なぜか、宮城県のテレビ局からお声がかかり、出演しました(笑)
8月28日、宮城県のテレビ朝日系列、khb東日本放送さんの情報番組「チャージ!」で、秋のダニアレルギーについてお話をしてきました。
取材のきっかけは、去年当院のブログに書いたこちらの記事「2025.10.16 秋はダニ・ハウスダストのアレルギーのシーズン! ~その理由と対処法~」の記事でした。
今年の夏は、ここ数年に比べて北東からの冷たい風「やませ」が入りやすかったこともあり、特に東北地方の太平洋側では比較的雨の日が多かったようです(こちら関東も昨年よりはだいぶマシな暑さでしたよね)。
そのこともあって、いつもよりもジメジメしているこの夏から秋は、例年よりダニアレルギーが強くなるかもしれない・・・
そんな中で、khbさんが仙台から400kmも離れている当院を探し出して頂き、取材、出演に至ったという経緯です。
(仙台は、大学時代を秋田で過ごした私が、学生時代によく遊びに行った身近な街でしたのでちょっと思い入れもあり、何かの縁かなとも感じました)
番組では、ダニが気温よりも湿度に依存して増えること、正体は生きたダニそのものではなく死骸やフンであること、そして今年は雨の多い夏だったため例年以上に警戒が必要だということをお話ししました。
もしよろしければ、khbさんのHPやyahooで記事がアップされています
→khb東日本放送 「秋になるとくしゃみ・鼻水・目のかゆみ 花粉症ではない意外な原因」
→yahoo!ニュース
またYouTubeでも番組内容がアップされておりますので、もしよろしければご覧ください!
ただ皆さんに対しては、これらの内容は去年のブログですでに詳しくお伝えした内容でもあります。
そこで今回は、こちらの放送でも去年の記事でも紹介していない、新しく知っていただきたい情報をお話ししてみようと思います!
ダニアレルギーの方は、エビ・カニにも注意!
これはあまり知られていないことの一つです。
以前、エビフライを食べるたびに口の中がピリピリすると訴えていた方がいて、詳しく調べてみるとダニアレルギーの検査結果が非常に強い陽性だった、ということがありました。
ご本人は「エビが体質に合わないだけ」だと思っていたそうですが、実はダニアレルギーと関連した反応だったのです。
ダニと、エビやカニなどの甲殻類は、生物としては全く違う生き物です。
ですが実は、両者の体内には「トロポミオシン」という共通したタンパク質が含まれています。
このためもともとダニに対するアレルギーを持っている方が、体の免疫システムが「ダニ」と「エビ・カニ」を混同して、ダニに対する反応と同じようにエビやカニにも反応してしまう、交差反応という現象が起こることがあります。
実際に、甲殻類にアレルギーのあるアトピー体質の子どもを対象にした海外の調査では、7割以上がダニにも感作されていたという報告もあります。
もちろん、ダニアレルギーの方全員がエビ・カニを避けるべき、ということでは全くありません。
ただ、「ダニアレルギーがあるのに、エビやカニを食べると口の中がイガイガする」といった症状に心当たりがある方は、単なる思い過ごしではなく、この交差反応が関係している可能性があります。
気になる方は、自己判断で除去する前に、一度検査で確認することをお勧めします。
また、これから舌下免疫療法を検討する方にも知っておいていただきたい点があります。
海外の報告の中には、ダニの舌下免疫療法を続けている過程で、エビなど甲殻類への反応性に変化が見られたとするものもあります。
舌下免疫治療中に甲殻類を食べたときの体調変化に気づいたら、自己判断せずに一度相談していただきたいと思います。
子どもの時の環境が、将来のアレルギーに関わる?
お子さんが小さいご家庭に、もう一つお伝えしたいことがあります。
環境省が実施している、全国から約10万組の親子に参加してもらっている「エコチル調査」で、生後18ヶ月時点でのお子さんのマットレスのダニアレルゲン量と、その後のアレルギー発症の関係が調べられました。
その結果、乳幼児期にダニアレルゲンへの曝露が多いと、その後のダニへの感作リスクが高くなるという関連が報告されました。
あれ?「衛生仮説」って話、なかったっけ?
ここで、こんな考えもあります。
子どもの時に、いろいろなアレルゲンから過剰に避けられると、かえって免疫のバランスが崩れ、アレルギー体質になりやすくなるのではないか・・・?
これは「衛生仮説」という説で、この理屈からすると、「アレルゲンにたくさん触れたほうが、むしろアレルギーになりにくくなる」という考え方です。
確かに動物実験では、生まれてまもない時期に少量のダニアレルゲンを繰り返し与えると、体がアレルゲンを「無害なもの」と学習し、その後のアレルギー反応が抑えられるという現象が確認されています(これを「免疫寛容」と呼びます)。
ただし興味深いことに、同じ実験で曝露量を10倍に増やすと、この保護効果は消え、むしろアレルギー反応が誘導されてしまったったのです。Yuan H, Chen J, Hu S, Oriss TB, Kale SL, Das S, Nouraie SM, Ray P, Ray A. Early life exposure to house dust mite allergen prevents experimental allergic asthma requiring mitochondrial H2O2. Mucosal Immunol. 2022;15(1):154-164.
