですが、私はこの時「どっちを選ぶか」ではなく、「どっちをあきらめるか」という視点で選ぶとわかりやすいのでは、といつも皆さんにお話をしています。
検査を受けるかどうかの「決め方」
CT検査を受けるかどうかで「どっちをあきらめるか」という視点で考えると
検査をする場合:「被ばく」をあきらめて、正しい診断、「正しい診断、治療」を取りに行く
検査をしない場合:「正しい診断、治療」をあきらめて、「被ばく」のリスクを避ける
ということになります。
CT検査の「被ばく」というリスクは、今までお話ししてきた通り、とっても小さなことだというのがお判りいただけたと思います。
一方「メリット」として挙げた「正しい診断、治療につながったり、早期発見、早期治療ができる」ということを捨てるというデメリットをあえて選ぶ人はごく少数化と思います(それを選ぶんだったらそもそも病院にはくる必要がないですよね・・・)。
もちろん私たち医師は、検査の必要な時だけに、検査を提示しております(そうでない医療機関は行く必要は全くないでしょう)。
もちろんご自身が受ける検査ですから、ご不安なことはあると思います。
検査への不安が消えない時は、いつでも私たち医療者にお話しください。
不安が解消されて納得して検査が受けられるように、丁寧にご説明いたします。



