早いもので、もう10月も半ばになりました。
ついこの前まで「暑い暑い」と言っていたのに、ようやく秋らしい日も増えてきましたね。
さて、ちょうど1か月前のブログで、今年のインフルエンザの流行がやたらと早く始まっていること、そしてワクチンは例年より早めに接種したほうがよさそうだというお話をしました。
あれから1か月。
実は途中で一瞬、「おっ、もしかしてこのまま収まってくれる?」と思った時期もありました。
しかし・・・
残念ながら、そんなに甘くありませんでした・・・
今回は、この1か月でインフルエンザの流行がどう変化したのか、今後どうなっていくと考えられるのか。
そして何より、結局、ワクチンはいつ打てばいいの??というお話を、最新のデータを見ながら考えてみたいと思います。
インフルエンザ、一度減ったと思ったけど・・・
まずは神奈川県のインフルエンザの流行状況を見てみましょう。
神奈川県衛生研究所の発表によると、県内のインフルエンザの定点当たり報告数は、以下のように変化しています。
- 第38週(9月14~20日):14.71
- 第39週(9月21~27日):8.59
9月中旬には早くも注意報レベルの10を超え、どんどん増加していました。
ところが、9月下旬。
14.71だった数字が8.59まで下がったのです。

おおっ、これはひょっとして流行が一段落したのか!?
正直、少し期待してしまいました。
というのも、これほど早く流行が始まれば、通常の冬の流行が始まる前にいったん収束する可能性も、ないとは言えないからです。
しかし、気になることが一つありました。
シルバーウィークの落とし穴
そう、この週はシルバーウィークだったのです。

感染症の流行データを見るとき、気をつけなければならないことがあります。
それは、報告される患者数と、実際に感染している患者数は必ずしも同じではないということです。
9月下旬には秋分の日があり、休診となる医療機関が増えました。
医療機関がお休みになると、当然、その日に診断される患者さんも減ってしまいます。
つまり、実際の感染者がそれほど減っていなくても、統計上の数字だけが下がって見えることがあるのです。
私たちも、外来で診察をしている限りでは、インフルエンザの患者さんが明らかに減ってきたという実感はありませんでした。
「まだ安心できないな」、と。
その後の動きを注意して見ていたところ・・・
- 第40週(9月28日~10月4日):18.51
- 第41週(10月5~11日):21.60
翌週には18.51、そして10月15日発表の最新のデータは21.60!
やっぱり増えてしまいました・・・
わずか2週間で約2.5倍です。
もちろん、9月下旬の減少がすべて休診の影響だったと断定することはできません。
しかし、その後2週続けて増加していることから、流行が収束したと考えることはできません。
むしろ、今後のさらなる流行拡大に備えるべき状況と考えています。
※ 神奈川県衛生研究所「感染症発生情報」2026年第41週(10月15日発行)。定点当たり報告数は、定点医療機関からの報告に基づく数値です。
じゃあ、これからどうなる?
ここからが今回、私が一番考えているところです。
前回のブログでは、今年のインフルエンザは、これまでとはまったく違うタイミングで流行が始まっているとお話ししました。
皆さんがかつて「常識」と考えていた、「コロナ禍」前の流行と比較してみましょう。
2018年や2019年ごろまで、つまり「コロナ禍」前は、おおむね12月から患者数が増え始め、1~2月に大きなピークを迎えるのが典型的なパターンでした。
ですから、11月ごろにワクチンを打って、冬の流行に備えるという考え方が一般的だったわけです。

ところが、最近は様子が大きく変わっています。
2023年には、8月から流行が始まり、通常の冬季流行が終わるはずの時期にも患者さんが発生し続け、秋から冬にかけて再び増加。その後も翌年の春まで流行が続きました。
2024年には11月から流行開始、そして2025年は9月下旬から流行が始まり、11月に大きなピークを迎えました。

