一般内科

糖尿病

糖尿病は症状が出てからではもう遅い・・・
ささいな異常でも早めの対策が肝心です。
「血糖が高い」と言われたら迷わず受診を!

血糖って何?

糖(グルコース)は体にとって重要なエネルギー源です。

私たちの体は、食べ物から吸収したり、肝臓に蓄え、足りなくなった時に必要な分だけ肝臓から取り出し、血液中に放出したりします。

一方、血液中に流れる糖が多くなってくると、今度は糖が細胞に取り込まれて、これがエネルギーとして使われます。
そしてそれでも余った糖は、筋肉や肝臓、脂肪組織に貯めこみます。

これらの動きは、体の中の様々なホルモンによって巧妙にコントロールされており、この働きによって体の中の糖の量は一定の範囲に保たれています。

 

血糖はどうやってコントロールされているの?

血糖値は、主に膵臓から分泌される「インスリン」「グルカゴン」によって調節されています。

「インスリン」は血糖値を下げるホルモンです。

血液中を流れる糖が増えると、膵臓からインスリンが分泌され、は血中から出ていって、筋肉や肝臓、脂肪組織に貯めこまれます。
筋肉に貯めこまれたは、「グリコーゲン」という筋肉の収縮に使われるエネルギー源となり、肝臓に貯めこまれた糖はやはり「グリコーゲン」「中性脂肪」に変換されて、肝臓に貯めこまれていきます。

「グルカゴン」はその反対です。

血液中を流れる糖が減ると、膵臓からグルカゴンが分泌され、肝臓に貯めこまれたグリコーゲンが分解され、糖となって血中に放出され、血液中に流れる糖を増やします。

血糖値は主に「インスリン」「グルカゴン」という2つのホルモンのバランスによって巧妙にコントロールされています。

 

なぜ糖尿病になってしまうの?

そんな「インスリン」「グルカゴン」の働きのバランスが崩れ、「インスリン」の働きが弱くなったときに、血糖値は上昇していきます。

ではなぜ「インスリン」の働きが弱くなってしまうのでしょうか?

その原因は大きく分けて2つあり、「インスリンの量が減る」時と、「インスリンの効きが悪くなる場合」です。

まずは「インスリンの量が減る」場合です。
インスリンは膵臓から分泌されますが、膵臓の力が落ちるとインスリンの分泌が減ってしまいます。
その原因としては、加齢や、血糖値の上昇が続くためによる膵臓の疲労、それに何かしらの原因による膵臓の破壊です(膵臓が破壊され、インスリンが出なくなった状態が「1型糖尿病」です)。

次に「インスリンの効きが悪くなる」場合です。このことを「インスリン抵抗性」と呼びます。
これは内臓脂肪が増えることで起こります。
内臓脂肪が増えると、大きくなった脂肪細胞からインスリンの効きを邪魔する物質が多く分泌されます。
また血糖の上昇が続いていると、それ自体が肝臓や筋肉でのインスリンの効きを悪くしてしまいます。
インスリンの効きが悪くなると、血液の中から肝臓や筋肉へ糖を取り出せなくなり、糖が血液中にあふれてしまうのです
(このことを「糖毒性」と呼びます)。

「インスリン抵抗性」は、遺伝的な要因、運動不足、ストレスなどでも生じ、生活習慣に強く関係することがわかっています。

 

 

何で血糖が高くなるのが悪いことなの?

これらの原因によって血液の中の糖が多い状態が続くと、血管の内側の壁を傷つける『活性酸素』が発生してしまいます。
活性酸素によって壁が傷つくと、そこからコレステロールが壁の中に入っていきます。

壁の中には「マクロファージ」という異物を食べる体の警備隊がいて、入り込んだコレステロールを食べて排除しようとします。

コレステロールを食べたマクロファージは死んでしまい、血管の壁の中に沈着し「プラーク」と呼ばれるかたまりを作り、動脈は固く、厚くなっていき、「動脈硬化」を引き起こします。

その後、何かの原因でプラークが壊れると、血液の中から血栓を作ってその穴を塞ごうとします。
この血栓がプラークからはがれて飛んでいくと、その先で血管が詰まってしまうのです。

(コレステロールによるプラークの影響は「脂質異常症」のページで詳しく!)

 

つまり、糖尿病は、動脈硬化を引き起こす「血管の病気」であると言えるのです。

 

糖尿病ではどんなことが起こるの?

