医師ブログ

2019.05.16更新

今日は喘息(ぜんそく)について少しお話ししてみたいと思います。

気管支喘息では、さまざまな原因で空気の通り道である気管支が敏感になり、その結果気管支の壁に炎症が起きます。気管支の壁が炎症をきたすと、壁がぶ厚くなります。そうすると空気の通り道は狭くなってしまいます。そうすると特に息を吐くときに、狭くなった気管支を空気が通りづらくなり、笛のような「ヒューヒュー」とした音がなるわけです。また気管支が敏感になることで、咳が長く続いてしまったりもします。
一方咳喘息は、同じように気道に炎症がおきますが、気管支が極端に狭くならないためにヒューヒューなったりはしない状態のことです。気管支は敏感な状態なので、やはり咳が続きます。気管支喘息の一歩手前の状態と言われていますが、放っておくと気管支喘息になってしまいやすい状態でもあります。


喘息病態

 

喘息はこどもの病気だというイメージを持たれている方が多いのですが、大人も喘息になります。こどもの時に喘息だったという方が大人になって再発する場合もありますし、大人になってからまったく初めて発症する方も最近では珍しくありません。

喘息患者数


原因として多いのは花粉、ダニやハウスダストなどによるアレルギーですが、免疫の異常やこどもの時の環境など、いろいろな要素が関与しているといわれています。また遺伝性もあり、血縁者に喘息の方がいる場合は喘息を発症しやすいことがわかっています。
つい20年ほど前までは、毎年喘息により6000~7000人くらいの方が命を落としていました(今の交通事故の死亡者数よりはるかに多かったのです!)そのような状況を一変させたのが、気道の炎症を吸入ステロイド薬で鎮める治療法の登場でした。これにより喘息でなくなる方は年間1500人を割るところまで来ています。


喘息死者数


とはいえ、やはり今でも毎年1500人は亡くなってしまう怖い病気であるともいえます。
国内でも海外でも、今の成人喘息治療のガイドラインでは、基本的にすべての喘息患者さんに吸入ステロイドによる治療が必要であるとされています(こどもはこの限りではありません)。この吸入ステロイド治療がうまくいかないと、喘息は今でも非常に危険な病気です。

ですので私たちのような呼吸器専門医は、とにもかくにも吸入治療に力を入れています。

残念ながら喘息は糖尿病や高血圧などと違い、数字で表しづらい病気であり、症状がよくなった後に治療を続けていただくモチベーションを保つのが難しいのが実情です。また吸入薬の治療は飲み薬などと比べて面倒くさいとおっしゃられる方も少なくありません。
加えて吸入薬も現在さまざまな形のものが発売されており、どれも非常によく考えられて作られているのですが、そのせいで治療がわかりにくくなっているのも事実です。

ただしっかり薬を使ってもらえればその効果は抜群ですので、私はそのお手伝いがしっかりされるかどうかが治療成功のカギだと考えています。

吸入薬はそれぞれの種類で長所と短所があります。当院では様々な患者さんの状態や要望に応じて、適切な薬剤をチョイスしてお渡しすることにしています。また当院では吸入薬を処方する際に、見本や使用方法のお手本をお示しして、正しい使い方で使っていただけるようにしております。より治療効果を上げたり、副作用を減らす吸入のコツも患者さんの状態に応じてお伝えします。

お困りの際はささいなことでも結構ですので、なんでも当院にご相談下さい。

少しのつもりがかなり長くなってしまいました。さて、金曜からはまた学会出席にてお休みをいただきます。今回はプライマリケア学会の学術総会に出てまいります。かかりつけ医としての技量や訪問診療のいまなどについて学んでくる予定です。

 

今回は新幹線チケットはしっかりgetしておきました!!

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

2019.05.09更新

さてこの4月より、加藤医院はわたくし浅井の赴任に伴い、呼吸器、アレルギー科を中心とした専門診療を開設いたしました。今後呼吸器、アレルギーの病気に関してもこちらのブログでいろいろと書かせていただきたいと思います。

呼吸器、アレルギー診療のページでも掲載している通り、当院ではせきに対する専門診療を行います。一言で咳と言っても、そこにはいろんな原因が潜んでいる場合があります。そんな咳に対して、私のような呼吸器の専門医がどのようにアプローチしてるのか、ちょっと長くなりますが、かいつまんで紹介してみたいと思います。

我々はまず咳をどれくらいの期間続いているかで分類します。専門的には3週間以内の咳を急性咳嗽、8週間以上続く咳を慢性咳嗽と決めています。
基本的には咳が出てそれほど時間が経ってなければ感染症の可能性が高く、時間が経っていれば経っているほど感染症以外の原因が考えやすくなります。ただ出始めてから時間が経っていないせきでも、今までに同じようなせきを何度も繰り返している場合には感染症以外の原因を疑うこともあります。
また分け方としては痰がからむ湿った咳なのか、たんがからまない乾いた咳なのかということも重要です。原因の推測にも役立ちますし、感染症の場合は病原体の鑑別にもつながります。またこれにより症状の抑え方が大きく変わることもあります。
あと咳の出やすい時間も重要です。喘息は比較的夜更けから早朝に多く、鼻アレルギーによる咳は寝入りっぱな、早朝に多い傾向があります。食後に増えれば誤嚥や逆流性食道炎、横になると苦しくなるのであれば心臓が原因など、いろいろ特徴があります(もちろんすべてにおいて例外も数多くあります)。
このほか、咳の出かたや胸の音、喫煙やアレルギー体質の有無、他に持っている病気、家族歴、職業、住宅や仕事場などの環境、内服している薬や健康食品などなど、いろいろなことが咳には関係してきます(時にはだいぶプライベートに踏み込んだ質問もさせていただくかもしれませんが、このような訳があることをご理解いただければと思います)。また、今まで咳をずっと診察していた専門医としての直感、ひらめきも案外当たることがよくあります。

これらで方向性がある程度見えたら、その可能性を確かめる検査をしたり、治療による反応を見たりしながら診断を確定していくのです。

ここに挙げたのは、それでも我々が考えている一部です。もちろんここには書ききれない他の気にする点も数多くあります。咳の診察は本当に謎解きのような感じです。しかも病気によってはどんなに正しい治療をしてもすぐには良くならないこともありますし、咳の原因が複数にわたることもあり、全部を治療しないとよくならないこともあるので、素人判断で自己診断したり、治療をやめたりすることはおすすめできません。困ったとき、迷ったときはどんな些細なことでもいいので、ぜひぜひ相談してくださいね。

今後は不定期にはなりますが、咳をきたす具体的な病気について、このブログでさらに深く触れてみようと思いますので、ご興味がありましたらお付き合い下さい。ではまた。

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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