そして今年、2026年です。
今年は8月中旬から流行が始まってしまいました。

もはや「インフルエンザは12月から流行するもの」という考え方では、今の状況を説明できなくなっています。
今年は2023年に似ている?
私が今、今年の流行と比較しているのが2023年です。
2023年は、通常のように冬だけ大きな山ができるのではなく、長期間にわたり患者さんが発生し続けました。
今年も、かなり早い段階から流行が始まり、10月に入っても増加が続いています。
そのため、2023年のように、増えたり減ったりを繰り返しながら、長期間流行が続く可能性があるのでは考えています。

ただし、ここで一つ注意が必要です。
流行が早く始まったからといって、必ず長期化するわけではありません。
インフルエンザの流行には、ウイルスの型、人々の免疫の状態、学校などでの接触、気温や湿度など、さまざまな要因が関係しています。
私としては、早く始まったこと自体が長期化の原因というより、早い時期から流行するほど感染が広がりやすい条件がそろっていること、そしてその後に別の型のウイルスが広がることが、流行を長引かせる要因になるのではないかと考えています。
つまり、今年も同じ経過をたどるとは限りませんが、長期戦になる可能性は十分に考えておくべきだと思うのです。
年明けの「第2波」、来る?
実は、私が今年特に心配しているのは、これからの流行だけではありません。
年が明けてからの流行です。
前回のブログでは、今年の流行の中心となっているのがH1N1pdm09というA型インフルエンザであることをお話ししました。
しかし、インフルエンザにはA型だけでなくB型もあります。
昨シーズン、神奈川県では11月に大きな流行が起こり、その後いったん患者数が減少しました。
ところが、2026年の年明けから再び患者数が増加し、2月にはもう一度大きな流行の山が現れたのです。
この時期にはB型インフルエンザの増加も確認されていました。
つまり、A型の流行が落ち着いても、B型によって再び流行が大きくなることがあるのです。

では、今年はどうでしょうか。
現時点で、年明けにB型が必ず流行すると断言できるデータはありません。
しかし、昨シーズンの経過を考えると、今年もA型に続いてB型が広がり、第2のピークを作る可能性は十分に考えておく必要があります。
インフルエンザは、1シーズンに2回かかる?
「今年はもうインフルエンザにかかったから大丈夫!」
診察室でもよく聞く言葉です。
でも、残念ながら・・・
一度かかっても、もうかからないわけではありません。

A型に感染して免疫ができても、それによってB型まで十分に防げるわけではないのです。
つまり、10月にA型にかかり、翌年2月にB型にかかるということも起こり得ます。
実際、日々の診療でも、同じシーズン中に2回インフルエンザと診断される方を経験します。
もちろん、全員が2回かかるわけではありませんし、今年そのような方が特に多くなると決まったわけでもありません。
ただし、秋に1回かかっただけで、そのシーズンの対策を終わりにしてしまうのは危険だと思っています。
では、ワクチンはいつ打ったらいいの?
さて、ここからが本題です。
前回のブログでは、今年はできるだけ早い時期にワクチンを接種することをお勧めしました。
あれから1か月たった今、その考えはどう変わったのでしょうか。
結論からお話しします。
まだ打っていない方は、できれば今、早めに接種してください!

むしろ、1か月前よりもその必要性は高まっていると考えています。
なぜなら、すでに神奈川県ではインフルエンザがかなり流行しているからです。
インフルエンザワクチンは、接種したその日から十分な効果が得られるわけではありません。
免疫ができてくるまでに、約2週間程度かかります。
たとえば10月中旬に接種しても、十分な効果が期待できるのは10月下旬ごろ。
11月中旬に接種すれば、11月下旬ごろになるわけです。
ここで思い出していただきたいのが、昨シーズンの流行です。
神奈川県では2025年11月上旬にはすでに警報レベルに達し、11月下旬に大きなピークを迎えました。
もし今年もこれに近いタイミングで流行が大きくなれば・・・
11月になってから接種したのでは、第1波のピークに間に合わない可能性があるのです。
もちろん、今年のピークがいつになるか、正確にはわかりません。
しかし、すでに流行している感染症に対して、接種を先延ばしにするメリットは小さくなっていると考えています。
「でも、早く打ったら春まで効果がもたないのでは?」
これは当然の疑問だと思います。
ワクチンによる免疫は時間とともに低下していきます。
そのため、流行が1~2月に限られるのであれば、10~11月に接種するという従来の考え方は理にかなっています。
しかし、今年は違います。
すでに10月の段階で流行が広がっているのです。