一口に糖尿病と言っても、その症状の出方は人によって様々です。

かなりの高血糖の状態でも症状が何も現れず、病気が進むまで気づかないという例も多くあります。

また血液の糖は水分を引き寄せますので、細胞から多くの水分を血管に引き入れます。
一方細胞内はカラカラになり、脱水状態となります。

そのため、「口の渇き」「水分をたくさん摂りたくなる」「尿が不自然に増える」などの症状から糖尿病に気づかれることもあります。

糖尿病が進むと、心臓から遠い足の血流が悪くなり、最終的には足壊疽という状態になることがあります。
また眼の網膜も動脈硬化で血流が悪くなり糖尿病性網膜症という状態になり、最終的に失明してしまうことも。
さらには神経への血流の悪化や、神経の代謝の異常で、全身の神経に異常をきたし、さまざまな「糖尿病性神経障害」を引き起こす、腎臓の血流も悪くなり、「糖尿病性腎症」から最終的には人工透析に至ってしまうなど、とにかく多種多様な症状が次々と出現するところが糖尿病の怖いところです。

また、極端に高い血糖値になると、上でお話した脱水状態がひどくなります。
あまりに脱水状態がひどいと、
意識障害を起こしてしまうことがあります。

1型糖尿病では「糖尿病性ケトアシドーシス」、2型糖尿病では「高浸透圧高血糖症候群」と呼ばれる状態となり、いずれも命に関わる事態ですので、速やかに対処する必要が出てきます。

 

血糖が高いと言われたらどうすればいいの?(生活習慣編)

このような状態になることを避けるには、まずは生活習慣の改善をすることが重要です。

まずは食事面から見直します。

肥満はインスリンの効きを悪くしますので、まずは肥満解消です。
カロリーを制限しつつ、食事から摂る糖質を少し減らすと効果的です(極端な低糖質は短期では大きな減量効果を得ることができますが、長期的な安全性のデータはほぼないのが現状です。軽めの糖質制限が安全です)。
飲み物も糖を多く含む飲み物はなるべく避け、普段摂るのはお茶や水などの糖分の入っていない水分にすることが望ましいです(糖分の入っている飲み物はいわゆる「娯楽」です。「娯楽」は少々なら気分転換にいいですが、そればっかり続けていると体には良くないわけですね)。

おやつも甘いものの摂りすぎはもちろん良くありません。
ただ一回の食事量を少なくすることは、血糖値の変動を小さくでき、膵臓を守ることに有効ですので、3食の食事量を減らしてその分を間食で補うことは悪いことではありません。
間食をする場合は糖質の少ないもので賄いましょう(腎機能が悪かったり、極端な肥満であったりすればこの限りではありません。主治医の先生とよく相談しましょう)。

そうそう、血糖値の変動を小さくするという意味ではもう一つ、「食べ順」を考えることもとても有効です。
先に野菜、海藻、きのこなど、食物繊維を多く含む食材を食べると、あとから糖質をとった時でも急激な糖質の吸収を抑え、血糖値の変化をゆるやかにすることができます。
食事の時は「食べ順」を常に意識するようにしましょう。

次に運動面です。
運動をすると、先ほどお話したインスリンの効きづらさ、つまり「インスリン抵抗性」が改善することがわかっています。
また運動によって内臓脂肪が減少すれば、それもインスリン抵抗性の改善につながります。

歩いたり走ったりするような有酸素運動は脂肪燃焼に役立ちますし、筋トレなどの無酸素運動は筋肥大による基礎代謝の向上が望めます。
どちらもバランスよく組み合わせて行いましょう(極端な高血糖の方や合併症が出現している方などは運動をするにあたって注意点があります。主治医の先生とよく相談しましょう)。

言うまでもなく、動脈硬化を進めないための節酒、禁煙も糖尿病のコントロールには超重要です。

 

血糖値が高いと言われたらどうすればいいの?(薬剤編)

なかなか生活改善でも血糖値が改善しない場合はやはりお薬の力を借りましょう。

 

糖尿病の薬は日進月歩で進歩しており、数年前の常識が通用しないほど変化の大きい世界です。
またいろんなデータが集まってきており、糖尿病の薬が、心臓や腎臓などの様々な合併症を防ぐことができることもわかってきました。

このような薬の進歩により、以前よりもかなり多くの糖尿病患者さんが飲み薬のみでコントロールできるようにもなっています。
またインスリン製剤ではない効果の高い注射薬もぞくぞく登場しており、心強い味方となっています。

 

一方、極端に血糖が高い時や、これらの薬を使ってもなかなか改善しない時、それに1型糖尿病の時インスリン製剤の出番です。
インスリン製剤を導入する場合は、血糖値の変動を見ながら、インスリンの種類、量、打つタイミングを慎重に決める必要があります。

 

糖尿病と言われたらショックですが、今はいい治療法がたくさん出ています。
ずっと元気な生活を送れるように、血糖が高いと言われたらとにかく少しでも早く対処しましょう!