医師ブログ

2019.06.07更新

先日ホームページでもお伝えしたように,当院では睡眠時無呼吸症候群に対する検査,治療をはじめました.わたしは睡眠時無呼吸症候群専門外来の経験があり,今後加藤医院では,この病気にも力を入れて取り組んでいこうと考えています.

睡眠時無呼吸症候群は,主に眠っているときに舌の付け根が気道に落ち込んでしまうことで気道が閉じてしまい、一時的に呼吸ができなくなり止まってしまう状態です。そのまま呼吸がずっと止まって死んでしまうことはありませんが,1回に数秒から,長い人では2分も呼吸が止まってしまうこともあります.またこのような10秒以上の呼吸停止,呼吸減弱が1時間に何回起こるかという数字が無呼吸低呼吸指数(AHI)と呼ばれる数値です.このAHIの数値が5回以上。もしくは一晩に30回以上無呼吸があると睡眠時無呼吸症候群と診断されます.

呼吸が止まると酸素が運ばれなくなるので,全身の臓器が酸欠状態になります.起きていればかなり苦しくなるような状態なのですが,この病気は寝ているご本人はあまり自覚のないことが多く,主にご家族がいびき,呼吸が止まるなどの様子を観察することで見つかることが多いです.

ただ熟睡はできていないので,ご本人にも昼間の眠気や仕事の効率低下,起きた時の頭痛などの症状があらわれます(以前山陽新幹線の運転士がこの病気により運転中に居眠りをしてしまいオーバーランをする事故がありました).

またこの状態が続くことで全身に負担がかかり,高血圧の悪化につながったり,脳卒中、心筋梗塞,糖尿病の発症,悪化リスクを増やしてしまいます(いろいろな降圧薬を飲んでいるにも関わらず血圧がなかなか下がらない場合は一度この病気を疑う必要があるとされています).

以下は睡眠時無呼吸指数がある人とない人の9年後の生存率の差です.なかなか衝撃的なデータで,睡眠時無呼吸症候群の人は確実に生存率が下がることが示されています(He J, et al:Mortality and apnea index in obstructive sleep apnea-Experience in 385 male patients. Chest,94,9-14,1988).SAS

これほど怖い病気なのですが,多くの方はやはり自覚症状が乏しいために,いびきに対しては特に対応をしていない人が非常に多いのです.お心当たりの方は是非とも一度相談されることをおすすめします.

次回は当院で行う検査,治療についてお話ししたいと思います.

投稿者: 茅ヶ崎内科と呼吸のクリニック 院長 浅井偉信

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