春先の感染を心配して接種を遅らせ、その間にインフルエンザにかかってしまったら、本末転倒ですよね。
ワクチンの効果は時間とともに弱まるものの、ある日突然ゼロになるわけではありません。
また、その持続期間にも個人差があります。
ですから今年は、春までの効果を最大限維持することを考えるよりも、今まさに始まっている流行への対策を優先することが合理的だと考えています。
なお、ワクチンを接種すれば絶対にインフルエンザにかからない、というわけではありません。
ただ、発症や重症化のリスクを下げることが期待できます。
すでにインフルエンザにかかった方は?
さて、もう一つ、大切なお話です。
今年は流行が早かったため、ワクチンを接種する前にインフルエンザにかかってしまった方も、すでにいらっしゃると思います。
そんな方からよく聞かれるのが、
「もう今年はワクチンを打たなくていいですよね?」
という質問。
答えは・・・
「いいえ、かかったからといってワクチンが不要になるわけではありません」
なぜなら、先ほどお話ししたように、A型に感染したからといって、B型への免疫が十分にできるわけではないからです。
現在使用されているインフルエンザワクチンには、A型だけでなくB型に対する成分も含まれています。
つまり、すでにA型に感染した方でも、ワクチンによって、今後流行する可能性のあるB型などへの備えができるわけです。
では、いつ接種すればいいのでしょうか。
すでにA型に感染した方では、A型に対しては免疫ができていると考えられます。
そのため、重症化リスクが低く、十分に回復している方では、年明けのB型流行を意識して11~12月ごろに接種するという考え方にも一定の合理性があります。
ただし、高齢の方や、喘息、COPD、糖尿病、心疾患などの基礎疾患がある方、妊娠中の方では、接種を先延ばしにすることはお勧めしません。
A型にも複数の亜型(A3H2など)があり、一度感染したからといって別のA型まで十分に防げるわけではないからです。

なお、すでに今シーズンのワクチンを接種している方に、もう1回追加接種することを一般的にお勧めしているわけではありません。
「インフルエンザにかかったからワクチンは不要」ではない。
ここを覚えておいていただければと思います。
まとめ
今年は、これまでとはかなり違うインフルエンザシーズンになっています。
8月から流行が始まり、9月のシルバーウィークで一時的に報告数が減少したものの、その後は再び増加。
そして現在、10月中旬の段階ですでに注意報レベルを大きく超えています。
今後、2023年のように長期間にわたって流行が続く可能性もありますし、昨シーズンのように、秋から冬の第1波に続いて、年明けにもう一度大きな流行が来る可能性もあります。
もちろん、感染症の流行予測は簡単ではありません。
私たち医師にも、正確なピークの日付を言い当てることはできません。
しかし、だからこそ、今わかっていることをもとに、対策を立てる必要があります。
- まだワクチンを打っていない方は、11~12月まで待たず、できるだけ早めの接種を。
- すでにA型にかかった未接種の方も、それで安心せず、回復後にB型などへの備えとして接種を検討。
- 高齢者や基礎疾患のある方、小さなお子さんは、特に接種時期を逃さないように。2回接種が必要なお子さんは、1回目を早めに済ませましょう。
かつての「12月からインフルエンザが流行するから、11月にワクチン」という常識は、必ずしも今の状況には合わなくなっています。
大切なのは、カレンダーではなく、実際の流行を見て判断することです。
今年のインフルエンザは、まだまだ長いお付き合いになってしまうかもしれません。
これからも神奈川県、そして茅ヶ崎・平塚周辺の流行状況をしっかり追いかけながら、皆さんに情報をお伝えしていきたいと思います。
できればこの予想が外れて、あっという間に流行が収まってくれれば、それが一番うれしいのですが・・・。
さて、どうなることやら。