あえてアレルゲンに晒しすぎる必要はない!
つまりここで重要なのは、「アレルゲンに曝露されたかどうか」ということだけではなく、「いつ頃に、どのくらいのアレルゲン量にさらされたのか」という点なのです。
エコチル調査で示された「アレルゲンの曝露量が多いほど感作リスクが高い」という結果も、この関係と矛盾するものではありません。
もちろん、これは「今すぐ全てを完璧にしなければならない」という話ではありませんし、この関連だけでお子さんの将来のアレルギーが決まってしまうわけでもありません。
ですが、小さなお子さんがいるご家庭では、寝具まわりの環境を整えることが、目先の症状対策だけでなく、将来的な意味も持ちうるということは、知っておいて損はないと思います。
寝具を「覆う」だけで改善する!?
これは番組本編でもお話しをしております。
寝具まわりの対策というと、掃除機がけや天日干しをイメージする方が多いと思いますが、それに加えてもう一つ、シンプルながら効果が示されている方法があります。
それが、目の細かい繊維でできた防ダニ仕様の寝具カバーで、マットレスや枕を丸ごと覆ってしまう「エンケーシング」という方法です。
デンマークの研究(Journal of Allergy and Clinical Immunology. 2003)で、ダニアレルギーを持つ喘息のお子さん60人を対象に、防ダニ仕様のマットレス・枕カバーを1年間使用してもらったところ、吸入ステロイド薬の量を半分以下に減らせた子どもの割合は、防ダニカバーを使ったグループで73%、通常のカバーを使ったグループでは24%と、大きな差が出たことが報告されています。
掃除や換気は、あくまで「たまったアレルゲンを取り除く」対策です。
それに対してこのカバーは、アレルゲンが体に触れる経路そのものを物理的に断つという、少し違う発想の対策になります。
もちろん、今使っているカバーにダニアレルゲンがついていたら、まずはそれを洗濯したり、交換したりすることはとても大事なことです。
ただ、交換してもなかなか症状が良くならない場合は、専用カバーに変えてみるという手はあるわけです。
マットレス用だけでなく、布団や枕用にもこうした専用カバーは市販されているので、布団派の方だけでなくベッド派の方もできる選択肢です。
選ぶ際は、通気性を保ちながらもダニやアレルゲンの粒子を通しにくい、目の細かい高密度繊維を使った製品かどうかを確認するとよいでしょう。
治療は、原因を特定することも大事!
ここからは去年の記事でもお伝えした点ですが、改めて大切な点なのでお話ししておきます。
秋になって症状がつらくなると、とりあえず薬を始める、増やす、という対応が取られやすいです。
もちろん、まずは症状を抑えるために薬を使うということは大事です。
また最初から原因の特定をすることが難しい場合や、結果的に原因がはっきりしないこともめずらしくはありません。
ただし、だからといってただ薬に頼るのみで、しっかり原因を探ることを放棄してしまうと、症状が十分に改善できないということもありえます。
症状が残っている場合の、隠れている解決法を見つける努力は必ずすべきなのです。
アレルギーの治療薬が、自分の体を守る「盾」であれば、アレルゲンは自分の体に飛んでくる「矛」という関係です。
「盾」をしっかり作るだけでなく、「矛」を避けるという視点も大事になってくるわけで、目的も期限もなく、ただなんとなく薬だけが積み重なっていく状態は、明確に区別して考える必要があります。
長年同じ薬を漫然と続けているけど、症状が残ってしまっている場合、一度立ち止まって、その薬が今も本当に必要かどうかを見直すタイミングかもしれません。
採血やプリックテストなどの適切なアレルギー検査を
ダニアレルギーが疑われる場合、まず行いたいのは血液検査などによる原因アレルゲンの特定です。
また、より精度の高い検査としてダニアレルゲンが含まれるエキスを皮膚の中に入れる「プリックテスト」「スクラッチテスト」という検査もあります(やっているところは少ないですが)。
花粉なのか、ダニなのか、それとも両方なのか、あるいは先ほどお話ししたような交差反応が関係しているのか。
原因が分かって初めて、対策も治療も的確になります。
逆に言えば、原因が分かっていないままに治療を漫然と続けていると、効果判定が難しくなったり、症状の改善が遅れることもあるのです。
舌下免疫療法も是非検討を!
そして、ダニアレルギーには、体質そのものを変えていく「舌下免疫療法」という方法もあります。
ダニアレルギーは、スギ花粉症と並んで舌下免疫療法が保険適用で受けられるアレルギーです。
3年以上という長い期間をかける治療法ではありますが、効果は非常に高く、アレルギーのお悩みを根本から解決できる可能性もあります。
毎年繰り返すつらい秋と根本から向き合いたい方には、検討する価値のある選択肢です。
今回は、放送でも去年の記事でも紹介していなかった3つの新しい情報
「エビ・カニとの交差反応」
「乳幼児期の環境の影響」
「寝具カバーで守る対策」
についてお話ししました。
これらの対策は今日からでも始めていただきたい大切なものです。
「今まで花粉症だと思っていた」「エビを食べると喉がイガイガするけれど関係ないと思っていた」――こうした思い込みに、少しでも心当たりがある方は、この機会に一度立ち止まって、原因を確かめてみていただきたいと思います。



